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貿易会議!

~一言でわかる前回のあらすじ~


スーの生成した子が、ラオペ種最強種族でした。

政策を実行してから、早いもので1週間の月日が流れた。今日はセイメル王国の代表者数名が貿易の話をしにやってくる日である。


1週間も経つと村の様々な所で変化が表れるもので、ミラやアリスが見たら驚く事間違いなしだろう。


まず、なんと言っても建物の数が増えた。

生糸産業をするにも、希少な植物を研究するためにも、それに見合った施設が必要不可欠である。その上、住民達が住む家も増やしていかなければならない。

それら全てを担当してくれたのが、ヒスイ率いるグリーン隊である。1週間という少ない期間ながら工場と研究所を完成させ、住民のための家を逐次(ちくじ)作り続けてくれている。ここ2日ぐらいは道の舗装などもしてくれており、道には石ころ1つ転がっていない。

なんとも惚れ惚れする働きっぷりである。


昨日、外をぶらついてる時にヒスイに会ったので、その事を伝えてみたところ、


「ありがとうございます、マスター。 ですが、まだまだ私の理想には遠いです……

家々はスー様とマスターの家以外は木造建築ですし、道と言っても地面を踏み固めただけです…… あと、噴水とかも作りたいですし、街灯も…… 」


とブツブツ言い出して、まだまだ不服そうだった。いつもは話し下手なヒスイの意外な一面を見れて、ちょっとだけ面白かった。

しかし、面白いと感じれていたのはここまでだった。


ヒスイはその後、レンガがあればもっとより良いものにできると俺に説明してくれた。

道の舗装もできるし、住宅もレンガ造りのものが出来るからだそうだ。

俺達の家はレンガ造りだが、それはベガがポンと作ってくれたからで、今のところボワ島ではレンガの材料となる粘土などが見つかっていない。

そのため、今日の貿易では必ずレンガを輸入するようにとかなりしつこく念押しされた。

その念押しっぷりは、もはや恐怖を感じるレベルだった。


俺は昨日の事を思い出しながら、ベガが設置してくれた転移門(ゲート)の前までやってきた。


この転移門(ゲート)というのは、魔力を一切使わずに転移門(ゲート)まで飛ぶことが出来る、いわばどこでもドアに近い代物(しろもの)だ。今のところ設置されてあるのは3箇所で、ここ以外にはヴィーゼ島にある俺が作った家とセイメル王国城内の2箇所である。

そしてこの転移門(ゲート)の最も優れている点は、敵意を持っている人には使えないというものである。これにより、もし魔王軍にセイメル王国が占拠されたとしても、この世界に襲いかかられたりはしないのだ。


突如、転移門(ゲート)が淡い光に包まれ、光が弾けると共に、見慣れた2つのシルエットが浮かび上がった。ミラとスピカだ。


「よう、久しぶりミラ。スピカからこの1週間かなり忙しくしてるって聞いたよ」


スピカとは毎日会って一緒に寝てたり、ぶらついたりしてたのだが、ミラと会うのはちょうど1週間ぶりである。

スピカの話によると、俺達と貿易するために必要な資料や会議をほぼ1人で完遂(かんすい)したらしい。


「かなり急ピッチで進めましたからね…… アリスは全く働きませんし…… まぁ、これもお国の為です……」


ミラの顔はちょっと生気が薄れ、一目みただけで疲れが残っているのが見て取れる。


「大変そうだね、はい、アロエの実でも食べて元気出して」


「ありがとうございます…… あ、そう言えばアロエの実の増殖は成功したんですか?」


「まぁまぁ、そう言うのは皆の前で話そうぜ」


「あ、そうですね…… すみません」


挨拶はそれくらいにして、俺達は集会場へと向かった。歩いていると、ミラが辺りを見回して感嘆の声を上げていた。


「す、凄いですね…… まさか1週間でこれ程景観が変わるとは……」


「ボクも毎日来る度に驚かされるよ~」


「ふふふ…… うちの子達は優秀なんだよ!

