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四話

「それで?何を聞きたいの?」


あれからリオンと名乗った少女はクッキーと紅茶を完食した。あんなに美味しそうにしている姿は何とも可愛いらしかった。

ラダマンティスはこの世界についてリオンに聞くことにしたのだ。なるべく厄介事から逃れたい為、常識や情勢などを知っておきたかったからだ。


「まずはこの世界にどのような国家が存在するのか教えて欲しい。」


これから先に国々に行く場合、そこがどのようなところであるのか知りたい。まあ、先程のリオンのリアクションからすると、人に遭遇したら恐れられるのは間違いないが。


「ふぅん。まあわかったわ。」


「じゃあ説明するけど、私の知っていることだけよ。」


「まずリカルド王国。今いるこの森も私の住む村もリカルド王国の領土よ。領土が他国よりも広いけど、王国貴族はバカばかりで、未開拓な地域が多くてモンスターが住みかにしている場所だらけ。そういえば、王国騎士団にすごい人が入ったって聞いたわ。」


「次にヴァルナ帝国。王国と違って皇帝が優秀で国々の中では一番豊かだって噂されてる。王国と帝国は毎年戦争をしているけど、ここ最近は王国が劣勢みたい。でもこの前世代交代した帝国魔術師が言うこと聞いてくれなくて、皇帝が困っているらしいわ。」


「最後に魔王国。大魔王サターンが支配する異業種の国ね。世界征服を企んでいるらしいけど、最近派閥争いが起きてサターン派とベルゼビート派に分かれてそれどころじゃないみたい。」


なるほど、しかしまあどの国家も魅力はあったのだが、問題だらけだな。一番ましなのは帝国かなぁ?

しかし大魔王サターンか。ゲームでは最初のボスモンスターだったな。初期は最強キャラだったがアップデートで新キャラが出てきて初心者でも倒せるほど弱体化したキャラだったが、この世界では頂点に立っているのか。

ふふ。自分は初期からやっていたから懐かしい気分だ。しかし、ベルゼビートは聞いたことがない。この世界にしかいないモンスターだろうか?


「ありがとう。おかげでよくわかった。」


「へー。」


彼女は興味をなくしたような声で返事した。


しかし、ここに居ては始まらないな。とすると・・・


「すまないが、君の村に案内してくれないか?」


「はぁ⁉何であんたを!」


理由はごもっともだ。しかし、ここで引き下がる訳にはいかない。


「この世界の人々がどのような暮らしをしているのか見てみたい。安心してくれ、村人達には何もしないことを約束しよう。」


その後、必死の説得によって彼女は渋々了承した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


草をかき分けながらリオンは歩く。想定外の出来事によって、長く森にいたためこの後の予定がだいぶ狂ってしまった。

さらにラダマンティスに運ばれた洞窟は村から歩いた道からかなり離れていたため、このような道無き道を歩く羽目になってしまった。

しかし、この場所はモンスターが出る。そんな場所を武器を持たずに歩くのは本来なら自殺行為である。


「本当に大丈夫なんでしょうね。」


「ああ。安心してくれ。」


ラダマンティスの声が響く。しかし、その姿は何処にもない。

今の彼はリオンの影の中にいた。

ラダマンティスの《スキル》『闇渡り』の能力である。影に出入りするだけの能力だが、これがとても便利なのだ。ゲームではプレイヤーの影に潜み情報収集を行ったり、敵プレイヤーに不意討ちを仕掛けたり(たまに味方の裏切りに使用)とラダマンティスには欠かせない《スキル》だ。

この《スキル》を使い、モンスターの気配を感じ取った時にモンスターの影に入りそのまま倒すという行為を繰り返していた。


「あなたは良いわね。強くて・・・」


何か含みのある言動だな。ふと、気になってリオンの《ステータス》を見る。そういえば、モンスター以外の《ステータス》を見るのは初めてだな。

《ステータス》が浮かび上がる。ふむ。どれどれ・・・


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

・リオン・ムラサメ 種族 (人間) レベル7


《ステータス》

・HP40

・攻撃23

・MP90

・防御17

・素早さ37


《スキル》『未覚醒』


《職業》『村娘』


《寿命》70年

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うむ、《職業》が『村娘』とは。ゲームにはこんな《職業》はなかったな。

だがそれよりも気になるのは《スキル》の欄だ。これはゲームでも稀にある現象だった。本来スキルはレベルによって取得できるものが変わってくる。だが、レベルが足りなくても《スキル》は取得できるが、その代わり、《スキル》の能力は発動しないため『未覚醒』と表示される。

つまり、彼女は《スキル》がまだ発動していないのだ。決して弱い訳ではない。

これから誰よりも強くなれるのではないだろうか?

