表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/170

幼馴染みside6 嘘だと言ってよ、晶!

 海斗達がウルブスの村を出てからおおよそ一週間後。王都入り口の門は騒乱に包まれた。


「な、なんだアレは!?新手の魔物か!?」


「馬鹿っ!ありゃ人だろ!その弓下ろせ!」


「人ならなんで空なんか飛んでんだよ!?魔族だ!」


「嫌だぁ!死にたくなぁい!死にたくなぁい!」


「ははっ。俺、王都に戻ったら、結婚するんだ……」


「おい馬鹿止めろ」


 何故そんな事になっているのか。それは王都に向かって謎の飛行物体が接近しているからである。


 この世界の人間は原則飛べない。空を飛ぶためのアーティファクトも一応あるにはあるが、それは国宝になっている為使われる事は無い。


 なのに、飛んでいるのはどう見ても人。しかも、それが三人いる。そこまで来たら、見た目が同じな魔族と思ってしまっても仕方が無い事なのかもしれない。


 そして、その元凶達は。


「おい、百華!なんか弓で狙われてねえか!?」


「本当だー。まあ、問題無いでしょ」


「何処がだ!?って、危なっ!?撃たれてんじゃねぇかよ!」


「そう言いつつも避けられてるから問題無いんじゃないかい?」


「うるせえ!」


 海斗から飛行板を貰い受けて王都に向かっていた例の三人であった。今では多少操作にも慣れ、途中街にも寄りながら王都を目指していたのだが。


「そもそも、お前が「派手に行こうよ!」とか言ってこれに乗ったまま王都の門まで行こうとか言ったからこうなったんだろうが!」


「何をぉ!「面白そうだな、賛成!」って言ってたでしょ!?」


「もうそんな事言っても手遅れなんだけどね」


 どっちにこうなった責任があるかを言い争う百華と忍。だが、晶の言う通りこんな事をしてもこの状態は改善しない……と思っていたのだが、


「……なあ、光真。凄い、聞き覚えのある声がするんだが」


「奇遇だな健斗。俺もだ」


「美雪は見えないけど……百華と影山と遠藤よね、あれ」


「やっぱりそうだよね、あれ」


 運良くその場に居合わせた光真組がその光景を見てボソリと声を漏らす。そして、四人は構えていた武器を下ろす。


「おおい!忍ぅ!晶ぁ!八重樫ぃ!てめえらなんでそんな所にいるんだぁ!?」


 健斗が大声で空にいる三人に大声で呼びかける。そして、それを聞いた地上の人達は「なんだ!?」という感じでそっちの方を振り向く。


 それにより、狙いが外れた忍達三人は出来る限り急ぎながら地上に降りてくる。降りてさえしまえば光真達がいるから問題は解決するのだ。


「ありがとな、健斗。助かった」


「この位気にすんな。で、なんだ、それ」


 忍は健斗にお礼を言う。もともと二人は仲が悪い訳でも無いので、特に壁は無いのだ。まあ、よく気付いてもらえなかったりもするが。


「これか?海斗の野郎から貰った移動用のアーティファクトだ。まあ、本人はここには居ねえけどな」


「お前らも彼奴に会ったのか?」


「ああ。その時に色々話して色々あって美雪が着いてく事になって色々あってこのアーティファクトを貰って色々あって今こうしてトラブってる所だからな」


「色々多いなおい」


「まあ、そこら辺は後で話す」


 忍は、健斗の質問をそこそこ適当に返していく。話が濃いので、こんな所で話す内容ではないというのが主な理由である。


 なお、その時百華は、


「やっほー、久しぶり」


「相変わらず能天気ね」


「さっきまで弓とかで狙われてたのに」


「あの程度、当たらなければどうという事は無いからね」


 という感じで、女子三人で会話をしていた。特に込み入った話はせずに、雑談みたいな内容の話を続けている。


 明るい百華はクラスの女子達にも馴染みやすく、女子勢とは大体仲が良かったりする。ゆえに、こういう時は積極的に話をしたりしている。その内容に重要性があるかどうかは別問題だが。


「って、勇者殿!?」


「あ、どうも」


 武器を構えていた門番やその他並んでいた人達は、飛んでいた三人の正体に気付いて叫び声を上げる。まさか、魔王を倒すために呼ばれたという勇者だとは思ってもみなかったのだろう。


