40話 修行如何っすか?
「修行?」
「うん。……君も自覚している筈だけど、君達はまだまだ弱い。特に、神の復活を止めようとするなら三天使に出会う可能性も有るとは思う。その時、今の君達じゃどうしようも出来ない。だから、時間は掛かるけど万が一に備えて私が鍛えてあげようと思ってさ」
アウィスは提案する。弱いと言われるのが心が痛いが、事実だから全く反論が出来ない。
三天使より弱いと言っていたアウィス一人に、四人がかりで完膚なきまでにボコボコにされた。そんなんで、どうして三天使と対峙して生きていられるだろうか。
時間はかかり、その間はデザストラの復活は止める事が出来ない。だが、このままここを去るよりは修行をしたほうが良いのではないか?
何せ、修行をつけてくれると言っているのは歴史の上でも最強格。こんな機会が二度と有るとは思えない。
「……」
「……やろう」
「やりましょう」
「二人に同じ」
俺が三人に目線で問いかけると、三人からも了承が出る。フィールは何か別の事を考えているような目をしているので、後で聞いておこうと思う。
「……て事だ。よろしく頼む」
俺はそれを確認してから、頭を下げてアウィスに頼む。それに続いて三人も頭を下げる。
「任せてよ。でも、勿論優しくなんてしないよ?普通に死ぬかも知れないし、死んでも蘇らせる。死体さえ残ってれば、蘇らせられるからね」
アウィスは泣いて僅かに赤くなった目のまま笑う。無理しているようにも見えるが、それは追求してはいけないと思い特にそれには触れない。
それと同時に、一瞬背中に寒気を感じてしまう。アウィスの言った発言と、それに冗談が含まれていない事に。……選択肢、間違ったかな。
「……お手柔らかにお願いします」
「駄目。私のプランだと三ヶ月位で相当な量の技とか技術とか仕込まないといけないから甘ったれた事言ってると時間が足りないの」
翼を振りながらそう言われ、俺はがっくりと肩を落とす。取り敢えず、精神を強く保たないとなという事を心に刻んでおく。
流石に、何回も死んで何回も復活するとかそう言うのを覚悟無しでやられるのはきつい。というか、覚悟してもきつい。いや、そもそもきつくない奴がいるはずも無い。
「あ、もしも気が狂っても《魂操》で戻してあげるから安心してね。まあ、それは本当に手遅れになってからにする予定だけど」
何処に安心出来る要素があると言うのだろうか。俺は勿論、フィールもビアンカも美雪も顔が盛大に引き攣っている。
「……まあ、そこら辺は諦めるとしてだ。お前はさっきプランが有るって言ってたけど、それはどういうプランなんだ?一応参考までに聞いておきたいんだが」
俺はさっきまでの考えたくない話をそらして、別の話題に話を変える。
アウィスはどんな感じの修行を俺らに施すつもりなのか。それさえ知っておけば多少の覚悟のしようはある。
俺がそう聞くと、アウィスは少し考えてから言葉を発する。
「えーと、取り敢えず私が三人まで分身体を作れるから、全員に個別指導をするつもりだよ。で、まずは黒野君。君は、多種多様なスキルやその高い身体能力を使った一対一の近接戦が得意だから、それを伸ばす方向で行こうと思ってるよ。あと、帰るために必要だから空間魔法のレベルも大幅に……取り敢えず今の限界のレベル12までは上げてもらおうと思う」
具体的な指導方法とかは分からなかったが、一応目的ととんでも無いことが聞けた。
「分身体ってなんだよ分身体って」
意味は聞かなくてもわかる。だが、それは明らかにチートなのでは無いか?