すると突然、彼女は走り出した。


「おい⁉急にどうした。」


影の中にいるラダマンティスが声をかけるが、彼女の返事はひどく切迫したものだった。


「村の方から煙が上がってるの。何かあったのかもしれない!」


それを聞き、ラダマンティスは気配を探る。

確かに彼女の示した方向には大勢の人間がいるようだ。祭りか何かじゃないのかと考えていたが、人間の気配が少しずつ減少していることに気付いた。

ただ事ではないと思い、ラダマンティスは気を引き締めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「何よ・・・、これ・・・」


リオンは目の前に広がる光景が信じられなかった。この村で家族のような人達が血を流して倒れているのだ。そして、全員事切れていた。

畑仕事を毎回手伝ってくれた、力自慢のモルガンさん。

同い年なのに村のお姉さん的存在だった、しっかり者のリーナ。

弟のようにいつも後ろをついてきた、村長の子アルト。

みんなさっきまで生きていた。元気に仕事だ仕事だって笑顔だった。


「嘘よ嘘よ嘘よ‼」


これは悪い夢だ。きっと自分はまだ寝ているんだ。ラダマンティスに会ったことも全部夢だ。

リオンは現実から目を背け始めた。その為、背後から迫る影に気が付かなかった。

気配を感じて振り返った時には、もう影はリオンを見下ろしていた。

そこにいたのは全身鎧フルプレートを身に纏い、右手に血で汚れた長剣ロングソードを持った騎士であった。胸に帝国の紋章がある。

ヘルムに開いたスリットからこちらを冷たい目で見下していた。

無謀にもリオンは騎士に飛びかかったが、腹部に騎士の蹴りが刺さり、その場に蹲る。

騎士は蹲るリオンの髪を掴み、そのまま引きずって行く。


「痛い!痛い!止めて!!」


リオンは叫ぶが騎士は気にせず引きずってゆく。

やがて村の広場まで連れて行かれると、無造作に投げられた。

周りには生き残った村人が集められていた。だが、人数が足りない。集められた村人は50人ほど、この村には200人が暮らしていたはずだ。


「よし。これで全員か。」


隊長のような騎士が声を上げる。


「ならば、数人だけ残して後は村を焼く準備を始めろ。」


隊長と見られる騎士をリオンは睨み付け叫ぶ。


「あなた。こんなことしていいと思っているの!」


するとこちらを見た隊長騎士は、リオンに近づいてゆき・・・

長剣ロングソードをリオンの左肩に突き刺した。


「あぁぁぁぁーーー!?」


左肩に感じたことのない激痛が走る。傷口から血が溢れ出す。押さえるものの血は止まらない。


「まずは、貴様からだ。」


隊長騎士は長剣ロングソードを振りかぶった。そしてそのまま全力で振り下ろされた長剣ロングソードはリオンに迫り・・・


反重力波アンチグラビティー・ウェーブ


突き刺さる前に隊長騎士は吹き飛ばされた。そして少し痙攣すると、そのまま動かなくなった。

他の騎士は何が起こったのか理解出来ずその場で固まった。村人達も先程の光景が信じられず、リオンの方を見ていた。


すると、リオンの影から何かが浮かび上がってくる。真っ黒な何かはやがて人の形になり・・・


死がそこにいた。


「さて、貴様らに死を与えよう。」


死神ラダマンティスは死を宣告する。

騎士達の結末は、もう決まっていた。

反重力波アンチグラビティー・ウェーブ レベル7魔法

・レベル3の衝撃波ショック・ウェーブの強化版。相手を吹き飛ばすだけの衝撃波ショック・ウェーブと違い、吹き飛ばした後、追加効果で相手の素早さを下げる。


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