謎のラオペの正体!
~一言でわかる全巻のあらすじ~
色々な政策を実行することにしました
「はぁ……はぁ…… イアンとグレンに免じてこの辺にしといてやる…… 」
「そのセリフ、そのまんまお主に返してやるのじゃ……」
「口の減らない…… まぁいい、これ以上は体力的に宜しくない。それより、この銀色のラオペについて……っとその前に、イアン!」
「なんでやすか、マスター」
「グレンとチャノスケに、さっきの会議で決まったこと伝えて、すぐに行動に移してくれ。それと、スーの体調が優れねぇから、
ケアも頼んでいいかな?」
「御意!」
イアンはスーを抱えて、グレンとチャノスケと共にいなくなった。
「で、この銀色のラオペって何なの?」
「ちょいと貸しとくれ……」
ベガに銀色のラオペを手渡すと、舐るように見回した。
ベガってこんだけ言い合った後でも、なんだかんだで頼みを聞いてくれんだよな。
……そこだけは感謝してなくもない。
「なんじゃお主、口ではああいうくせに、心の中で急にデレおって…… これが噂のツンデレといやつかの?」
ベガはちょっと顔を赤らめていた。
だが、それ以上に俺の方が恥ずかしくて
顔を赤くしていた。
「てめっ、また勝手に人の心読んだのかよ! そんなこといーからさっさとそのラオペについて教えてくれって!」
「はいはい、分かっとるのじゃ。……この銀色ラオペ、スーの『生成』スキルで作ったじゃろ?」
「うん、そうだよ。その銀色ラオペを生成したらスーがフラフラになったんだ」
「あぁ、それは魔力の使いすぎじゃな。銀色ラオペ生成する時、慣れてないせいか必要以上に魔力を注いだんじゃろ」
スーがふらついた理由が分かって、胸をなでおろした。そんな俺の様子を見て、ベガはちょっと微笑んで説明を続けた。
「銀色ラオペはの、ナイトラオペという種族じゃよ。生成スキルで生成するしかお目にかかれない、オリジナルのラオペじゃよ。もっと分かりやすく言うと……
ソシャゲの期間限定最高レアモンスターぐらいの価値があるぞ」
「えっ! じゃあ、かなり運イイじゃん!」
「うむ。普通は生成スキルを使ったらグリーンラオペが出てくるのがお決まりのパターンなんじゃが、スーはかなり運が良かったようじゃな」
「まじか。どんだけ強いか分かる?」
「ん? こいつを使役はしたんじゃろ? なんでまだステータス見ておらんのじゃ?」
はっ! スーの体調不良もあって、ナイトラオペのステータスを見るのを忘れてた!
俺はすぐにナイトラオペに調査スキルを使った。
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名前 ???
種族 ナイトラオペ
レベル 1
スキル 鉄壁Lv5 剣術Lv5 見切りLv5 鋼糸Lv5
状態異常無効 盾Lv5 粘糸LvMAX
称号 造られしモノ
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「おいベガ、なんだこのチートステータス」
「限定レアだからのぅ…… 間違いなくラオペ種の中では最強じゃよ」
「でしょうね。てかさ、なんでナイトラオペ(こいつ)剣術スキル持ってんの? どこで剣なんか扱うんだよ」
「いやいや、ナイトラオペを舐めるでない。粘糸を使って巧みに剣を扱えるんじゃ」
イモムシが自分の糸使って剣を振り回す?