 そして、危険が無いと知った後は、勿論質問攻めが起こる。「あのアーティファクトは何なのか?」とか、「どうして此処にいるのか?」とか、ひたすら聞かれ続ける。


「あ、えっとだな……」


「えっと、うーんと……」


「それは……」


 それに関して、答えるに答えられない三人。此処でやすやすと答えられない内容なのだが、此処で答えないと話が進みそうにないという厄介さが三人の頭をオーバーヒート寸前まで追い込む。


 だが、そこに救いが訪れる。門の内側から凄まじい速度で何かが迫ってきたのだ。そして、それは誰もが知っている有名人である。


「アキラ!シノブ!モモカ!アレは一体なんだ!?」


「あ、バルス団長!」


「久しぶりです、バルスさん」


 走ってきたのはマンサーナ王国騎士団長、バルスであった。なんと、王城から三人を視認して全力ダッシュしてきたという。ちなみに、その距離でどうして分かったかと言えば……剣士の感だという。


「お、コウマ達も居んのか。丁度いい、さっさと城に来い。色々と聞きたい事があるからな」


 バルス団長は光真達も居ることを確認すると、さっさと城に来ることを促す。本当は急かす意味はないのだが、騒動から抜け出させてやるというバルス団長の粋な計らいである。


「あ、はい。ありがとうございます」


「助かった……」


 そして、ポカンとしている外野を放置して一行は王城へと向かう。取り残された人が「……結局、何だったんだ?」と呟く声が静かに響き渡った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「シノブさん!それに皆さんも!」


「久しぶりだな、フローレ」


 城に入ってまず出迎えたのは、金髪サイドテール碧眼の少女、フローレ王女である。なお、サラッと忍がタメ口を聞いてるのは訳がある。


 王女という高い立場にはいながらも、一応は助けてもらう側の人物。それなのに、助けてくれる人に敬語を使わせるのはいかがなものか。そう感じたフローレは、地球勢のメンバーに、「王女としてではなく、一人の女の子として扱ってください」とお願いしたのだ。


 勿論、それに困惑した人もいた。だが、忍達を始めとした幼馴染み組は即答でそれに応じた。


 フローレは、海斗の所在を知っていた数少ない人物の一人。悩みを共有する相手としては御誂え向きだったのだ。


 まあ、そんな考えで接していたとはいえ、気兼ねなく話していれば少しずつ仲良くなるというもの。事実、普通に意味のない話で盛り上がるくらいには仲良くなっていたりする。


「はい、久しぶりです。それで、今日はどうしたんですか?それにミユキさんの姿も見えませんが」


 なお、フローレの口調が敬語のままだと思う人もいるかもしれないが、フローレ曰く「普段もこんな口調なんです」との事。王女として育ち、礼儀作法を叩き込まれた結果常日頃から敬語を使うようになってしまったのだ。


「ああ、それは此処で話すような内容じゃねえから、入ってからにさせてくれ。結構複雑な内容なんだ」


「はい、分かりました。では、行きましょうか」


 忍がそう言うと、フローレはそれに応じてクルッと回れ右してから奥の方へと歩いていく。その背中は、ピンと張ってはいるが、何処か疲れた様子を感じさせる。


「……フローレちゃん、何か有ったの?」


「へ?どうしたんですか、いきなりそんなことを言って」


 それに気付いた百華は、何か有ったのかと心配しながら聞く。その様子に関しては安藤も霧島も気付いていたようで、うんうんと頷いている。


「だって、なんか凄い疲れてるように見えるんだもん」


「……確かに最近仕事漬けになってますけど、そこまで酷いでしょうか?出来る限り休息は取って疲れを引きずらないようにはしてるのですが」


 王女はかなり忙しい。王族としての仕事は幾らでもあり、フローレもそれに巻き込まれる側にある。それ故に、「これ少女に押し付ける量じゃねえだろ」という量の仕事をこなさなければならないのである。


 なお、休息は1日5時間程度。少しずつ、少しずつ休息時間を切り詰めて行ったらその位まで短くなってしまっている。現在進行形で。


「そ、そうなんだ。ごめんね、力になれなくて」


「ふふっ、良いですよ。私は王族、この位の仕事漬けは慣れてますから。この程度で倒れたりはしませんよ」


 事実、酷い時には三徹もあった事のあるフローレ。この程度など問題はあんまりなかったりする。疲れが貯まらないとは言わないが。


 そして、そんな話をしながら城の客室に到着する。別に話を聞かれない所なら何処でも良かったのだが、何となくで此処に行き着いたという。


「……よし、じゃあなんでお前らが此処にいるかを聞かせてくれ。何か報告しないといけない事があるんだろ?」

 

