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大魔王→黒猫  作者: (著)まっつぅ♪ (イラスト)SpringFizz
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97.初めての保護施設

「大魔王→黒猫」

閑話等含めまして100話に到達しました。

読んでくださっている皆様にはとても感謝しております。

これからもよろしくお願いします。

結視点


今日はゆっこちゃん家にみんなで集まってる。正確には病院に併設されてる猫ちゃんの保護施設なんだけど。

この保護施設はゆっこちゃんのパパさんが中心になって猫ちゃんの一時的な保護と新しい飼い主への譲渡とかやってるんだって。

もし私がケイちゃんを引き取らなかったら、ここで保護されてたかもしれない。

今日ここに来た理由は、昨日杏ちゃんが助けた猫ちゃんにみんなで会いに来たんだ。

部屋に入ると数匹の猫ちゃんがパパさんとゆっこちゃんの足元に集まってくる。

やっぱりお世話してるから慣れてるのかな?かわいいなぁ。

「たくさんいますね。この子たちはみんな里親が決まっているのですか?」

陽菜ちゃんがキョロキョロしながら連れてきてくれたパパさんに聞く。

「いいえ、決まっていない子が多いですね。それにこの子たちはまだ保護猫としての訓練も受けていないので。」

「訓練ですか?」

「保護猫は人間に慣れていない子も多いのですよ。基本的に問題ない子はケージの扉開けて自由にしているのですが、あの子とか私たちが入ってきたらすぐにケージに逃げ込んでしまったでしょう?そういう子は里親が見つかりにくいので、ボランティアの人に訓練してもらっているんですよ。そうして人間に慣れてから譲渡会に出てもらうと貰い手が見つかりやすいからね。」

ホントだ、パパさんが指差すケージにいるハチワレ猫ちゃんはケージの中からじっとこちらを警戒するように見てる。

「本当ですね。それにしても、そのような素敵なボランティアがあるのですね。」

「ええ、ボランティアの人にはとても感謝しています。ウチでもたまにゆう子に手伝ってもらってますよ。」

そっか、前にゆっこちゃんが言ってた保護猫の手伝いってここのことだったんだ。

「おじさん、昨日の仔猫は?」

杏ちゃんは猫ちゃんのことが気になるみたいでそわそわしてる。

「こっちですよ。」

パパさんに連れられた先のケージにはまだ小さい真っ白な猫ちゃんが1匹丸くなっている。

「わぁ、身体キレイになってる。」

杏ちゃんがうれしそうに猫ちゃんを見る。保護したときの話だと、確か所々汚れてたって言ってたからきっとお風呂に入れてもらったんだね。

「ええ、今朝にはある程度体力も戻ったみたいでしたので身体を拭いておきました。」

そっか、弱ってたって言ってたもんね。まだお風呂には入れられないんだ。

杏ちゃんはかじりつくようにケージの前から離れない。いつもの杏ちゃんなら大騒ぎしそうだけど、ここに入る前にパパさんから『猫たちが驚いちゃうから静かにしようね』って言われてた。

でもなんか喜びたくてうずうずしてるっぽくてかわいい。

それにしても、猫ちゃんもちっちゃくてかわいい!!

…まあケイちゃんのかわいさには届かないけどね。

ケイちゃんを引き取ったときよりもっとちっちゃい仔猫って聞いてたけど、ホントにちっちゃい!!

まだ毛が完全に生えそろってないのがわかる。長い毛と短い毛があってすっごいふわふわしてそう。

(ケイちゃんもこんな時期があったんだよね。)

そう考えると、こんな時期からケイちゃんのお世話したかったな、って思っちゃう。

「パパさん、なんでこの子は1匹でいるんですか?」

私はちょっと不思議に思って聞いてみた。他のケージを見ると何匹かまとまって入ってる子たちも多い。

「まだ小さい猫だから、他の子と入れて何かあったら大変だからね。」

「でもそっちの仔猫は一緒に入ってるよ。」

隣のケージには仔猫が3匹一緒に固まってる。

「そっちの子たちは兄弟なんだよ。一緒に保護されてきたから大丈夫なんだ。」

そうなんだ。お昼寝中なのかみんなで固まってるのすっごいかわいいっ!やっぱりケイちゃんのかわいさには届かないけどね!!

