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28話 面倒くさいから

 そして、あの修羅場が起きてからは全員が復帰してくるまで美雪達と話し続けていた。なお、復帰順は忍、百華、ビアンカ、フィールの順だ。


 まあ、復帰した後は後で全員で話し続けていたが。と言っても、重要性は余り無い。日本組が日本の事を懐かしみながら話し、それについて異世界組が根掘り葉掘り質問する。粗方そんな流れだ。


「……俺らは、明日の夜明け頃には出発する。だから、これが俺らが一緒に過ごす最後の夜だ」


「はぁー……。やっぱ行っちまうんだな。まあ、俺らの為にもなるから止める権利は無えし、止めるのも無理だけどな」


「それに、ユキちゃんも行っちゃうしね。私は寂しいよ」


「ごめんね、百華。必ず戻ってくるから」


「辛い旅になると思うけど、めげずに頑張ってくれ。僕達も応援してるから」


 この一週間でも初めくらいしかなかった全員でのシリアスムードだ。全員が揃うとなぜか誰かがネタの道に進んだせいで余りシリアスになることは無かったのだ。


「それにしても、カイト様の友人は個性的な人が多いですね。……類は友を呼ぶって事でしょうか?」


「今まで口には出さなかったけど、その通りだと思う」


「俺も個性的って事か。喧嘩なら格安で買うぞ?」


 前言撤回。またもシリアスムードが崩れました。


「うーん、別に俺は個性的じゃ無えと思うんだがな」


「私もそうだと思うけどなぁ」


 特に個性的な二人が口を揃えて言う。どの口が言うんだ。


「いや、お前らが個性的な奴の筆頭だろうが」


「はぁ?俺らの何処が個性的なんだよ?」


「そーだそーだ!海斗の癖に生意気だぞ!」


「そういう各所にネタを仕込んでく所だよ!」


 俺は否定する二人に叫ぶ。俺が個性的だと言うのなら、同じような発言をする此奴らも同じだ。


「……それって個性的な人に入るのか?普通じゃ無えのか?」


「バリバリ変人だ。まあ、俺もだが」

 

「なん……だと……?」

 

「私もそこそこ詳しいけど、オタク知識は日常会話には出さないようにしてるよ」


「ああ、それがふつ……って、え?美雪、お前ってそう言うのほとんど知らないんじゃなかったのか?」


 忍のメンタルにダメージを与えていると、美雪もオタク文化に通じてたということが判明する。初耳だ。


「だ、だって、海斗くんがどんなのが好きなのか知りたかったから……」


「あー……うん、そうか」


 美雪が少し顔を赤らめていうのを見て、少し申し訳無くなる。やっぱり、人の心はまだ読みきれないなぁ。


「ま、まあ、それは置いておいて、だ。海斗、最後の晩餐である今日の晩飯、豪華なんだろうな?」


「最後の晩餐て……。まあ、豪華なのか?俺らは前からしょっちゅう食ってたが、ドラゴンのステーキだ。……今日は俺とフィールしか食ったことの無い、幻龍の肉だから期待してていいぞ」


 忍が話題を逸らしてくれる。あの雰囲気だと若干居づらかったから助かった。


「カイト様?幻龍と言うのは?」


「俺も聞いた事がな……いや、何処かで名前だけは聞いた気がするが覚えてないな」


「忍、アレだよ。君の貰ったあの鎌。確かミラージュドラグーンとかそう言う名前のやつ」


「あー、あれかぁ。……って、あの規格外素材の持ち主の肉か。でも、どんぐらいの強さだったのかは聞いてない気がするな」


 今思うと、その話に関しては特に言及してこなかった。じゃあ、折角だし今説明してやるか。


「幻龍ってのは晶が言った通りミラージュドラグーンっていうドラゴンだ。試練のボスを除けば、多分夢幻列島で一番強い、な。レベル300以上、タイマンなら魔王と良い勝負が出来ると思う。身体能力は高くねえけど、姿を背景と完全に同化させるせいで戦闘中いつでも不意打ちが出来るっていう嫌がらせみたいな性能だったな」


「あのジョーカーさんと同等レベルですか……。もっと修行しないといけませんね」


「取り敢えず考えたくもねえ奴だってのは分かった。あと、今名前が出たジョーカーってのは?」


「魔王。友達でもある」


「ああ、それが魔王の名前なのか」


 忍がどんな奴かを知った後に、追加で出てきた名前について聞いてくる。……というより、魔王の名前は世間一般には知られてないのか?


