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蓮は何故卑屈なのか?

~一言で分かる前回のあらすじ~


蓮は褒め殺され、ミラとベガはどちらも何かを隠してるようです。

「おい、お前らさっきまで何話してたんだよ?」


「「なんでもないよ (のじゃ)」」


俺の問いに作り物のような笑顔でベガとスピカは答えた。こいつらはミラの鳥鍋を食べてた時にいきなり抜けて数十分間話してたんだが、何を話していたのかめちゃくちゃ気になる…… だってあの二人だよ!? 今まで二人っきりで話した事ないじゃん! 絶対なんか重大な事話してるに違いな…… いや待て、もしかしたら俺に対する不満かも……?


例えば……


『ねぇねぇベガちゃん! さっきはレーくんの手前褒めたけどさぁ、やっぱりレーくんって弱っちくて足でまといなんだよ~ もうちょっと強い子召喚出来なかったの~?』


『ううむ、確かに予想外の弱さじゃったのじゃ…… よし! ワシに任せておけ! もっと強くてイケメンな奴を召喚してやるのJA☆』


『やった! それじゃあ役たたずのレーくんはポイだね! ポイ!』


『ああ、その通りじゃ! ポイじゃ!』


『『あははははははっ!』』


ってな感じの話をしていたのだろう、そうに違いない。実際奴らの結束が前より強くなってるし、どことなく俺に対してぎこちないし……


「ねぇベガちゃん、レーくんが少し怯えた顔で体震わせてるんだけど……」


「あぁ、あんだけお主に褒められたというのにまだ疑ってるようじゃぞ? なんでも自分が捨てられる話をしていたんじゃないのかと危惧しておる」


「だって! だってさぁ!」


俺は既に泣き目になっていた。そんな蓮を見てベガは聞こえるほど大きく鼻で笑い、スピカは大きくため息をついた。


「なんでお主はそう自分に自信がないんじゃ!」


「レーくんの欠点を上げるとしたら自分の自己評価が低すぎるとこだよね……」


やばい、ベガはいいとしてスピカの顔がガチで落胆してる時の顔だ。


「レーくん! どーしてそんなに自分に自信を持てないのさ! なんなのトラウマでもあるのかい!?」


「……ふぅ、こうまでせまられちゃぁ仕方ない。いいだろう、何故俺がここまでになったのか……その全貌をお教えしようではないか!あれは俺が中学生の頃だった……」


蓮は少し何かを考えるそぶりをすると、キメ顔で語り始めた。


「やばいよレーくんがいきなり語り出したんだけど。ベガちゃん、レーくんどうしちゃったのさ」


「……聞いてりゃわかるのじゃ」


「いや、聞いてりゃわかるって言ってもさ、もうそろそろスーちゃん迎えに行きたいんだけど……」


「それもそうじゃな…… どれ、結末を蓮の代わりにワシが教えようかの」


その言葉に蓮はギョッとした顔に変化した。


「ちょ、ちょっと待てよ! そこは俺に喋らせてよ!」


「だってお主話ベタじゃろ! ワシに話させればすぐじゃよ、すぐ!」


「どっちでもいいから早く喋っておくれよ…… ボクは早くスーちゃん探しに行きたいんだよ……」


ギャーギャーといつもの如く揉め始めたベガと蓮。その物音によって、鳥鍋を片付け終わったミラとかっちゃんがやって来た。


「あれ、何揉めてるんですか皆さん。鍋も食べ終わりましたし早くスーちゃん探しにいきましょうよ?」


「ホンマやで…… ワテがせっかくスー達案内してやるっちゅうのに! 鳥鍋するわ、蓮は泣くわ…… いい加減ワテに仕事をさせろや!」


「まぁまぁ、かっちゃんさん落ち着いてください! それで? 何の話をしてたんですか?」


そこでミラとかっちゃんに事情を説明すると、二人ともどっちでもいいわと言わんばかりの呆れ顔を披露した。


その後どちらが話すかという小学生並のくだらない動機に基づく論争が激化したが、こういう下らない事案に残念ながらではあるが慣れてしまっているミラが二人を取り持った。協議の結果、本人の昔話は本人がすべきだというミラのド正論によって蓮が話すことになった。


