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26話 話は逸れるよ何処までも

はーなしはそれるーよーどーーこまーでーもー

 無人の宿屋に戻った後。俺は何故か忍に1人呼び出される。美雪達もついてこようとしてたのだが、


 「止めておけ、お前らがついてこれる話じゃ無い」


 と、カッコつけて(痛い言動で)言ってたので、誰もついてくる事は無かった。と言うことで、二人きりで外の空気を吸っている。


 「で、話って何だよ。彼奴らを追い払ってまでするもんなんだろ?」


 俺が忍に聞く。そんな重要な話ならさっさと言ってもらわなければ困るのだ。


 「まあ、ただの愚痴みたいなもんだよ。流石に全員に聞かれるのは恥ずかしいからな。それに、お前なら聞き流したりしないで聞いてくれるだろう?」


 俺は日本にいる時、忍の愚痴を聞くことは結構多かった。此奴はそんな考えてないようで色々深く考えている所為で悩みを抱えることが多かったのだ。


 「まあな。で、今日の悩みは何だ?」


 「……そりゃ、この世界に来たことについてだよ。勇者として召喚されて、俗に言うチートも手に入れた。ステータスも見る事が出来て、ゲームの世界に入ったような感覚がしてたんだ。最初の方はな」


 忍は空を仰ぎながら言う。そして、溜息を吐く。


 「……だけどな、現実はゲームほど都合よく動かないって痛いほど思い知った。お前が夢幻列島っていうラスダン級の場所に飛ばされてまず生きてはいないって言われたときには、それはもう嫌と言うほどな」


 「確かにな。俺だって最初はゲームかと思った。だけど、俺にはチートも戦闘向けのが無かったんだぜ?その上島流し。お前以上に、俺はそう思ってる」


 忍が思ってる事には俺も賛同出来る。と言うより、都合よく無いって思った一番の出来事の、一番の被害者が俺なのだから当たり前だ。


 「落ちこぼれが人外魔鏡に飛ばされて、力を得て帰ってくる。まあ、確かにテンプレかもしれない。でも、それをやらされる身は堪ったもんじゃ無えよ」


 「それもそうだよな。……こっちは、お前がそんな地獄にいるってのに、チンタラチンタラ修行して、帰る手段も考えずに夢幻列島まで行って、そこでお前の残した道具に助けられた。お前が気をきかせてくれなかったらミイラ取りがミイラになるところだった」


 「だが、それは早く来ないと俺が死ぬって思ってたから自分達のことも考えずに来てくれたんだろ?」


 「まあ、それはそうなんだがな……。俺らが行った時の力じゃあの島の奴らに太刀打ちする手段は無かったから、意味は無かったかもな」


「それ言ったら俺はどうなるんだよ。こっちは非戦闘技能を駆使してレベル上げしてようやくイーブンだったんだぞ?レベルが他のところで上げれただけマシじゃねえか」


 いつの間にか、俺の愚痴にもなってきている。これまで吐き出す事が無かったから、結構溜まってたのだろうか。


 「……お前の方が、俺らよりよっぽど苦労してるんだよな。そんな事は分かってる筈なのに、なんでお前に愚痴こぼしてるんだか」


 「それも偶にはいいだろ。日本にいた時の事を思い出せるしな」


 「日本か……。俺らどういう扱いになってるんだろうな」


 「多分、クラス全員が突如行方不明とか、そんな扱いになってるんじゃないか?で、警察も動いたけど手掛かり一つ掴めず迷宮入り。そんな流れだろ」


 話は日本のものへと流れる。話すだけ恋しくなったり悲しくなったりするだろうが、フィール達がいる中で話すのもアレなので話題は変えない。


 「だよなぁ。親も心配してるだろうな」


 「いや、心配で済むなら良いほうだろ。手掛かり無しでもう二ヶ月近いんだぞ?飯が喉通らなかったり眠れなかったり、その位のレベルだろうな」


 俺は、そんな現実は甘くないと告げる。親しい人がいなくなる悲しみは、此奴らがよく知ってる筈なんだが。


 「……早く、帰らないとな」


 「ああ。だから、お前らも協力してくれ。俺の旅には同行させられねえが、それでも出来ることはある」

 

 「確か、魔王軍の幹部の足止めだよな。確か、レベル200とか言ってたよな?それよりも危険な旅か……。お前なら大丈夫だろうしお前の心配はしねえが、美雪はしっかり守ってやれよ?」