おっと、着いたよ。さぁー入って入って」


俺達が集会場に入ると、既にこちら側の出席者であるクロウとマリンは席についていた。

ベガも一応いるのだが、クッションの上でスースー寝息をたてて眠っていた。起こすのも忍びないので、ブランケットをかけてあげて、そのまま寝させる事にした。


「ごめんね、なんか緊張感無くて……」


「大丈夫だよ~ それよりさ、スーちゃんは来ないの? スーちゃんなら絶対来ると思ったんだけど……」


スピカが意外そうにしながら聞いてきた。


「スーはこう言った話が好きじゃ無いだろうし、イアンと一緒にうちの戦闘部門のヤツらと訓練してるよ」


「い、意外にスーちゃんって肉体派なんですね……」


「なんか、レベルが上がってくのが楽しいって言ってたよ。それと、『マスターはスーが守ってあげるのっ! 』って意気込んでた」


「ふふっ、蓮さん愛されてますね」


「嬉しい事だよ。 まぁ、雑談はその辺にして本題に移ろっか。どうぞ座って座って」


俺が座るよう促すと、ミラとスピカは俺達に対するように座った。


「じゃ、始めよっか。まずはマリンよろしく!」


マリンは頷くと、立ち上がってここ一週間の成果を発表する。


「まず、結果だけ申し上げますと、希少な植物を増やす計画には時間が必要ですね。

すぐに種を植えてみましたが、未だ発芽まで成功しておりません……」


あ、ですよね。流石に1週間で成功させてたら怖いわ。


「ただ、アロエの実を元にした、回復薬なら作れました。アロエの実1つで10個生成可能で、効果は本来の半分ほどです」


「ほ、本当ですか!」


この結果には舌を巻かざるを得ない。たった1週間でここまでやれるとは…… ブルー隊、かなり頼りになる奴らだ。


「マリンありがとう。それじゃ、こっからはクロウよろしくな」


「ヒッヒッヒッ…… お任せあれ……」


マリンに代わってクロウが話し始めた。


「こちらとしては、この回復薬を目玉として売りたいと考えているのですが…… 1つ、金貨5枚でどうでしょう?」


「金貨1枚じゃだめですかね?」


ミラは貼り付いたような笑顔を浮かべながら、毅然(きぜん)とした態度で応じる。


「安いですねぇ? この即効性と効力を見れば5枚貰うのは妥当ですよねぇ? ヒヒッ……」


目の前でミラVSクロウの値切り交渉真っ只中な訳だが……

金貨1枚って日本円にしたらいくらくらいなんだろうか? それが分かんなきゃこの話についていけない。でもなぁ……ミラとクロウが(にら)み合ってるこの状況でそんな初歩的な事、アホすぎて聞けないしな……


「ふぁ…… 金貨1枚は日本円で10万円じゃよ…… 」


とろんと眠気の残っている声が後ろから聞こえた。その声の方を振り向くと、ぼーっと焦点の定まってない目を擦りながらベガが立っていた。


「お、ベガ起きたのか」


「うむ…… あ、ブランケットありがとうなのじゃ…… 嬉しかったぞ……」


寝惚(ねぼ)けているからか、いやに素直で調子が狂う。いつもこうなら可愛いのに……

まぁ、無理か。それよりこの世界の貨幣基準について教えてもらおう。


「悪いけどさ、この機会に貨幣基準について教えてくれる? 」


「うみゅ、任せておけぃ…… この世界では、白金貨、金貨、銀貨、銅貨の4つの貨幣がありゅのじゃ……」


ベガは説明しながら寝てしまいそうな感じだった。こいつがここまで眠そうにしてるのは初めて見たので、何か昨日あったのかな?


「ちょっといいか、お前なんでそんなに眠そうにしてんだ? 昨日何してた?」


ベガは大きなあくび1つして、俺の問いに答えた。


「最新の…… モ〇ハン…… オールナイト……」


「うん、これでも食らって目を覚ませ」


ベガの眉間にデコピンを食らわせた。

もし世界の調整のため~ とかいう理由ならもっと優しく起こしてやったが、まさかモ〇ハンとは。しかも今日は会議があると知っていての愚行だ。これは見過ごせない。

……別に俺が一狩り行けない事に腹を立てたわけじゃないもん!


「今のは効いた…… おかげで目が覚めたのじゃ。……それで、貨幣基準の話じゃったな?

銅貨1枚10円の価値でな、銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚の価値があるんじゃよ。ただし、白金貨だけは金貨10枚……つまり日本円で100万円の価値があるんじゃ」


「100万円って……白金貨とか使う機会あんのか?」


「貿易の時とかに結構使うぞ? 多分今日も使うじゃろ。……お、そろそろ睨み合いも終わりそうじゃな」


ベガはミラとクロウの方を見るように示唆した。素直に従うと、下卑(げび)た笑みを浮かべるクロウと、表情は柔らかいままだが目が全く笑っていないミラの睨み合いが凄みを増していた。


「金貨……3枚でどうでしょう? 流石にこれ以上は王国側としては出せませんからね?」


「ヒヒヒッ…… マスター、ここら辺が落とし所だと思うのですが……?」


「えっ、あ、うん、いいんじゃね……」


だって1個30万で売れるって事だよね……?

