35話 届かなくても
「やぁあ!」
「とりゃあ!」
私は、私のコピーと杖をぶつけ合う。それは海斗くんやビアンカさん達のよりは相当遅いけど、少なくとも今はコピーのそれと鍔迫り合いを起こしてる。
「お前は弱い!フィールやビアンカ、カイトの足元にも及ばない!それでもお前は!三人の背中に向かって走るのか!?」
「当たり前だよ!もうあんな思いはしない!確かに私は三人よりも弱い!だけど、私には治す為の力がある!傷ついた皆を治す為の力が!私は、足手纏いなんかにはならない!」
私には、自分一人では決定打は与えられない。過剰再生も、相手が生命体じゃなければ意味はない。というか、使ったけど、
「……一応、お前のコピーだが生き物じゃ無いから効かないぞ。まあ、不公平になるから私も使わないけどな」
などと言われてしまった。正々堂々戦ってくれないのは不満だけど、それ使われたらどうしようもないのは事実なのでありがたかった。
一応、瞬殺する手段はある。有るにはあるのだが、とてもでは無いが使えない。というか、使ったら死ぬ。
その手段というのは、海斗くんがくれた杖、『星杖スターダスト』の効果の一つ、マダ○テ効果だ。杖に貯められた魔力を全て解き放つ奥義なんだけど……今、杖に魔力が9割位残ってる上に此処は閉鎖空間。そんなもの撃ったら……多分というか確定で、二人とも骨の欠片も残らない。
だから私は杖を打ち付ける。例え何が邪魔しようとも、私は前へ進み続ける。
目の前で海斗くんが消えた時。
私には、何も出来なかった。
海斗くんが死地にいると聞いた時。
私は壊れる寸前だった。
もしも、あの時三人がいなかったら、きっと壊れてた。
でも、私は頑張って、海斗くんと再会することが出来た。
確かに、海斗くんが他の女の子とイチャイチャしてたのは悲しかった。
嫉妬もした。
僅かな間だったが、敵意もあったかもしれない。
「お前はその力を恋敵である二人にも使えるのか!?いなくなってしまえばいいとは思わないのか!?」
けれど、その敵意は割と直ぐに消えた。
だって、二人のお陰で海斗くんは笑っていたから。
孤独にも飲まれてなくて、心も壊れてなかった。
二人が海斗くんを助けてくれていたからこそ、私はもう一度彼に出会えた。
「二人がいたから、今の海斗くんがいるんだよ!少しねじ曲がっちゃったけど、大切なものを守るためにその力を振るえる海斗くんが!それに、私は誓ったから!」
今は、二人に敵意なんて抱いてはいない……と思う。
心当たりがあるのは、闘争心だけだ。
あの二人にも負けないで、海斗くんに振り向いて貰えるまで頑張るという闘争心。
……というより、此処にくる途中の夜営で海斗くんが寝てる時に、その決意表明は二人にしてある。
「その挑戦状、受けて立ちますよ。決して引きませんから」
「……私も負けない」
という対抗の言葉を貰って、三人で固い握手も既にしてある。
「仲間兼、恋敵になろう」と。
あと、その時に魔族国で二人が同じような事をした時について教えて貰ったけど……それは記憶の奥底に封印した。魔族国にでも恨みあったのかな。
「カイトはお前に振り向かないかもしれない!お前の望みなんて、風に舞う塵のようなものかもしれない!お前は、その不確定すぎる彼奴の背中を追うのか!?」
「過去は変えられないけど、未来は絶対じゃ無い!変えられないものもあるけど、変えられるものもある!だから私は、私なりに海斗くんの背中を追う!」
海斗くんが一歩進むなら。
私は二歩進んで海斗くんに近づく。
背中に手が届かないのなら。
手を伸ばして触れればいい。
もしも振り向いてくれないなら。
主張して、誘惑して、振り向かせればいい。
そうやって未来を変え続ければ、必ず追いつける時が来る。
手の届く時が。振り向いて貰える時が。
必ずやってくるから。
「伸ばした手が届こうとも、それは滑り落ちない保証はあるのか!?また、あの時の二の舞いにならないと言い切れるのか!?」
何も出来ずに飛ばされた海斗くんを何も出来ず見ていた私。
あんな事が、もう無いと言い切れるのか。
あったとしたら、また海斗くんが生きていられる保証はあるのか。
保証なんて、無い。
そもそも、起きてもいない事を証明する事なんて出来ない。
でも。
「その時の為に、私が、私達がいる!」
私は、そう宣言しながら長い鍔迫り合いに終止符を打つ。
杖を押し退けて、私はコピーに向かって全力で杖を振り下ろす。
そんな事が起こらないように、私達が守ればいい。
それが避けられない事なら、私達も共に行き、寄り添う。
もう、海斗くんを一人になんてさせない。
私は、何処までもついていくから。
だから、邪魔する者は、打ち砕いて進む。
「だから、私は貴方を越えて行く!」
そんな、私の想いを込めて振り下ろされた一撃は、コピーを打ち倒……
「ゴフッ!」
……すことなく、頭を強打して地面を転がり回させる程度で止まる。