「やっぱりかわいいなぁ。お昼寝中でちゅかぁ?」

杏ちゃんが白い仔猫に話しかけてる。そして赤ちゃん言葉になってる。

ペットに話しかけるときに赤ちゃん言葉になる人がいるってのは知ってるけど、杏ちゃんってそういうタイプだったんだ。

「杏奈、キモい…」

ゆっこちゃんが容赦ない…

「うるさいな。いいでしょ、仔猫に話しかけるときぐらい。」

そしていつもなら文句言ってジタバタしそうな杏ちゃんが開き直ってる…

「パパさん、なんでこの仔猫はこっちなんですか?ケイちゃんは病院でお世話してたのに。

「この子も今朝までは病院にいたんだよ。ケイくんの場合は結ちゃんが引き取ってくれることが決まったからそのままいてもらったんだ。もし結ちゃんのお家が駄目だったらこちらに移していたよ。」

「あれ?この子は杏ちゃんが引き取るんじゃないの?」

てっきりそうだと思ってたけど違うのかな?

「うん、杏奈はそうしたいんだけど…」

杏ちゃんはちょっと言いづらそうにしてる。

「ほら、杏奈って飽きっぽいとこあるでしょ?だからパパがね、昨日お話はしたんだけど許してくれなくて…」

なるほど、杏ちゃんが前に言ってた不安がそのまま現実になっちゃったんだね。

「じゃあこの子の里親探すの?」

「ううん、杏奈あきらめないもん。絶対パパを説得する!」

杏ちゃんがいつになく真剣になってる。

「そっか、杏ちゃんもやっと出会えたんだね。」

「うん!結ちゃんが言ってくれたことやっとわかったんだ。」

最初に杏ちゃんが猫ちゃん飼いたい、って言ったときは単に私がうらやましいとかそんな感じだったけど、今回は違うみたい。

「なら私も協力するね。」

だったら杏ちゃんがこの子と一緒になれるようにしてあげなくっちゃ。

「ホント?結ちゃん、ありがとう!」

杏ちゃんはうれしそうに言う。

それが聞こえたのかはわからないけど、ケージの猫ちゃんが目を開けてこっちを見る。

「あっ、猫ちゃん起きた。」

猫ちゃんは私たちを見ると、警戒するようにケージの奥へずるずる下がる。

「やっぱり警戒してるみたいだね。昨日から目を覚ますとずっとこんな感じなんですよ。」

パパさんがそう言って、ちょっと疲れた顔をしてる。

「まだ幼いし体力が戻ってないから、離乳食を直接口に入れてあげなくちゃならなくてね。でもなかなか食べてくれなくて大変だったんですよ。」

「やっぱり人間怖いんですか?」

「杏奈ちゃんから聞いた話だと、男の子に追いかけ回されてたらしいからね。それで人間が怖くなっちゃったのかもしれないですね。」

杏ちゃんもその話してくれたときはすっごい怒ってたっけ。私だってそんな場面にあったらすっごい怒ると思う。

「大丈夫、怖くないでちゅよ。」

杏ちゃんは猫ちゃんに優しく話しかけてる…赤ちゃん言葉で。

猫ちゃんは杏ちゃんのそんな優しさがわかるのか、少しずつ杏ちゃんに近よってくる。

「みゃぁ」

ケージの前に来た猫ちゃんに杏ちゃんがそっと指を近づけると、猫ちゃんが顔をすりよせてくる。

「うわぁ、かわいい…」

杏ちゃんは驚かせないように小声でつぶやいてる。

「これは驚きました。この子は杏奈ちゃんが助けてくれたことをわかっているのかもしれませんね。」

パパさんがびっくりして見てる。

「いい子でちゅねぇ、よちよち。」

杏ちゃんはケージに差し込んだ指で猫ちゃんを器用になでてる。

(なんかうらやましい…)

私もかわいい猫ちゃんなでたい!!

