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39話 四人の災厄

「あの時代は、決して良い時代とは言えなかった。確かに、技術力や文明だけは過去最高クラスにまで登りつめてはいた。だけど、その文明には自然との共存とかそういう考えが無かったんだ」


 アウィスは過去を懐かしむように目を瞑りながら語り始める。だが、その顔にはどこか哀愁のようなものも感じられる。


「……要するに、開発が相当進んでいたと」


「うーん、比率的に言うと、今の街と自然の比率を丁度逆にした位には開発されてたよ。それこそ、他の生命の居場所なんて無いくらいに」


 ビアンカが質問した事に、アウィスは少し悩んでから答える。言葉の端々に、あの時代の不満が溢れているが。


「私は、遠くない未来にあの文明は自壊していくと思ってたんだ。全ての敵を淘汰した時、次に敵になるのは元味方。いずれ、自分達で自分達を滅ぼす。そういう未来を辿ると思ってたんだ」


 だが、アウィスは「だけど」と言い足してから話を続ける。


「その終焉は、意外な形で舞い降りたんだ。ある時空から降り立った四人の災厄によって」


「……四人の、災厄?」


 フィールがボソッと呟く。その言葉の意味が分からないように。まあ、俺を含めて分かってそうな顔をしている者はいないが。


「そう。その四人が、たったの四人がこの世界に生きる人族、及び魔族の9割以上を滅ぼした。あの時の地獄絵図は今でも忘れられないよ」


 アウィスは俯いて言った。あの明るいアウィスがここまで俯くような惨状とは想像がつかない。


「……ねえ、その四人って一体どんな人達なの?」

 

「それも君達には知っておいて貰わないといけないから説明するよ。……決して生半可な奴らじゃ無いって事は覚悟しておいてね」

 

 アウィスはそう言って一度深呼吸をして、その後語り始めた。その表情は何とも言えない表情だ。


「まずは一人目。これは、黒野君は知ってる筈だよ」


「俺が知ってるだって?」


「うん。……数多の病を操り、数多の者達を蝕み屠った害悪。四人の害悪の中では最も多いキル数を稼いだ程の殲滅能力の持ち主で、その悪夢のような能力から付けられた二つ名は病魔。……現代にて地獣神ベヒーモスとして恐れられる存在であり、かの神によって作られた天使、智天使イルネス」


 俺が疑問に思い聞いたが、アウィスの説明でその疑問は崩される。


 地獣神ベヒーモス。イルネス。この二つは確かに見覚えがある。病魔と智天使という情報は初耳だが、あの化け物なら考えられなくもないと思ってしまうのが実状だ。


「実際、君の記憶を見て私も久し振りに驚いたんだよ?私自身が戦った訳じゃあ無いけれど、今のこの世界に生きている存在じゃ太刀打ちなんて出来ない位強い存在って事は分かってるからね。……君達イレギュラーを除いたら、現魔王軍が総出で突撃して、傷一つ付けられるか。そんなレベルの戦いだと思う」


「いや、魔王軍ってそんなに強いのか?あれ相手に傷付けられる可能性があるって相当だと思うんだが」


 さらっとアウィスから出た言葉に俺は驚く。あの胃潰瘍魔王ジョーカーの軍が、そこまで強いとは思えなかったからだ。


「まあ、あくまで可能性ってだけだからね。寧ろ、魔族の手を借りないと傷一つ付けられないって言うことなんだけど」


「確かに、歴史から見ても最近はどんどん人族は弱体化していますしね」


 ビアンカがそう呟く。今まで聞いた話だと、確かに魔族の方が圧倒的に人族よりも強かった。それこそ、差が開きすぎてるんじゃ無いかと言うほどに。


「まあ、そうなんだよね。私達が国を作った時は、特に強さに差は無かったんだけど」


「国を作った?」


「うん。災厄を封印した後に、残った人達を纏めて三英雄一人につき一つ、計三つの国を作ったんだ。オラクルちゃんがマンサーナ王国を、フィオストくんがフレッサ帝国を、私がウーバ魔族国を。まあ、三人とも王の器を持つものに政権を任せたから統治はしてないんだけどね」


「てことは彼処の書庫にお前の本が有ったのは……」


「そ、私が試練を作り終わった後に彼処に置かせて貰ったんだ」


 あの本は、アウィスがこの空間に留まる前に置きに行った本であり、それが出来たのは此奴が魔族国の建国者だから。何処までも、予想の範囲外をいく賢者だ。


「ごほん、で、話を戻すよ。二人目の災厄。私としては此奴が一番戦いたくないかな。生存本能を無効化して、生物をバーサーカー化させる狂気の存在。そうなった者は、勝てない相手に挑んで死ぬか、仲間同士で殺し合いをして死ぬかの二つの道しか残されない。今は空鳥神ジズって呼ばれる熾天使、戦火のクリーク」


