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大魔王→黒猫  作者: (著)まっつぅ♪ (イラスト)SpringFizz
106/106

101.初めての体験

??視点


(…)

目が覚めると、私は草むらの中にいた。大きな草に遮られていて、ここがどこかは全くわからない。

エルフの秘術を受けたところまでは覚えているけど、それからの記憶がここまで飛んでいる。

尽きかけていた体力も問題なさそうだし、怪我も癒えているのか身体は至って快調のようだ。

(これが転生するということなの?)

私はまず自分の状態を把握することにした。


そしてわかったこと。

私は何故か幼い白猫になっていた…

はっきり言って意味がわからないっ!!

(あのクソエルフがっ!これが大魔王を討伐した意趣返しだとでも言うの!?)

そういえば前にこの話を受けたときになんか言ってた気がする。

『転生したらちょっと驚くかもしれませんけど、問題ないですからがんばってくださいね。』

何が『ちょっと驚く』だっ!!猫に転生させてどうするつもりなの!?

ただでさえここは全く知らない世界のはずなのに、こんな不自由な姿にされて問題ないわけないでしょう!!

(…いや冷静になりましょう。もしかしたらここは人間がいない世界なのかもしれない。)

だから猫の姿が普通である可能性も…あるの?そんなわけなくない?

でもここでじっとしてても何も始まらない。それならまずはこの世界の把握をしないと。

私は意を決して草むらから出る。

「あっ、仔猫じゃん。」

「えっ、どこどこ?」

出たところには人間の子供がいた。

(いるじゃん、人間!!)

その男の子は無遠慮に私に向かって手を伸ばす。仔猫になってしまった私は、そのあまりの大きさに恐怖を覚える。

そして私は逃げ出した。


「そっちいったぞー」

子供達は草むらをかき分けて私を探している。

無邪気な子供、と言えば響きは良いかもしれない。

しかし自分の何十倍もの大きさの無邪気さが自分に向かってくると思うと恐怖しか感じない。

それこそ勇者であった頃ならなんとも思わなかっただろうが、今は何も出来ぬ仔猫なのだ。

『転生したら今の力はほぼ全て使えないと考えてくださいね。』

ソルミオにはそう言われている。

(最悪だっ!猫で力も使えないなんて…これでどう生きればいいわけ!?)

子供達から逃げることに神経をすり減らし、私の体力は限界を迎えつつある…

(だから人間は信用出来ないんだ!結局どの世界でも人間なんて最悪じゃないの!!)

私はソルミオに協力したことを早くも後悔していた。

「ちょっと!あんた達バカじゃないの!!仔猫がかわいそうでしょ!!」

私が草むらで身を小さくしていると、先程までの男の子とは違う声が聞こえてきた。

「なんだよ、お前誰だよ。ちょっと猫と遊んでるだけじゃん。」

「何が遊んでるよっ!!そんな乱暴に追い回したら怯えちゃうに決まってるでしょ!!」

「僕もかわいそうだと思うからやめようよ…」

「…わかったよ、うるせーな。」

草をかき分ける音が消えて、男の子達の気配が遠ざかっていく…どうやら誰かに助けられたようだ。

(初めて誰かに助けられた…)

今まで勇者の力で誰かを助けたことはあったけど、助けられるのは初めての体験だった。

助けたといっても、自分の仕事をしていたらたまたま助けたことになっていただけだったので、気にもとめていなかった。

草陰からこっそり覗いてみると、女の子が心配そうな顔でキョロキョロしていた。

(こんな小さな子供が私を助けてくれたの…)

おそらく私を探していた男の子達と同じぐらいの年齢だろう。

そのぐらいの女の子が自分より力の強い男の子に意見を言うのはとても勇気がいることだと思う。

(せめて礼は言わないと。)

助けた礼を言われることはよくあった。

しかし、私は興味もなかったので気にもとめていなかったが、いざ自分が助けられたとなると、礼を言ってきた人間達の気持ちがわかった気がする。

私は他に人間がいないことを確認して、草むらから出る。

「みゃぁ(すまない、助かった。)」

女の子は私を見つけると、安心したような顔をした。

そしてしゃがみ込んで、私に視線を合わせようとしてくれる。

「大丈夫?怖くないよ?」

女の子が何か言っている。どうやら言語が違うみたいで理解ができない。

それでも表情や仕草を見れば、私を安心させようとしていることがわかった。

(…これが同じ人間なのか?)

何故この女の子は初めて会った私にこんなに優しい顔を向けられるの?

何故この女の子は私の知ってる人間のように振る舞わないの?

人間なんて信じるに値しないのに何故?

私は初めての体験に混乱した。そして今までの疲労と混乱が相まって、気づいたときには倒れ込んでいた。

そして最後に覚えているのは、慌てて駆け寄る女の子の姿だった。

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