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越後の龍

~一言で分かる前回のあらすじ~


温泉が混浴だった。

「あぁ〜 いいお湯だったな〜!」


温泉に入ってお肌もツルツルピカピカ、この上なくリフレッシュ出来た。あとはお風呂上がりの一杯を飲むだけだな!


蓮は小銭を数枚取り出して自販機へと足を運ぶ。この世界の自販機は素晴らしい事に全部魔法で動いており、小銭入れにお金を投入して欲しい味の飲み物を思い浮かべるとそれが出てくるという仕組みである。


「オ金ヲ投入シテ下サイ」


蓮が自販機の前に立つと、自販機は無機質な音を発した。蓮は言われるままに小銭を投入して、コーヒー牛乳を想像する。


「……ンン? 多分コレカナ? ハイ、ドーゾ」


……多分ってなんだ多分って。ちゃんとコーヒー牛乳なんだよな?


心配する蓮をよそに、魔法の自販機は完成品を提出した———どす黒い液体を。


「……何コレ? コーヒー? 俺が頼んだのコーヒー牛乳なんだけど。牛乳要素はどこですか?」

「コーヒーッテ何? ボクガ出シタソレ(・・)ハ、魔物ノ糞ダケド?」

「てめっ、なんてもん飲ませようとしてんだ!? 」

「イヤダッテ、アナタガソレヲ望ンダカラ……」

「望んでねぇわ!……ったく、もっかい作り直してくれ!」


そう自販機に怒鳴りつけ、またコーヒー牛乳を頭に思い浮かべる。今度は前回のような失敗をしないように香りや味までしっかりと思い浮かべた。


「アァ~ハイハイ、ワカッタヨ! コレダネ、ハイ!」


自販機が自信満々で出して来たのは、ちゃーんとコーヒー牛乳の色をしていたものだった。


「おっ、そうそうこれだよ。なんだよちゃーんと出来るじゃな……」


褒め言葉を口にしながらソレを口に流し込んだ瞬間、コーヒー牛乳とはかけ離れたテイストが蓮の口いっぱいを駆け巡り、そして吐き出された。


「おえっ! な、何飲ませやがったてめぇ!」

「エッ…… 味噌スープデスケド?」

「なんで風呂上がりに味噌汁を飲もうと思うんだよ! アホかお前!」


蓮は怒り収まらないまま手に持ってた味噌汁を自販機にぶん投げた。



———とまぁ色々ハプニングがあったものの、その後なんとかコーヒー牛乳を手に入れた蓮は、温泉内にある食堂を目指した。

理由としては鳥軟骨を食べるためである。

蓮は温泉に入った後にコーヒー牛乳と鳥軟骨を食べるのがもはやルーティン化しており、鳥軟骨を食べながら皆とワイワイ騒ぐのが大好きなのだ。


「ねぇなんで~!? これあたしが頼んだのと違うよ~!! 」


蓮が食堂へと向かう最中、女性の抗議する声が聞こえた。何事かと思った蓮は、声のする方向へと急いだ。


「あたしが頼んだのは笹団子だよ~!? なのにどーして泥団子がででくるの~!?」


そこには食堂用自販機に泣きついてる着物姿の女性がいた。背丈はちょっと小柄な高校生くらいで、黒髪の長い髪を携えている。ちょっと……いやかなり凛———勇者の一人———に似てる。 ……というかこれ凛なんじゃね?


いやでも待て、凛は子供っぽい見た目とは裏腹にかなりしっかりとした子だった。そんな子が公の場でこんな醜態見せるだろうか?

間違いなくしないだろう、しいてする奴をあげるとしたらアリスかベガの2人だ。


「うぐっ、えぐっ…… 日本酒飲もうとしたらお冷がでるし、お米食べようとしたら稲のまんま出てくるし、挙句の果てには泥団子……

こんな事なら来るんじゃなかったよ……」


あ、やばい、考え事してる間に女の子が泣きじゃくり始めてしまった。


「あーっと、その、大丈夫?」

「えぐっ…… だ、大丈夫じゃない~! 笹団子、笹団子食べたい~!」


その子は俺を見ても泣き止まず、笹団子をずーっとねだる。


「ちょ、ちょーっと待ってろ、お、俺もやってみるから!」


その子を落ち着かせて、蓮は食堂用自販機に対峙する。食堂用自販機は原理は大体普通の自販機と同じで、思ったものを作ってくれるシステムだ。1つ違うところは食堂用自販機は飲み物だけでなく料理も作ってくれる点である。


早速蓮は笹団子の味や形状、匂いまでも思い浮かべる。しかし笹団子といえば新潟県の名産で、東京生まれ東京育ちのシティボーイである蓮はあまり馴染みがない。

食べた事もせいぜい3回程度で、ハッキリと思い出せるはずもなく……


結果出てきたものは笹団子ではなくヨモギ団子だった。


「……ごめんこれで勘弁してくれない?」


ダメ元でヨモギ団子を女の子に渡してみると、その子は赤く腫らした目でヨモギ団子を凝視して吟味し始めた。


「あたしが欲しいのは笹団子なんだけど…… まぁ似てるしいっか、ありがとう♪」


ふぅ…… なんとかあやすことに成功したようだ。すげぇ勢いでもぐもぐ食べてるし、なんだかんだいって気に入ったみたいで良かった良かった。


「おーい、レーくん何やってんのー?」


女湯と書かれた暖簾からスピカとミティが出てきた。どちらも湯上りだからか、肌が少し火照って色っぽい。


「むっ!? レ、レーくん、だ、誰だいその子は!?」


スピカは俺の横でヨモギ団子をもぐもぐ食べてる女の子を見るや、目の色を変えて問い詰めてきた。


「いや、別に悪い事した訳じゃないよ?