 全員が座った事を確認してから、バルス団長が尋ねる。その目付きは騎士団長に相応しい鋭い目付きだ。


「「それは……」」


 そして、それを話そうとして光真と晶の声が被る。その後、二人が譲り合うように手で示す。


 それが3、4回続いた辺りでバルス団長が割り込んで告げる。


「……じゃあコウマから話してくれ。このままだとキリがねえからな」


「あ、分かりました。じゃあ……」


 バルス団長の言葉に応じて、光真は海斗と出会った事、海斗から聞いた事、そしてソールに気絶させられてから目覚めた後玲子と飛鳥から聞いた事を話す。


 それを聞いたバルス団長とフローレは唖然としている。夢幻列島から自力で降りてきたという歴史上初の快挙を成し遂げ、ドラゴンを遊び感覚で葬り去る程の力を得ている。


 さらに、別行動しながら帰還手段を探している上に魔王を討伐する意味が無いと言ったり頑張ってくれないと世界が滅ぶかもしれないと言ったりしたと言うのを聞いてしまったのだ。それで唖然としない訳がない。


「……マジかよ。クロノの奴、俺より圧倒的に強くなってんじゃねえかよ」


「レベルは90位って言ってたんだけどね……。何か別の手段も使ってたみたいな事を示唆してたから全く当てにならないのよね」


「まあ、何にせよ……生きててよかったです」


「でも、女の子侍らせてるのはやっぱり駄目だよね……」


 海斗からもっとヤバい話を聞いていない幼馴染み組以外の人達はこの時点で既に話が完結してしまっているような雰囲気になってしまっている。


 だが、忘れてはならない。この後、晶からの説明が待っているという事を。そして、その内容が、その内容こそが真にヤバいものだという事を。


「……すいません、まだ僕からも報告する事が有るので良いですか?」


「あ、すまん。構わねえぞ」


「お願いします」


「って、まさかこれ以上に彼奴なんかやらかしてたのか?」

 

 健斗は「まさか?」といった表情になる。その直ぐ後、その言葉を聞いたその他の皆さんも同じような表情になる。


「……海斗から聞いてたけど、君達に伝えられた情報は、大事な部分が欠けてるみたいなんだよ。それを今から説明する」


 そして、晶は先程の情報に補足を入れながらも、夢幻列島に行って海斗の用意した道具で降りてきたこと、ウルブスで海斗と話したこと、万を超える魔物を蹴散らした事、美雪が着いていった事、そして例の板を貰って王都に戻ってきた事。全てを包み隠さずに話した。


 その結果、


「……嘘だと言ってくれ」


「もう王女なんて止めて飛び出したいです」


 二人は虚空を見つめ始めた。信じたくない現実を叩きつけられ、それから逃げたいと思ってしまった。


「しっかしまぁ……万単位をほぼ四人で殲滅だって?本当に人外道まっしぐらじゃねえかよ」


「……おまけに、美雪も人外道の方に進んじゃったと。まあ、美雪が黒野の事が好きなのは見れば分かることだったけど」


「突然新しい力に目覚めて着いて行く……アニメとか、ドラマかな?」


「……」


 勿論、光真と愉快な仲間達も驚きを隠せない様子だ。だが、光真だけはその話を聞いてから一切口も開かず、身動き一つ取らない。


「……っと、どうした光真。いきなり黙っ……!?」

 

