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27話 修羅場

 「……クロノカイトの」


 「1分間クッキングー!」


 「YHAAAAA!!!!」


 さあ始まりました、黒野海斗の1分間クッキング。メインシェフは黒野海斗、アシスタントはフィール・ヴェーチェル、雑用は影山忍でお送りします。


 「さあ、観客の皆!調子はどうだい?」


 「「「「最悪だ!!」」」」


 俺の茶化した声に、四人分の怒声が返ってくる。美雪、百華、晶、ビアンカである。口調が大分変わってる気がする。


 「なんだよー、怒鳴るなよー、ぽんぽん痛いよー」


 「お前……流石にそれは無いと思うぞ」


 俺のボケに忍が反応する。普通怒ってる相手にこんなことしたら殴られるだろうが、そんなことにはならない。


 それは何故か?答えは簡単だ。それが出来ないからである。


 戻ってきた後四人からの質問攻めが鬱陶しかったので、三人で協力して四人を簀巻きにしたのだ。忍とフィールが美雪、百華、晶の三人を。俺がビアンカを担当した。


 もっとも、使用したのは即席で作ったなんちゃって筵なので強度は余り無い。だが、それを留めるために使ったのがアダマンタイトの鎖とかなので結局は千切れない。なお、ビアンカのだけは幻龍鱗鎖である。


 そして、それを担いで壁に立てかけた後であの茶番劇を始めた。そりゃ怒る。


 「海斗くんー!解いてよー!」


 「忍、君はそっちにつくのかい?考え直さないか?」


 「くっ、殺せ!」


 「ビアンカさん何言ってるの……?」


 四人がそれぞれ色々な事を言ってくるが、全力でスルーして料理を始める。


 「えー、まず適当に野菜と肉を炒めます。忍はそこに置いてあるジャガイモもどきとニンジンもどきの皮剥いて、それらとタマネギもどきを切ってろ。あ、しみるから注意しろよ」


 「へいへい……って、いつの間にこんなの用意したんだよ」


 「夢幻列島に生えてたんだよ。そろそろ在庫が減ってきたから味落ち覚悟で買ってくるか、面倒だけど夢幻列島に行って取ってくるなりしねえとな」


 忍の質問にはしっかりと答えていく。ちなみに、今日作るのはカレーだ。


 「で、フィールはこの粉を良くかき混ぜといてくれ。……吸うと咳き込むから注意しろよ?」


 「わかった」


 フィールには、カレー粉代わりになるスパイスを作ってもらう。と言っても俺が用意した粉末を混ぜてもらうだけだが。


 「まず、一口サイズに切った肉を炒めます。ここで香り付けにニンニクを入れると良いのですが、この世界には無いので代用品を使います」

 

 俺は説明しながら肉を炒める。その途中、フィールが声を掛けてくる。


 「……もう1分過ぎた」


 一応、最初に1分間クッキングと言っていたのを気にしているようだ。まあ、あれ関係無いけど。


 「あ、気にしなくていいぞ。あれはその場のノリだから。と言うより、1分間クッキングなんてファストクリエイト使わないと無理だしな」


 「ノリって大事だよな」


 忍は俺の意見に対してうんうんと頷く。此奴は俺と思考が似てるからそういう考えは分かってくれる。


 「……そう」


 フィールはそう言うと、粉を混ぜ始める。……風魔法で。普通は手で混ぜるからな?そして何故飛び散らないのか?とか色々と聞きたい。


 「おい忍。野菜のカットはもう終わってるんだろうな?」


 「はっ!投入の準備は出来ております」


 「じゃあ寄越せ。……あ、ここで野菜を入れて炒めます」


 俺は忍の切った野菜を適当に入れて炒める。なんかサイズが大きい気がする。


 「あの……カイト様?いい加減解いてくれませんか?と言うより、何故私だけ態勢が正座なんでしょうか。凄い脚が痺れてきたんですけど」


 炒めている途中、ビアンカがこちらを見て縋るような目でこちらを見てくる。そんな目をされたら、やる事は決まってしまうではないか。あと、正座させたのはなんとなくだ。


 「フィールー。そろそろ混ぜるのはいいから、そっちでビアンカと遊んでていいぞ。何、遠慮は要らない」


 「……了解」


 「え……?いや、フィールさん?なんで手をそんなワシャワシャさせているのですか?まさかとは思いますが、そんな残酷な事はしませんよね?」


 無論、フィールを仕向ける。容赦は無い。忍にも確認を取ったが、オーケーは出た。まあ、論争の最中で忍を気絶させて人数的優位に立とうとしてた位だから自業自得ではあるが。その時は俺が防御した。