「言葉の通りだけど。簡単に言うと、私の魂を一時的にコピーして実体化させる。大体1日しか持たないけど、その都度作り直せばいいだけだから使い勝手は悪くないよ?」
「使い勝手は悪くないって言ってるが、普通にできる気がしねえよ。というか、まさかその上で戦闘能力そのままとか言わねえよな?」
「そんなまさか。四人にもなると、一人当たりの戦闘力は0.8倍位には落ちちゃうよ」
「で、総合的には3.2倍かぁ。……鬼め」
「それは褒め言葉として受け取っとくよ」
話を聞いて判断した結果、普通にチートだということが判明。なお、これが出来るようになったのは魂化してからとの事で例の大戦の時は使えなかったという。
「まあ、それは置いておいて、フィールちゃんのプランに移るよ?まあ、魔法使わない黒野君には分かりづらいだろうけど……取り敢えず、無属性魔法の応用で、「マリファンクション」……あ、私がさっき使った「霧散」と、「魔力圧縮」を習得してもらおうと思ってるよ。特に魔力圧縮は制御を誤ると体がボンってなって死ぬけど、制御さえ出来れば通常の三倍や四倍も魔力を蓄えておけるから、是非とも習得しておいて貰いたいね」
物凄く不穏な単語が聞こえたが、それを追求してはいけないと悟った為俺は特に何も言わない。そろそろこの賢者に突っ込むのが疲れてきたのもある。
「……そんな事、出来るの?」
「霧散に関してはデザストラがやってるのを見て思いついたんだけどね。で、魔力圧縮の方は私が開発して論文まで書いたんだけど、それを実践した魔導師が弾け飛ぶ事故が多発したから禁呪指定されたよ」
「揃いも揃って制御ミスったと」
「うん。私だって、圧縮量を1%ずつ増やしていって少しずつ慣れていったのに、いきなり2倍とかにしたらそりゃ、ね?」
「まあ、死ぬわな」
慎重さは大事である。開発者がそうして習得したものを、研究結果があるからと素人が真似したら?答えは簡単だ。死ぬに決まってる。
「私としては非常に不本意だったけど、まあ私やオラクルちゃんが使えればよかったから特に何も言わなかったけどね」
「……一回話に出てきたフィオストって奴は?」
「彼奴は完膚なきまでの脳筋だし、特殊な体質だったから魔法なんて一切使えないよ」
フィオストーー先程話の中に出てきた人物。流れ的に三英雄ーーはどうやら戦士タイプだったようである。だが、体質とは一体なんなんだろうか。
「特殊な体質ってのは?」
「魔力を一切扱えない代わりに、魔力による干渉を無効化する能力。実際、本気で魔法打ち込んだりしてみたけどピンピンしてたよ」
「お前の本気とか、普通の奴なら死ぬだろ」
「フィオストくんは今言った通り魔法無効だし、オラクルちゃんは結界で完全に防いでくるから私は二人に傷一つ付けられなかったんだけど」
「それはその二人がおかしいだけだ」
此奴と話してるとやっぱり疲れる。だが、興味深い話も多いので退屈はしないが。
「まあ、二人とも普通?の人族の筈だったのにね。魔力も身体能力も人族より高めな筈のハーピィの私が二人に劣ってたのは驚いたよ。まあ、それが強くなるきっかけになったんだけどさ」
「切磋琢磨する相手だったって事か」
「その通り。で、話を戻してビアンカちゃんの。ビアンカちゃんは……遠近両用だから少し難しいけど、中距離を保って遠距離攻撃を仕掛けながら短剣で牽制、隙が見えたらヒットアンドアウェイで近接攻撃……そんな流れで行こうと思ってるよ。特に拳銃が隙が少ない遠距離物理攻撃としてはかなりの有用性があるから、短剣と併用した戦術を慣らさせようかな。後、遠距離または多数の相手には腕の兵器の属性攻撃と機関銃の物理攻撃でどんな敵にも効果的だから、そっちも練習させるつもりだよ」
ビアンカは、オールラウンダーとしての育成が行われるようだ。遠近個多何でもござれ、属性攻撃と物理攻撃の両用でどんな敵も溶かしていくスタイルとの事。器用貧乏とも言われるタイプだが、1番自由度が高いような気もする。
「そりゃまた豪勢な内容だな」
「辛いのは分かってるけど、この位こなして貰わないと困るからね。仕方のない事だよ」
この位である。結構内容濃そうなのにこの位である。まあ、ビアンカには両手を合わせて祈っておこう。ご冥福を。
「あの、その手は何ですか?凄い嫌な感じがするんですけど」
ビアンカが不満げな目でこちらを見ているが、俺はそれについては何も答えない。そして、そのままアウィスに目線で話を促す。
「あ、うん。で、白井ちゃんだけど、分かってるとは思うけど再生魔法をしっかり使いこなせるようになって貰おうと思ってる。派生スキルだから私には使えないけど、今までに使えた人がいるからそれを参考に出来るからね。攻撃はあんまり期待してないからやっぱりヒーラーとして長所を伸ばす方針で行くよ」
完全に回復役の道を辿ることになる美雪。まあ、回復役は何人いても困らないからそれは大分ありがたい。
「一応、技をコピーすることは出来るんだけどなぁ……」
「まあ、それも練習はさせるけど多用しても手がバレちゃうからね。ここぞって時に使う手段にしたほうがいいね」
一応事象再生という技もあるが、一度やった技をやらなければいけないので命中率は期待できない。手数を増やす位しか出来ないからな。
