43.飼猫証明証
誰視点かを追記しました(2022/11/23)
ケイ視点
(今日の飯も美味かった…)
結が持ってきた飯は今までのものとは少し違っていた。きっとドライフードというものが入っていたのだろう。
まあ子猫用にドライフードをふやかしてあったようで、あまり歯ごたえがないのが不満といえば不満だったのだが…
(ちょっと水分多くてベチャッとしていたが味は美味いんだよなぁ。)
まあそのうち歯ごたえがあるものも食べられるだろう、今は我慢だ。
「にゃ~(そろそろ歯ごたえがあるものも食いたいぞ。)」
「よかった~。ケイちゃん今日も残さず食べたね。えらいえらい。」
言葉の通じぬ結はそう言ってニコニコしながら我を撫でた。
我は満腹になりソファでゴロゴロしていた。
結たちは父親が帰ってきて夕食を食べているので邪魔が入らずゆっくりできる。
「それでね、ケイちゃん危ないからって…」
結は今日のことを報告しているのだろう、父親にコンセントの話をしている。
(あまり目立つことをすると調査に支障をきたすかもしれんな…)
今回の調査では危険度が全くわかっていなかった。まあ初めての調査なのだからしょうがないことなのだが…
運良く1度の調査で動力源がわかったからいいものの、今後は何かやる度に対策されては何もわからずに終わってしまうことも考えられる。
(調査する場合はなるべく目立たずこっそりやることも考える必要があるな。)
我はゴロゴロしながら今後の計画を考えていた。
「それじゃ、買ってきた首輪をケイにつけてあげましょ。」
食事を終えた舞衣がそう言って、結と共に我に近づいてきた。
(首輪っ!首輪だとっ!!)
首輪と言えば隷属の証。我の世界では人間どもが奴隷と称して同じ人間や捕らえられた魔族に首輪をつけて管理していたのを思い出す。
人間が自分たちと違うものと区別するために用いるのを、しかも同族までもそのような目で見ていることを、なんて愚かなことかと考えていたものだ。
(それをこれから我に付けるというのかっ!!)
確か医者がペットの管理に首輪を使うと言っていた。
この世界に奴隷の概念があるかはわからんし、今までの扱いからするとペットではあるが奴隷として扱われることはないとは思う。
しかし良いイメージなど当然ないので、付けられることに嫌悪感を抱く。
我はこの場を逃げ出そうとした…が、そう思ったときには既に舞衣に捕らえられていた。
「にゃー!!(ふざけるな!隷属の証などまっぴらごめんだっ!!)」
「はいはい、大人しくしてね。ちゃんと飼い猫ってわかるようにしとかないと保健所に連れてからちゃうんだから。」
「にゃにゃー!!(保健所?保健所ってなんだっ!!いいから離せっ!!)」
「ケイちゃん、首輪ちゃんとつけてウチの子ってわかるようにしよう?そうしないとお外出て迷子になっちゃったらお家帰れなくなっちゃうよ。」
暴れる我に結がそう話しかけた。
「にゃー!にゃー!!(確かにここでは悪くない待遇を受けてはいる。だからといって隷属の証など付けられてたまるか!!)」
「大丈夫、怖くないよ。ケイちゃんとこれからもずっと一緒にいるためだからね。」
結は我に向かって一生懸命話しかけてくる。
(転生して助けてもらった恩はある。しかし、しかし隷属の証など…)
この世界では違う意味だとしても納得ができん!!だがこの世界を調査していくにはこの家にいることは非常に都合がいいのも事実。感情論を抜きにすればどうすればいいかなどわかりきってることなのだが…
(我は…我はこの世界に来てどれだけプライドを捨てればいいのだろうか…)
観念するしかないことを悟った我は非常に不本意ではあるが大人しくするのだった。
結視点
首輪をつけようとしたらケイちゃんすっごい嫌がってる。
お姉ちゃんが捕まえて私がお話してやっと大人しくなってくれた。
「やっと大人しくなったね。それじゃ、首輪つけてあげましょ。」
「うん、でもやっぱり首輪つけられるのイヤなのかな?」
これから何するのかわかってたのかな?ケイちゃん珍しく暴れてた。
「そうかもしれないけどこればっかりはしょうがないよね、ケイのためだもん。でもホント頭のいい子ね。これからされることわかってて暴れてたって感じ。」
「お姉ちゃんもそう思った?」
「うん、本当に言葉わかってる感じがしてびっくりだよ。」
やっぱりケイちゃん頭いいんだ、すごいなぁ。
「じゃあ首輪は私がつけるね。」
そう言ってお姉ちゃんが首輪をケイちゃんにかける。
「え~、私つけたい!!」
ケイちゃんのママとしてちゃんとやりたい!!
「ちゃんと成長分の遊びを考えて緩めにつけなきゃ、とかできるの?」
「遊び?遊びって…」
またお姉ちゃんがちょっと難しいこと言う!!
「遊びって言うのは成長して首が太くなってもすぐに苦しくならないように、ちょっと余裕を持たせて緩めにつけることだよ。子猫は成長が早いからぴったりにすると良くないんだよ。」
「そうなんだ。」
お姉ちゃんは私に説明しながらケイちゃんに首輪をつける。
「こんな感じね。それでここにネームプレートつければ終わり。」
「わ~、ケイちゃん似合ってる~。かわいい!!」
布製の首輪に鈴とネームプレートがついててすっごくかわいい!!
「ねえお姉ちゃん、なんで猫ちゃんの首輪には鈴ついてるの?」
「それはね、猫は家で飼うのが普通でしょ?だからどこにいるか音でわかるようにするためだよ。例えば料理とかしてるときに足元にいるの気づかないで動いたら危ないでしょ?」
「そっか、気づかずに足元にいたら蹴っちゃうかもしれないんだね。」
「そうそう。それに猫って狭くて暗いとこが好きな子もいるから、どこにいるかわからなくなっちゃうこともあるの。」
「ちゃんと意味があるんだね。」
「そうなんだよ。でも猫によっては鈴の音が嫌いな子もいるから、嫌がるようなら少しずつ音に慣れさせるとかしなきゃなんないの。」
「ケイちゃん嫌がらなければいいね。」
「うん、嫌がったら私達がちゃんと慣れさせてあげようね。」
「うん!」
かわいい首輪だからケイちゃん慣れてくれるといいな。でも嫌がったら私がちゃんと慣れさせてあげるんだ。
ケイちゃんのことお世話するの楽しいな。私はもっと猫ちゃんのことを勉強しなきゃって思いながらケイちゃんの頭を撫でてた。
大魔王→野良猫→飼い猫
の誕生となりました!!
なお野良犬とは違い、ある程度成長した野良猫が保健所に連れて行かれることは滅多にありません。
そこは子供の発言なので大げさにしてあります。
動物愛護団体に捕まえられて避妊手術を受けることはあるようです。
その場合、手術を受けたことがわかるように耳に切り込みを入れるそうですね。