 「さあ、今こそ反撃の狼煙を上げろ!行け、フィール!その白き悪魔に裁きの鉄槌を!」


 「やれ!やれ!やれ!」


 「……ふふっ」


 「鬼!悪魔!人でなし!サディスト!」


 俺と忍でビアンカに救いはないという事を強調する。そして、それに応じてフィールはジリジリとにじり寄っていく。ビアンカが罵倒するが、それは止まらない。


 ツンっ


 「ぐっ……」


 フィールがビアンカの足をつつく。すると、ビアンカは体をビクッと震わせて苦悶の表情をする。


 「……見てたいけど、料理の方も進めないとな。で、野菜を炒め終わったら水を入れて煮込みます。まあ、時間は適当で」


 「……んぁっ……」


 俺が説明している途中も、ビアンカの声は聞こえてくる。というか、艶かしい声に聞こえる。実際は足をつつかれているだけだと言うのに。


 「……」


 「くぅ……」


 「……」


 「あぁ……」


 「……楽しい」


 「フ、フィールさ……ひゃん!」


 俺がチラリとフィールの遊び(拷問)を見てみると、笑みを浮かべているフィールと、悶えているビアンカの姿が。一応言っておくが、フィールがやっているのは筵越しから正座しているビアンカの足をつついているだけである。決してエロい事は無い。


 「……えーと、じゃあこのフィールに混ぜて置いて貰った粉を入れてしばらく煮込みます」


 「あ、あれ見た上で続けるんだ」


 「……ところで、私達って何時になったらフリーになるの?」


 俺が何も無かったかのように解説に戻ったら、美雪と百華が色々言ってくる。


 「まあ、完成したら解いてやるよ。ただし、懲りずに追求してきたら……四人揃ってビアンカと同じ目に合わせてやる」


 上げてから落とす。良く酷い酷いと言われるが、俺は好きだ。ちなみに忍も好きだ。性格歪んでる?人の本性なんて皆そんなもんだと思う。


 「……ちなみに、料理が終わるまでどの位かかる?」

 

 「んー?煮込み終わった後意味あるか分からないけど昼まで寝かせておくからそれまでだな」


 なお、現在は10時位である。


 「すまないけど……トイレ行かせてくれるかい?流石に2時間も耐えられる自信は無い」


 「あー、うん。それもそうか。……この際全員解いちまってもいいか。フィール、忍。取り敢えず解いてやれ」


 晶が懇願してきた事から考えて、美雪と百華もトイレは近いと予想出来るから、三人を解放する。ちなみにビアンカは、


 「……もう少し遊んでていい?」


 「いや、私も解ほ「いいぞ」って、ちょっ「ありがと」話をきいっ!?」


 フィールからは逃げられなかった。そして、フィールが今までない位楽しそうだったので許可してしまった。ビアンカには後で謝ろう。


 「んんー!疲れたー!」


 「じゃあ、僕はトイレに行ってくるよ」


 「行ってらっしゃい。私も行きたいから、終わったら言ってね」


 「……お前ら、心なしかビアンカさんから目を背けてねえか?」


 伸びをしてる美雪も、トイレへ向かう晶も、それには手を振る百華も全員ビアンカの方は見ていない。なお、そんな中でもビアンカはフィールに弄ばれている。現在、足元だけ筵を解いて手でグリグリ弄っている。最早イジメに見える。


「聞こえない」


 「何か言ったの?」


 「僕の記憶には何も無いね」


 「お前らも結構鬼だなぁ」


 そして、そんな会話をしてる間も、ビアンカの苦悶の声は室内に響き続けていた。いと哀れなり。


 その後……フィールの自由にさせていた結果昼飯の時間になるまでビアンカは痺れた足をつつかれるなり、胸を揉まれるなり、ある程度解いた上でくすぐられたりなどそれはそれは大変な目にあったと言う。

 

 ちなみに、俺はあの後部屋から出たのでその光景は見てはいない。なら何故知っているか。それは、


 「カイト様〜!聞いてるんですか〜?ひっく」


 この逝ってしまったビアンカが理由である。カレーはすでに食べ終わって全員から高評価を勝ち取った。まあ、そこまでは良かったのだ。


 フィールに弄ばれたビアンカは凄いやつれており、それを見兼ねた俺はそんな嫌な気分を吹き飛ばすと言われている魔の薬をビアンカに渡したのだ。


 もっとも、魔の薬と言ったって実態はただの酒である。俺は飲めないが、ビアンカの気が少しでも紛れればいいと思って渡した。だが、結果はこれである。まさか、瓶一本丸ごと飲み干すなんて誰が予想できるだろうか。


 そして、見事に出来上がった。今は俺の首に腕を回しながら体を密着させている。正直言って、凄い厄介である。


 ちなみに、ビアンカをそんな原因にした負い目を感じたのかフィールは逃げ出した。あと、美雪は対抗心を燃やしているのかビアンカとは反対側から俺に密着してきている。


 (なあ、忍。俺はどうしたらいいんだ?)