「あ、あと言い忘れてたけど、フィールちゃんとビアンカちゃんは20、黒野君は30、白井ちゃんは50位はレベルを上げて貰うから」
「「「「!?」」」」
そして、全員の方針が分かったと思ったら追加で伝えられた無理難題。レベルが90位になってから夢幻列島の魔物でもレベルが中々上がらなくなってきたというのに、そこからさらに30レベル程上げろと。無茶言うな。
美雪に至っては、この中で一番レベルが低い代わりに50レベル程上げてレベル90程まで上げろと言われている。
「確かに、魔物を倒さなくてもレベルは上げられない事は無かった筈だが……そこまで上げられるもんなのか?」
「レベルを効率的に上げる条件は、「格上の相手を倒す」か、「困難な戦闘をする」の二つだから、私と戦闘してれば結構経験値は入る筈だよ?」
「……3ヶ月でそこまで上がる戦闘というと、地獄の如き戦闘になる未来しか見えないのですが」
「一応、君達がそこから何かを得られる位には止めておくから」
「……要するに、手加減してボコすと」
「まあ、そんな感じかな」
「うわぁ……」
美雪が引いた。顔を引きつらせながら、アウィスと少し距離を取る。だが、それがいけなかった。
「おっと、逃がしはしないよ?」
「えっ!?あ、な、何これ!?」
アウィスがそう言ってタンッと脚で床を鳴らすと、床から石で出来た蔓のような物が飛び出し、美雪の腕と脚に絡みつく。美雪もかなりの力を入れているようだが、美雪の筋力じゃビクともしていない。
「せめてこの位避けるか砕くかして貰わないとね。さて、それすら出来ずに無様に捕まっちゃった白井ちゃんは……特訓部屋一名様ご案内かな?」
「ひっ」
戦闘中にも見せた、悪魔の如き笑顔。それを見た美雪は情けない声を上げてしまう。
「と、言うわけで……『ゼーレ・オブ・フィーア』!」
「呼ばれて飛び出てアウィス・ラパクス参上!」
「どーも、こんにちは。アウィス=ラパクスです」
「やっほー、アウィス・ラパクスだよー!」
アウィスが両翼を開いて宣言すると、アウィス本体の左右と正面に見た目そっくりの分身体が出現する。そして、
「我は幻想にして現実」
「我は虚像にして実像」
「我は偽物にして本物」
「我らは四にして一の大賢者」
「「「「古の刻を経て、忘れ去られし大賢者アウィス、今、此処に降臨!!」」」」
四人で何処ぞの戦隊物のヒーローみたいなポーズを決めるアウィス×4。それを見てる俺ら四人からは声の一つも出ない。美雪は唖然、フィールとビアンカは悟った顔をしている。
そして、アウィスはそんな俺らの様子を気にもせず他のアウィスに指示を出す。標的はもちろん美雪だ。
「じゃ、第4の私、白井ちゃんの事頼むよー」
「あらほらさっさー!じゃそういう事で。『転移』」
「ちょっーー」
美雪はちょっとと言おうとしたが、言い終わる前に第4アウィスと共にここから消える。発言的にきっとテレポートしたのだろう。
「……ミユキ。貴女の犠牲は無駄にはしない」
「いや、流石にまだ死んではいないから。転移させてから10秒で殺すほど戦わせるなんて鬼畜な真似はしないから」
「と言いつつ問答無用で飛ばしましたよね」
「まあ、思い立ったが吉日って事でさっさと修行始めようと思ったからね。……と言うわけで、second!No.3!この二人を連行して!」
「ふっ、承知した」
「アイエエエエ!」
フィールがボケているのに反応しながらも二人を連れて行こうとするアウィス達。というか、secondとかNo.3とか第4の私とか何故一人一人呼び方に統一性が無いのかを聞きたい。
「私は、ミユキほど甘くはなーー」
「縮地。からの『転移』」
フィールは半龍化をしながらもsecondを警戒していたのだが、まさかの縮地使用によって接触され、そのままsecondと共に消える。
そして、それを見て驚いたビアンカ。それをNo.3は見逃さない。
「修行させるべし、慈悲はない!」
「しまっーー」
そして、そのままビアンカも姿を消す。呆気なく三人とも別の場所に転移させられ、此処にいるのは俺と本体のアウィスだけだ。
アウィスはどうするべきか悩んでいる俺に歩み寄ってくる。俺はそれを見ても離れたりはしない。
「ふふっ、怖がらないでよ。今からやるのはあくまで修行なんだから」
「……今苦行って……」
「言ってない」
「言ったろ」
アウィスは例の如く妖しい笑みを浮かべている。何度目か分からないが、何度見ても悪寒を感じる笑顔だ。
だが、それでも恐れずに修行しなければ強くは慣れない。強くなる為なら、三人や幼馴染みを、元の世界を守る為なら恐怖に立ち向かう覚悟は出来ている。
だから、
「……まあ、これからよろしく頼むぞ」
「任せなよ。本気で修行を付けてあげるから」
俺はアウィスに頭を下げて、改めて修行をさせてくれと頼み込んだ。
これにて、第3章完!
いやー、街とかに寄ってた分、パート数が凄い掛かりましたね。まさか40話超えるとは……。
で、次回ですが……確定じゃないですが、多分王都に戻った春日部組及び幼馴染みーズの様子について書くことになると思います。
では、これからもこの小説をよろしくお願いします!