「杏ちゃん、私も触らせて。」

「えぇ、結ちゃんにはケイちゃんいるじゃない。」

「それとこれとは違うもん。」

「しょうがないなぁ。」

杏ちゃんがケージ前から移動してくれる。

私は猫ちゃんを驚かせないようにそっとケージに近づくけど、

「あっ!」

猫ちゃんはケージの奥へ後ずさって、私を警戒し始めちゃった…

「大丈夫だよ、怖くないよ。」

私は杏ちゃんみたいに優しく話しかけるけど、猫ちゃんは近づいてくれない…

「なんで?私怖くないよ?」

結局近づいてくれなくて私はあきらめた…なんかすごいショックなんだけど!!

その後、パパさんとゆっこちゃんも試したけど猫ちゃんは近づいてくれなかった。

「陽菜ちゃんは試さないの?」

ずっと大人しく猫ちゃんを見てた陽菜ちゃんに聞いてみた。なんかちょっと顔が険しいような?

「私は大丈夫です。」

「そうなの?陽菜ちゃんも猫ちゃん好きだから興味あるかと思った。」

ケイちゃんのこと大好きなんだから、この猫ちゃんのことも気になるんじゃないのかな?

「もちろん猫は好きですよ。」

「だよね?なら飼おうと思わないの?」

そうそう、これも陽菜ちゃんにずっと聞きたいと思ってたんだ。

「私は猫も好きですが、それよりケイちゃんが大好きなのです。だから他の猫に浮気なんかしません。」

「それって結ちゃんは浮気してるってこと?」

杏ちゃんがすかさず意地悪なことを言う。

「そんなことないもん!私だってケイちゃんが大好きだもん!!」

「ちょっと結ちゃん、猫がびっくりするから大きな声出しちゃダメだよ。」

私がムキになったらゆっこちゃんに怒られた…

「杏ちゃんが意地悪なこと言うから…」

私はむくれて杏ちゃんを見る。

「ごめんって。」

杏ちゃんはそう言って、またケージに近づく。

するとやっぱり猫ちゃんがケージの前に近づいてくる。

「うわっ、やっぱり杏奈だと近づいてくれるんだ。」

「ゆっこちゃん、『うわっ』ってひどくない?」

杏ちゃんがちょっとむくれる。

「それなら杏奈ちゃん、よかったらこの子のお世話を手伝ってくれますか?杏奈ちゃんからならちゃんとご飯も食べてくれるかもしれないですし。」

パパさんが杏ちゃんと猫ちゃんの様子を見てそう言った。

「いいんですか?」

「もちろんだよ。それにこの子を飼いたいのなら、手伝ってみてちゃんと自分でできるのか確認してみてもいいんじゃないかな?この子は引き渡すにはちょっと幼過ぎますから、もう少し成長してからと思っていましたし。もしちゃんとできるなら私もご家族への説得の手伝いをしてもいいですよ。」

「本当ですかっ!ありがとうございます!杏奈がんばってお手伝いします!!」

杏ちゃんは本当にうれしそうに返事する。

「うん、それじゃあよろしくね。まずはご飯食べさせてみようか。」

「はいっ!」

それから杏ちゃんは本当にうれしそうに猫ちゃんのお世話を手伝い始めた。

保護施設はいろいろなところがあると思います。

今回題材としたような猫専門の施設もあれば、動物全般を受け入れている施設もあります。

特別に「どこ」をモチーフにしたわけではありませんので、もし「自分の知ってる施設と違う」と思っても物語としてスルーしていただけますと幸いです。

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