 それを不思議に思った健斗が光真の背中を叩く。すると、光真はそのまま床に一切の抵抗を見せず倒れこむ。


「……あー、うん。確かに此奴がユキちゃんの事が好きなのは分かってたけど……恋を完膚なきまでに砕かれた位で気絶までしちゃうのかー」


「……勘弁してあげなさい。一応、アレが初恋だったんだから」


「へえー。可愛い幼馴染みがいるというのに今の今まで恋愛なんてした事が無かったと。何処のヘタレ……あれ?海斗も同じケースだったような……?」


 つまりまあ、そういう事である。


 高校生になって今更すぎる初恋。だが、相手には想い人がおり、しかもその相手はそれに気付いてすらいない。


 だからか、無理だと思えるが希望は確かにあった。それ故に、光真は諦めなかった。


 しかし、その希望は硝子のように砕け散った。


 美雪が着いて行ってしまった以上はもう胸の内を海斗に話したという事。そして、それがどんな形であれ受け取って貰えたという事。


 それを、外野がどうこうできる問題ではない。いや、もしもケイオスピアに来る前ならドラマみたいに「彼女を賭けて決闘だ!」とかそういう展開は出来たかもしれない。


 だが、そんな事を今したら。光真の頭の中に思い浮かんだ光景は、


「貧弱、貧弱、貧弱ぅ!!」


「弱すぎるぅ……」


「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!!」


 みたいな感じで完膚なきまでに叩きのめされる己の姿だった。何をどう足掻いても勝てない、圧倒的力の差。それは、光真の心を締め付け、そして脳内会議とかその他諸々を経て、その結果気絶するまでに至った。


 実に滑稽な話である。

 

「……まあ、コウマが気絶したのは置いておいてだ。お前らの話の中に出てきたクロノ作の道具……それはどの位持ってるんだ?」


 そして、取り敢えず気絶した理由を知って呆れたバルス団長はクロノが作ったという道具に目を向ける。


「それなら、夢幻列島から降りる時に使った「落羽のペンダント」も、此処に来るときに使った「なんとか飛行板」も、殲滅戦の時に貰った「殺龍剣グラム」もあるよ」


「……ちょっとその剣、見せてくれねえか?1剣士として彼奴の作ったっていう剣が気になるんだ」

 

「あ、いいよ」


 バルス団長は、百華に頼んでグラムを借りる。そして、それを受け取った後まじまじと見つめ、光に当てて、軽く振ったりした後硬直した。


「あ、あれ?どうしたの?」


「……おいおい、冗談だろ?この剣、切れ味は聖剣に劣るみたいだが、付いてるエンチャント幾つあるんだよ。少なくとも、滅茶苦茶な強度のステ強化に弱い龍殺しは付いてるみたいで……つーか、この素材まさかとはオリハルコンじゃ無えよな?」

 

 バルス団長は百華を問い詰める。その様子はかなり困惑した状態だ。


 仮にも騎士団長、持っている武器は魔剣でもあり、さらには聖剣を直に持たせて貰った事もあった。


 だが、この剣はその聖剣を遥かに超えていた。それ故に本人もどうかと思う程困惑してしまっているのだった。


「はい」


 そして、その質問に対して差し出されたのは海斗から受け取ったグラムについてのメモ。そこにはしっかりとオリハルコンで出来ていると書かれている。


 それを見て、目を擦って、もう一回見て、目頭を押さえてからもう一回見て溜息を吐くバルス団長。その顔には既に騎士としての風格は見えず、疲れた様子へと変わっていた。


 そしてバルス団長が何かを呟こうとした時にフローレが手を叩いて視線を注目させる。


「まだまだ気になったり聞きたい事はありますが……この話は、勇者様全員に絶対に話さなければならない事象です。ですから、各所に出ている皆さんを集めてきて欲しいのですが……頼めますか?」


 フローレはそう提案する。


 少なくとも、この場で完結させていい話ではない。だから、一刻も早く全員を集めたほうがいい。その為に、ここに居る全員に協力して欲しい。そういう内容だ。


「あ、ああ。分かった。じゃあ、取り敢えず誰が何処にいるかを教えてくれ」


「私達も勿論協力するけど……光真が回復するまでは出発出来ないからそこのところ覚えておいて」


 幼馴染み組も、光真組もフローレの話に賛成の意を示し、これからどうするかを話し合っている。


 そして、騎士ゆえ拒否権はなく誰が何処にいるかも把握しており話に参加する必要性が薄いバルス団長は天井を見上げながら、ボソリと呟いた。


「……クロノ、お前は決してあの時から弱くは無かった。一人で無謀に立ち向かって、力がない故に人一倍努力を重ねていた。夢幻列島にいた時も、そうして努力を重ねてたんだろうな。その結果、今のお前は幸せそうだったと聞いた。だが、俺らの罪が、お前を彼処に放り込まれる事を止められなかった俺らの罪が消える訳じゃ無え。だから、本当に済まなかった」


 その言葉は、この場にいた誰にも届く事は無い。無論、この場にいない海斗がこれを聞いている筈は無かった。


 それを聞いていたのは、他でもないバルス団長自身と、遥か遠くで世界各地の情報を不得意な空間魔法で必死に収集しているとある大賢者だけであった。

とある大賢者……誰なんだろうなー (棒

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