ちょっと高すぎなんじゃないかって思うんだけど……


「な、なぁ…… 今更なんだけど、本当にそんな高値で買って大丈夫なのか?」


俺がそう言うと、ミラはにっこり笑って答えてくれた。


「はい、大丈夫ですよ。この薬にはそれくらいの価値があります。傷が一瞬で治る、夢のような薬なんですよ?」


「ヒヒッ…… その上、水で薄めればより多くの回復薬を作れますからねぇ……

まぁ、効力も薄まりますが、元がこれだけの効力なら十分でしょう……」


なるほど、言わば今売る回復薬はカルピスの原液って事か。


「めっちゃ庶民的な例えじゃな……」


「いいじゃん、分かりやすかったろ?

それで、どのくらいの買ってくれるんだ?」


「そうですね…… スピカ、どのくらいあれば足りると思いますか?」


「10個くらいあればいんじゃない?」


「じゃあそうしますか。じゃあこれどうぞ」


ミラは銀貨100枚と金貨9枚、そして白金貨2枚が入った袋をクロウに渡し、クロウは回復薬を10個手渡した。


「じゃあ回復薬の話はこれで終わりだね~。

レーくん達は何か欲しいものは無いかい?」


輸出の話は終わって、今度は輸入の話である。


「レンガが沢山欲しいです……」


「ヒヒッ…… レンガを買わなかったら何言われるか……」


俺とクロウは懇願するように言った。

そのただならぬ様子を見て、ミラとスピカが狼狽(うろたえた。


「ちょ、え、ええ!? ど、どーしたのこの二人!? クロウくんにいたっては少し震えてるんだけど!? マ、マリンちゃん分かる!?」


「ヒスイにこっぴどくレンガを買うよう念押しされてまして…… 特にクロウなんか毎日言われ続けて、夢にまで見たらしいです」


「あの気弱そうなヒスイちゃんが!?」


「人は見かけによりませんね……」


この世界に来てから、それはしみじみと感じる。女王がド変態だったり、トラウマ持ちの女の子が激強だったり、銀髪着物ロリが神様だったり……

本当、世の中分からんもんだよ……


「そ、そう言うわけだからレンガ輸入させてもらってもいいかな……?」


「そ、そう言う事なら分かりました。

何個程買いますか?」


「これで買えるだけお願いします……」


俺は金貨5枚をミラに渡して頼んだ。

ミラが言うには、かなりの量なので、後日荷台に載せて持ってきてくれるそうだ。


その後もクロウとミラが睨み合う事は度々あったものの、貿易の話はトントン拍子で進んだ。ミラ達は主に食料品などを買ってくれて、また、アルマの木が実らせる剣なども高値で買ってくれた。

俺達はスコップやツルハシなどの道具類を主に輸入する方向になった。


「ヒヒッ…… 良い貿易になりそうですねぇ」


「えぇ、そうですね」


二人は黒い笑顔を浮かべながら握手を交わしていた。


「あっ! そういえばレーくん、この村? って何ていう名前なの? 決めないと不便じゃない?」


「んー、確かに不便か……」


「ヒヒッ、貿易するにも名乗りづらいですし、この際に決めてしまいましょう」


「あ、そう? うーん……」


頭を捻ってかっこいい名前を考えるが、どーにもいい名前が浮かばない。

こーいうのってあんまり得意じゃないんだよなぁ……


数分考えてみて、よーやく良さそうな名前が思いついた。といっても、そのまんまなんだけど……


「『ラオペ国』ってのはどうかな? スーが女王なわけだし、後々は国レベルまで発展させていきたいって思ってるからさ」


「まぁ無難じゃな。いいと思うぞ?」


皆も『ラオペ国』という名前に賛同してくれたので、今この時からここは『ラオペ国』である!


「それじゃ、私はアリス様にこの事伝えてきますねー」


「ヒヒッ、私も皆に……特にヒスイに伝えてきます……」


「私も研究に戻ります。必ず研究成功の報告をあげられるよう頑張ります」


「ワシは寝てくる…… もう限界じゃ……」


会議が終わったものの、皆やる事がまだまだ山積みのようで、集会場からいなくなってしまった。


「あれ? スピカは仕事もう無いの?」


「うん、あとはミラがやってくれるってさ。そもそもボクはレーくんを守るのが仕事だしね~」


「そっか。それじゃあスーでも連れてどっか出かけようぜ?」


俺がそう言うと、スピカはぱあっと顔を明るくさせた。


「それは良いね! ……あ! 久しぶりにクエストでも受けよーよ! ボク、この1週間で結構フラストレーション溜まってたんだ!」


スピカから魔力がじわっと漏れ出した。


あぁ、名も知らぬ魔物達よ。今すぐ逃げてください…… 『真紅の魔女』が、()()らしにいくそうです……

調子が良いので、明日も投稿出来そうです!

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