「クリーク……」


 イルネスにも匹敵する馬鹿げた力を持つ化け物。しかもそれは人の精神の方に介入する力。下手な物理攻撃なんかよりも余程タチが悪い。


「おまけに、近接戦闘能力は三天使の中でもトップに入るから、魔法使いの私としては天敵みたいな存在なんだよ。多分、全盛期の私が不意打ち出来ても勝てない相手かな」


 アウィスを持ってしても勝ち目が無い程の相手。相性の問題もあるが、それでも相当強いアウィスが不意打ちしても勝てないとまで言う相手だ。俺も戦いたくない。


「……イルネスと比べたらどっちが強いんだ?」


「イルネスはああ見えて絡め手が得意なタイプだからね。流石に白兵戦に特化してるクリークの方が強いかな」


 アウィスは言う。あの無茶苦茶近接戦闘に長けてそうな見た目をしているやつが、絡め手が得意戦術だと。


「マジかよ……」


「マジだよ……。で、三人目。人が食べる物も、人そのものも全てを喰らい尽くす、絶望を具現化したような存在。そして、幾ら喰らっても決して満たされる事の無い暴食。海蛇神リヴァイアサンこと座天使、飢餓のハング」


 そして、三人目。これで、三天使と呼ばれる奴らは出揃った。


 病魔、戦火、飢餓。三種三様、全てが生命を滅ぼす為の能力。半殺しなど生温い、殺しつくす為の能力。


「生物も、物質も、機械も、魔法も、何もかもを喰らい尽くす冗談だと思いたい能力。幸い、戦闘形態が蛇型で体が長いから胴体にうまく打ち込めば(・・・・・・・・)攻撃は通せるけどね」


「うまく打ち込めれば、か」


 アウィスはそこを強調する。凄い嫌そうな顔をして。


「うん。……私一人じゃ、2、3発撃って1発当たるかどうかっていう感じだと思うし」


「……ちなみに三英雄総出なら?」


「普通に勝てると思うよ」


「お前らも大概じゃねえか」


 俺が聞くと、アウィスは溜息を吐く。そして、無念感溢れる顔になった。


「……そんな私達でも封印するのが限界だった、四人目の災厄。三天使を創り出して、魔導機械文明に終止符を打った破壊の権化。そして、その者の名は……」


 ーー崩壊と破滅の神、デザストラ。


 アウィスの口から告げられたのは、ある一人の神の名前。


 遠い昔に文明をも滅ぼし、今では名前すら残されていない破壊神。三英雄に敗れるも、封印されただけで殺す事が叶わなかった存在。そして、世界を渡る事さえ可能な存在。


「……そんなのが、この世界に封印されてるってのか?そして、後5年以内に復活するっていうのか?」


「……うん。オラクルちゃんの召喚魔術が成功した以上、君達もしくは君達と関わった者がそれを止めない限り復活は止められない」


 要するに、この事実を知る俺達がそれを止めなければいけない。でなければ、この世界どころか俺たちの世界も危ういのだから。


 と、俺はそこで一つ気になる事が生まれる。

 

 アウィスは、滅びの魔の手が伸びそうな世界から人を呼ぶと言っていた。その基準は一体どうなっているのか? 


「……なあ、破壊神は何を持って世界を滅ぼすんだ?無差別って事は無いんだろ?」


「それについては本人が言ってたよ。「余は滅びをもたらす者共を滅ぼす者」だってね」


「……滅びをもたらす者共を、滅ぼす者?」


 フィールがボソリと聞き直す。その声には僅かだが恐怖の色が見える。


「そう。……先に言った通り、魔導機械文明は滅びの道を辿ってた。それも、人や魔族だけじゃなく他の生命も道連れにね。だからこそ、彼奴らは人族と魔族を滅ぼそうとしたんだ」


「……確かにそれなら、俺らの世界は当てはまりそうだな。動物が絶滅したとかそういう話はよく聞くしな」


 地球でも、そういう類の問題は確かにある。それなのにこの神が来なかったのは、この世界で数千年間もの間封印されているから。


「……実際、悪は私達の方なんだよ。全ての世界に干渉する権限を持つ最高神の一角である破壊神に逆らい、あまつさえ封印までしたんだから」


 アウィスは悲しげな声で言う。俺はその通りだと言おうとして……


 そこである言葉に気付いて声が出なくなる。

 

 今、こいつはなんて言った?


