51.猫と紙袋
誰視点かを追記しました(2022/11/23)
我は相変わらず調査に明け暮れている。
爪を切られて行動範囲が狭まるかと思ったが、問題なくドアも開けられるし、今のところは心配ない。
まだ2階に行くと文句を言われる可能性もあるので、1階を徹底的に調査しようと思っている。
まあ正直なところ1階だけでも手に余るほどの情報があるのだ。危険を犯してまで2階に行く必要もあるまい。
そういうわけで我はまた風呂場に来ている。
『ぐおおぉぉ~』
そうこのけたたましい音を出しているのが勝手に洗濯してくれる道具だ。中を見ると洗濯物が回転している。
水と石鹸?と洗濯物を一緒に入れることで綺麗にしているようだが、驚いたのは乾燥までやってしまうことだ。
先日雨が降っているのに動いていたからおかしいと思ったのだが、動き終わってから母親が取り出した洗濯物はすっかり乾いていた。
(おそらく例のドライヤーという道具と同じように暖かい風を使っているのではないかと思うのだが…)
1つの道具が複数の機能を有しているとは本当に衝撃だ…
風呂場を後にした我は1階のとあるドアの前に来た。ここのドアは何故かいつも鍵が掛かっていて入れないのだ。
(今日はどうだ?)
我はジャンプしてドアノブに手をかける。
『ガキッ』
(やはりダメか…)
今日も鍵が掛かっているらしい。
(こんなに厳重ということは何か秘密があるに違いない。)
そう睨んでこまめに足を運んでいるのだが、残念ながら今日も入ることはできないようだ…
(いつか必ず入ってやる!)
我は今日のところは諦めて他を周るのだった。
リビングに戻ると母親と娘達がいた。
「結~、服買ってきたよ。」
「わ~、ママありがとう。どんなの?」
結は嬉しそうに母親と話していた。
(今の我には服など関係ないな…)
魔王として威厳を持たせるためにどういう服を着るか、と悩んでいた頃が懐かしい…
我はそれよりも気になったことがあった。
(あの袋は布製ではないな。)
布製どころか革でも植物を編んだものでもない。もしかして紙か?
(まさか…紙なんてすぐ破けるような物を袋にするわけがない。)
気になった我は空になって床に置いてある袋に近づいた。
(見た目は紙だな。触ってみても紙っぽい。)
ちょっと手触りがツルツルしているが紙であることは確実だろう。それにしても随分と分厚い。まあ漉き方によっては分厚い紙を作ることも可能だが、そんなことをしては予算がいくらあっても足りない。
(こんな贅沢な紙の使い方をするとは…)
この世界は何でも豊富にあるのか?水だってすごく贅沢な使い方をしているし…
まあそれはいいとして、気になるのは強度だ。服を入れるぐらいならそこそこの強度はあるのだろう。
我は袋の中に入ってみた。
結視点
「どう?結に似合いそうでしょ?」
ママが私に買ってきてくれたのはかわいい猫ちゃんがプリントされてるTシャツだ。
「かわいい~、ママありがとう。」
猫ちゃんがすっごくいい!!それに何より黒猫だからケイちゃんとおそろいだっ!!
「ケイちゃんがプリントされてるみたいっ!すっごい嬉しいっ!」
「ねぇ、ケイちゃんも見てみて~」
私は嬉しくなってケイちゃんに見せようとする。
「あれ?ケイちゃんいない?」
「さっきまでそこにいたと思ったけど。」
お姉ちゃんも不思議がってる。
ケイちゃんどこいったんだろ?そう思ってたら、
『ガサガサッ』
なんか紙袋から音が聞こえる。もしかして…
「ケイちゃん?」
私は紙袋に向かって呼んでみた。
「にゃ~?」
ケイちゃんが紙袋から顔を出したっ!!
「きゃ~!ケイちゃんかわいいっ!!」
「さすがケイ、紙袋なんてわかってる!!」
「あざといわ~、あざとかわいすぎるわ~」
私たちはケイちゃんを見て大喜びした。