 「それは約束するが俺の心配はしねえってどういうことだよ」


 「え?お前を心配するだけ無駄だろうが」


 忍はさも当然のように言う。確かに、常識の範疇にいる敵になら、遅れをとることはまず無いだろうが。


 「……そんな訳ねえだろ。何時だって、命の危険は付き物だ。それに、まだ魔物の気配は少しだが感じてるしな」


 「は!?それ早く言えよ!早く討伐しに行かねえと!」


 「落ち着け。気配を感じるって言っても無茶苦茶遠く……多分目的地を通り越して帝国だったか?まあ、そっちの領土の方だ」


 「驚かすなよ。それなら全然問題無えじゃねえか」


 忍はやれやれといった様子だ。だが、忍は大きな勘違いをしている。それを結構重要な。


 「お前は何を言ってるんだ?そんなクソ遠い所からでも感じる気配だぞ?……多分、強さは俺以上だぞ」


 「……あっ」


 そう、全く関係なさそうな、遠い地にいる筈の魔物の気配がするのだ。距離を考えると明らかに俺でも対処しきれない強大な存在だ。


 「一応、夜になってから空間魔法で遠距離から探してみる予定だ。方向からして、今回のスタンピードの原因だろうしな」


 「……それはフィールさんやビアンカさんは知ってるのか?」


 「確認はしてねえが、多分知ってると思う。正確には魔物よりもこう……なんか、おぞましいものみたいな気配だから、違和感は憶えてるだろうし」


 「人でも魔物でも無い何かって事だよな?……それってアウトじゃね?」


 「もろアウトだな。まあ、そんなに動いてないし直接的被害は無さそうだけどな」


 特に高速移動する訳でもなく、気配はそこら辺から動いてはいない。だから、直接襲われたりする事は無さそうだ。


 「間接的被害はヤバイだろうなぁ……。って、いつの間にか俺の愚痴じゃ無くなってねえか?」


 「いつの間にか、な。なんか、昔からこんなんだよな。勝手に別の話題へ流れてって、気がついたら全く別の話をしてる」


 「俺がお前と話してる時は毎回そうなるんだよな。別の奴が一人でもいると確率はグッと減るけど」


 俺と忍は顔を合わせて笑う。……こうしてると、なんか昔に戻ったみたいだな。


 「はぁー。ところで、全く関係無い話だけど、お前って日本に帰ったらどうしたい?」


 「全く関係無えな。そういうのが話題が変わる一番の原因だと思うが……。まあ、やりたい事ね……」


 俺は忍に言われた事を考える。やっぱり、家族や他クラスの友人に会いたいってのが一番かな。


 「まあ、知り合いに再開してえな。色々と精神ダメージ与えてるだろうしな」


 「違う、そうじゃ無くてだな。帰ってからどんな道に進みたいかって事だよ」


 だが、忍の聞いてきた意味は違った。要するに将来の夢のようだ。


 「将来の夢か……」


 だが、将来の夢と言われてもピンと来ない。昔は色々と言えたのだが、今は特に思いつかないのだ。


 「……思いつかねえ。強いて言うなら、平穏に暮らせりゃいいかな」


 俺は、笑われると思っていた。しかし、忍はそんな事は言わなかった。


 「……お前も同じなんだな」


 「お前もって事は……」


 「ああ。特にやりたい事が思いつかねえんだ。こっちに来る前は刑事とか、そんな仕事してえなぁとか思ってた。だけど、あの仕事は身体能力も重要になるだろ?」


 「……お前も同じ理由みたいだな」


 忍がやりたい事が無いと言った理由も、俺と同じようだった。だから、俺にはその気持ちがよく分かった。


 「なんか、俺らの力ってズルして手に入れたみたいな気がしてな。そこから必死こいて頑張ってるのは事実だけど、根本が違うんだ。それなのに同じ土俵に立つ権利はあるのかなってな」


 俺は、何かを作るような仕事がしたかった。だが、それを日本でやったらどうか?