 ものすごく、ヤバい事実が明らかになった気がするんだけど。


「……ねえ、アウィスさん。今、最高神とか言わなかった?」


 だが、俺が聞く前に美雪がそれに質問した。その大問題である発言に対してだ。

 

 俺はてっきり、デザストラ=時期的にも相まってスペディオを筆頭とした者たちが復活させようとしている邪神 だと思っていた。だが、アウィスはそれを、最高神の一角だ言った。邪神なんぞとは比べものにならない程高位の存在だと。


「……その通りだよ。邪神なんかじゃない、最高神の1人にして創造神、時空神に並ぶ破壊神。……事実、この世界で崇められていた神がなす術なく負けてしまった位だからね」


「……混沌神様、ですか?」


「うん。混沌の女神ケイオス。あのお方は、デザストラ達が降臨した時に私達側に立って戦争したんだ。人族と魔族を守る為に」


 アウィスの言葉にビアンカが質問した。そして、それに応じてアウィスは話し続ける。


「……だけど、ケイオス様は負けた。まるで見せしめにするかのように、三天使になす術なく倒されてしまった。この世界で最も信仰されていた神が、そして私が信仰してた神が何も出来ずに負けてしまうのを見るのは相当辛かったよ」


 信仰していた神が、自分達を救ってくれると思っていた神がいとも容易く負ける惨劇。民衆には相当辛い出来事だろう。

 

「私達はその場に出る事は出来なかった。飛び出したいのを必死に堪えて、機を伺った。三天使を一人倒そうとも、破滅は終わらない。だから、私達は四人が別行動するのを待った。秘密裏に協力者を集めて、作戦の成功率を少しでも高める為に」


「作戦?」


「……四人がバラけた所で三天使を協力者が足止めして、私達三人がデザストラを叩く。成功率なんて無に等しいような作戦だったけど、結果はうまく行った」


 協力者と言うものが、どれだけ居たかは分からない。だが、ビアンカが前に言っていた通り三天使が未だにこの世界にいる事を考えれば……。


「……協力者は、あくまで足止め(・・・)が目的だったんだよ、な?それはつまり……」


「……うん。デザストラは封印出来たけど、協力してくれた彼等は助ける事が出来なかった。その悪夢に立ち向かう彼等を見届ける事すら出来なかった」


 アウィスの目にはいつの間にか涙が浮かんでいた。戦いには勝ったが、被害は甚大。知っている者が数え切れないほど死んでいく。それが、どれだけ辛いことか。


「……でも貴方は、その彼等の犠牲を無駄にはしなかった。だからこそ、今この世界に私達はいる」


「その通りです。彼等は、貴方達に後世を、全てを託したんです。そして貴方は、それを成した。それが彼らの求めていた筈の物なのですから」


 そんな様子のアウィスに、フィールとビアンカが声を掛ける。間違った事は何一つ無いと、彼等の死は決して無駄にはなってないと。


「……うん、そう、だよね。私としたことが、これを思い出すとつい、ね。まあ、それで何とか封印は出来たんだけど、あくまで封印止まりだった。それ故、いずれ復活する時が来る。だから、私達は後世に知識を残したんだよ。オラクルちゃんが召喚魔術を、フィオストくんが破壊神についての情報を、私がそれに対抗する為の力を託す為の試練を。再度迫る災厄を退けて、未来を切り開く為に。それが、私が魂になってまでこんな試練を続けている理由だよ」


 アウィスは翼で涙を拭いながら話を終える。とても重く、とても恐ろしく、そしてとても重要な話だった。


 だが、気になる事はあるので俺は質問させてもらう。泣いているアウィスに質問するのは若干気が引けるが、確かめておかなければいけない事はあるのだ。


「……アウィス。お前は、三天使を封印していない。ならなんで三天使はデザストラを復活させないんだ?」


 仮にもデザストラの配下である三天使。主が封印されたなら、部下がそれに手出しをしないはずが無い。と思ったのだ。


 だが。


「それに関してはね、然程問題は無いんだよ。……デザストラを封印した後、集まってきた三天使は言ったんだ。「「「我ら三天使は、天界律により封印された主様に手を出す事は出来ない。それは例え最高神で有ろうとも例外ではない。それ故、デザストラ様の封印が解けるその日まで今回起きた戦争は中断される」」」って、ね」


アウィスは言った。三天使がデザストラの封印を解く事は出来ないと。だが、あくまでその戦争は中断されただけだと言う。


 それはつまり、封印が解けたらその戦争は再開されるという事。数千年の時を経て、惨劇は繰り返されるということ。

 

「……それが再開された時が、人族と魔族にとっての終焉っていう訳か」


「そう。……そして、数千年の間に人族から派生した獣人も龍人もエルフもその他亜人族も全てがその対象に入る」

 

 つまり、人族と魔族、そこに加えて亜人族までもが滅ぶことになる。過去の者が犯した罪によって、今を生きる者が滅ぼされる。


「……最早、絶望としか言えない状態ですね」


「うん。……そして、今の君達の力じゃこの先に迫る脅威から逃れる事は出来ない。だから……」


 ーー多少時間はかかるけど、しばらく此処で修行していかない?

 

 とアウィスは言った。

地獣神ベヒーモス 智天使 病魔のイルネス

海蛇神リヴァイアサン 座天使 飢餓のハング

空鳥神ジズ 熾天使 戦火のクリーク

崩壊と破滅の神 デザストラ


今回情報が出た四人。自分でも立ち位置高すぎたかなーと思ったりしてますが、後悔はしてません。


なお、混沌の女神ケイオス様が出演する予定はいまのところありません。いまのところはですが。

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