「まったく…… ベガのせいで余計な時間を使ってしまったけどまぁそれはおいといて。ギャラリーは増えたけれども『何故俺は卑屈になったのか』 お話しようではないか!」


「どのテンションでこいつは言っとるんじゃか……」


「こんなに堂々とした卑屈、ボク見たことないよ……」


「わ、私も今まで見たことありませんね…… なんか逆にかなりのポジティブシンキングに進化してますよね……」


「ワテもこんなに珍しい性格の奴見たことないで」


ヒソヒソと話してはいるが残念ながら蓮には丸聞こえであった。蓮は左の眉毛をひくつかせ、話を聞いてもらえないで駄々をこねる幼稚園児の如く怒った。


「黙って聞けよてめーら! ……それじゃあ話すぞ? あれは俺が中学生の頃だった……」


□□□


俺が中学生だった頃は、コミュ障で卑屈な性格じゃなく、どちらかと言うとクラスの中心にいるような明るく元気で気さくな性格だった。勉強は学年トップクラス、運動も人より優れていた。周りからは性格、勉強、運動の三拍子そろった人格者の烙印を押されていた。そんな俺が……


「人格者とか……くくっ……今とは全然違うのぅ……くくくっ」


回想中ぐらいは入ってくんなやクソロリ駄神! 「分かった分かった続きどうぞなのじゃ」


……ごほん、それでそんな俺が変わってしまったのはある事件に巻き込まれたからだ。


俺はいつもと変わらないある日、下校中に怪しい集団を見つけたんだ。4人の大男がフードを被った小柄な子を追いかけているという何とも非日常的な場面に出くわしてしまった。


普通ならばこんな場面スルーするだろう。しかし残念な事にこの時の俺は周りからもおだてられ、心のどこかで驕りを生んでいたのだ。この状況でも俺なら助け出せると。俺はヒーローになれるのだと。


そして俺はフードの子を追いかけ回している大男の前に立ちふさがった。フードの子は目深に被ったフードのせいで表情は分からなかったが、驚いている事だけはその様子から分かった。追いかけ回していた大男達も同様だ。そんな状況のおれの心境はさながらお姫様を助けるお伽噺の王子様の心地だった。


「おいおいおい…… どんな事情があるか知らねぇが…… こんな小さな子を追いかけ回すのはやめたらどうだい?」


俺は後ろでどうしたらいいか分からない様子のフードの子を自分の体で大男達から隠しながらそう言い放った。一般人ならすくんで動けない場面ではあるが、俺は柔道、空手、剣道、合気道、ボクシングと、その当時までに5つの格闘技と触れ合ってきたため、大男4人に向かって堂々としていられた。


「おいおいこいつ誰だよ? 死にたがりか? お前みてーなちっぽけな奴が出てくる場面じゃねーんだ!」


大男のリーダー格が俺を威圧するが、こうなっては退くに退けなかった。俺の後ろの子が震えた手で俺の服を掴んでいたのだ。ここで退いたら男が廃る。


「はん! うるせぇ…… 俺はお前らみてーに弱いものいじめする奴らが嫌いなんだよ!」


俺はそのリーダー格の顔面を思いっきり右ストレートでぶん殴った。リーダーがやられると思わなかった大男達がどうしたらいいかわからず硬直した隙を見逃さず、俺はフードの子の手を掴んで逃げ出した。流石に4人を相手取るほど俺も馬鹿じゃない。俺の算段としてはこのままこの子を連れて逃げて、土地勘を十二分に活かして隠れてやり過ごすというものであった。


「おいてめぇら! あのクソッタレのスカシ野郎を捕まえろ!」


殴られたリーダーが少し遅れて指示を出す。それに従い周りの大男達が逃げる俺たちを追いかける。


「やっばいぃ!!! アイツら追いかけてきたぁぁぁ!!! おい、追いつかれねぇためにももっとスピード上げるぞ大丈夫か!?」


フードの子が首を赤べこみたいに何度も縦に振ったので、本気で走った。実は武道の稽古の傍ら、小学生の頃から陸上部として活動をしてきたのだ、陸上部の意地にかけてあんな筋肉ダルマで機動力のなさそうな大男共に捕まるワケにはいかん。


