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七話

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ラダマンティスが強いことは、リオンは理解しているつもりだった。

だが、私の予想よりもはるかにラダマンティスは強かった。

リオンはラダマンティスの強さに、魅了された。はっきりと動きを捉えることはできなかったが、ラダマンティスの超越した戦いを見ただけで、


自分もあんな強さを手に入れたい


と思っていた。

その為なら、リオンは全てを投げ出すつもりでいた。

父と母は英雄のような存在であり、リオンは二人に誰よりも憧れていた。

二人の娘でありながら、才能がない自分が嫌だった。

そんな中巡って来たまたとないチャンス。

そうと決まればリオンの行動は早かった。ラダマンティスを閉じ込めた民家へ向かった。


扉の前に立ち早速開けようとするが、ラダマンティスの声が聞こえる。扉に耳を当て聞こうとするが、ラダマンティスは急に叫び出し、それに驚いたリオンは扉を開けてしてしまった。

そしてラダマンティスと目があった。

盗み聞きしようとしていたことがバレたのではないかと、内心びくびくしているけども、声をかける。


「どうしたの、一人で大きな声出して?」


「ああ・・・、何でもない。」


あまり深く詮索しないでおこう。ラダマンティスをの機嫌を損ねて、その力を教えて欲しいと頼んでも、断られるのは嫌だ。

とにかく、頼みを聞いてくれるようにしなくては。


「「あの・・・。」」


ラダマンティスとかぶってしまったことに驚いたが、私に先に話を譲ってもらったので続ける。


「あなたこれからどうする気?ここにいてもいい事無いわよ。」


「その事なんだが・・・。」


続けようとするが、ラダマンティスは何かを言おうとしたため聞くことにした。しかし何故目を合わせないのだろうか。


「あなたが良ければいいのですが・・・」


「私と契約しませんか?」


まさに、向こうからきてくれるとは思わなかった。リオンの返事はすでに決まっている。

しかし、ラダマンティスの契約の説明が長く、答えは決まっているのになかなか喋らせてくれない。

その後、説明の半分ほど聞き流し、本契約に進んだ。

ラダマンティスは契約書を何処からともなく出し、リオンの前に置いた。

リオンは迷いなく、契約書にサインした。


「それでは、これを。」


ラダマンティスは指輪を差し出す。

この指輪は、契約した者のバトルで得る経験値を代わりに受け取る特殊な効果を持つアイテムである。

ゲームでもめったに使われることのないアイテムだが、これはでは全く別の用途で使われる。


結婚指輪である。


プレーヤーのレベル最大になると、結婚システムと共に指輪はアイテムボックスに送られる。

結婚システムを使用すると、この指輪はプレーヤーの二人の薬指に装備される。

ラダマンティスは使う事などなかったが、まさか異世界に来てから使うとは思わなかった。

リオンは躊躇いなく、薬指に着ける。


「それでは、これで本契約は終了です。」


ラダマンティスは契約書をしまう。

しかし、これでは契約書というより婚姻届だな。後でもう一度説明しておこう。


それにしても、先程から外が騒がしい。

ラダマンティスはリオンの影に入り外に出る。


「おお、リオンそこにいたか。」


話かけてきたのは、この村の村長であった。リオンは訪ねる。


「何かあったのですか?」


「実は、またこの村に近づいている集団がいるのだ。」


なるほど、無理もない。普通に考えれば先程の帝国騎士が、増援を連れて来たのかもしれないのだから。やはり、全滅させておくべきだったか。


『リオン、他の村民を一ヶ所に集めろ。私が守りの魔法をかける。急げ!』


「わかった。」


リオンは言われた通りにこなしていく。集め終わると、ラダマンティスは影から出て魔法をかける。

しかし、ラダマンティスに怯える者が多い。どこかで敵意がないことを証明しなくては。


「では、向かって来る者達を出迎えに行こうか。」


ラダマンティスはリオンと村長を連れて村の入り口に向かった。


再びリオンの影に潜みしばらくすると、馬に乗った武装集団が近づいて来た。

しかし、先程の騎士とは違っていた。

帝国騎士は全員が同じような長剣ロングソードしか装備していなかったのに対して、 武装にまとまりがない。

短剣、メイス、弓、片手槍、各員が各々の武装をしている。

傭兵集団かとも考えたが、胸に何処かの国の紋章が見えたためそうではないだろう。

やがて一行は見事に整列し、一人の屈強な男が馬から降り、リオンと村長の前に進み出た。


「私は、リカルド王国第一騎士団団長、ガルナーザ・ストレイフだ。村を荒らし回る帝国騎士の討伐のため王の勅命を受け、駆けつけた者である。」


深い声が響き、リオンと村長が息を飲む。

どうやら王国でそれなりの地位の人間らしく、このような所に来るような人ではないようだ。


「見たところ、すでに襲われた後のようだな。間に合わなくてすまない。」


「いえ!どうか頭をお上げください。」


高い地位に就く人物が、身分の低い二人に謝罪の意を示している。どうやら悪い人間ではないようだ。


「早速だが、何があったか教えて欲しい。」


『では、私とリオンが説明しましょう。』


ラダマンティスはリオンの影から浮かび上がる。

突然の現象に後ろで整列していた団員達は、それぞれの武器に手をかける。


「あ、アンデット!?」


さすがに驚かせてしまったか。まぁ、いきなり影から二メートルほどの死神が現れれば、当然の反応か。


「君は、一体?」


「ふむ、私は死神ラダマンティス。隣にいるリオンの契約者だ。」


「契約者?」


「しかし、話さねばならない事が多すぎるな。立ち話もなんなので、テーブルと紅茶を用意するから、しばらく待っててくれ。」


そう言うとラダマンティスはアイテムボックスからテーブル、テーブルクロス、椅子、ティーポット、ティーカップ、皿などを取り出し準備してゆく。

ラダマンティスの手際の良さと、見たことのない美しい家具と食器に、周りの人間はただただ驚くばかりだ。

そして3分後、テーブルは見事に設置された。

ラダマンティスは全員椅子に座らせ、テーブルに紅茶と手作りのマドレーヌをテーブルに運ぶ。


「紅茶はダージリンオータムナルのストレートティー、マドレーヌのバターの風味を楽しめる優しい香りと渋みを持つ紅茶です。どうぞお召し上がりください。」


団員達は、毒でも入っているのではないかと疑っていたが、団長のガルナーザが躊躇いなく頂く所を見て、飲み始めた。


「うまい‼」


「何だこれは!?」


「信じられない!!」


団員達は、あまりの美味しさに驚きを隠せず喉を潤す。

ラダマンティスはその光景に、とても満足していた。やはり、人が笑顔なことは良い。


「こんなに美味しい紅茶は、初めてだ。ありがとう、ラダマンティス殿。」


「いえいえ、お口に合って何よりです。」


ガルナーザはカップを置き、こちらを見る。


「では、何があったか教えて欲しい。」


「ええ、ではどこから話ましょうか?」


ラダマンティスは、長くなりそうだと思いながら話し始めた。

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