「……あれ?」
私は首を傾げる。
今の一撃は本気でやった。一切の手加減なく、人体の弱点を狙って的確に振り下ろした筈。
だけど、コピーは頭を押さえて転がり回ってるだけ。とても、倒せたようには思えない。
「あたた……そうだった……。お前と、お前を基にした私は物理攻撃なぞからっきしなんだった……」
コピーが呟いた、物凄く失礼な言葉。
確かに私は近接攻撃なんて苦手だけど、それはコピーも同じ。
なぜ、そんな事を言われなきゃならないのか。
「ああ……『物体再生』」
とか思って見てるうちに、コピーが再生魔法を使用する。それに伴い、コピーの顔が苦痛に満ち溢れていた物から多少マシなものになる。ちなみに、物体再生は私は使えないけど、多分生体再生の物質版だと思う。リサイクルとか、そっちの意味の再生だと思う。
「……うーん……。物理攻撃力も魔法攻撃力も無くて、回復凄くて、魔力も当分尽きない量はある……。勝負つきそうにないなぁ」
コピーの言ったことは真実だった。
私は力が弱い。
それに、腕前もよろしくない。
でも、魔法に関しては光魔法の時からかなり使えたから昇華しても慣れている。魔力を使う感覚はあんまり変わってなかったから。
魔力の残量も、地球組一位の私の魔力は早々尽きない。
おまけに再生魔法に昇華してから燃費が相当良くなったから……このまま続けてると勝負は永遠に終わらない気がする。
「ねえ」
「なあ」
私とコピーは同時に口を開く。両者思うところはあったみたい。
「……お前が言え」
「あ、うん。お互い、魔法の行使は無しにしない?」
「同じ事か。確かにこのままじゃ、永遠に勝負は付かないからな。構わねえぞ」
コピーは私の提案に乗る。と言っても、私が提案してなかったらコピーが提案してたみたいだし同じことだったけど。
「……じゃあ、殴り合いを再開しようか!私を越えて、彼の側に、彼の隣に立つために!」
そして、私達は魔法を使わない、魔法使いらしくない杖と杖、拳と拳、脚と脚の恐らく初めて行うであろう一対一の殴り合いを始めるのであった。
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「お、お前……」
「な、に……」
それから大体2時間後位。私達は満身創痍でお互いを睨みます。
「幾ら、なんでも、殴り合い弱すぎるだろ……」
「二ヶ月前まで、学生だった女の子に、求めるものじゃ、無いからね……」
結局、回復魔法を使わなくてもここまで長引いてしまった。今の状態は、全身アザだらけ、多分一部骨が折れてる、鼻血も結構出てるという女子とは思いたくない状態だ。
後で魔法で治せるけども、今はお互いに治さないと誓ってるからそれも出来ない。今私に出来るのは、この同じくアザだらけで鼻血を出してるコピーをぶちのめす事だけ。
「……ええい!いい加減、ぶちのめされて!」
「……ならぶちのめしてみろよ!こっちだって2時間殴り殴られ続けるのはコリゴリなんだよ!」
私は全力で杖を突き出す。それを、コピーは体を逸らして避ける。だが、足はふらつく。
だけど、私は追撃出来ない。私自身も、突き出した時にふらついてしまってるから。
実際、お互い戦闘の続行は辛かったりする。攻めたら一旦体が止まっちゃうし、避けても体が止まっちゃう。
それがお互いだから、もはやターン制のゲームみたいになっている。それじゃ、決着はつかないって分かってる。
でも、私は意地で杖を、拳を、脚を振るう。コピーを、私を越えて海斗くんの隣に立つために。
「「はぁ!」」
私とコピーは、同時に拳を繰り出す。お互いに、相手の鳩尾を狙った拳。だから、
「「あぐっ……」」
勿論、拳と拳が激突する。腕も2時間に及ぶ攻防のせいで大分ガタがきている。だから、相打ちするだけでも相当な激痛が私達を襲う。
何時まで経っても、致命傷を与える事が出来ていない。例え腕が折れても、人を殺すには至らない。
「っ、はぁ……はぁ……」
「いい加減に、してくれよ……。というか、なんで弱体化してる筈なのにここまで戦闘が長引くんだよ……」
コピーの言う通り、何故か弱体化している筈のコピーとここまで戦闘は長引いている。
確かに、動きも私より若干遅いしパワーも低かった。それでも、私は決定打を与えられずにいた。
「……なんでスタンピードの時には彼処まで嬉々して殺戮の限りを尽くしたってのに、肉弾戦になるとこうもダメなんだか……。まあ、俺が知らねえんだからお前が知ってるわけも無いか」
もはや試練という超越したものであっても分からない私の攻撃力の無さ。少し凹む。
「ううー!いい加減倒れてよ!」
「だったら倒せ!いや、寧ろ倒してくれよ!」
私は首辺りに杖を振った。でも、それも届かない。だが、
「ーーうおっ!?」
コピーは、そのまま後ろに大きくよろめいた。これまでよりも一番大きくて、絶対的な隙だった。だから、
「ーーりゃああああ!!!」
ザクッ!!