「飛ばすぜぇぇぇ!!! 全力でついてきて!」


「わ、分かったぁぁぁぁ……」


どうやら声を聞く限りフードの子はフードの女の子だったようだ。ずっとモヤモヤしてたんだよねぇ、どっちなのか。ほらフード目深に被りすぎてて顔見えないんだもん! 胸の起伏も少な…… おっとこれ以上は失礼にあたるな。自粛しよ。


まぁそれは置いといて、気合いを入れた俺はその意気込み通り、最初の差をぐんぐんと広げて奴らを振り切る事ができた。とはいえまだ安心する事は出来ない。奴らは未だにこの辺りをうろついているんだからな……

どこかいい隠れ家あったかなぁ? うーむ……ダメだ全然思い浮かばねぇ。土地勘でいけると思って具体的な事考えてなかった数十分前の自分を殴りたいな。


一時的に俺ん家で匿うしかないか……


「あ、あのさ、誤解しないでほしいんだけど、ここら辺隠れるとこ無いし、その、あの、俺の家に来る?」


「え? な、なにかやましいことする気ですか……?」


瞬間フードの女の子は体をビクリと震わせた。間違いなく誤解された、すぐに解かなければ俺の肩書きに『変質者』がフェードインしてしまう!


「いや違う違う違う誤解しないでってば。俺の家喫茶店なんだよ。しかもいっつも閑古鳥が鳴いてる感じで客なんか来やしないから隠れるのにちょーどいいかと思って……」


なんか自分で言ってて悲しくなってきた……

おっと涙先輩が俺の左目から発射された。すかさず右目からも出てきた。うん! おれの心境ボロボロだね! 劇的な場面に出くわしてみたり、助けた女の子に変質者扱いされるし、挙句の果てに自分の店がまったく繁盛してないことをカミングアウトしなければならないとはな。まったく人生世知辛い。


しかしそこまでのリスクを払う価値はあったようで、その女の子がスッカスカの喫茶店に行くことを了承してくれた。これでまぁあの大男達から身を隠せるだろ。


俺は早速自分の家の方角へと歩き出すと、女の子が俺の服を強く引いた。引かれた方を見ると、目深に被っていたフードを外して、怯えながら真剣な顔をしていた。今まで全くどんな表情をしているのか分からなかったその子は、桜色の綺麗な長い髪を携え、顔は少し幼いがとても整っていて、アニメに出てくる女の子のような可愛さだった。そんな可愛い子が初めて自分から声を出し、しかも意を決した様な顔持ちで何かを言いたげにしていたのだ。


「あ、あの、言いにくいんだけどさ、さっきボクを追いかけてきてた大男四人衆は私の家に仕える使用人の方達なんだ……」


「えっ?」


俺は予想だにしない言葉をすぐに飲み込むことができなかった。さっきの大男達がこの嬢ちゃんに仕える使用人? えっじゃあこの嬢ちゃん何者だよ?


「あ、あの、あなたの名前お聞きしてもよろしいでしょうか?」


俺は冷や汗ダラッダラで聞いた。手汗も湧き出て嫌な感覚が全身を吹き抜ける。


その桜髪の嬢ちゃんは少し申し訳なさそうにある名家の一人娘の名前を口にした。


「ボクは 鈴星 桃。鈴星グループ会長の一人娘なんだよね…… あはは……」


鈴星グループ。それはたった一代で日本の経済の中心にまでくい込んできた規格外の会社だ。なんて言ったかな、『マジーフォース』エネルギーを独自開発したおかげでかなりの急成長を成し遂げることが出来たらしい。

その急成長を支えた『マジーフォース』がどれだけ凄いのか具体的な例を教えよう。


鈴星グループが作った商品の中に『ジャンプステップ』というものがある。これは簡単に言えば瞬間移動ができる器械、どこでもドアみたいなものだ。勿論こんな夢のような器械

は飛ぶように企業や国家に売れに売れてしまい、一躍日本のトップクラスの企業へと躍進したのだ。


そんな一般人とは程遠い殿上人のような方のご令嬢を、故意では無かったといえ誘拐紛いなことしていいとは思えない。いや、あってはならんのだ。ましてや、そのボディガードの方をぶん殴って連れ去るだなんて……