「なあ、ところでお前らは魔王の名前とかは知らなかったのか?普通討伐しろって言われてるんだから王国側も把握してると思うんだが」


「あー、それな。「カルディア」と「スペディオ」、「レイア」と「コルダ」って言う幹部の名前は知れ渡ってんだが、魔王の名前は知られてねえみたいだぞ」


 カルディアは本物の幹部だ。スペディオは元幹部だ。だが、レイアとコルダという名前は聞いたことも無い。


「……おい、その情報、詳しく聞かせろ。特に、レイアとコルダについてだ」


「は?お前魔王城に行ってるんだから、あった事あるんじゃ……」


 忍は呆れ顏で言ってくる。まさに、「何言ってんだ此奴」みたいな顔だ。だが、これは重要すぎる内容である。


「違う!確かにカルディアは幹部で、スペディオも裏切った元幹部だ!だが、レイアとコルダなんて名前、彼奴らは一言足りとも言ってなかった!場合によっては、そいつらが邪神復活組かも知れねえんだよ!」


「な、なんだってー!って、マジか!?それ!」


「ああ、マジだ。少しでも情報をよこせ」


 忍がネタを挟みながらも、同様した様子で聞いてくる。……今思うと、この世界に来てからこいつらにこの世界に関する事を聞くのはあんまり無い気がする。俺が教えるばっかりだったし。


「確か、スペディオ、レイア、コルダって奴らが王国、最近になって帝国の街とか村とかをたて続きで半壊させているって聞いたよ。なんでも、全壊にはしないで半壊で止めておいて、そのまま何処かに行くとか。で、兵を率いて魔族国に向かうと、カルディアと名乗る魔族に重症を負わされて国境沿いに捨て置かれるとか。こっちも、死者はほとんど出て無いらしい」


「サンキュー晶。だが、これで大体想像はついた。先の三人が街を半壊させてるのは、敢えて生かして魔族への悪意を焚きつけてるからだ。で、カルディアがそれを出来る限り犠牲者を出さないように手加減して追い払ってる。そんな感じだろうな」


 俺は晶の説明から、大体の予想をつける。だが、晶は追加である事を言った。


「……でも、一つ気になる事があったんだ。さっき出てきたレイアとコルダ。コルダが狼の獣人、レイアが人族らしいんだよ」


「獣人は兎も角、人族だって?」


「ああ。それに、スペディオって奴だって常に黒い全身鎧を着けてるせいで、種族はわかって無いようだし」


 人族と獣人と種族不明。この情報量では、一切の手がかりは無い。だが、少し奇妙だ。

 

「……ビアンカ。確か、獣人ってこの世界では割と迫害されてる種族だったよな?」


「はい。身体能力はそこそこ高いのですが、生まれつきの魔力量が低く魔法には長けていないと。それゆえ、魔法を自由に使える人族や魔族などには見下される傾向があります」


 俺が過去ビアンカと適当に話した中に、獣人の立ち位置というものがあった。魔力が低く、魔法を使う人族に弱い種族。それ故、帝国……実力主義の国では奴隷として強制的に働かされている者も多いという。王国ではほとんど見かけないが、特に法の制限は無い。


