27.お風呂に入ろう(その3)
加筆修正しました(2022/05/04)
(それにしてもこれは気持ちいい。)
少し温めの湯が我を濡らす。シャワーと言ったか?お湯がどんどん出てきて身体を温めてくれる。
(贅沢な湯の使い方だ。仕組みはわからんが湯を沸かすことも簡単なのだろうか?それとも近くに温泉でも湧き出てるのか…)
それにこの綺麗な浴室、本当にここは我が知ってる世界なのかと疑問になる。我の常識とかけ離れ過ぎている…
(いくらなんでも技術系統と文明に差がありすぎる。ここは我の常識は通用しないと考えるべきだろう。最悪の場合全く別の世界に転生した可能性もあるな…)
「ケイちゃん落ち着いたね。シャワー怖くないみたいでよかった。」
「そうね、これならシャワーだけで大丈夫。手がかからなくて助かる。」
「にゃ~(うむ、良きに計らえ。)」
「まずは全身をしっかり濡らしてあげるの、優しくね。結は風呂桶にシャンプー入れて。お湯で薄めて使うから。」
「そのまま使わないの?」
「そのまま使うと肌が弱い子だと肌荒れの原因になっちゃうからね。お湯で薄めてちゃんと泡立てて使ってあげれば肌にも優しいし、ちゃんと綺麗にしてあげられるんだよ。」
「そうなんだ。」
「そしたら薄めたシャンプーで下から優しく洗っていくよ。毛並みとは逆に指で丁寧に撫でるようにね。」
「毛並みとは逆に?」
「うん。毛並みに沿って洗っても中まで綺麗にしてあげられないからね。こうやって毛並みとは逆に洗うと…結見て?」
「あ、ホントだ。ケイちゃんの肌見える。」
「こうやって皮膚も綺麗にしてあげるんだよ。だから絶対爪を立てちゃダメ、皮膚を傷つけちゃうからね。結もやってみて?」
「うん、優しくだね。」
(これはなんともこそばゆいが他人に洗ってもらうというのはなかなかいいものだな。)
「それで身体を洗ったら今度は頭と顔ね。顔を洗うときに気をつけなきゃならないのは目と耳ね。絶対にシャンプーが入らないようにしないとね。だからシャンプーで洗うのはおでこぐらいまでにして目の周りとかは後で濡れタオルで拭いてあげるようにしてあげよう。」
「こんな感じ?」
「そうそう、上手だよ。ケイは状況見て大丈夫だとは思ってたけど、猫は顔が濡れることを嫌がる子も多いんだって。だからケイが顔洗うの嫌がったら無理に洗っちゃダメだよ。濡れタオルで拭くぐらいにしてあげてね。」
「ケイちゃん全然イヤがってないよ?」
「今回はね。次もそうとは限らないから覚えておいてね。そしたらシャンプーを綺麗に流していきましょう。今度は上から下に流すよ。」
「濡らすときとは逆なの?」
「下から流すと上を流したときにシャンプーが下にまたついちゃうでしょ?だから流すときは上からなんだよ。まずは風呂桶にお湯をためてケイに入ってもらいます。」
舞衣は我の身体を持ち上げて桶に入れた。
(ぬ、入浴にしてはお湯の量が少ない。)
我は文句を言いたくなったが猫の入浴方法は違うのだろうと思いとどまった。先程からの話を聞いていると、よくそこまで猫のために気を使って身体を洗っているものだ、と感心していたからだ。
「そしたらお湯を掬って身体のシャンプーを流していきます。大まかに流したら今度は濡らすときと同じようにシャワーヘッドを押し付けるようにしてシャンプーが身体に残らないようにしっかり流すよ。猫は自分の身体を舐めて綺麗にするからシャンプーが残らないようにしないとダメなんだよ。」
「わかった。濡らすときもだけど、なんでシャワーヘッドを押し付けるの?」
「それはね、シャワーを離してかけると水しぶきがいっぱい出るでしょ?そしたらケイがびっくりしちゃうかもしれないじゃない?暴れたら危ないでしょ?」
「そっか、ケイちゃんをびっくりさせないためなんだ。」
「そうそう。私達も水のあるところで走ったりしたら滑って危ないでしょ?」
「うん、ケイちゃんを危ない目に合わせちゃダメだもんね。」
(我がその程度でびっくりするなど…あぁ、このシャワーというのは気持ちいい~)
「はい、これでシャンプー終わりね。そしたらケイの身体が冷えないようにちゃんと乾かしてあげないとね。」
「は~い。」
(むぅ、もう終わりか…)
この気持ちよさならもっと入っていたかったのだが仕方あるまい。結は我を抱えて浴室から出た。