「がっ!?」
私は、振り抜いた杖の先端を素早くコピーの方に向けて、そのままコピー目掛けて倒れこんだ。
……ここで、一つ補足がある。
海斗くんの作ってくれた杖は、水晶のような美しさもあるけど、その造形も大分凝っている。
どういう事かと言うと、結構尖ってるところがあるという事。と言っても全体重を掛けでもしないと刺さったりはしないけど。
今回私は倒れこんだ。そして、私は全体重を杖の先端に乗せた。
その杖が刺さった先は、装甲も何もない首。全ての生き物の弱点でもあるところだ。相手は生き物じゃないけれど、生き物である私を基にして作られたものだから効果はある筈。
その攻撃は、効果覿面だった。吐血し、その刺した所からも血が吹き出る。生き物じゃ無いって言ってたのにそういう所は妙にリアルだ。
「よ、ようやく、終わったか……」
「そう、だね……」
何故か刺された方であるコピーも達成感溢れた顔をしていた。それを見ると申し訳なくなってくる。
「あ……最後に言わせろ……。お前の……覚悟は見届けたが……お前らの進む道はあまりに……険しい……。あの三人でも……無事じゃ済まない位な……。だから……しっかりと……治してやれよ……」
コピーはそう言うと、地面に溶け込むように消えてしまう。
だけど、その言葉は私の中に深く刻み込まれて、私の決意をより一層固めていった。
作「爆ぜろアウィス!『デスコメット』『スターシュート』『メテオレイン』『アステロイドレイ』!」
ア「無駄無駄〜!そんな事したって無駄だよ!」
作「相変わらずデタラメな猛禽野郎が!」
ア「へー、そんな事言うんだ。『焔凍海雷風金聖闇無ノ夢幻地獄』」
作「ハッハッハ!お前が魔法使いなのは知っている!魔法対策をして来ないとでも思っているのか!」
ア「足元、見てみ?」
作「足元?……って、無え!?」
ア「あんな魔法放って地形が変わらないとでも?と言うわけで、奈落一名様ご案内!」
作「ぬわーーー……」
ア「勝った!第3部、完!っていう茶番は置いておいて、今日のおまけと行こうか。今日のおまけは、ドゥルルルルルルル……バン、スキルについてで行こう!
じゃ、スキルについて説明しようか。
今まで色々なスキルが出てきたけど、大きく分けると『常時発動型』と『適時発動型』の二つに分かれてるんだ。両方とも字の通りだね。
常時発動型の代表例が剣術とか杖術とかの武器スキルや、耐性系のスキルとかがそれかな。
その他は全部適時発動型だね。縮地、飛行、各属性魔法、生産スキル……殆どが適時発動型だね。
あと、それも二つに分けれて、『魔力使用型』と『スタミナ使用型』になるんだ。
魔力使用型は各属性魔法は勿論、身体強化や飛行、魔法付与とかの発動時に魔力を使うもの。魔力が多いと使い勝手が大きく増すよ。ただし、限界を越えて使うと意識を失ったり最悪死んだりするけどね。魔力残量には要注意!
スタミナ使用型は、使うと疲れるやつだね。魔力も使わないけど、使いすぎると筋肉痛とかがヤバくなったり、酷い虚脱感に見舞われたりするね。天駆、縮地、鑑定、隠蔽、鍛冶……とかかなり多いよ。尖ってる代わりに汎用性が低いのが多いかな?
あと、スキルの取得何だけど……基本的にはスキル毎に決まった行動をとると経験値が入って、それが溜まるとスキル取得って流れかな。
剣術とかは剣の練習すればいいけど、魔法に関しては魔導書とか魔法陣とかを使わないといけないし、飛行とかの一部のスキルに至っては生まれつき持ってるかクリスタルでの入手でしか出来ないけどね。やっぱり黒野君はチートだよ。私が言えた事でもないけど。
と言うわけで、スキルの説明は大まかにはこの位かな。あと《覚醒》とかの影響とか特殊スキル、昇華スキルとかの詳細とかもあるけど……そっちは本編で語る事になると思うからそこら辺は此処では語れないからね。
じゃ、以上、おまけ終わり!
……ところで、前回作者を復活させて再度塵にしてから復活させた覚えが無いんだけど、彼奴どうやって復活したんだろ」




