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7話 黒龍伝説

 更にそこから一週間後。ここまで毎日フィールと共に里に出て色々と見ていたものの、特に変化は起きてはいない。


 だが、今日もフィールは里に出ている。前と違うところは、今回俺がついて行っていないいう事だが。


 俺とビアンカがこの屋敷の書物を読み漁ってた時にフィールが来て、


「……忙しそうだから、一人で行く」


 と言い出したのだ。流石に、俺はそれを全力で止めようとした。


 だが、


「このくらい何時でも出来るから動行するぞ」


「いや、いい。悪いから」


「調べ物なら私がしますから、遠慮しないで下さい」


 こんな言葉のキャッチボールが割と長い間続いた。最後の方は同じやりとりを3ループくらい繰り返したりして相当長引いていた。


 まあ、そんな感じで続けていたらフィールがある程度折れて、


「……じゃあ、暇してるミユキを連れてく」


 と言い出したので、俺たちがそれを了承して今に至る。つまり、俺はついて行ってはいないが、美雪はついて行っている。


 なお、俺たちが屋敷の書物を読み漁っているのは主に歴史を調べるためだ。人の街には無いような書物がある可能性が高いので、出来る限り調べておきたいというのがあった。


 ビアンカは3日前程から既に書物を読み漁っており、既に書庫の5分の1は把握しているとのこと。だが、未だに大した情報は無いという。


 そんな理由もあったので、現在読書に励んでいるのだ。だが、正直俺はいらなかったんじゃないかと思っている。


 何故なら、


「この本にも興味深い事は書かれてませんね……。もう少し読むペースを上げなきゃいけないでしょうか」


「3冊同時に速読してる奴が何を言うか」


 三ヶ月の修行期間のせいですっかり忘れていたが、此奴の情報処理能力はそれまた随分とチートだった。今にして思うと、魔王城でも同じような事をやってた気がする。


 姿が人間サイズなのでたまに忘れそうになるが、こいつはホムンクルス。情報の扱いに関しては他の追随を許さない種族なのだ。こういう事は、俺やフィールでは到底及ばない。


 今のペースを比較すると、俺が一冊を読む間にビアンカは三冊同時を2セット、つまり六冊読んでいる。そう考えたら、要らないんじゃないかと思ってしまうのも無理は無いよね。


 でも、俺は本を読み続けている。その理由は少し特殊なものだ。


 書かれている本の中に、幾つかビアンカでも読むのに苦労するものがあったのだ。なんでも龍人特有の方言的なものが大量に使われた日記のようなものがあり、それはどうにも読みづらかったとか。


 対して俺は、召喚されて以降見たことない文字でもスラスラ読める。召喚魔法の賜物だろうが、相当便利な事には変わりがない。


 もっとも、読むのに苦労すると言っても通常の5.6倍位の時間程度で解読は出来るらしいが。まあ、ビアンカがそこまで解読に苦労する書物を俺が楽に読めるのだからしっかりと読み漁っている。


 とはいえ。


「まともな情報が無え……」


 この一言に尽きる。まともに使えるような情報が、マジで見つからないのだ。日記とはいえ、良くて100年前程の。それ以上のものは出てこなく、またそこにも大した情報は無い。


「まあ、そんなものですよね。城の書庫でも無いんですし、大したものに期待する方が無理な話かもしれませんね」


「でも探すんだろ?」


「無論です」

 

 無いかどうかは探せば分かる。そういう理論だ。否定したいものの、それは事実と言えば事実なので否定できる理論はどこにも無い。おまけに、あと1ヶ月もあれば余裕で探し終えられると考えれば不可能な話でも無いのが困りどころだ。


「……ぬ」


 そして、そんな会話を交わしてからお互いに黙々と本を読み漁る事なんと5時間ほど。この時点で、時刻は午後の4時くらいを回った。


 その辺りで、沈黙を貫いていたビアンカからそんな声が漏れる。困ったような、そして非常に興味深い物を見つけたような。そんな声だ。


 俺は今読んでいた本を一旦置いてビアンカのいる方に歩いていく。ビアンカは大量の積み上げられた本に囲まれ、そしてその中央で一冊の本のようなものの表紙を見つめながら止まっている。