めっちゃシュールだなその図。
「あ、こいつにも称号ついてるな……」
俺は称号の欄をタッチすると、より詳しい情報が表示された。
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称号 造られしモノ
取得条件 生成スキルによって造られる。
効果 生成者のスキルを1つ引き継ぐ
(粘糸LvMAXを引き継いだ)
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かなり強いよねこの称号。こうなってくると俺の『鬼畜』の称号のしょぼさが浮き彫りになってしまう。
「ん、そういえばこ奴、名前がまだ付いておらんではないか。かわいそうじゃし、早くつけてやったらどうじゃ?」
「いや、それはスーにつけさせようと思ってさ。……てなわけで、スーのとこ行こうぜ。
あ! 魔力回復に役立つモノって創ってないか?」
ベガはちょっと考えた後、何かぴったりのものを思い出したようだ。
「魔力回復に役立つものなら沢山植えてあるが…… 一番効果てきめんなのは、お主の血じゃな。1発で治る」
「俺の血?」
「うむ、お主の血じゃ。使役された魔物にとって、魔物使いの血は魔力そのものなんじゃよ。あ、キスでも回復できるぞ?」
「ばっ、馬鹿野郎! キスなんて出来るわけ無いだろ!」
「……じゃと思った。ま、そんなわけでお前の血を与えりゃ大丈夫じゃ。そんじゃ、さっさと行くのじゃ」
そのままスーの所へ行こうと思ったが、
よく考えればイアンに頼んでため、スーがどこに運ばれたか分から無いことに気づいた。
「またイアン呼ぶのは気が引けるし……
ベガ、どこにいるか知ってる?」
「知っとるわけないじゃろ。……あ、そーいやお主、使役のレベルなんぼになったのじゃ?」
「なんだよ藪から棒に…… 確か9だったかな?」
「惜しいな…… 仕方ない、ほれプレゼントじや」
ベガは手から粉状の光を出した。
その光は俺の周りに集まり、近いものから俺の体へと入っていく。
《使役LvMAXを手に入れました》
《派生スキル ナビLv1 を手に入れました》
ベガの奇行にとまどっていると、不意に俺の目の前にそう表示された。
「ちょ、何これベガ? 俺のスキルレベル勝手に上がったんだけど」
「この光、スキル経験値なんじゃよ。使役のレベルがMAXになれば、ナビスキルをゲットするって知っておったからやったんじゃ。
ナビスキルさえあれば、お前が使役してる魔物の場所が分かるぞ」
「へぇ…… どうやって使うんだ?」
「この際じゃから教えとくがな、大体のスキルは頭の中で使おうと思うだけで使えるぞ。
使役スキルや生成スキルみたいに掛け声がいるのは少ないんじゃよ」
そうベガに教えられたので早速使ってみよう試みると、
《スキル: ナビLv1 が起動しました》
という表示と共に、ボワ島のマップが俺の正面に表示され、そのマップには金色の丸いアイコンが1つだけ記載されていた。
「この金色のアイコンがスーなのか?」
「そうじゃよ。Lv1だと1つしか表示されんようになっておる。ま、レベルさえ上がればもっと表示出来るから、こまめに使ってレベル上げといた方が良いぞ」
「確かに、これはかなり便利なスキルだもんな……」
「うむ。そうじゃろうそうじゃろう!
……あ、そういやお主に言いたかった事があるんじゃが、スキルのレベルが上がったら必ず確認するんじゃぞ? お主、まだ確認しとらんスキル結構あるじゃろ」
ベガはちょっと不機嫌気味にそう言った。
スキルを創っているベガにとって、スキルを確認もしないでろくに使わない奴が気に食わないんだろう。
「悪かったって…… そんな事より早くスーのとこ行こうぜ!」
「後でみっちりスキルの説明してやるのじゃ…… 」
ちょっと気まずい雰囲気が流れたが、ベガはすぐに許してくれて、スーの元に急ぐことにした。
マップで示されている場所は、村の中心部からちょっと離れた場所だった。
その場所へ行くと、木造建築しかない村の中で、唯一レンガ造りで出来ていた。
ドアを開け、その建物の中に入ると、メイド姿の美少女達が忙しなく働いていた。
「おいベガ、これもお前の仕業か?」
「心外じゃなライよ。なんでもかんでもワシのせいにするのは良くないぞ」
俺達が目の前の事態を理解することが出来ないで固まっていると、メイドの1人が俺達に気づいて近くまで来てくれた。
「おかえりなさいご主人様!」
大変にこやかにそう言った。
気分はまるでメイド喫茶である。
「あの、スーのとこまで案内してもらえるかな?」
「かしこまりました! ご主人様、こちらです!」
メイドさんに付いて行くと、メイドさん達が常駐している部屋の前にまで来た。
「ここにスー様はいらっしゃいます」
メイドさんはそう言ってドアを開けてくれた。その部屋では、スーがベッドに横たわっていた。
「あ、ますたぁ~ ここ、凄いんだよ~」
「あぁうん、確かに色んな意味で凄いよな…… それより、ちょっと待っててな」
当たり前だけどキスは出来ないし、やっぱりどこか傷つけて血を出すしかないよな。
「おいベガ、針かなんか持ってない?」
「そ、それなら私が持ってますご主人様! どうぞ!」
メイドさんからもらった針を左手の親指に刺す。チクッとした痛みの後、赤黒い血がちょっぴり溢れ出した。
「マ、マスター!? な、何やってるの! 」
「スーの魔力を回復させるには、俺の血を飲ませるのが一番いいんだってさ。そんなわけでほれ、俺の血飲んでくれ」
スーは目の前に出された血が出ている親指を見て少し戸惑ったが、素直に俺の親指をくわえたおかげで、親指がほんのり温かくなった。血が出ているところをスーにぺろぺろ舐められるのがとってもくすぐったい。
スーはというと、初めは少し躊躇していたのが、今ではすっかり血の虜となっているようだ。
「ベガー、使役されてる魔物にとって俺の血って、そんなに美味いの? スーが俺の指くわえたっきり離さないんだけど……」
「血が美味いってよりは、魔力が回復していくのが心地よいんじゃと思うぞ? 身体中に魔力が巡っていくのは、脳が蕩けるように甘美なものじゃよ」
「へぇー、そうなんだ……」
スーに視線を落とすと、目がトロンとして恍惚とした顔だった。段々、何かイケないことをしているような気分になってくる……
「ス、スー! も、もういいだろ!?」
「やだよぅ! マスターの血、とっても美味しいのー!」
「だーめ! これ以上は18禁!」
「じゅう……はっきん? マスター何それ?」
「18歳以上じゃないとダメってこと! スーはまだ5歳だからダメなの!」
スーにいつもより強く言うと、しぶしぶ言うことを聞いてくれた。
言うことを素直に聞けたご褒美に頭を撫でてあげると、こぼれんばかりの笑みで喜んでくれた。
「あ、そうそう、スーが生成したラオペ、かなり強いみたいだぞ。ナイトラオペって言うんだって」
「そうなの!? やったー!」
スーは喜びに拍車をかけ、ウサギみたいにぴょんぴょん飛び回って喜んだ。
「それでな、こいつの名前まだ決めてないから、スーがつけてくれるか?」
「えっ! スーがつけていいの!?」
「うん、スーが頑張ってくれたんだしスーがつけなよ」
んー……、と思案声を漏らしながら名前を考えると、突然スーの顔がぱぁっと花火のように明るくなった。
「決めた! この子の名前はギンにする!
