55.乳歯
誰視点かを追記しました(2022/11/23)
ケイ視点
最近理解したことがある。
この世界の人間の生活は7日サイクルで周っているらしい。そしてそのサイクルを週間ということを。
1週間のうち仕事や学校があるのが5日、そして2日の休みが入ってサイクルが終わる。
なので我も5日調査して2日休むようになっている。
(本当は毎日調査したいのだが…)
休みの日は結や舞衣に構われる時間も多いし、何より人が多くて調査が進まない。
まだまだ時間もあるししょうがないという気持ちと、早く技術を手に入れたい焦りに板挟みになることもあるが、焦らないことに決めた。
(本来の姿ならまだしも、猫ではどうしようもない。)
今の我は猫なのだ。できることとできないことがある。
最近になってやっとその事実を受け入れた、というか諦めがついた。
そして今日は土曜日である。なので我は調査しない。
たまに結と舞衣の相手をしてやり、空いてる時間はソファーでゴロゴロしていた。
「ケイちゃ~ん、ご飯だよ~」
ソファーでうたた寝していた我に結が話しかけてきた。
(そうか、もう夜か。)
我ながら自堕落な1日を過ごしたものだ。猫だからしょうがないのである。
「にゃ~(ご苦労。)」
我は結に一声かけると、夕飯が置いてある皿へ向かった。
(またこのカリカリするやつか…)
食事がドライフードとやらに移行してからずっとこれだ…
確かに歯ごたえがある食べ物を欲していたが、ずっと同じ食事なのは不満だ。
「にゃ~(たまには違う物も食いたいぞ。)」
我は結に話しかけるが、結はニコニコして我を見つめる。
(言葉伝わらんかなぁ…)
我の最近の大いなる悩みである。
(まあ空腹を満たすだけなら問題ないのだが。)
我はそう割り切って食事を始めた。
『カリカリ、ボリボリ』
味はいつもどおり悪くない、歯ごたえもある。
『カリカリ、ボリボリ、パキッ!』
(ん?『パキッ』っていったか?)
なにか食事とは別の音がしたような?
(なんだ?口の中に変な固いものがあるような?)
我は食べ物と一緒に飲み込まないように固いものを吐き出した。
『プッ…カラン』
吐き出したものをよく見ると…歯だった。
「にゃ、にゃーーー!!(わ、我の歯が抜けた!!)」
なんてことだ!!大魔王である我の歯が抜けただとっ!!
結視点
「…えっ?」
ケイちゃんが食事中に何かをはき出した。最初はご飯になにか混ざっちゃってたのかな?って心配した。
(えっ?あれって歯?えっ?)
ケイちゃんの歯が抜けた!?
私は顔から血が引いてくのがわかった。
「お、お姉ちゃーん!!」
私は慌ててお姉ちゃんを呼ぶ。
「ケイちゃんの!ケイちゃんの歯が抜けちゃったーっ!!」
どうしよう?どうすればいいの?病院?病院に連れてかなきゃなのかなっ!!
私は大混乱していた。
「あぁ、もう乳歯が抜ける時期なのね。」
「お姉ちゃん!落ち着いてる場合じゃないよ!病院!病院行かなきゃ!!」
「あんたが落ち着きなさい。大丈夫よ、あれは乳歯が抜けただけだから。」
「えっ?乳歯?」
「そうよ。結だって乳歯抜けて永久歯生えてきたでしょ?」
「うん。でもそれって幼稚園のときとか1、2年生のときだよ。」
ケイちゃんはまだ生まれて数ヶ月しか経ってないはず。
「猫だけじゃなくて、動物は成長早いから。」
「そんなに?」
「そうよ。猫は大体生後3ヶ月から5ヶ月ぐらいで乳歯が抜けるんだって。」
「そうなんだ!」
だったらケイちゃんの乳歯が抜けるのはちょうどいいんだ。
「そっかぁ、病気とかじゃないんだね?」
「大丈夫。ちゃんと成長してる証拠だよ。」
「よかったぁ…」
私はホッとして床に座り込んだ。
ケイ視点
(なるほど、そういうことなのか。)
我は2人の会話を聞いて安心した。それもそのはず大魔王時代には乳歯・永久歯という概念はなかったのだ。猫の歯は生え変わるものなのか。
(大魔王の身体は歯が抜けるようなことなかったからな。)
歯が抜けるということも初体験だったから焦ってしまった。
我は安心して残りの食事を平らげるのであった。
乳歯が抜けるシチュエーションをちょっと大げさに書いてみました。
猫は大体3~5ヶ月で乳歯が抜け始めて、7~8ヶ月ぐらいで完全に生え変わります。





