54.結と杏奈
誰視点かを追記しました(2022/11/23)
結視点
「えっと、次の授業は算数…」
私は休み時間に次の授業の準備をしていた。算数はキライじゃないけど計算はめんどくさい。でも…
(こないだケイちゃんのご飯用意するのに算数必要だってわかったもん。)
ケイちゃんのためならがんばらなきゃだよね。
そんなこと考えてたら、
「結ちゃん、今日放課後ヒマ?」
杏ちゃんが私の席に来て話しかけてきた。
「うん、大丈夫だけど。」
遊びのお誘いかな?早く帰ってケイちゃんと遊びたい気持ちもあるけど、みんなと遊ぶのも楽しいから好き。
「あのね、ちょっと相談したいんだけど…」
「いいけど、相談?」
杏ちゃんはいつも元気で明るいから悩みなんてあるなんて思ってなかったからびっくり。
「あ、相談って言っても猫のことなの。ケイちゃんかわいかったから杏奈も飼いたいな、って。」
「そうなんだ!」
ケイちゃんかわいいって思ってくれるだけじゃなくて、猫ちゃん飼いたいって思うほどなんだ!なんか嬉しい!
「うん。だからパパにお願いするために、猫飼ってる結ちゃんにいろいろ教えてほしくって。」
「いいよ!私も勉強中だけど。」
「ありがと~、それじゃ放課後にお願いね。」
「うん!」
私もお姉ちゃんに教えてもらってばっかりだから、誰かに教えてあげるってなんかワクワクする!
放課後のことが楽しみだな、って思いながら、私は授業を受けた。
「結ちゃ~ん。」
先生の話が終わって放課後になったらすぐに杏ちゃんが来た。
「どうしよっか?ここで話す?」
「う~ん、みんながいて結構うるさいからどっか行こっか?」
まだみんな帰ってないから教室はガヤガヤしてる。
「いいよ。どこ行く?公園?河原?」
「河原にしよう。」
「うん、いいよ。」
ケイちゃんのお話するなら河原はぴったりだ。だってケイちゃんと出会った場所だもんね。
「じゃあ行こう~」
私と杏ちゃんはまだガヤガヤしてる教室から河原に向かった。
「それでね、毎日やらなきゃらならないのがご飯とお水の用意とおトイレの掃除なの。」
「へ~」
私と杏ちゃんは土手から河原に降りる階段に座って話してた。
「あとね、月に1回お風呂でキレイにしてあげたり、爪が伸びたら切ってあげたりするの。」
私はケイちゃんにやってあげてることを杏ちゃんに説明してる。
「やること多いね。大変だっ!」
「う~ん、大変って思ったことないかな?ケイちゃんのためだし。それにケイちゃんのママになる、って決めたことだもん。」
ケイちゃんのことを大変なんて考えたこともなかったな。
「それにケイちゃんと一緒にいるのってとっても楽しいから。大変より嬉しいって思う。」
私はケイちゃんと一緒にいるのが本当に好きだもん。
「結ちゃんえらいなぁ。杏奈にできるかなぁ…」
「杏ちゃんも飼いたいと思う猫ちゃんに会えばきっとわかるよ。」
「そうかな?」
「そうだよ。だって杏ちゃんも猫ちゃん好きなんでしょ?」
「うん!かわいくって大好き!杏奈ね、猫飼いたくなっていっぱい調べたんだ。飼うならかわいい子がいいもん!」
やっぱり杏ちゃんも猫ちゃん大好きなんだ。
「アメリカンショートヘアってキリッとしててかっこよくてかわいいよね。あとスコティッシュフォールドって耳が垂れててかわいいの。でもマンチカンって短足な猫が一番かわいいって思った!それとね…」
杏ちゃんはいろんな種類の猫ちゃんをどんどん挙げていく。すごいなぁ、全然聞いたことない種類もいる。
「でもね、ケイちゃんのあの目!オッドアイ!あの目が一番かわいいと思う!でもオッドアイの猫ってすっごい珍しいんだって…」
「私もケイちゃんの目はすごくかわいいと思うよ。でもそんなに珍しいんだ。」
そういえばお姉ちゃんも珍しいって言ってた気がする。そっか、そんなに珍しいんだ。
「珍しいよ!白猫ならそこそこいるらしいけど、ケイちゃん黒猫でしょ?きっと数万匹に1匹とかだよ!」
「そうなんだ!」
ケイちゃんがそんなに珍しい猫ちゃんだったなんて知らなかった!
「だからね、杏奈もケイちゃんみたいな猫欲しい!どこで見つけたの?」
杏ちゃんが私に向かってグイグイ来る。ちょっと落ち着いて…
「ケイちゃんはこの河原で会ったんだよ。この川で溺れてたのを助けたの。」
最近はずいぶんしっかりしてきたけど、あのときは見ててすごく不安になる猫ちゃんだったなぁ。
「ここで?じゃあ野良猫がお母さんとはぐれちゃったとか?」
「ゆっこちゃんのパパさんが、毛並みもキレイだから捨て猫かも、って言ってた。」
「あんな珍しくてかわいい猫捨てる人いるの?」
「わかんないけど…」
もし捨てられたんだったらすっごい悲しいことだよね…
「でもそっかぁ、それじゃオッドアイの猫飼うことってできないんだぁ…」
杏ちゃんは残念そうに言った。
「ノラちゃんでも見たことないもんね。それにそんなに珍しいなら売ってても高そうだね。」
数万匹に1匹だったらすっごい高そう…
「調べたらそんなことないんだって。別にオッドアイだからほしいって人がそんなに多くないらしいから高くならないんだって。でもそもそも数が少ないから…」
「そっかぁ…でも杏ちゃんはオッドアイの猫ちゃんじゃないとダメなの?」
私はケイちゃんだから飼いたい、って思った。飼うって決めたときは目の色のこと知らなかったもん。
「そんなことないけど…」
「杏ちゃんもきっと本当に一緒にいたい猫ちゃんに会ったら目の色なんて気にしないと思うよ。だって私はケイちゃんだから大好きなんだもん。他の猫ちゃんも好きだけど、ずっと一緒にいたいのはケイちゃんだもん。」
「そうなのかな?今すぐにでも猫飼いたいってパパにお願いしたいけど…」
「私はずっと一緒にいたい猫ちゃんに会ってからがいいと思うよ。その子と最後まで一緒にいるんだもん。途中でイヤになったり投げ出したりしたくないもん。」
ケイちゃんのママになる、って決めた日からずっとそう思ってる。パパが言ったようにケイちゃんが先にいなくなっちゃうかもしれないけど、それまではずっと一緒にいるんだもん。
「そっかぁ。やっぱり猫を飼ってる結ちゃんの言ってることってすごいね。杏奈飽きっぽいからなぁ…もしそうなっちゃったら猫がかわいそうだもんね。」
「そうだよ。パパが動物飼うなら責任持って最後まで、って言ってた。それに猫ちゃんって寿命が長くて20年ぐらいだから、って。だから最後まで一緒にいる、って決めたんだもん。」
今はまだケイちゃんがいなくなっちゃうことなんて考えたくない!
でも杏ちゃんにもちゃんと知ってもらわないとだよね。
「やっぱり結ちゃんえらいなぁ。杏奈もっとちゃんと考えてみるね。」
「うん、それがいいよ。そろそろ遅くなっちゃうから帰ろっか。」
「そうだね。結ちゃん今日はありがとね。」
「うん!また何かあったら聞くね。」
杏ちゃんわかってくれたかな?私は杏ちゃんと一緒に日が沈む前にお家へ帰った。