時空の歪み!
なんとか書き終えたっ……!
「完っ成なのじゃ! ワシにかかれば転移門の設置なんて朝飯前じゃ!」
自前のラッパをパフパフ鳴らし、見た目通り
小学生のように騒ぎ立てる。
「ありがとうベガ、助かったよ。
んで、矢継ぎ早で悪いんだけどさ、ちょーっと聞きたい事があるんだけど……」
「ん? なんじゃよ改まって」
俺はロビンフッドを呼び寄せ、この森に来てからの事を全て事細かに話した。俺がロビンに殺されかけた事も話すと、いやにベガは機嫌が悪くなったのだが、ロビンにおこった不可思議現象について話すと、ベガの雰囲気が一変して重いものになった。
「……悪い、ちょっと森の民の奴らは席を外して貰えるかの?」
ベガにいつものおちゃらけた雰囲気は微塵もなかった。これはただ事ではないと思い、イアンを呼んで森の民の案内役とスーの子守に抜擢した。
そんなこんなで、今この場に残っているのは
俺、ベガ、ロビン、スピカの4人である。
「んで、そんなにヤバい状況なのか?」
ベガのいつもと違う雰囲気に少し不安になりながら俺がそうベガに話を振ると、静かにコクンと首を縦に振った。
「おそらくなのじゃが、ベルダーとプセマの間に時空の歪みが出来ておる。ロビン、お主がシャーウッドの森で引っかかったという落とし穴がそれじゃ」
そう話すと、ロビンがベガの話に噛み付いた。
「な、なぁ神よ。俺は現実世界に戻れるのか?
あ、いや勘違いするな、別に帰りたいわけではない。俺には姫様とこの森を守る使命があるからな」
誰に言い訳してるのかは分からんが、とにかくロビンが元の世界に帰れるのかどうかが気になっているのは分かった。
そんなロビンに対し、ベガは冷たい視線を一瞥する。
「知らんわ、自分で探せ。ペッ! 」
ロビンには随分な塩対応だな!?
「え、なんで俺に手厳しいの!?」
ロビンが戸惑いながらベガに尋ねると、ベガから黒いオーラがにじみ出た。
「ワシ、レンの事を気に入っとるんじゃよ。
で? さっきの話が本当なら、お主はそんなレンに何をしたのかのぉ? え?」
「あ、いや、その…… ほら、あの時は姫様が攫われそうだと思ったからさ……」
ロビンは額から滝のように汗が吹き出ていた。そんなロビンに助け舟を出そうと思った矢先、畳み掛けるように伏兵が現れた。
「そんなあやふやな断定で、ボクの愛しいレーくんを殺そうとしたのかい?」
スピカもベガと同じ黒いオーラを纏って問い詰める。
「え、あの、す、すみません……」
「謝って済む問題じゃと思っとるのか!!」
さっきもスピカに散々絞られたのに、まさかまさかの2ラウンド目が始まってしまったな。当の被害者である俺はもう気にしてないのに。
あ、無理無理。無理だよロビン。そんな助けを求めるような顔でこっちを見ても助けらんない。今、俺が何言っても焼け石に水だもん。
「とにかく! 蓮が許してもワシは許さん!
当分の間、心の中で敵にカウントしておくからそのつもりでの!」
「俺は…… とんでもない人に、矢をかけてしまったんだな……」
何故かロビンが俺を見て震え上がる。
まるで蛇に睨まれた蛙のようだ。
なんかもうフォローとか弁明とかどうでもよくなってきたのでそのままにしとこう。
「さて、それじゃあ話を戻すとするかの。
この時空の歪みはの、ベルダーとプセマを繋ぐトンネルのような役割を果たすのじゃ。この腐れウジ虫がここにいる事を考えると、ベルダー側で繋がったのは現代とは限らんようじゃ」
……腐れウジ虫ってロビンの事かな。
なんだかなぁ…… 歴史の偉人が暴言吐かれてるのは、あんまり見たくないな。
ほら見ろ、あまりの恐怖でロビンが青ざめちゃってるではないか。
とてもじゃないが、目の前でガタガタ小鹿のように震えてる奴がアニメや映画で主人公になってる奴と同じとは思いたくないなぁ……
おっといけない、ロビンの事よりその時空の歪みについて考えねば。
「なぁベガ、もしかしてこの後もベルダーから人が来る可能性もある?」
ベガは首を縦に振った。
「おおいに有りうる。それとこれはワシの勘なんじゃが、ベルダーからこの世界に来る者は、総じて偉業をこなした者じゃと思う」
「ベ、ベガちゃん。そんな大事な事を勘で決めつけていいの?」
「仕方ないじゃろ情報が少ないんじゃから!
