32.大魔王様のお食事事情(その2)
加筆修正しました(2022/06/11)
誰視点かを追記しました(2022/11/22)
ケイ視点
「ケイちゃん、ご飯だよ~」
結が皿を手に我に呼びかける。確か医者がウェットフードとか言っていたか?を持ってきてくれたようだ。
(話からすると離乳食のようなものか?スープだけよりマシだが…)
美味かったとはいえ、昨日も今朝もスープのようなものしかもらえていなかったからそれよりは改善されたとも言えなくはない。
まあ実際身体は子猫なのだから離乳食でもしょうがないのだろうか…しばらくすればちゃんとした食事になるだろうから今は我慢するしかないだろうが。
「にゃ~(早くよこせ)」
食えないよりはマシだ。それにスープも『味は』良かったのだ。
「はい、どうぞ。」
結が我の前に皿を置いてくれる。そこには見た目あまり美味しそうに見えない食事が盛られていた。
(スープのときといい、今回も全然美味そうじゃない。猫の餌としては妥当なのかもしれんが…)
ペットの食事に見た目を求めないのはどこでも一緒ということか。まあ残飯とかにされないだけマシという考えもできるが…
「にゃ〜(これでも魔王なのだぞ!もっと食事も豪華に見た目も鮮やかにしてほしいものだ。)」
理解されないのはわかりつつも我はせめてもの抗議の声を上げた。
(それにしても今回の飯も美味そうな匂いだ。これは期待できるかもしれん。)
我は匂いを嗅ぐと、軽く一口入れた。
「にゃ~♪(うま~♪)」
(これは!魚がメインのパテのようなものか?それに魚だけの旨味ではない!鶏か?鶏肉が入ってるのか?こないだのスープは完全に魚だったが、肉が入るだけでこんなにも違うのか!単純な旨味ならスープの方が強かったが、食感も含めるとこれはこれで十分ではないか!)
我は夢中になって飯にがっついた。
「ケイちゃん、美味しい?」
「にゃ~(うむ、素晴らしい。)」
離乳食だと思っていたから正直ここまでのものを期待していなかった。なんだ、これならば十分ではないか。
「よかった〜。ケイちゃん喜んで食べてくれてる。」
結は我が食べているのをニコニコしながら見ている。正直食べるのを見られるのは居心地が悪いが空腹には勝てん。我は結に見守られながら食事をしたのだった。
「にゃ~(余は満足じゃ。)」
久々の食事(スープのみを食事と捉えたくない)を終えて、我の心は満たされていた。
(固形物を食したのはもしかしたら勇者との決戦前夜以来ではないか?そう考えると随分と食べていなかったのだな…)
それは心も満たされるというものであろう。
「ケイちゃん、残さずに食べたね。偉い偉い。」
結はニコニコしながら我の頭を撫でる。子供(?)扱いされてることには大変不満であるが、今の我は非常に機嫌がいいので許そう。
「ちゃんと全部食べたのね。それに食欲もあって体調の問題もなさそうね。」
「あっ、お姉ちゃん。そうなの、ケイちゃん喜んで食べてくれたよ。」
「これならちょっと早めにドライフードに慣れさせてもいいかもね。明日のご飯からちょっとずつ混ぜてみよっか。」
「うん。ちゃんと覚えるから教えてね、お姉ちゃん。」
「わかったよ。」
舞衣が結の頭を優しく撫でている。結もそれを嬉しそうに受け入れているところを見ると、先程怒られたことは影響がないようだ。
(いつまでも落ち込まれていても面倒だから助かる。)
我の前で姉妹は仲良く笑っていたのだった。