「……ビアンカ。その本がどうかしたのか?」


 俺はビアンカに声を掛ける。すると、ビアンカは妖しい笑みを浮かべながら返答する。


「……カイト様。私にはこの本が読めないのですが……おそらく、大当たりを引き当てました」


「大当たり?」


 本は今まで見たことのない文字で書かれており、読めないとはそういう事だろう。だが、ビアンカはどこか嬉しそうな声で言う。


「ええ。この文字、読めなくても私には何という文字かは見当が付きます。これは確か龍文字というもので龍人族が遥か昔……2、3000年程前に使っていた筈のものです」


「ぅおい!?3000!?」


 ビアンカが言ったことに俺は思わず驚きの声を上げてしまう。つまり、このの内容はそれほど前に書かれたものだということ。


「あと、この本の紙はどちらかというと羊皮紙に近いもののようですね。それも、魔物の皮を使った。それが水気に強いものだったからこそ、今の今まで残ってきたのでしょう」


 ビアンカは何故1000年以上も本が残っていたかを推測している。俺はそれを受け取ってマジマジと見つめる。


「……『黒龍伝説』?」


「やはり読めるのですね?」


 その本のタイトルは黒龍伝説。簡潔ながら、何が書かれているかをはっきりと表したタイトルだ。


 黒龍。そう言われて思い浮かぶのは、フィールが龍化した時の姿だ。


 未だ完全な龍化は出来ずとも、部分龍化をした時に現れる鱗や翼は漆黒に染まっている。恐らく、完全に龍化した時は黒龍と呼ぶに相応しい姿に変わることだろう。


 そう考えると、この本がフィールと無関係とは思えないような気もする。それに、カエルムの言っていた全属性に関するものの可能性もあるのだ。


 そこまで来ると、読まない理由が見当たらない。よって、俺はその本を開き、ペラペラとめくりながら内容を確認する。


「あー……そうは言っても欠損がそこそこ多いな。大分文字が読めなくなってる」


 だが、いくら丈夫な素材で作られていても、数千年の時を耐えられるようには作られてはいない。それゆえ、文字は非常に読みづらくなっている。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 黒龍の威厳に全ては平伏す


 ……の咆哮は全てを震わす


 黒龍の……全てを破壊す


 それは………の残せし悪夢


 それは混沌神の………希望

 

 かの者……への…を開くか


 かの者永久に光を……か


 彼は………が残せし守護者


 破を………い導く者にして

 

 ……を壊す守護者でもあり


 その破魔の剣は誰に………


 その剣は………の敵に向く


 決して敵に…………なかれ


 黒龍の……を逃れるならば


 敵に………愚者共の末路は


 九つの光に………消え去る


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 これは、本の始めのページに書かれていた一つの詩のようなものだ。しかし、書かれている内容は恐ろしさを感じさせる。


「……これは、やはりフィールさんと関係があるのでしょうか?」


 俺が音読した内容を聞いたビアンカはそう呟く。恐怖などの色はなく、単純に気になるっているだけの声だ。


「いまいち分からねえけど……気になるワードは二つ有ったな。九つの光……これは多分各属性の事を表してるのか?」


 俺が気になった単語の一つである九つの光というのは、おそらく属性の事を表しているんだと思う。この本の内容をカエルムの言っていた全属性を持つ者の話に当てはめれば、凄くしっくりくる気がするのだ。


 そして、もう一つのワード。というか、こっちは一度聞いたことのあるもの故に気になったものだ。


「それと混沌神……確かこれってアウィスが言ってたケイオスっていう神だったか?」


「ええ、恐らく。少なくとも、混沌神と言われている神はケイオス様しか思い浮かばないので」


 混沌神。これはアウィスから破壊神と三天使の話をした時に聞いたものだ。こちらはフィールとの結びつきが不明だが、この本の内容に何かしらの関係があると思われる。


「……ううむ、分からん。関連があるにしても、そもそもケイオスとやらは三天使に負けて以降姿を現してないみたいだし、そうなるとフィールとの関係も、それ以前にこの黒龍との関係も無くなるのか。龍人の使ってる文字っていうなら、魔道機械文明以後に書かれたものの筈だしな」


