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加筆修正しました(2022/05/04)
「はい、ここが新しいお家だよ。」
結はそう言って我を袋から出してくれた。
我が置かれたのはテーブルのようだが…ガラス製?ガラスが家屋に使われることは当然知っているが大体は窓に利用したり食器にする程度だ。テーブルに使うとはやはり裕福な家庭のようだ。
それを支える脚は金属?また金属なのか、何故加工が難しい金属をこんなに贅沢に使えるというのか…
「それじゃ、まずは猫ちゃんに名前つけようよ。」
結は舞依と母親に言った。
(我には大魔王として呼ばれた…いや、言っても通じないだろう。やめておこう。)
先程の自動車での会話で言葉が通じないのは理解できた。いつまでも子猫やら猫ちゃんと呼ばれるよりはマシであろう。我は黙って成り行きを見守った。
「名前決めるなら性別確認しないとね。」
舞衣はそう言うなり我をヒョイっと持ち上げた。
腕のあたりを両手で持ち上げられると、我の身体がだらしなく伸びる。
「う~ん…かわいい男の子ね♪」
(か、かわいい男の子…)
貴様!!今どこを見てかわいい男の子などと言った!我は我は…
我のプライドはズタズタに引き裂かれた…
(こ、こんな!小娘ごときにこんな辱めを受けるとはっ!)
大魔王に対して無礼にも程がある!我の…我の…
「それじゃ、男の子らしい名前をつけないとね。」
我が落ち込んでいることなどお構いなしに話が始まった。
-------------- 以下、会話が続くため会話前に名前をつけてあります --------------
結「どんな名前がいいかな?」
舞衣「黒猫っていったらジ○でしょ。」
結「ジ○リの黒猫さんだ〜。しゃべれるようになるかな?」
母親「あなた達、やめなさい…」
結・舞衣「「え~」」
結「ならル○」
舞衣「月に代わって…」
母親「だからやめなさいって…」
結・舞衣「「え~」」
舞衣「ならやっぱりホーリー○イトね。」
結「ダメだよ!石投げられちゃう…」
母親「あんたたち、いい加減にしなさいよね…」
結・舞衣「「う~ん…」」
結「あ、ケイちゃんってどうかな?」
舞衣「女の子っぽくない?」
母親「あんた、全国の圭一くんにあやまんなさい。」
結「ケイちゃん、かわいいよケイちゃん。」
舞衣「そうね、いいんじゃない?」
母親「他の候補になるといろいろ大変だからいいと思うわ。」
「猫ちゃん、今日から猫ちゃんのお名前は『ケイ』ちゃんだよ。」
結が我を抱えてそう語りかけてくる。
(ケイか、まあ問題あるまい。どうせここにいる間だけの名だしな。)
「にゃ~(構わん)」
我は結に答えた。
「すごい、ケイちゃんわかってくれてるみたい!」
結はちょっと興奮気味に喜んでる。
「ホントね、なんか絶妙なタイミングで応えるわよね。もしかしてすごく賢いのかも。」
舞衣も驚いている。
(まあ当然なのだがな。我のように言葉がわかる猫はいないだろうからな。)
こうしてこの家での我の名は『ケイ』に決まったのだった。