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25話 決してロマンチックな場所ではない

「……あぁ……終わったぁ……」


「け、結構流れて来てたもんね……」


「ず、頭痛が……魔力が……」


 魔物を全滅させた後、真っ先に声を上げたのは後ろ組の三人だ。その体は返り血で真っ赤になっている。さらに結構な量の魔物の死骸に囲まれており、最終防衛ラインとしてしっかり活躍してくれたのがよく分かる。


「悪いな、結構流れちまったみたいで」


「いや、問題は無えよ……」


「凄い、疲れた、けどね」


「倒しても倒しても結構抜けてくるし……」


 前線を止めていたビアンカの弾薬切れの時から、抜ける魔物が結構多く、こいつらはそれを全部止めてくれていたのだ。感謝の極みである。


「まあ、後で飯でも作ってやるから元気出せ。……まあ、その前に美雪とフィールに色々聞かなきゃいけないけどな」


 俺はとりあえず三人を置いておいて、美雪とフィールの方を向く。あの魔法は何なのかとか、色々聞くことがあるのだ。


「まあ、まずはフィールからだな。美雪からどうやって1本取られたんだ?」


 俺はフィールに1本取られた時の流れを聞く。まあ、戦闘中に俺が予想したみたいな奴だとは思うけど。


「……並列ストームを『事象再生』で返されて、運悪く一発。私が当たったすぐ後にミユキも当たってたから、もう少し避けてれば……」


 フィールは俯きながら言う。威力は低いが範囲と回避し辛さはかなり高めの魔法の嵐。それをそのまま返されてヒット。メンタルには結構来るだろう。


「ま、まあ、ドンマイだな。じゃあ、次は美雪だ。あの魔法、一体なんなんだ?」


 現在俺が一番気になっている事だ。大体の魔法が使えるフィールでも知らないらしい魔法。いつ何処で使えるようになったのかが非常に気になる。


「何って言われても……。昨日の修行の時に、突然頭の中に知識が流れ込んできて。使い方とか、その特徴とか。あと、何故か光魔法のスキルが別の物に変わってて……」


「別の物?ステータス見せて貰ってもいいか?」


「いいよ。はい」


 俺は美雪の言葉が気になり、ステータスを見せて貰う。すると、非常に気になるスキルがあった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

白井 美雪

種族 人間

レベル 38


体力 420

魔力 2110

筋力 420

敏捷 420

物防 420

魔防 420


スキル

高速詠唱レベル3 杖術レベル4

【再生魔法】レベル3


備考

 ヤンデレ疑惑が微レ存

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 【再生魔法】

 分類 昇華スキル

説明

 光魔法が変化した魔法。物を「再生」する事に特化している。ちなみに再生と偏に言っても結構な意味が含まれているので要確認。

 なお、現在使用可能なのは「起きた事象の残滓を再利用して発現させる(ただしそれが質量を伴う場合は三分以内)『事象再生』」と、「生体の失われた場所を作り出す『生体再生』」の二つ。あと、その応用。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 備考に見えた物騒な文字は置いておいて、昇華スキルという初めて見る分類のスキルがあった。無論、かなりのチートスキルだ。

 

 今使えるのはリサイクルみたいな意味と記録した情報を音や映像に変換する意味の二つを合わせた「再生」と生物学的な意味の「再生」の二つだけのようだが、まだレベル3な為、もっと増えても不思議ではない。


 人を構成させる意味の「再生」、死んだ物を蘇らせる「再生」、記憶を引き出すという意味の「再生」。


 さっと思い付いたのはこのくらいだが、逆に言えばこれ程の可能性を秘めている魔法と言う事でもある。


「海斗くん、何か分かったことはあった?」


 美雪が俺に尋ねてくる。期待に満ち溢れている目だ。


「不確定要素が多いからなんとも言えんな。まあ、なんで変化したのかとかは全く持って不明だが」


 俺やフィールが持っている特殊スキルとは違い後天性のスキルなのだろうが、条件が不明な所為で全く宛にはならない。


「そっか……。っと、そうだった!」


 だが、美雪はそこまで気にしてないようである。と思ったら、突然大声を上げてから真っ直ぐと俺の方を見つめてくる。


「なんだ?どうした?」


「えっとね。前に言った時は酷かったからもう一回言わせて」


「何をだよ」


 美雪が言いたいことがイマイチ分からない。酷かったからってどういうことだってだよ。


 しかし、俺のそんな心情はつゆ知らず、美雪は言葉を発する。


「……私は、海斗くんが好きです。この世界に来る前から、日本にいた時からずっと」


 美雪が言い出したのは、告白の言葉だ。確かに、前に好きだと言った時は情緒不安定で叫びながらだったので悲惨の一言だった。


「海斗くんがいなくなった時、とても悲しかった。少しでも気を抜いたら、押しつぶされそうだった。でも、夢幻列島に行って海斗くんが生きてるって分かった時は、凄い嬉しかった。……それで、その時から決めてたの。次に会った時、必ず告白しようって」


