3.命の危機
加筆修正しました(2022/05/04)
(な、川に落ちただとっ!!)
どうやらまだこの身体に慣れてないために目測を誤ったようだ。
まあこの程度の流れなら我にとってはどうということもあるまい。我は手足を使って岸まで泳ぐことにした。
『バタバタ、バシャバシャ』
まだ慣れぬ身体を使って泳ぐ我。
(…全然岸に近づかない、だとっ!)
いくら泳いでも岸に近づく気配がない、というかまともに泳いでいる感覚もない。
(どうやらこの身体は泳ぐのには向いていないのか、ならば魔法で流れを制御するか。)
まあこんなこともあるだろう。しょうがない、我は体内の魔力に集中し、水の流れを制御することにした。
………しかし何も起こらなかった。
(どういうことだっ!水の魔法が使えないのか!ならば重力制御で川から脱出だっ!!)
この身体は水の魔法と相性が悪いとでも言うのか?我は再び魔力に集中し、重力制御で身体を浮かせようとした。
………しかし何も起こらなかった。
(な、なんだとっ!!魔法が全然発動しないではないか!!)
我はかなり動揺した。それもそうだろう、今まで大魔王として膨大な魔力を振るって世界を震撼させてきたこの我が魔法を使えないなどと考えもしなかったのだから。
(泳いで岸に向かえない、魔法も発動しない…これってかなりピンチなのでは?)
我は動揺し、無我夢中で体を動かした。しかしこんな緩やかな流れにすら抵抗できずに流されていった。
「ゴボッ、ゴボボッ!!」
混乱して体を動かしていたため、大量の水を飲んでしまった。
(大魔王である我がこんなところで死ぬのか、しかも転生したばかりでこんな情けないことで…)
だんだん意識が遠くなりながらそんなことを考えが頭をよぎった。
(いや、そんなわけがない!!我は大魔王だぞっ!!こんな川に落ちて溺れ死ぬなんて誰がなんと言おうと認められん!!)
手放しそうになる意識を無理矢理繋ぎ止め、我は必死に泳いだ。身体の魔力を呼び起こそうと必死に練り上げた。
(ダメだ、どんなに泳ごうと岸との距離が全く縮まらん。それにどんなに魔法を使おうとしても全く反応しない…)
水も大量に飲んでしまい、いよいよ意識も朦朧となり身体もいうことを効かなくなってきた。
そのとき急に身体が川から浮き上がった。浮き上がったというか何者かが我の身体を抱え上げた。
「猫ちゃん、大丈夫っ!!」
またも投げかけられる理解できぬ言葉。もしかしたら先程聞こえてきたのも我に話しかけていたのであろうか?
薄れゆく意識の中で見たのは我を抱えあげる女だった。女は我を抱えながら必死に何かを言っているようだ。
それをうっすら認識して我の頭の中に浮かんだのは…
(我を助けてくれたのか…えっと…巨人族の子供?)
我を抱え上げるほどに大きな身体、それなのに我の顔を覗き込むのは幼い顔立ち、女ではなく少女だとわかった。
このような大きな少女は巨人族以外には考えられない。
そこまで考えていると、我の身体に限界がきたのだろうか。我が覚えているのは視界が急に真っ黒になったところまでだった。