マスター、どうかな?」
スーのつけた名前を聞いて、自然とクロとシロの事が頭に浮かんでしまった。
俺のネーミングセンスって、5歳児並?
「……流石は俺の子、素晴らしいセンスだ」
「いや、お主の子じゃないじゃろ。
まぁ、ネーミングセンスはそっくりじゃがな……」
「ネーミングセンスの話はもう辞めよう。
それより、ギンもゴッドラオペにしてやってくれよ。このままじゃ話せねぇ」
「お主、ワシがラオペ達をゴッドラオペにする度にキレるくせに、どういう風の吹き回しじゃ?」
ベガがぎょっとした顔で俺に言った。
「いや、いっつもキレてるのは無断でやるからだよ。あの行為自体は有難く思ってます」
「そうなのか…… それじゃあの、一々お主に許可とるのも面倒じゃし、お前が使役した魔物は全て擬人化する事にしても良いかのぅ? その方が良いじゃろ?」
むっ、ベガにしては気の利いた提案だな。
2つ返事でOKしたいが、こうまで魅力的な提案は裏があるのが世の常だ。
さて、乗るべきか乗らぬべきか……
「いや、そんなに疑りかかってもしょーがないじゃろ。自分で言うのもなんじゃが、お主に許可貰わなくてもワシならやるぞ?」
「とっても説得力ある発言ありがとう。喜んでやってもらう事にするよ」
「任せるのじゃ!」
ベガはいつものふんぞり返って偉ぶるポーズを取ると、ギンをゴッドラオペにするために動いてくれた。今までゴッドラオペにさせる瞬間を見た事が無かったので、どんな事をするのかちょっとだけ心が高鳴っている。
「ホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイッ!」
ベガは空中に画面を表示すると、いつもの態度からは想像もつかない早業を披露した。
空中に向かって操作するベガの手は早すぎて見えず、ベガの操作する画面は目まぐるしく変わっていく。俺が認識できるのは、機関銃のようにとめどなく聞こえてくるホイという掛け声だけだ。
「ホホホホホホホホホホホホホ」
最早ホイの掛け声が早すぎて、イの音が聞こえない。
「ホホホホホホホイッ!……ふぅ、 終わったのじゃ。あとはこのボタンを押すだけじゃよ」
ベガが準備を終わらせるまで、ものの30秒であった。そのくせ、ベガは少しも息を切らしていなかった。
「あ! スーが押したい! ダメかな?」
「ん? 別に大丈夫じゃよ」
ベガに許可を貰ったので、スーがそのボタンを押すことになった。
「いくよ~! ポチッと!」
スーがボタンを押した瞬間、ギンが眩しいほど発光した。このような場合、日本では言わなければならない言葉がある。
「目がぁ! 目がぁー!」
俺の渾身のギャグは華麗にスルーされた。
心に少しの傷を負った気がしなくもない。
眩い光が収束すると、今まで光っていたところに、銀色が主体の鎧を着た、銀髪の美少年が立っていた。
「ギンです………よろしくお願いします」
ギンはとっても寡黙な男で、スーが明るく話しかけても一言ぐらいでしか返さない。
「ギン! もうちょっと話そうよー!」
「……これが普通なんで」
この先ギンと上手くやっていけるか一抹の不安がよぎったが、金髪ゴリラ変態女王に比べればマシだという事に気づいたら、スっと肩の力が抜けたのであった。




