アルーシャさんの部屋と初めてのお仕事(前編)
「どうぞー」
「へぇ~、ここがアルーシャさんの部屋かぁ」
比較的シンプルな部屋だ。白を基調とした壁の中に黒を基調とした家具が並んでいる。ベッドはいたってシンプルな一人用だ。少し大きめ。
「あの、俺はどこで寝ればいいのかな?」
「どこって、ベッドだよ?」
ん?
「へ!?いやいや、新参者が人を床に眠らせてフカフカベッドで寝るなんてそんな・・・」
「床?なにいってるの?一緒に寝るんだよ!」
は?
「え?それはどういう・・・」
やばい、状況が把握できん・・・
「だーかーら、一緒に寝るの!そのベッドで!」
んぁ!?この世界の人間には性的概念がないのか!?アルーシャさんの年齢もさっきちゃんと聞いた!見た目と同じ、俺とも同じ16歳だ!それなのに!?あぁもう!最高かよっ!!!
「わかった・・・ごめんね?理解遅くて・・・」
とりあえず俺は平静を装った・・・
「おーい小僧!こっちだこっち!!」
ガイスさんが元気な声で俺を呼ぶ。俺はそこそこ重たいチェーンアーマーを着せられ、刃渡り24cm程度のハンティングナイフを持たされた状態で、だだっ広い草原を走らされていた・・・
「ま、待って下さいよガイスさん・・・この装備・・・運動不足の俺にはキツいっす・・・」
「カーッカッカ!この程度でヘタっていては今日の仕事はこなせんぞぉ?」
「こんな重たいもの持ってやる仕事ってなんすかぁ!?」
と、口では言っているが、大体の予想はついている。そう、こんな装備を着てやる仕事といえば・・・
「今日は“アディトルマ”を狩るんだからなぁ!草原探索なんて初歩の初歩だ!こんなんでヘバってちゃあ、仕事は成り立たんぞ!!」
アディトルマ?なにそれ・・・やっぱり文化だけでなく生態系や動物の種類も違ってくるのか・・・でもガイスさんがいきなり狩るのが難しい肉食動物を狩らせるとは思えない・・・練習させるための比較的簡単な中型草食動物だろう・・・今までいくつか異世界物語を見てきた・・・その通りなら、多分現世にいたのと外見は似てるはず・・・てか、ガイスさん俺より重装備なのになんであんなスピード出るんだよ・・・
「おい小僧!見えてきたぞ!あれがアディトルマだ!しかも珍しく群れてやがるぞ!よし、決定だ!あいつらぜーんぶ狩るぞ!!」
群れ!?難易度高くないか!?でも、群れ丸ごとを狩るって事はそれほど簡単・・・
て・・・
「えええええ!?あんなの狩るんですかぁ!?」
そこには、現世で言う古代生物のパラケラテリウムのような、とても巨大な獣が群れていた・・・