 

 (意味も無く二人で覚えた読唇術を今ここで使って行くのか。で、どうしたらいいか?決まってるだろ。爆発しろ)


 (ちょっ)


 俺は忍に読唇術を利用して助けを求める。だが、希望は砕け散った。


 (……つーか、横見てみ?あ、ビアンカさんの方な)


 (は?何を今頃……っ!?)


 俺は忍に言われてビアンカの方を見てみる。すると、そこには直ぐ真横から俺の顔を直視していたビアンカの姿が。


 「どういあらいいひゃにゃんていあってるひゃらいれすか〜。あたいのことたけいてえびゃいいんれすよ〜」


 「あ?えーと、『どうしたら良いかなんて決まってるじゃ無いですか。私の事だけ見てれば良いんですよ』って感じか?……分かるか!」


 「いや、分かってるじゃねえかよ。と言うより、なんでお前は訳せてるんだよ」


 忍が突っ込んでくるがそれは気にしない。と言うより、何故俺は訳せたのだろうか。あと、この駄メイドさらっと読唇術まで会得してやがる。


 「……そぉい!」


 「んぐっ!?……コクコク……ぐふっ」


 さっきの呂律の周り具合から俺はビアンカが手遅れだと判断したので、夢幻列島産ポーションその二、超強力解毒剤を渡す。ちなみにこれは全く苦くない。苦くはないが、凄い渋い。


 それを口に捻じ込まれたビアンカはダウンする。気絶する程でも無いと思うんだが、まああのテラ酔いモードの反動だろうか。


 「海斗くん?一体何飲ませたの?」


 「解毒剤。アルコールも毒みたいなもんだし、多分効果はあるだろ」


 俺はビアンカの腕を下ろしながら美雪の質問に答える。……今思うと、ビアンカを気絶させたのは間違いだったかもしれない。


 「ユキちゃん!今が絶好のチャンスだよ!」


 「さあ、美雪よ!行け、行くんだ!」


 「え?え?……あ、そういう事か!」


 「……あ」


 フィールが不在、ビアンカダウン中と言う状態になった事を確認した百華と忍は、美雪を唆す。そして、それを察した俺が対処しようにも美雪は俺の手を取った後ギュッと握る。


 「……ふふっ」


 美雪は嬉しそうに俺に微笑んでくる。日本にいた時には見る事は無かったような、そんな笑顔だ。

 

 美雪は、それだけでも満足そうに見える。だが、それに満足しないのが二人。


 「何やってんだ美雪!こんなチャンスが次いつ来るか分かんねえんだ!もっと切り込め!」


 「腕を!ビアンカさんがやってたように!」


 「え、ええ!?そ、それは、まだ……」


 忍と百華の指示に、流石の美雪も戸惑いを隠せない。というか、お前ら空気読んでやれよ。俺も読んでたんだから。


 「どうしてそこで止めるんだそこで!もう少し頑張ってみろよ!ダメダメダメダメ諦めたら!」


 「出来る!出来る!君なら出来る!」


 「絶対やってみ!?必ず目標達成出来る!だからこそ!」


 「「ネバーギブアップ!!」」


 「てめえら空気を読め!そして暑苦しいわ!」


 「「ヘブッ!?」」


 二人の熱意がウザくなってきたので、俺はファストクリエイトで魔物の皮とかを使ってゴムボールみたいな伸縮性に富む弾を二つほど作って指弾で弾き飛ばす。それを眉間に食らった二人は大きく仰け反って眉間を抑える。


 「二人とも!?大丈夫?」


 美雪が俺から手を離して二人に駆け寄っていく。昔と変わらず、優しい心だ。


 だが、二人は


 「行け……俺に構わず、行くんだ……がふっ」


 「ユキちゃん……人の夢は、終わらないよ……ぐふっ」


 ネタ発言を残した後、そのまま気絶していった。あと、百華は何が言いたかったのだろうか。


 「ああ!?生命に宿る再生力よ!今ここに活性化せよ!『生体再生』!」


 美雪は二人に再生魔法を施している。それを含めて、俺は現在の状態を確認する。


 気絶している百華と忍、それを蘇生する美雪、空気になっている晶。今此処にいないフィールに、ノックアウトしているビアンカ。そしてほったらかしにされた俺。


 事実上の最終日だと言うのに、この纏まりの無さである。それを俺は認識して、深い溜息を吐いた。




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