□□□


「あの時俺は思ったね、あぁやっちまったって。それでその鈴星家のごれい……」


蓮が気持ちよく語っていると、痺れを切らしたベガが蓮の言葉を遮った。


「長い! 長いってんじゃ! お前は何をタラタラタラタラ話してるんじゃ! 今からスーの元へ行くっつってんのに既に30分はかかっとるぞ!? 」


「もうちょっとだから待ってろってこのクソ駄神! 待つことも出来ねーのかこの世界の神様は! 見た目だけでなく精神的にも子供なんですかぁぁ?」


「何じゃとこの卑屈泣き虫!」


「てめぇが話すともっと長くなるだろが!」


「まぁまぁ落ち着いて下さい……」


最早見慣れたベガと蓮の喧嘩を手馴れた様子でミラが止めに入る。


「でも確かにベガ様の言うことも一理ありますよ? もう暗いですし、私達はスーちゃんの所に早く行ってあげないといけないです。蓮さんの話はちょっと長いですね……」


ミラが優しく蓮を諭す。ベガと内容は同じ事を言っているはずだが、これが人徳だろうか全く嫌な気分にならない。


「……分かった。それじゃあもうちょっとまとめてみる」


「いやレーくんはまとめるの苦手だしベガちゃんに話させよーよ」


「そやな。蓮坊クソ話長いわ。ベガの嬢ちゃんなら何分でいけるんや?」


「本気出せば1分もいらんのぅ。じゃって結局、あの後鈴星グループのご令嬢のボディガードに捕まり、鈴星家3代目当主にこっぴどく叱られ、罰としてメイド服で半年鈴星家に仕えたせいでプライドズタボロになって卑屈になったんじゃもんなぁ?」


ベガはスラスラと水が流れるように人の秘密を話した。話されてしまった蓮はがっくりとうなだれてしまった。



「あらら……容赦しませんねベガ様は……」


「当たり前じゃろ!なんたって神様なんじゃからな!」


ベガは断崖のような胸を張る。


「あ、でもどーしてレーくんはあんなにまで自分で話したがってたの?」


「あぁそんな事簡単じゃよ。ほら、メイド服で仕えてたって言ったじゃろ。その部分を執事服で仕えたっていう風に改変する気じゃったんじゃよ」


「確かにメイド服は恥ずかしいもんなぁ~ ワテならその時点で悶え死ぬわ」


蓮を除く全員の哄笑がボワ島に溢れかえった。


□□□


「確かにワシも悪ふざけが過ぎた…… すまぬこの通りじゃ、じゃからいい加減機嫌を直してくれぃ」


ベガの奴、口じゃあ謝ってはいるが、表情はとっても晴れ晴れとした表情だ。

……まぁ別にいいや。俺は卑屈だけどあんまり過去を振り返らないタイプだし。ベガと違って寛容だし。


「あ、そーいや蓮坊のさっきの話に出てきた鈴星 桃っちゅー子はべっぴんやったんか?」


ミラの一件の辺りで薄々感づいてはいたが、このカラスは本当にこういう話題が大好きのようだ。下卑た笑みが俺の仮説を確信まで昇華させている。まぁ……俺も嫌いじゃないですけどね!!


「あぁ、かなり美人……というか可愛い系だったかな? 」


桃色の髪がびっくりするほど似合ってる可愛い女の子だったなぁ…… 目はぱっちりしててまつ毛も長く、表情も百面相のようにコロコロと変わって、そのどれもに見とれてしまいそうになっていた…… いや、完璧に見とれてたな……


あれ? こうして特徴をあげてくとスピカとめっちゃ似てるな?

もしかして同一人物とか……?


「そんな難しい顔でスピカをジロジロ見てどうしたんですか蓮さん? 何か気になる事でも……?」


「そ、そーだよレーくん! は、恥ずかしいじゃないか!」


やっぱり似てるけど…… 同一人物ってのはありえないな! 第一にこの世界に来れないだろーし、スピカと鈴星さんでは雰囲気が全然違う。髪の色も赤と桃で相違してるしな。


「ちょっと! ボクを無視しないでよ!」


まぁ徹底的にさ、胸のサイズがなぁ……


「レ、レーくん? どこ見てんの? も、もしかして胸……?」


スピカはほら、慎ましいというか、起伏が少ないと言いますか…… まぁ一言で言うならちっぱいよね。いや違う貶してるわけじゃないよ? 俺は好きな大きさだしね?

