初めてのお仕事(後編)
「ええええ!?あんなの狩るんですかぁ!?」
目の前にいるのは一般的な一軒家の高さを遥かに上回っていそうなほど巨大な草食動物の群れ。全部で五匹ほどいる。俺は、背筋が凍りつくような、不思議な感覚におそわれた。たぶん、恐怖、いや、命の危機を体が訴えているんだ。俺は今からあんな巨大なモノに立ち向かうのか?いくら武装していて、屈強そうなガイスさんが近くにいても・・・そんな状態で、ガイスさんが背中に背負っているクロスボウにも似た銃器に矢のような物をセットし、アディトルマの首筋を狙う。
「いいか!俺がまずこのディルグで奴の首筋を撃つ!そしたら奴らは仲間を守ろうと俺のところにに向かってくる!そしたら坊主は奴らの足のスジを狙って切れ!奴らの動きが止まったところで俺が仕留める!」
足のスジ!?そんなピンポイントを狙うのか!?
「ガ、ガイスさん!俺、死にませんよねぇ!?」
「そんなもんわかるかぁっ!!!」
「ええええええ!?」
そういうとガイスさんはディルグ(と呼ばれる銃器)の引き金を引き、勢いよく弾を打ち出した!
ザクッ
*フグァオオオオオオオオ!!!*
見事、アディトルマの群れの中の一匹の首筋に命中!アディトルマの群れは、仲間を守ろうとこちらへ向かってくる。ガイスさんの言ったとおりだ!なら・・・俺も、ガイスさんの言ったとおりになるよう貢献しなくちゃな!
「えええい!!こうなったら最後までやってやる!!」
俺は突如、スイッチが入ったようにやる気になった!奴らの足元に潜り込み、奴らの後ろ足のスジを斬る!
ザシュッ!ガシュッ!
*グォオオオオオオ!!*
狙った通りに上手く斬れた!なんだか急に体が軽くなった気がする。さっきまでは重く感じた防具も、いまでは重さを感じない!よし、このまま・・・
「て、うわぁ!?」
油断した!残った一匹の足は俺を踏み潰そうと、勢い良く足を上げた・・・
「ひっ・・・」
「あぶねぇぞ!よそ見してんなよ小僧!伏せろ!」
ガイスさんの声が聞こえた。俺は言われたとおり、素早く伏せた。すると、目の前が突然赤くなった・・・
すると、俺を踏み潰そうとしていた足、いや、アディトルマの巨体は大きく傾き、俺の横に倒れ込んだ。後ろを見ると、他のアディトルマも倒れていた。俺は一瞬、何が起きたのかわからなかったが、目の前に立つガイスさんを見てすべて理解した。血の付いた大きな剣。
そう、この一瞬で、ガイスさんは全てのアディトルマを切り倒したのだ。
「あ、ありがとうございます・・・」
助けて貰ってしまった・・・
「礼などいらんよ!狩場では、いつ何時、なにが起こるかわからんでな!気を抜くなよ!カーッカッカ!」
ガイスさんはこんな俺を叱ることもなく、ただ注意だけしてアディトルマの運搬用の馬車を呼ぶ閃光弾を打ち上げた。。。