29.大魔王の飲み物事情
加筆修正しました(2022/05/04)
(素晴らしい入浴だった…)
綺麗サッパリしてとても気持ちがいい。毛並みもフカフカになって大満足だ。
「ケイちゃんフカフカ〜。それにとってもいい匂い♪」
結は我を抱きしめて大喜びしている。ちょっと鬱陶しい…
(助けてもらった恩もあるし、綺麗にしてもらったからな。ちょっとは我慢してやろう。)
新しい玩具を手に入れた子供のようなものだ、すぐに飽きるだろう。
「ちょっと結、私にもモフモフさせてよ。」
舞衣がちょっとむくれた感じで結に言った。
「え~、もうちょっと~」
「ドライヤーかけてからずっとでしょ。ズルい、交代よ。」
「は~い…」
結が我を差し出す。
(勘弁してくれ、我はペットじゃ…ペットだった…)
大魔王である我がペット扱いとは…この姿では仕方ないのかもしれんが納得できん!!
「ふわ~、モフモフ~♪」
舞衣は我を抱きかかえると頬を擦り寄せてきた。
(小娘に擦り寄られてもなぁ…)
最初はチヤホヤされるのも悪くないと思っていたが、ずっとだと鬱陶しいことこの上ない。
しかし初日から問題を起こすわけにもいかない。
(元の力が戻るまで我慢、元の力が戻るまで我慢…)
これは忍耐力が必要かもしれん…
「あなたたち、可愛いのはわかるけどほどほどにしなさい。それにお風呂に入れたんだからちゃんと水分補給させてあげないとダメよ。」
母親が小娘たちに注意した。いい加減開放されたい我にとってはナイスタイミングだ。
「ケイちゃんの飲み物用持ってくる。子猫だから牛乳?」
(風呂上がりの牛乳か、悪くない。どうせなら酒でも飲みたいとこだが…)
転生前はよく果実酒を飲んでたものだ。この身体では無理だろうというのはわかっている。
「あ、牛乳はダメよ。合わない子は吐いたりお腹壊しちゃうこともあるから。」
舞衣が結を止める。
(なっ、牛乳すらダメなのか!)
酒はともかく牛乳すら飲めんとは、猫とはなんて不便な生き物なのだろうか…
「そうなの?」
「絶対ダメってわけではないけど、なるべくなら猫用ミルクあげた方がいいかな。なんか、乳脂肪分と乳糖だったかな?が猫には多すぎるんだって。だからどうしても猫用ミルクがない場合は低脂肪牛乳と無糖の低脂肪ヨーグルトを混ぜてあげるといいんだって。」
舞衣が何を言っているのか全然わからん。乳脂肪分?乳糖?何だそれは?牛乳に入っているもののことか?
「ママ、ある?」
「低脂肪牛乳はあるけど、ヨーグルトはないわね。」
「なら今は水にしといたほうがいいね。水道水で大丈夫だから。」
「はーい。でも今度ケイちゃんの飲み物買ってあげようよ。お水だけじゃかわいそうだよ。」
「そうね、ケイが何飲めるか後で一緒に調べてみよっか。」
「うん!」
そうしてくれるとありがたい、我もいろんなものが飲みたい。
そう思いながら今は皿に入った水を飲むのだった。