5.病院へ急げ
加筆修正しました(2022/05/04)
川から上がった私は助けた猫ちゃんを見てどうしようか考えた。
猫ちゃんの身体はすっかり濡れてしまいフカフカだったはずの毛も皮膚に張り付いてしまい、元々小さい身体をよりいっそう小さく見せていた。そしてその小ささが私をより心配にさせる。
(どうしよう?とにかく身体をふいて温めてあげないと。たしかバッグにタオルが入ってるはず。)
ママが汗ふき用に渡してくれたタオルがあることを思い出した私はバッグから取り出して猫ちゃんをふいてあげることにした。
小さな体をふいていると、やっぱりお腹が動いてて息はちゃんとしてることがわかってちょっとだけ安心する。
(でも息してるけど全然起きてくれない。どうしたらいいんだろう?)
猫ちゃんの身体を優しく拭いてあげながらどうするか考える。こんなこと初めてで何をしてあげればいいかなんて全然わかんない…
(そういえばゆっこちゃんのお家って動物のお医者さんじゃなかったっけ?)
クラスの友達のゆっこちゃん。いつも一緒に遊んでてとても仲良しだからお家にも行ったことがある。そういえばお家の横に病院があることを思い出した。
動物のお医者さんだったら猫ちゃんを助けてくれるはず。私はゆっこちゃんに助けてもらおうと思ってスマホを取り出した。
『もしもし、結ちゃんどうしたの?』
よかった、すぐ出てくれた。
「あ、ゆっこちゃん。ゆっこちゃんのお家って動物のお医者さんだったよね?」
『そうだけど、なんかあったの?』
「今ね、川で溺れてた猫ちゃん助けたんだけど起きてくれないの。だからゆっこちゃんのパパさんに診てもらいたいの。」
『え、猫ちゃん?わかった、ちょっと待ってて。パパー、結ちゃんが…』
私は猫ちゃんをタオルで包んで身体が冷えないようにしながら、ゆっこちゃんを待った。
『大丈夫だって、すぐに連れてきてって言ってる。結ちゃん遠くにいるなら車出そうか?だって。』
「大丈夫、いつも遊んでる川辺からちょっとのところだからすぐ行けるよ。」
(ゆっこちゃん家なら急げば5分で行ける。あ、でも走ると猫ちゃんによくないかな?)
さっきまで溺れてた猫ちゃんにこれ以上負担になったら大変だ。でも早く連れてってあげたいし、早足くらいなら大丈夫だよね。
「10分ぐらいで行けると思うから。」
『わかった、パパが病院の方に直接入ってきてほしいって言ってる。』
「うん、わかった。それじゃあとでね。」
『うん、待ってるね。』
私は通話を切ると、タオルで包んだ猫ちゃんを丁寧に抱え上げた。
「猫ちゃん、大丈夫だからね。すぐに病院に連れてってあげるからね。」
私はなるべく揺れないように気をつけながらゆっこちゃんの家に急いだ。
ゆっこちゃんの家の前まで来ると、病院の前でゆっこちゃんが待っていてくれてた。
「結ちゃん、こっちこっち~。」
ゆっこちゃんが手を振りながら私を呼んでくれる。
「ゆっこちゃん、ありがと~。」
「その子が溺れてたの?まだちっちゃいね。」
ゆっこちゃんが猫ちゃんを見て心配そうな顔をした。
「うん、呼吸はしてるんだけど目を覚ましてくれないの。早く助けてあげたい…」
ここに連れてくるときも呼吸以外の動きが全然なかったからすごく心配。
「そうだね、早くパパに診てもらおう。こっちだよ。」
ゆっこちゃんに案内してもらって私は病院に入っていった。