19.新しい家族を迎える
加筆修正しました(2022/05/04)
誰視点かを追記しました(2022/11/22)
大魔王様視点
我は状況を理解していた。
(あれは我を助けたくれた娘だな、連れてきたのは家族だろう。)
昨晩のゆう子の話から考えるに我を引き取るために来たのであろう。
医者がなにやら猫の育成方法について説明しているようだが、理解できないことも結構あるな。
(それにしてもやたら猫に対する知識が豊富だな。医者だからだろうか?動物の育成方法が確立されているのかもしれない。やはり我の知っている文明とはちがう、技術レベルが雲泥の差だ。いろいろなものが解析されている可能性も高いな。)
これは迂闊に行動するのは危険かもしれない。やはり昨晩脱走などと考えずに正解だったかもしれない…決して出られなかったわけではないぞっ!
(ならば当初の予定通り、猫のフリをして調査をするまでよ。)
なんとか魔国に帰れるように現状の把握をせねばなるまい。今いる場所も全くわからん状況では何もできないからな。
それにこれだけ文明が発達しているのだ。もしこの技術を手に入れることができれば、魔王軍にとっても有益になる可能性は非常に高い。
(ふはは、そうなれば我が軍は最強!これはやりがいがあるわっ!)
これは思いも寄らない幸運かもしれん。我は一人(?)ほくそ笑んだのだった。
「それでは、猫をお渡ししますね。」
医者はそう言うとこちらへ来た。扉を開けて我を牢獄から抱えあげ、何やら台の上に乗せた。
(さて、せいぜいあざとかわいく見せて奴らに取り入るか。)
奴らは我を猫と思っているのだ。ならばそれを十分に活かしてやろうではないか。
我はゆっくりと一歩進むと、集まってきている人間を見上げて言った。
「にゃ~♪(我を愛でよ)」
結視点
「かわいい〜♪私達のことわかるのかな?挨拶してくれてるのかな?」
猫ちゃんは診察台に降ろされるなり私達を見て鳴いた。まるで挨拶してくれてるみたい。私は大興奮していた。
「ふふ、そうかもね。それにしても愛想のいい子猫ね。やっぱり捨て猫なのかしら?」
お姉ちゃんはニコニコしながらそう言った。
「大丈夫、私が今日からちゃんとお母さんになるからね。これからよろしくね、猫ちゃん。」
私は猫ちゃんの頭をそっと撫でながら言った。絶対猫ちゃんを幸せにするんだ、って思った。
「それじゃ、バッグに入ってもらいましょ。」
お姉ちゃんはそう言ってキャリーバッグ持ってきてくれた。本当は抱いて帰りたいけど、危ないからってキャリーバッグに入れて連れてってあげることになってる。
「うん。猫ちゃん、ちょっと狭いかもだけど我慢してね。」
私は猫ちゃんを優しく持ち上げてバッグに入れた。
大魔王様視点
どうやら我を運ぶための袋らしい。入れられてわかったのだが、正面が透明な膜のようなものになっていて光が入ってくる。
(この素材も知らないものが使われてる…)
こんなに透明で外側が見えるものなどガラス以外知らん。だが手触りといい、硬さといい、ガラスとは似ても似つかぬ素材である。
我が謎の膜に気を取られていると、結が入口を閉めようとしていた。
(ぐぁ、そこを閉めるといざというときに出れんではないかっ!)
何かの際に閉じ込められていては何もできん!まだ安全が確保されているかもわからん状況で閉じ込められてたまるか!
『ひょこっ!』
我は慌てて顔を出した。