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九話

遅くなってすいません。

今回は王国サイドの番外編みたいな話です。

それではどうぞ。

「ガルナーザ及び、第一騎士団帰還しました。」


ここはリカルド王国の王城の宮殿である。豪華な他の内装と違って、機能面を重視した内装となっている。

目の前の壇上の王座に座っているのは、リカルド王国現国王リカルド14世その人である。

わずか14歳で国王に即位し、50年間国のために尽くしてきた。そろそろ後継者に席を譲るべき頃合いだが、跡継ぎの王子はまだまだ未熟者であるためなかなか決心が付かない。

国王が声を発する。


「よくぞ、戻って来てくれた、第一騎士団。さっそくで悪いがガルナーザ、何があったのか報告してくれ。」


「畏まりました。」


ガルナーザは跪き村で起こったことを語ろうとすると、ふと横にいた貴族が口を挟んできた。


「私の報告通り、帝国騎士の襲撃があったのであろう。団長殿?」


彼の名はベルト。大貴族派閥のトップに立つ存在で国王の座を狙っていると噂される悪評の絶えない腐敗貴族である。

今回、帝国騎士の襲撃があるとの情報を入手し、第一騎士団を村へ送るように王に助言した張本人だ。

おそらく自分の優秀さを周りの王と貴族に知らしめたいのだろう。

しかし、ガルナーザは言う。


「お言葉ですが、今回帝国騎士がいた形跡は発見されませんでした。」


ベルトは驚き、周りの貴族達がざわめき出す。中にはガルナーザを無能と揶揄する声もあった。


「静粛に。」


王の言葉を聞き、周りの貴族達は静かになる。


「ガルナーザ、詳しく話してくれ。」


ガルナーザは語り出した。出立する前にラダマルティスが立てたカバーストーリーを。


村は確かに襲われるていた。しかし、それは帝国騎士ではなく一匹の魔族であった。魔族は異形国を追放されて血に餓えていた。

そんな中、一つの村を発見し襲いかかった。その魔族は無抵抗の村人達を次々に殺していった。

だが、その魔族は一人の村娘が使い魔と共に討伐した。残念ながら帝国騎士がいたという証拠もなく。

現在は、冒険者ギルドに詳しい調査を依頼したとのことであった。


「私からは以上になります。」


ガルナーザの報告が終わると同時に、再び貴族達が騒ぎ始める。中でもベルトは予想外の事態に困惑していた。

本来ならば帝国騎士の襲撃によって戦争の火蓋が落とされ、王国を裏切り国を乗っ取る計画だった。

計画を狂わせた、存在しない魔族にベルトは怒りを向ける。

せめて騎士がいた物的証拠でもあれば、無理やりにでも戦争に持ち込めたのだが、その証拠は全てラダマルティスが保持していること貴族達は知らない。


「ふむ、では被害に会った者達には見舞金を送ろう。では次の議題に・・・」


王の言葉は最後まで続かなかった。突如、部屋の扉が爆発したからだ。

何事かと騎士団はガルナーザの指示に従い、それぞれ武器を構え王と貴族を守る。

やがて煙の中から姿を現す。

純白の鎧を身に纏った美しい聖騎士であった。オレンジ色のショートカット、茶色の瞳は普段の落ち着いたものとは違って、殺気立っていた。

彼女の名は、エイミー・アルカデス。第一騎士団に配属された新たな団員である。

すると、彼女は徐に持っていたものを投げた。それは縄で縛られたぼこぼこにされた暗殺者であった。


「今日でトータル30人目、送り込んだ奴出てこい。」


高いソプラノボイスが怒気を孕んでいる。腰に携えた女神より受け取った魔剣に手を伸ばしていた。

彼女はガルナーザに腕を買われて騎士団に入団したものの、王への忠誠心など微塵もなく、ある条件を提示して代わりに使えている。

だが、突如現れた美しい彼女に言い寄る貴族が多く、彼女の王国への不満は爆発寸前だった。

あからさまに目が泳いでいるベルトがいるのだが、エイミーは気付いていない。

彼女は舌打ちすると、身を翻して言った。


「次何かしたら、出て行く。」


彼女は部屋から出て行く。ガルナーザは後を副長に任せて、彼女の後を追った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「待ってくれ、エイミー殿。」


ガルナーザの声に廊下を歩いていたエイミーは振り返った。


「何ですか団長?手掛かりでも見つかりましたか?」


「いや、まだだ。部下を使っているのだが・・・。」


彼女はそうと返事をするが、その声は何処か落ち込んでいた。

しかし、今はそうではない。ガルナーザはエイミーに頭を下げる。


「申し訳ない、エイミー殿。私がもっとしっかりしていれば!」


ガルナーザは先程の無礼を詫びる。暗殺者を送り放ったのはガルナーザではないのだが、彼は人一倍責任感が強く、今回の事態は自分の失態だと感じていた。

そんなガルナーザにエイミーは微笑み言う。


「あなたが謝る必要なんてありませんよ。私も先程はやり過ぎました。」


「そう言ってもらえるとありがたい。」


「ではまた後で、今回のお話を聞かせください。」


「ああ、それでは私は失礼する。いつまでも陛下を待たせる訳にはいかんからな。」


ガルナーザは走り去ってゆく。エイミーは笑顔で送る。

ガルナーザが角を曲がった瞬間、エイミーは無表情になりため息をつく。


「愛想笑いも疲れるわね。」


なんとかこの王宮に入れたのは良いものの、想像よりも非常に疲れる。

やはり王国ではなく帝国に付くべきだったか。まあ、今は王国に付いていてやろう。ガルナーザは良い駒として動いているようだし。

利用できるものは使いものにならなくなるまで使わなくては。

エイミーは窓から空を見上げる。

この世界に来て17年の月日を過ごした。しかし、彼女には大きなものが欠けていた。それを手に入れなければ私は満たされない。


「何処にいるの?・・・・・薫・・・・・。」


彼女はエイミー・アルカデス。女神セレスティアによって転生された元人間、


清水しみず 向日葵ひまわり』。


彼女は必ず彼を見つけ出す。そのためには、たとえ私以外がどうなろうと関係ないのだ。全ては愛する彼と結ばれる為に。


その頃、村で復興作業を手伝うラダマルティスは寒さに耐性があるはずなのに、とてつもない悪寒を背筋に感じた。

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