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八話

ラダマンティスは、ある程度の嘘を交え、説明した。


「そうか、ラダマンティス殿もなかなかの人生を歩んでいるようだ。」


そんな中、話をまとめて出来たカバーストーリーはと言うと、


元々自分は、平凡な人間であったがある悪魔のような存在(幼馴染み)に殺され、自分勝手な奴(腐女神セレスティア)に魔法によって死神に変えられてしまって家族に捨てられた。

魔界でそれなりの強さと地位を手に入れるが、精神は人間のままであった自分、悪人意外は殺す事が出来ず、魔族からも煙たがられ、魔界を追放された。

その後、誰も自分を受け入れてくれず、一人で森の中をさ迷っていたら、存在が消えかけている所をリオンに助けられ、村まで付いて行くと帝国騎士の殺戮現場に遭遇。

騎士に恩人のリオンが刺されたため、その場にいた帝国騎士を皆殺しにした。

暴れ狂う自分をリオンが止め、暴走させないために、自分と契約し、今はリオンが自分を制御している。


というものだった。


・・・嘘と真実がめちゃくちゃに混ざり合っている。どうしてこうなった?

しかも、何か団長だけでなく団員達も同情の眼差しを向けてくる。村長なんて目に涙を浮かべている。

こんなつもりなんてなかった。罪悪感で胸が締め付けられる。


「騎士達の装備品は、どうなったのだろうか?」


ガルナーザはそう尋ねてくる。

先程聞いた話から推測すると、今回の極秘作戦には貴族が裏で絡んでいる。そうでなければあまりにもタイミングが良すぎる。

おそらく襲ったのが帝国騎士だと言う証拠が欲しいのだろう。その証拠を手に口実を作り、帝国に戦争を仕掛けるつもりなのだろう。

騎士達の装備品は全てラダマンティスが回収している。

だが、ラダマンティスは渡すつもりなど毛頭ない。

戦争になれば、一番被害を受けるのは国民だ。リオンは戦争になると各地の男達を徴兵し、戦場に送り出すと言っていた。

そうなれば、男手を失った村はまず無事ではすまないだろう。


「貴様は、民を殺す気か。」


ラダマンティスは威圧感のこもった声で言う。

ガルナーザは目を見開く。図星か。


「民を守るための騎士団が聞いて呆れる。貴様の行為が民を殺していることに気付いていないのか?人間。」


ラダマンティスは高圧的な態度と口調で話す。

周りの団員は、武器に手をかけ始める。

団長はたいそう信頼されているようだ。

しかし、ラダマンティスは更に続ける。


「人間、貴様の今の地位は何で出来ている?民の屍か?やはり、王国を統べる者は無能だらけか。」


ラダマンティスの言動をリオンが止める前に、ラダマンティスの目の前に剣が向けられた。


「何だ?人間。」


「私の事はいくらでも侮辱されようとかまわない・・・、だが、いくら村の救世主であるラダマンティス殿であっても、王国陛下を侮辱するのは許しておけない!」


そこには、絶対な忠義を捧げる一人の戦士がいた。


「そうか・・・、ならば死ね。」


とてつもない殺気が吹き荒れ、ガルナーザが気付いた時にはラダマンティスの鎌が迫っていた。

咄嗟に後ろに飛ぶ、空気を切り裂く音が先程いた場所で響く。

体勢を整え、剣を構える。


「ほぉ。あれを避けたか。」


ゆっくり死が迫って来る感覚にガルナーザは襲われる。自分に戦い方を教えてくれた師匠より遥かに強い。

ラダマンティスに勝てるイメージが全く浮かび上がらない。

ラダマンティスはゆっくり歩き出す。その姿はまさに死神そのものだ。近づくだけで鼓動が速まり、冷や汗が溢れてくる。

団員達が自分の前に立とうと動き出すが、ガルナーザは止める。


「来るな!お前達は、そこで見ていろ!!」


「しかし・・・!」


「これは、俺の戦いだ!」


ガルナーザはラダマンティスを見据え、剣を持つ手に更に力を込める。

正直、ガルナーザは逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。だが、引くわけにはいかない。


