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六話

その後、ラダマンティスは一軒の家に運ばれた。

ここに住んでいた人間はもういないらしい。

村人からすると頼りないだろうが、この空き家にラダマンティスを閉じ込めた。


ラダマンティスはベッドに座り、先程の事を考えていた。

あの時の事は鮮明に覚えている。感情に流されるまま、自分は殺戮を心から楽しんでいた。

人間だった頃には血を見ただけで気絶するような自分が、血を浴びることに最上級の喜びを感じていた。まるで本物の死神の気分であった。

そう考えていると、女神から着信が来た。ラダマンティスは連絡を繋いだ。


『もしもし~?元気にしてる~?』


なんとも場違いな声で話しかけてきた。本当にこいつ女神なのだろうか?


『失礼な!ちゃんと転生を司る女神、セレスティア様とは私の事です。』


また心を読んだ。というより、女神様に名前あったんだ。


『ふふん。あなたの考えていることはすぐにわかるのです。そして、今抱え込んでいる悩みもお見通しなのです。さぁ、話してみなさい。』


鬱陶しいが、自分をわかってくれるのは今のところ女神様だけなので、全て話すことにした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『うーん。それは大変でしたね~。となると、あれか~。』


どうやら、女神様は何か知っているようだ。すると女神様は語り出した。


『今のあなたは大変精神が安定していません。なぜかというと、現実世界の杉下 薫の精神とゲームキャラのラダマンティスの精神が共に存在しているからです。』


女神様曰く、怒りの感情が爆発して二人の精神のバランスが崩れた為、あのように暴走してしまったそうだ。

今ラダマンティスの精神は、戦いたいと思うゲームキャラの本能を杉下 薫の理性が無意識にブレーキをかけているのだ。

その為、先程は理性が怒りの感情によって安定せず、本能が爆発して本来のモンスターとして暴れてしまった。ということだ。

しかし、このままでは更なる被害が起こるのではないのだろうか?


「どうにかバランスを取ることはできないだろうか?」


『方法は有ります。』


『心の拠り所を作るのです。理性を安定させる為の心の拠り所を作ることで、本能を抑えたままバトルも日常生活も問題なく送れる筈です。』


やはり、すごい女神だったんだ。感心していると、女神様は答えた。


『その為、一番手っ取り早い方法を教えます。それは・・・、』




『あの村娘と結婚しちゃいなさいな♪』




・・・・・・。

・・・・・・?

・・・・・・はぁ⁉


『そうと決まればさっそく準備しなきゃ。バックアップは任せてちょうだい♪』


「ちょっと待てーーー!」


このままではいけないと思い、女神を止める。


「何でそうなるんですか‼」


『あら?もしかして気付いていないのですか?杉下様、あなたあの娘に一目惚れしているのですよ。』


「んな!?」


そんなはずは・・・、いや確かにリオンは可愛い。しかし、一目惚れなど・・・確かに暴走した時「元の優しいあなたに戻ってよ!」と言ってくれた時は凄く嬉しかった。いやいやいや⁉そんな訳。


『ほら。デレデレしちゃって。』


女神様の一言で、ハッ!としたラダマンティスは咳払いし、本来の冷静さを取り戻した。

他に何かないかと尋ねようとした時、急に女神は慌て出した。姿は見えないがとても尋常ではないことが起きたようであった。


『どうしましょう、もうこんな時間に!』


一体どうしたのだろうか。もしかして、女神様と話すことは本当は限られているのではないか。それとも何か起こったのだろうか。


『あぁ。早く地球に好きなBL本の新作販売が始まってしまう❗』


「どうでもいいわーーーーーー!!」


『じゃあ、一端切るわね♪後でまた連絡するから~♪』


「仕事しろ!腐女神ぃぃぃーーー!!」


一方的に通信は切れた。なんだか、先程までの悩みが吹き飛んだ。

しかし、ラダマンティスの中で女神の評価はワンランクダウンした。欲望に忠実すぎる女神であった。

すると、ドアの隙間から覗く視線に気付いた。振り返って見ると、そこにはリオンがいた。ラダマンティスのあげた回復薬ポーションを使ったのだろう、先程の刺された傷はもう何処にも見当たらなかった。


「ど、どうしたの?一人で大きな声出して。」


どうやら先程の女神との通信を聞かれていたようだ。女神との会話は他人には聞こえないため、一人で話しているように見える。

しかし、まさか先程話題にしていたリオンが来るとは。

女神との会話を思い出し、恥ずかしくて目が合わせられない。


「あぁ・・・、何でもない。」


・・・気まずい空気が流れる。この空気をどうにかしようと声をかける。


「「あの・・・」」


見事にリオンと被った。


「あっ、すまない。先に・・・」


「い、いえ・・・、そちらから・・・」


何だこの付き合いたての初恋カップルみたいなやり取りは。だが、少し嬉しかった。

そして、リオンから話すことになった。


「あなたこれからどうする気?ここにいてもいい事無いわよ。」


「その事なんだが。」


頭の中で女神の言葉が繰り返される。あぁまともに目を合わせられない。


「もし、あなたが良ければいいのですが・・・」


「私と契約しませんか?」


一体自分は何を言っているのか。そう疑問に思いながらラダマンティスは話を続ける。


「私と契約することであなたには多くのメリットがあります。まず、身の安全を保証します。勿論、この村の人間も例外ではございません。必ずお守りいたします。次に、短期間でのレベルアップが可能です。これには特殊なアイテムを使用しますが、全く問題ありません。それから・・・」


もはや、何処ぞの悪徳商法のように次々にメリットを言う。女神の言葉を真に受ける訳じゃないが、この世界に来て初めて会ったリオンとの繋がりは保って置きたかった。

そして話を続けること約5分、リオンは了承し、晴れて契約することになった。若干リオンが疲れた表情であったが。


その後、リオンが契約書にサインした直後、武装集団が近づいているとの知らせがラダマンティスとリオンに届いた。

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