18.子猫を飼うということ
加筆修正しました(2022/05/04)
「それでは、説明を始めますね。」
私たちが椅子に座ると、パパさんは穏やかに話し始めた。
「この子の身体の大きさや歯の生え方からしてだいたい生後3ヶ月ぐらいだと思います。人間で言うと5歳ぐらいですね。」
3ヶ月!ちっちゃいと思ってたけど、まだ生まれたばっかりなんだ。
(でも人間だと5歳ぐらいなんだ。)
猫ちゃんの成長って早いんだ。だから20年ぐらいしか生きられないのかな…
「そのぐらいになるとウェットフードからドライフードに食事を変えていく時期となります。ただ昨日保護されたばかりですから、しばらくはウェットフードを与えてあげるといいでしょう。だいたい1週間ぐらい様子を見て大丈夫なようでしたらドライフードも与えてみてください。食べてくれない場合はウェットフードをメインにしてドライフードにも慣れさせてあげてください。」
「ウェットフードだけでは駄目な理由があるのですか?」
ママがパパさんに聞いた。
「ウェットフードだと必要な栄養を与えるのに大量に食べさせなければならなくなります。費用もかかりますし、そもそも食べきれないかもしれません。食べ切れたとしてもそれが肥満の原因になるかもしれません。それにドライフードを食べることで顎の訓練にもなりますので、なるべくドライフードに慣れさせてあげてください。」
なんだか難しい…ママとお姉ちゃんはわかるのかな?
「なるほど。だから舞衣は両方買えって言ったのね。」
ママがお姉ちゃんを見ると、お姉ちゃんはちょっと照れたように笑ってた。
「それとトイレですが、早めに覚えさせるために昨日ウチで使ったトイレ砂を少し混ぜてあげてください。自分の臭いがすればそこがトイレだとわかりやすいですから。後ほどお渡ししますね。」
「ありがとうございます。」
「もし家に慣れないようでしたらしばらくはケージで飼ってあげるといいです。数日ケージで過ごせばここが自分の家だとわかってくれますから。」
ケージってさっき買った猫ちゃんのお部屋だよね?あんなところに何日も閉じ込められたらかわいそうだよ。
「狭いところだと猫ちゃんかわいそう…」
私が心配になって言うと、
「確かにかわいそうだと思うけど、お家から逃げ出して迷子になったらもっとかわいそうでしょ?だから慣れてくれるまでちゃんと保護してあげるのも大事なんだよ。」
パパさんが優しく言ってくれた。
(そっか、そうだよね、もう危ない目に合わないようにしてあげないとだよね。)
それもお世話するってことなんだ。
「また今まで野外にいたわけですから、お家に連れて行ったらお風呂に入れてあげてください。昨日確認した感じですとノミは付いていないようでしたが、念のためそちらの確認もしてあげてください。」
猫ちゃんも帰ったらお風呂なんだ。私たちと一緒だ。
「まだ子猫ですから最初の頃はいろいろなものに興味を持つかもしれません。それこそ私たちでは予想もできないような『いたずら』をしてしまうこともあるでしょう。躾のために怒ることはしょうがありませんが、決して怒鳴ったり大きな音を出さないであげてください。猫は大きな音が嫌いなので、ストレスを溜め込んでしまうかもしれませんので。」
怒るのはいいけど怒鳴っちゃダメ?なんだか難しそう…
「最後にですが、予防接種を受けさせてあげてください。普通は生後2ヶ月ぐらいに1回目、翌月に2回目を受けます。ですので体調が問題なさそうなら早めに1回目を受けに連れてきてくださいね。」
「予防接種?猫ちゃんもお注射するの?」
私たちも毎年学校で予防接種受けるけど、それと一緒ってこと?
「そうだよ。猫も予め病気にならないように予防接種することが大事なんだよ。大きな病気にかかって苦しんだらかわいそうでしょう?」
「うん、そんなの絶対ダメ。かわいそう。」
猫ちゃんが病気になるなんて絶対ダメだもん。ちゃんと受けに連れてこないとだ。
「わかりました、ありがとうございます。」
難しいお話もあったからママがちゃんと聞いててくれてよかった。私も猫ちゃんのためにちゃんと覚えないとね。
「それでは、猫をお渡ししますね。」
パパさんはそう言ってケージに向かった。