 龍人は、魔道機械文明が終わったその後に人族から派生した種族だったと思う。そうなると、ケイオスが姿を最後に表したというあの大戦の際には龍人は存在していなかった筈だ。


 だが、ここにははっきりと混沌神と記載されている。同じ名を関する全く別の神とも思えないし、かといって同一の神だとも思えない。すごい厄介だな。


「……取り敢えず、残りを読んでみたら如何ですか?」


「……そうだな」


 俺は、ビアンカの助言通りに本を読み進めていく。

 

 鋭利な牙は全てを貫き


 堅牢な鱗には如何なる攻撃も通じず


 重厚な尾は振るうだけで大地をも砕く


 偉大な翼にて大空を舞い


 漆黒のブレスは光をも呑み込む

 

 出てくるのは、その黒龍が如何に畏怖すべき存在で、強大な存在であるかという事だけ。あれ以降のページには、混沌神の名や他に興味を惹かれそうな記述はされていなかった。


「結局あれ以降情報は無しか。いや、少しでも関係がありそうなものを見つけられただけ御の字か?」


「これだけの量の本を漁った労力には見合ってないかもしれませんね」

 

 俺は最後のページを開きながらビアンカと話す。あまり得られるものは無かったと、少し残念そうに。


 だが、そこでビアンカがある事に気付いた。俺の些細なミスに。


「……あれ?カイト様、今摘んでるページ……2枚重なってませんか?」


「……え?うわ、マジだ」


 俺は最後のページを摘んでいたつもりだったのだが、それは2枚重なっていたのだ。よって、まだ見ていないページが残ってたということ。


 俺はそのページを開く。そのページは、一枚の見開きのようになっており一つの絵が書かれているだけであった。


 勿論、書かれている絵は黒龍と呼ばれるものだろう。


 漆黒の体躯。4枚の翼。太く、それでいて蛇のように長い尾。そして、鋭い爪を備えた手足。


 また、多少の差異こそあれどそれらの部位は何処となくフィールの顕現させたそれと似ている。未だ顕現させていない、そして最も異質とも呼べる部位を除けば。


「……カイト様?なにが書かれてたんですか?顔が引き攣ってますよ?」


 俺がその絵を見ていると、ビアンカからそんな事を指摘される。確かに、その絵に書かれていた龍の異質さ故に顔が引き攣っていたかもしれない。


「……この本に書かれてる黒龍……俺の元いた世界で神話とかで語られるような、そんな奴だったんだよ。俺らの世界でそいつは……」


 俺はビアンカにその理由を伝えながら絵を見せようとした。だが、その行為は不意に止められた。


「「っ!?」」


 突然、思わず身がすくむ様な強大な気配を感じたのだ。俺もビアンカも本を放り投げ、何時でも戦えるような態勢を整える。


「……カイト様、この気配……」


「ああ、間違いない」


 構えてから10秒程。気配の場所を探っていた俺たちはその気配の根源を、そして持ち主を知ることになった。


 探るだけで体が警鐘を鳴らすような気配。しかし、感じたことの無い気配とは決して言えない、寧ろ間違えようのない程に感じ続けてきた気配。


「何時もよりも巨大で何か別の気配が混ざってるような気がするが……この気配は、間違いなくフィールの気配だ」


 その気配は、今里にいるフィールの気配。そして、正体を明かさぬように隠し続けてきた気配を表したということは。

 

「決心が固まったか、トラブルが起きたかって事ですよね……!」


「そうだろうな。で、特に相談が無かったって事は多分後者だ!急ぐぞ!」


 俺たちは顔を見合わせて頷いた後、全速力でその気配の感じる方へと駆けて行った。

ついに、里でアクション発生。

さあ、フィールの、里の命運は如何に!

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