世界を救うのも大切だけど自分の生活も充実させたい
まだ4時だというのにあたりが暗くなった12月、俺はいつものように学校を出て家に向かっていた。
商店街は開店中のお店は半分ぐらいであとはシャッターがいつも閉まっている。日本は好景気のようだが、この街にはその恩恵はないようだ。
ネット回線が遅いときに動画がブロックノイズになるときのように鈍色の四角で埋められた街を早足で歩いた。
茶色いレンガ壁と紺色の看板が目立つ雑貨屋を過ぎたあたりで俺は寒さに背中を押されて家への歩みを速めた。
高校は帰宅部で一緒に帰る仲のいい友達はいない。帰りはいつも20分掛けて一人で歩くのが日課となっていた。
あぶない!
雑貨屋から4歳ぐらいの女の子が走り出てそのまま横断歩道を渡ろうとしていた。親はまだ店内にいるようだ。
俺は声を掛けようとし、道路を振り返り、反射的に叫んだ。
後ろからトラックから猛スピードでやってくる。
俺は女の子に駆け寄り、とっさに腕に抱えた。そのとき、背中に痛みを感じた。
俺は死ぬのか、、、そのまま気を失った。
「ケン。わかりますか。ケン」
目を覚ますと女神が目の前にいた。いや、女神がどんな姿をしているかは知らないが、もしいたならこんな姿なんだと思った。柔らかそうで薄い乳白色のローブを羽織り、その中には染みひとつない白く輝くような服が見える。頭には宝石が飾られたティアラが輝いている。
女神は俺が目を開けたことを見るとやさしく微笑んだ。
「ケン。あなたは勇気ある行動をしました。新しい世界で生きていくにあたり、あなたの望むスキルをひとつ授けましょう。」
「なんでもいいのか?」俺は聞いた。
「はい。できるだけあなたの希望を叶えます。」と女神。
どんなスキルがいいのだろうか。どんな悪魔でも切れる剣技だろうか、それとも、古龍を焼き尽くせる究極魔法か。
俺はしばらく考えて言った。
「それじゃ、異世界でもネトゲをできるスキルをくれ。」