笹団子食べたかったらしいから色々と頑張って…… 結局ヨモギ団子で手を打って貰ったんだよ」


———とスピカに弁明しているまさにその時。ヨモギ団子を食べ終わった女の子が口を開いた。


「……むぁ? あれ、おじょーじゃないですか。なんでこんな所にいるんです~?」


彼女の目線の先にはベネティア王国出身であるミティの姿があった。


「『なんでこんな所にいるんです~?』

じゃにゃいわ! お前が案内してくれにゃいでどっかに行ってしまったから迷子ににゃってしまったんにゃ!」

「え~? あたしのせいですか~?」

「全面的におにゃえのせいにゃろケンシン!

おにゃえさえちゃーんとしてくれれば(わらわ)は迷子ににゃらずにすんだのにゃ!」


蓮とスピカそっちのけで言い合いを始めてしまった2人。


「おじょーが勝手にどっかに行っちゃったんじゃん~」

「おにゃえが『眠たい~』とかいって寝始めたからにゃろ!」

「んな事…… 言った……カモ? で、でもだからって『案内役』であるあたしを置いてけぼりにする~!? 」


あ、もしかしてこのケンシンとかいう女の子って、ミティが言ってた案内役の子か。

まぁ良かったな、めぐりめぐって会えたんだから。


「はぁ…… まぁいいにゃ、これ以上ケンシンと話しても堂々巡りで終わるにゃろうしにゃ」

「ふん、それはあたしも同じ意見だよ~!」


2人とも口論には慣れているようで、ため息混じりにそう言って喧嘩は終了した。


「さて、おじょーと喧嘩してたせいで自己紹介がまだだったね~ あたしはケンシン、ベネティア王国の食客なんだ~」

「食客っていってもただの居候みたいにゃもんにゃけどにゃ」

「んー、あたしも本気出せば強いんだよ~?

『越後の龍』って呼ばれてたくらいだし~」


ケンシンのこの一言を聞き逃す俺ではなかった。ケンシンという名前を聞いた時にまさかとは思ったが、『越後の龍』と呼ばれていたなんて、上杉謙信その人じゃん!


「ちょちょちょちょっと待って! ケンシンってもしかしなくても上杉謙信!?」

「ん? どーしたのそんなに慌てて~? あたしは上杉謙信だけどさ、こっちの世界の人達はあたしの事なんて全然知らないでしょ~?」

「……いや、その、実は俺もあっちの世界からきたんだよね」


俺の言葉を聞くと、ケンシンとミティは目を丸くして驚いた。


「えっ! うっそ!? じゃ、じゃあ、あたしが信玄ちゃんと激戦を繰り広げた戦いの名前は答えられる~!?」

「『川中島の戦い』だよね?」


蓮の答えを聞いたケンシンは、突然目からポロリポロリと雫を流す。


「あ、当たってる…… ようやく、ようやくあたしの事を知ってる人に会えた……!!」


ボロボロと涙を流しながら、ケンシンは蓮に抱きつき、蓮の胸に顔を押し当てるようにして泣いた。

その光景を見ていたスピカは呆気に取られ、何が起こっているのか分からず、ケンシンが蓮に泣きついてるのを脳裏に焼き付けていた。


「うぐっ、ひっく…… あ、あの! キミに頼みたい事がある~!」


ケンシンは真面目な顔でそう言うと、くるっと反転してミティを指さした。


「あんの頑固おじょーにあたしがどれだけ凄いことしたか教えてやって~! あたしが何度も武勇伝を語っても一向に信じようとしないんだよ~!」


ケンシンは大泣きしながらそう叫んだ。


これが戦国時代一、二を争った戦国大名なのである。上杉謙信女性説はちょくちょく耳にするし、まぁそこまでの驚きはないのだが、こんなにも頼りなくて子供っぽいとは思わなかった。『越後の龍』『軍神』『毘沙門天』と名を馳せて、若かりし頃とはいえあの織田信長をビビらせ、戦国最強と名高い武田軍と5回も引き分けた神がかった化け物だぞ?

うーん……まぁ、まずはミティ達に上杉謙信の偉大さを伝えよっか…… 本人がこんなんでも、あれだけの武功をあげたのは間違いないわけだし……


「な、なぁミティ、一応ケンシンは偉大な奴なんだよ、かなり強いし『軍神』とか『越後の龍』と呼ばれて恐れられてたんだよ?」

「そーだそーだ~! あたしは凄かったんだぞ~!」


ケンシンは弁護する俺の背後に回って、便乗するように野次を飛ばす。

———しかし、ミティの心には全く響いていなかった!


「はっ、そんな事知ったことじゃにゃい!

そのスカポンタンは城の中の一室に引きこもっては朝から晩まで寝続け、たまーに外に出たかと思えばフラフラと単独行動をして迷子になる始末にゃ! とてもじゃにゃいがそ奴が凄かったにゃんて信じられにゃい!」

「ぐっはぁ~!!」


ミティの超ド正論に返す言葉もなく、ケンシンは暴言のサンドバッグと化してしまう。

蓮とスピカも助け舟を出せるものなら出してあげたいのだが、如何せんミティの言ってることに反論を出せそうにない。


「ボク、アリスがあんな感じでミラに切れられてるの見たことあるよ……」

「人のふり見て我がふり直せ。俺も気をつけよ……」


それからミティの正論ラッシュが終わったのは、時計の長針が1周周り、短針が9の文字を指した時だった———


1週間どころか2週間更新もキツい……

完全に不定期更新へチェンジします、申し訳ないです。

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