ま、この件はワシの方でも調べてみるから、ちょっと時間もらうのじゃ」
ベガはそう言うと、ハナエルの件の時に1度見た白い妖精のようなものに何か話し始めた。
「なぁ、その白い妖精みたいなのって何なの?」
好奇心を抑えられずベガに尋ねると、ベガの視線がそいつから俺に移る。
「こいつの事か? そういや説明しとらんかったの、こいつはトーンっていうんじゃ。
ワシの部下にあたる神様での、もっぱら伝書鳩の役割を果たしておる」
ベガがそう紹介すると、手乗りサイズの白い妖精がいきなり綺麗なお姉さんに変身した。
「ご紹介に預かりましたトーンと申します。以後お見知りおきを。それでは、私はここら辺で……」
音声ソフトみたいな機械的な声でそう言い残すと、彼女は忙しそうに帰っていった。
「さて、それじゃあグリズリに帰るとするかのぅ?」
「あ、ちょっと待ってベガ。俺、お前に聞きたいこと他にもあるんだよね」
ベガは首を傾げながら俺の方を見る。
「俺、いきなり森の民達に主扱いかれたんだけど。絶対お前知っててここに俺達を送り込んだよな?」
「なーんじゃその事か。うむ、ワシは全て知っておる。昔、あやつらを助けたんじゃよ。
じゃからまぁ、今回はあやつらが味方につくと思ってお主らをここへ送り込んだというわけじゃ」
フォーレの話の最後の方に出てきた「生粋のトラブルメーカー」ってのは間違いなくベガの事だな。うん、こいつしかいねぇもん。
「ちなみにじゃが、その時の魔物使いおったじゃろ? アレンっていう名前なんじゃけど」
「あ、うんうん確かにフォーレ爺が言ってたね~ ベガちゃんそれがどうかしたの?」
スピカが不思議そうに聞き返す。
「実は、この世界で有名なハズレ職としての魔物使いのモデルは、アレンなんじゃよ」
「え? どゆこと?」
理解が追いつかなかった蓮は、呆けた顔でベガに聞き直す。蓮に頼まれたりアテにしてもらえるのが大好きなベガは、露骨に嬉しそうな表情になる。
「うむ、蓮は小耳に挟んだ事はあるかもしれんが、魔物使いという職業は悪い意味で有名なんじゃよ」
「あ、うんそれは思い知らされたよ……
俺の職業伝えた時のアリスとスピカの驚いた顔が未だに忘れられないもん」
蓮が遠い目をしながらそう言うと、スピカが申し訳なさそうに縮こまる。
そんな2人を置いといて、蓮が転移した全ての元凶である銀髪ロリは気にもとめずに話し続ける。
「まぁそんな魔物使いの悪いイメージが世に知られるようになったのは、ある冒険譚が出版されたからなんじゃ」
「その冒険譚はこの世界にいる人なら知らない人はいないほど有名なんだよ~。 かく言うボクも子供の頃、お母さんに読み聞かせてもらったんだ~」
そこから、昔を懐かしみながらスピカがその冒険譚について話してくれた。
その冒険譚は史実を元にして作られたと言い伝えられている、アーサー王物語並に名の知られている物語だそうな。
その内容を簡単に要約すると、ある英雄が魔王を倒すという模範的なまでに王道なものらしい。その話の中に、何をやってもダメな魔物使いの青年が出てくるというのだ。そのダメっぷりが凄まじく、いまやその英雄よりも魔物使いの青年の方が有名になってしまったそうな。
「なら、その話に出てくる魔物使いのモデルが……」
「そう、ワシと一緒にこの森を守ったアレンというわけじゃ」
ベガとスピカの説明を受けた蓮とロビンは
得心した顔持ちで頷く。
「あの、神よちょっといいか?」
「お主からの質問は受け付けておらん!」
ベガは鬼神の如き形相でロビンを睨んだ。
「おいベガ、もうロビンは仲間なんだからいい加減にしろって」
「……チッ! 蓮がそういうなら仕方ない、聞いてやるのじゃ。ほれ話してみぃ」
お、意外にも助け舟を出す事に成功したようだ。
「あぁ、助かったよ蓮。それで、俺が聞きたいのはそのアレンについてだ。この森を救ってくれた英雄が、何故ハズレみないな悪いイメージがついているんだ?」
ベガが未だに威圧的なオーラを放っているからだろう、ロビンの声は少し震えていた。
「それは色々理由があるんじゃが、1番の理由は作者が悪意をもって書いてたからじゃな」
「なにそれ、その作者アレンに恨みでもあったの?」
「あーいや違うのじゃ、からかうと面白いから…… 」
ここでベガはハッと我にかえった様子で、言いかけていた言葉を飲み込んだ。
しかし、それに気づくには遅かった。
「……今ベガちゃん何か言いかけてたよね?」
「……『からかうと面白い』とそこの神は言いかけていたな」
「……ベガ?」
3人の懐疑の目線がロリ神に刺さる。
「チッ! バレちゃぁしょうがねぇのじゃ!
そう! アレンの事を面白可笑しく書いたのはこのワシじゃあ!」
「威張ってんじゃねぇよこの駄神がぁ!」
鋭く、かつ重たいチョップが銀髪ロリの額を撃ち抜いた。
「いちちちち…… おい何もチョップする事は無いじゃろ!? お主らの誰にも迷惑かけとらんじゃん!?」
「お前が魔物使いに対する評価を爆下げしたせいで風評被害にあってるんだけど!? 」
「それはその…… こ、根性じゃ! 根性で乗り切れるはずじゃ!」
蓮に図星を突かれてしまった銀髪ロリは、何も言い返せずに根性論を展開する。
しかしあまり効果が無いと分かるや、
「あ、ワシ用事思い出した」と言い残してその場から消えた。
「……帰るか」
「そうだね……」
私、気づいたんですけどココ最近の話で毎回新しいキャラクター出てますね……
癖なんでしょうね……多分……