 そんな、明らかに他種族を嫌ってそうな者が人族と共に行動している。利害の一致と言えばその通りだが、戦争なぞ起こせば他の奴隷の獣人に被害は行く。


 その辺りはどうなのかと考えるが、いまいち良くわからない。他の獣人など知らんとすればその通りだが、そうなると世界征服まで発展する意味が思いつかない。


「……海斗くん?凄い難しそうな顔してるよ?」


「……実際難しいからな。この辺は三人のうち誰かぶちのめして尋問した方が早い気がしてきたところだ」


「まあ、ここでうだうだ考えるよりはよっぽど分かりやすくて簡潔な方法ですね」


「……三人でボコって、ミユキが治す。完璧」


「フィールさん?その尋問って私も参加するの……?」


「……当たり前」


 結局は物理的解決が一番いいとの結論に至る。知らない事を考えるより、知ってるやつから聞いた方が楽なのは当たり前だ。


「なんつーかよー。海斗も大分脳筋思考になっちまったな。昔は温厚だったってのに」


「人は変わるんだよ。それ言ったら百華なんて元人格何処に消えたんだ?」


「原型は残してるだろ。大分変わったが」


「最近よく言われるけど私は実感無いんだよね……」


 俺の人格はやはり変わっているらしい。でも、脳筋までは行ってないと思うんだが。それなら、フィールやビアンカの方がよっぽど脳筋思考な気がする。


「ところで、肉は焦げて無いよね?ずっとこっち見ながら話してるけど」


「安心しろ。しっかり空間魔法で見てるから」


「凄い勿体無い使い方だね……」


 なお、ミラージュの説明が終わった辺りから、既に料理に入っている。スペディオとか関連の時も、ずっと片手間で肉を焼いていた。


「まあ、大分慣れたからな。この位は出来る。……寧ろ、この位出来ないとあの島から出るのは一ヶ月以上遅れてただろうな」


「相変わらず便利だな。俺も使ってみたいぜ」


「止めとけ。お前には魔力が足りない」


「それは……お前の作るアーティファクトでなんとか」


「分不相応の装備は人をダメにするぞ?」


「……遠慮しとくわ」


「そーしとけ。……よし、出来た」


 俺は忍と話しながらも、絶妙なタイミングで肉を焼き終える。ちなみに、ソースは既に完成させている。


 俺は、それをステーキにかけて全員の前に並べていく。日本組からはゴクリと涎を飲む声が聞こえる。


「この晩が終わったら、俺らは出発する。だから、後悔しない位語り合おう。それじゃあ、頂きます!」


「「「「「「頂きます!」」」」」」


 そして、俺らは大体日を跨ぐ位喋り尽くした。今日までに語れなかった俺の活動を語ったり、フィールやビアンカが惚気話を本気で語って美雪が張り合ったり、ビアンカによる魔導機械の紹介があったり、そして今更馬車が無い事に気付き高速移動手段を渡して顔を引き攣らさせたりした。


ちなみに、その手段と言うのはビアンカに教わって作れるようになった魔導機械の一つ、「一人用飛行板・改」である。ビアンカの作った物を元にフライタイトを埋め込んだ為に性能が大幅アップしている。動力源も魔石を内蔵しているので魔力がない者でも使用可能だ。一応自動でバランスを取る機能も搭載したので慣れてなくても使いやすい……とまではいかないが、なんとか使えるとは思う。


 速いからって、空を飛ぶのはトラウマがあるようで四人は遠回しに断ろうとしてたが、「じゃあ、俺らが担いで王都まで全力飛行してやろうか?」と言ったら快く受け取ってくれた。まあ、俺としてもまだ戻るつもりは無かったから助かったが。


 そして、そんな騒ぎを続けているうちに幼馴染み組は睡魔に耐え切れず眠ってしまった。俺も直ぐに眠りたいのだが、それが出来ない事情があるのでそれを片付ける為に集中力を高める。