 スキルという、地球人には理解不能の力。そんな異端の力を使うのは、1から必死に頑張っている人達に失礼なのでは無いか。そんな気がしたのだ。


 「だからと言って、別の仕事に興味は無い。……なんか、俺らの力って自分が望んでた方に向かってる気がするんだよな。でも、今はその所為で悩んでる。全くもって皮肉な話だな」


 「そーだな……。まあ、失礼だとかそんな気持ちが有っても、それでフィールやビアンカが困るようなら容赦なく手を出すつもりだけどな。気持ちの問題は実際の問題には敵わねえんだし」


 「ベタ惚れだなぁ。全く持って羨ましいぜ」


 「そこまでじゃねえだろ。つーか、そう言うお前には好きな奴はいねえのかよ」


 折角シリアスな雰囲気だったのに、忍はそれを無視してからかってくる。それ故に、聞かれても若干答え辛い質問をしてやる。


 「好きな奴、か……。いるぜ。結構前から好きなのに、未だに告白できてないけどな」


 「誰だ?いや、そもそもこの世界の人か?日本の人か?」


 「……ここから先は、誰にも言わねえって約束してくれるか?」


 忍は、好きな人を言うだけだというのにマジな顔になる。何があるっていうんだ。


 「まあ、約束しよう。で、誰だ?」


 俺はサッと約束する。此奴の好きな人なんて思いつかないのでそうしてでも知りたいのだ。

 

 「……・華」


 「は?聞こえねえぞ?」


 「……八重樫 百華」


 忍はようやく教えてくれた。くれたのだが、その名前が凄く、物凄く聞き覚えがあった。


 「……マジで?」


 「マジだ」


 「ちなみに何時頃から?」


 「中二頃には既にだな」


 「おおう……」


 幼馴染みの恋なんて早々ない。そう思ってた時期が俺にもありました。俺の時は珍しい事例かなと思ったのだが、こんなに近辺にいるとなると結構ある事例なのかも知れないな。


 「まあ、自分でも何処が好きになったのかは分からないんだけどな。でも、好きだって事は変わらないっていう不思議な感覚だ」


 「んー……確かに、俺もフィールやビアンカの何処が好きかって言われると答えに困るな。全部が好きとした言えないし」


 「お前さっきベタ惚れってこと否定して無かったか?その発言は完全にベタ惚れしてる奴のセリフなんだが」


 「……あれ?」


 気付くと、自分で自分が二人にベタ惚れしてる事を証明してしまっていた。常に落ち着いているフィールも、明るいビアンカも。対照的な存在だけど、二人ともに自分が結構大きい好意を向けていることを自覚する。とは言っても過ごした時間的にフィールの方が想いの大きさは大きいが。


 「はあー、これじゃ美雪は前途多難だな。まあ、応援してやらないとな」


 「俺は警告はしたからなぁ。まあ、自分でもここまで二人にベタ惚れしてるとは思ってなかったし多少申し訳無いけどな」


 「もしもお前が美雪を蔑ろにしたりしたら……クラス全員がお前の敵に回ると思えよ」


 「それは何故だ?」


 「……あー、そうか。一応言っておくが、美雪がお前の事好きだってのは周知の事実だったんだぞ?美雪がお前にアプローチしてた時の目は覚えてるか?それ何時までも気付かないお前への呆れの目だったからな?」


 「ファ!?マジか!?」


 今明かされる衝撃の真実。まさか、昔の俺がそこまで鈍感だとは思いもしなかった。というか、誰か教えて欲しかったな。


 「えらくマジだ。……そろそろ戻るか。誰か来てもおかしくないしな」


 「だな。……って、ちょっと待ってくれ。そこにいるのは誰だ?まあ、フィールだと思うが」


 俺は忍の言う通り戻ろうとしたのだが、吹いてくる風に違和感を感じて虚空を見つめる。ぱっと見何も無いし、気配も感じない。


 「おいおい、誰もいないだ「……バレた」……嘘だろ?」


 忍が誰もいないだろと言おうとした瞬間、フィールが虚空から姿を現す。例の透明マントである。


 「やっぱそれを渡したのは間違いだったか?お前が使うと各種隠蔽手段のせいでなかなか気付けねぇ」


 「……浮かれて魔法の制御が疎かになった所為で、風の流れが不自然になった。要反省」


 「そもそも風の流れだけで気付けるのがおかしいって事に気付け」


 忍が突っ込んで来るが、俺はそうは思わない。だって、グリフォンとかは近付いたら透明でも気付くし。


 「こんくらい出来なきゃ生きれないって事だったんだよ。……まあ、フィールに聞かれたのは仕方ねえけど、ビアンカ達には言うなよ?特に彼奴はそんな事言うと調子に乗るだろうからな」


 「……当たり前」


 念の為、フィールを口止めしておく。でないとあのホムンクルスはどんな行動をとるかが想像出来ないからな。


 「じゃ、戻るか」


 そして、俺らは屋内で色々話してるだろう四人の元に戻って、何を話したのかとかを矢継ぎ早に聞かれる事になる。

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