「逃げない事は、誉めやろう。今から私は本気を出す、その攻撃を受け止められれば、先の無礼を取り消そう。だが、止められなければ待っているのは死だ。」


「望むところだ!」


ラダマンティスはゆっくり鎌を構える。

リオン、村長、団員達が固唾を飲みながら見守る。まるで時が止まったように二人は動かない。

ガルナーザの頬から汗が流れ、その滴が地面に落ちた。それが合図となった。


ゴゥ!と黒い影が動き、風が吹き荒れる。


ラダマンティスはガルナーザの目の前に瞬時に移動し、そのまま鎌を振り下ろす。

だが、そのわずかに速くガルナーザは動いていた。


「おおおぉぉぉーーーーーーー!!」


見事な横凪ぎがラダマンティスに迫る。


ガキン!


ラダマンティスの鎌はガルナーザの背中のわずか数センチのところで止まっおり、ガルナーザの剣はラダマンティスの頬骨に当たっていた。

ゆっくり鎌を下げる。同時にガルナーザも剣を引く。


「私の負けです。団長殿。」


うぉぉーーー!

団員達の歓声が爆発した。口々に団長を称える。


「しかし、ラダマンティス殿は硬いな。この剣が通らないとは。本当に私の勝ちで良いのだろうか。」


「いえ、頬骨に少し傷が入りました。十分ですよ。」


ラダマンティスは自分の左頬骨を指指す。そこには確かに二センチほどの傷とも言えぬ傷があった。


「自分よりも強い存在に会ったのは、これで三人目だ。」


ラダマンティスはその言葉が気になったが、それよりも先にしなければならないことがあった。


「ガルナーザ殿、先程の無礼を許して欲しい。あなたの忠義を捧げる王を侮辱した事は決して許されない事だ。もし、許せないと言うなら私を殺してもかまわない。」


ガルナーザは、黙ってラダマンティスの謝罪を聞く。そして、ガルナーザは言う。


「いや、ラダマンティス殿の言った事はだいたい当たっている。戦争となれば、まさにそのとうりになる事は、明白だ。私も、そうなる事は避けたい。だが、その手段がないのだ。」


ガルナーザは悔しげに呟く。団員達も暗くなる。

そこで、ラダマンティスは提案をする。


「ならば、こうしましょう。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


騎士団は馬にまたがり、村長とリオン、ラダマンティスに別れの挨拶をする。


「それでは、失礼する。・・・ラダマンティス殿、本当にあれでよろしいのでしょうか?」


ラダマンティスは右手を上げ、かまわないと伝える。

ガルナーザは迷っていたようだが、迷いは一瞬、覚悟を決めたようだ。


「では。」


ガルナーザを先頭に、走り始めた。騎士団は見えなくなるまで、こちらに手を振っていた。


「本当に良かったの?」


リオンが隣で、そう尋ねる。


「かまわないよ。」


「そう。」


沈み始めた夕日を静かに二人で眺める。やがて、リオンは語り出す。


「私、冒険者になる。」


「あなた達の戦いを見てはっきりした、私もあなた達ように強くなりたい。」


リオンは決意の眼差しを向けて言う。


「だから、私と一緒に冒険者になって欲しいの。お願いします。」


リオンは頭を下げる。

ラダマンティスの答えなど、すでに決まっている。


「ええ、こちらこそよろしくお願いします。」


ラダマンティスは右手を差し出す。リオンも右手を出し、握手をする。

ここから、二人の冒険は始まりを告げる。赤い夕日が二人を明るく照らしていた。

リオン「そういえば、あなた全然本気出してなかったじゃない。」


ラダマンティス「いえ、本気でしたよ。」


リオン「どこが?」


ラダマンティス「私はただ、本気で手加減する(・・・・・)と言っただけですよ。」


確かに、ラダマンティスは本気を出すとしか言っていない。

それを聞いたリオンは、ラダマンティスの底知れなさを感じるのだった。

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