 事情というのは、今日の間ずっと感じている謎の気配の事。少しだけ方向が変わっていたが、近づいてきてはいないようである。


 俺は魔力にステータスの大半を振り分けて、全力でサーチを発動させる。夜の闇のせいで見晴らしは良くないが、その分動いているものは少ない。


 俺は、ただひたすら視界を遠くに飛ばしていく。目的地があるであろう場所も越えて、遠く遠くへと飛ばす。


 そして、遂にその気配の感じる周辺へと到達する。かなり距離が離れているせいで、この時点で魔力の七割が消し飛んでいる。


 俺はその近くをしらみつぶしに捜索する。大まかな位置がわかっても、詳しい位置は分からない。


 それでも、諦めずにひたすら探す。そして、魔力が残り一割程度になった時に……その、化け物は姿を現した。


 体長10メートルはありそうな巨体。闇に溶け込むような黒い体毛。その所為で詳しい輪郭は分からないが、その姿を一言で言うならば「四足歩行の魔獣」だ。


 足には全てを引き裂けそうな爪が、口にはありとあらゆるものを砕けそうな牙が、頭部には如何なるものも隔てることの出来なさそうな角が。


 そして、最も存在感を現している目は暗闇だと言うのに紅に輝いていた。その場にいない俺でも、恐怖心を植え付けられるような禍々しさを感じる。


 その魔獣はのっそのっそと歩いている。その魔獣が一歩歩くたびに、地面にはヒビが入り地響きが鳴る。

 

 ここで気付いたが、周りには此奴以外の気配は何一つ感じない。恐らく、この近くにいる全ての生命が警鐘を鳴らし逃亡したのだろう。


 俺はこの歩く災害とも言えるような魔獣に向けて鑑定を発動させる。だが、その結果は非情だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

イルネス

種族 ¥&@

レベル 


体力

魔力

筋力

敏捷

物防

魔防


スキル


 $€と><の神{#^%+=によって生みだされた&@。「£?」の異名を持つ。生物にあらず、ステータスと言うものを持たない。数ある世界の一つ「ケイオスピア」にて「地獣神ベヒーモス」として畏怖される存在となっている。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 一部の文字が文字化けしており、重要な情報はわからない。だが、言える事は決して関わってはいけないという事だ。


 なんかの神によって作られた何かであり、そのものも神として呼ばれる存在。俺らが本気を出したとしても、手に負える相手では無い。


 俺はそれを確認して、サーチを解除……しようとして、イルネスと目が合う。


 ……念の為言っておくが、俺はあくまで空間魔法で様子を探っていたのであり、此処にはいない。勿論、見てる事も普通なら分かるはずは無い。だと言うのに、俺は目が合ってしまった。


 それも、偶然ではない。目線は固定されていなかったのに、今はしっかりと目線が固定されている。明らかに、こちらに気づいている。


 俺は激しい寒気を感じる。そのせいで、サーチを解除するのさえ忘れてしまった。 


 そして、イルネスは口を開く。するとイルネスの口からでは無い、しかしはっきりと俺の頭の中に透き通るような、それでいて冷たい声が響く。


『……へえ。彼奴ら以外にも、こんな事が出来るのがいたんだ』


 彼奴らと言うのが、誰なのかは分からない。だが、少なくとも俺のような規格外がいた時期から存在している。その事実が、俺を襲う寒気を強める。


『本来なら、これは宣戦布告になるけど……面倒くさいからいいや。でも、こういうのはやめた方がいいよ。私は許すけど……彼奴らは多分、やられたら滅ぼしに行くから(・・・・・・・・)


 もしも面倒じゃ無かったら、俺たちを殺しに行ってたという事実。さらに、此奴と同程度の力を持つ何かがまだ存在している事を示唆する発言。


 絶対に此奴、いや、此奴らには喧嘩を売ってはいけない。俺でも勝てる相手達では無いということを自覚させられる。


 俺は、サーチを急いで解除した。見えるのは暗い部屋の中だけだ。起きてる奴は俺一人だけだ。


 気がつかなかったが、俺は凄まじい量の冷や汗をかいていた。服がびしょ濡れになる程の量だ。


 もう彼奴の姿は見えないというのに、未だに心臓がバクバクと音を立てている。それほど俺が緊迫していたという事だ。


 俺はさっきの光景を一時的に押し止めて寝ようとも思ったのだが、決して脳裏から離れることはなく、その日は一睡もすることはできなかった。

??と??の神?????……。一体何者なんだ……。

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