47.子供たちと一緒
加筆修正しました(2022/06/11)
誰視点かを追記しました(2022/11/23)
我がこの家に来てから数日が経った。
ここ数日家の中を動き回ってわかったことがある。
それはこの家には大量の生活のための道具があるということだ。
例えば洗濯。衣服を洗濯するのも全て道具が勝手に動いていた。
母親は道具が止まってから洗濯物を取り出して干すだけの作業をやっていたのだ。
考えられるか?洗濯といったら普通は水場に持っていって手で洗う結構な重労働だ。
それを勝手にやってくれる道具があるのだぞ。
(この世界はどれだけ便利な道具があるというのだ…)
喉から手が出るほど欲しい技術ではあるが、こんなに大量にあると調査しきれるか全くわからん。それに動力源がわかってもそれをどのように使用しているかも想像できない…
(少し絞って調査せねばなるまいか…)
我は今後の調査方法をどうするか思案するのだった。
今朝はなんだか普段と違う。
普段ならそろそろ父親が起きてきてテレビをつける時間なのに部屋に来ない。
子供達も普段なら学校へ行く準備をしているはずなのにそれもない。
いつものちょっとバタバタした朝の雰囲気がなく、ゆったりとした空気が流れているように感じる。
(そう、何か落ち着いているのだ…我以外は。)
どうやら今日は学校へ行かないのだろう。いつもバタバタ準備している舞衣が部屋に入ってきて早々我を捕まえると、ずっと膝の上に乗せられているのだ。
「ケイ~、今日もモフモフだね~♪よしよ~し♪」
そんなことを言って我の身体を撫で回す。ちょっと気持ちい…大変鬱陶しくて迷惑である。
結が部屋に来たときも、
「あっ、お姉ちゃん朝からケイちゃんひとりじめしてズルいっ!!」
私も、という感じで寄ってくる結に、
「結はあとで友達と一緒にケイと遊ぶんでしょ?だったら朝は私が独占したっていいじゃない。」
と言って軽くあしらっていた。それからずっとこの状態である。
(今日はいつもと生活行動が違う。もしかしたら休みなのだろうか?)
この世界がどのような生活スタイルなのかまだよくわかっていないが、我の世界では休みというものは滅多にあるものではない。生きるために働くのは当然だからな。
しかしこの家だけでも便利な道具がいくらでもある。これらを活用すれば我の世界で10日はかかる仕事を数日で行うことも十分可能だろう。もしかしたら1日で終わってしまうかもしれない。
そうなると数日に1日ぐらい休みがあってもいいのかもしれない。
仕事が続くと疲弊する。疲弊した状態で仕事を続けると効率が落ちる。効率が落ちると仕事が滞る。
もしかしたらこのように数日おきに休みを作ってリセットしたほうが効率的なのかもしれない。
(しかし小娘達が家にいるとなると調査ができんな…)
この様子だと今日は一日相手をさせられるかもしれん…
我は舞衣に撫で回されながらそんなことを考えていた。
『ピンポーン』
舞衣から開放された我がソファでゆったりしていると何かけたたましい音が聞こえた。
「あ、ゆっこちゃんたち来たっ!」
結が壁に付いている道具に触ると、
『こんにちは~、結ちゃんいますか?』
という声が聞こえてきた。
「いらっしゃ~い、今開けるね。」
結は道具に向かってそう言うと、部屋を出ていった。
(なんだ!?今何をした?道具に触れただけで遠距離の人間と話をしたのか!?)
テレビという映像伝達技術はどうやら一方通行でこちらに映像を流しているということが数日見てきてわかっている。
しかし、今のやり取りはなんだ?普通に会話しているとしか思えなかった。つまり少なくとも音声の相互伝達が行われていたということになる。
(そんなことよほど魔法に精通している者しかできないことだというのに…この技術は絶対に手に入れなければならんな!!)
我は新たな調査項目を追加するのであった。
結視点
『ガチャッ』
「いらっしゃ~い。」
「「「おじゃましま~す。」」」
私がドアを開けるとゆっこちゃんたちが待ってた。
「結ちゃん、これお母さんがみんなで食べてって渡してくれたの。」
陽菜ちゃんが白い箱を渡してくれる。
「ありがとう〜。これ何?」
「駅前のケーキ。最近できたお店ですごく美味しいの。」
「ほんとっ!うわ~、楽しみ!!」
あそこのケーキ屋さん美味しいって聞いてるけど、まだ食べたことなかったからすっごく楽しみ!!
「ねぇ、早くケイちゃんに会いたい!早く行こ!!」
杏ちゃんがワクワクした感じで私たちに言った。
「うん、それじゃ上がって。」
「うんっ!」
杏ちゃんは急いで靴を脱ぐと、リビングに駆け込んで行った。
「いらっしゃい。」
リビングに戻るとママが迎えてくれた。
「「「おじゃましま~す。」」」
「ママ、陽菜ちゃんがケーキ持ってきてくれたの。」
「あら、陽菜ちゃんありがとうね。あとでおやつに食べましょう。」
「「「「わ~い」」」」
私がママにケーキを渡していると、みんなはもうケイちゃんがいるソファに集まっていた。
「ふわ~、かわいいっ!!」
杏ちゃんはケイちゃんを見て大喜びしてる。
「かわいいです。生後3ヶ月って言ってたから、もっとちっちゃいと思っていました。」
陽菜ちゃんも目をキラキラさせて見てる。
「首輪つけてあげたんだね、似合ってる。それにネームプレートかわいいね。」
ゆっこちゃんは1回会ってるからなのか落ち着いてる。
「うん。ちゃんとウチの子ってしてあげたんだよ。」
みんなでケイちゃんを囲んでワイワイしたからかな?ケイちゃんちょっとびっくりしてるかも?
私たちはケイちゃんを見て大喜びしていた。
ケイ視点
(なんだっ!!この幼女達はっ!?)
我は結に連れられて来た幼女に囲まれてしまった。
一人は見覚えがある、あの医者の娘ゆう子だったか?あの美味いスープをくれた子供だ。
ゆう子ともう一人は我を見て嬉しそうにはしゃいでいる。
そしてもう一人、初めて見る顔だが我を見てびっくりしているように見えた。一瞬だったので見間違えだったかもしれんが。
(そういえば、舞衣がさっき結が友達連れてくるみたいなことを言ってたか?)
つまり結の友達が我を構いに来たということか?
(…勘弁してくれ。)
我は大変憂鬱になるのであった…
夕方になり幼女達が帰ったあと、我はぐったりしていた…
昼間のことは正直思い出したくもない…
幼女に抱きかかえられモフモフされ、おもちゃで散々弄ばれ…
(何故我がこんな辱めを受けることになるのだ…)
人間にとっての休日とは我にとって全く休むことのできない恐怖の日だということだけが我の心に残ったのであった。
「舞衣」の名前が「舞依」になっていたため修正しました。