話を戻そう、そんなスピカとは違って鈴星さんはたわわに実った果実を二つ胸に宿していた。中学生の中ではトップクラスだろう。

やはりその点から考慮しても、この二人が同一人物であるなんてありえない話だ。他人の空似だな。


「ねぇレーくん? さっきっから失礼な事考えてないかなぁ? 具体的にはボクの胸の事とかさぁ?」


スピカは黒い笑顔を浮かべながら何らかの魔法を起動させようとしていた。


「か、考えておりません……」


これ以上は生死に関わる、考えないようにしよ……


「全く蓮坊は学習せんな~ おっと、そないな事やってる内に着いたな。えーっと…… 目的地周辺に着きました。案内を終了します。」


かっちゃんは忍者が使うような煙と共にドロンと消えた。カーナビみたいな終わり方したな。あと地味に声が似てたな…… 練習してんかな?


そんなカーナビみたいなかっちゃんが指していた場所を見ると、ボワ島の中央の一際大きい大木の辺りを指していた。その一帯は暖かい光に満ちていて、賑やかな声が聞こえる。おそらくスー達がどんちゃん騒ぎしてんだなぁ……


俺達もその賑やか声がする方へと向かった。

歩いていると、辺りに木で作られた門や民家が所々に見えるが、スー達の姿は見えない。

……というかスー達、この短期間で民家とか門とか作ったのか?


「おいベガ、この家とか門って……」


「あぁ、ラオペ達を二手に分けておったんじゃよ。朝会ったラオペ達は歳の若い連中じゃ。現に全員子供じゃったろ?」


確かにみんな子供だったな。そのせいでアリスの変態スイッチがオンになったんだし。


「まぁその間に年長者の奴らが一致団結して簡易的に作ったんじゃろ。というかワシが作れって命令したんじゃ」


「あいつら一応俺の使役する魔物達なんですけど。勝手に使うのやめてくれません? チャリパクされてる気分なんだけど」


「いや今回はいいじゃろ、アイツらのためになったんじゃから。大体いきなり500匹も送ってくるから住むスペースが無くなってたんじゃよ」


「というか当たり前のようにグリズリに居着いてるけど、お前グリズリにばっかり居てもいいのかよ?」


「ええんじゃよ、やる事ないし」


とまぁベガと少し雑談しながら奥の方へ行くと、目の前には目を疑うような光景が広がっていた。


「おいベガ、これもお前の仕業?」


「いや、流石にワシも予想だにしなかった事じゃ…… やっぱりお主の周りには面白い事しか起こらんのぅ」


その場にはかがり火が円状に焚かれ、それに伴うように男女関係なく様々なゴッドラオペが陽気な歌声と共に踊り乱れる。その異常な熱気は50メートル離れてる俺達の元にも届くほどだ。


「す、凄いですね……」


「全くじゃ……」


ミラとべっぴんの感嘆の声がボソリと聞こえる。気持ちは分かる、俺も完全に油断してたよ。もっとこう、普通に出迎えてくれる姿を予想していたのだが、俺らそっちのけでまさかまさかのどんちゃん騒ぎ。そんなに虫から人になれたのが嬉しかったのかな?


「あれ? スーちゃんが見当たらないよ?」


スピカの言う通りスーが見当たらん。元々グリーンラオペの奴らが多いため、スーと同じ緑髪の子が多いのだが肝心のスーはどこにも見当たらない。


「おかしいな…… 」


俺が怪訝に思った時、ゴッドラオペ達がより一層盛り上がった。ゴッドラオペ達の中心にはステージが設置されており、そこにこの世界で一番目に生まれたゴッドラオペが現れたのだ。会場のボルテージは最高潮に達し、まるで国民的アイドルのコンサート会場のようだ。


そのアイドル扱いのゴッドラオペ……いや、俺にとってとっても馴染みがある緑髪の子供は元気一杯に周りに手を振りオーディエンスに応える。


「私の名前はスー! ここにいるゴッドラオペの女王だ! 今日は祭りだよー! もっともっと盛り上がって! 」


いったいうちの子は何をしているんだろうか? 残念ながらその問いに答えられる頭脳を持ち合わせていなかった……



話が全く進まねぇ!!

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