 美雪は言葉を紡ぐ。聞いてるだけで此方が申し訳なくなる内容だ。


「……」


「だから、お願い。私も、海斗くん達の旅に連れて行って。……もう、海斗くんが遠くに行っちゃうのは嫌だから」


 美雪は、そう言ってから口を噤む。俺の返答を待っているようだ。


「……お前が俺の事が好きだって事は分かったけど、その想いに応える事は出来ないかもしれないぞ?」

 

「分かってるよ。フィールさんとビアンカさんの事だよね?」


 俺が美雪に警告すると、美雪はそんな事は分かっていると言う。


「ならなんで……」


「だからと言って諦めたら、永遠に後悔し続けると思うの。それに、海斗くんが二人ともに好意を向けてるのは見てて分かる。まだ小規模だけど、これってハーレムみたいなものだよね?」


「ぐっ……」


 美雪は言葉を続ける。そして、幼馴染みにハーレム作ってると言われて俺の精神が悲痛な叫び声を上げる。


「なら、私がそこに入っても、問題は無いと思うんだよ。私が海斗くんを想う気持ちは、誰にも負けてはいないから。私は、海斗くんに振り向いて貰えるまで諦めないから」


「……」


 正直、どう反論していいか分からない領域まで来ている。ここはフィールとビアンカに意見を仰ぎたいが、真っ直ぐ見つめられているので目を逸らしたらすぐにバレそうで出来ない。


「勿論、足を引っ張るつもりは無いよ。邪魔するものは、容赦なく潰す。その位の覚悟は出来てるよ」


「お、おう」


 何故か、ここのトーンだけ威圧感が漂っていた。完全にマジなトーンなので結構怖い。


「で、海斗くん。さっき一番に断らなかったって事は……連れて行って貰えるんだよね?」


「……ああ。でも、覚悟だけはしておけよ。この旅は、いつ死んでもおかしくないような、そんな旅だぞ」


「そんな事は今更だよ。強くなるためにダンジョンに行って修行したり、海斗くんがいると思ってた夢幻列島に行ってきたり。この世界にいる時点で、命の危機なんて日常だから」


「それはそれでどうかとも思うんだがな……。否定が出来ないところが辛いな」


 俺は美雪の言ったことに苦笑いをする。出来れば此奴らには常識を忘れないで欲しかったのだが、既に投げ捨てられてしまったようである。


「……美雪が付いて行く許可が貰えたのは嬉しいんだが……」


「よく、こんなところで告白なんか出来るね。……冷静になると、凄い血生臭いんだけど」


「屍だらけだからね……」


 三人がボソッと呟く。言った通り、ここは虐殺現場、血肉が散乱し、一部地形が変形している (主にフィールと俺の所為)ような場所だ。告白するようなロマンチックな場所では決してない。


「あー……うん、そうだな。後の話は歩きながらにしようか。滞在予定も今日で最後だし、ゆっくり語り合いたいからな」


 そう言ってから、俺たちは村の中へと歩いていく。すると、入り口の見張り台のところから一人残っていた村長(命知らず)が降りてくる。


「わ、儂は……この村は……助かったのか……?」


「んあ?村長見てたのか。見ての通りもう終わったよ。援軍の必要も無し、被害はそこら辺の地形が若干変わった位だ。まあ、歴史に名を残しそうなレベルの災害だったにしては信じられない位の結果だと思うぞ」


 村長はまだ現実が飲み込めて無いようで、信じられないと言ったような感じで聞いてくる。あくまで俺は足止めと言ってたからまさか殲滅して村が助かるなどとは思っても見なかったのだろう。まあ、そう思わせるように言って避難させようとしたんだが。


「は……はは……そうか……」


 村長はその言葉を聞くと座り込んで涙を流し始める。ジジイの涙なんて誰が喜ぶんだ。


「お前らには、感謝してもしきれない。死を前にしたこの村を、一つの被害も出さずに救ってくれた。……村人は避難して今此処にはいないが、この村を代表して言わせてもらう。本当に、ありがとう」


 村長は深々と頭を下げて言う。90度を超えてそうな位の腰の曲がり方だ。


「……私達が勝手にやっただけ。お礼なんて、要らない」


「その通りですね。私達にかかる火の粉を振り払っただけですし、気にしなくて結構ですよ」


 フィールとビアンカが言う。確かに、俺たちは対価を求めて殲滅した訳では無い。自分がいる所に魔物が来たから対処をした。それだけの話なのだ。


「……流石に、そう言われてはいそうですかと言えるほど、感謝の念は浅くないわい。せめて何かしてやりたいんだが……」


「そう言うなら、次来た時の為に米を安く売ってくれればいい。今は大量に買い込んだから要らねえけど、俺にとって米は必需品だからな」


 米は昨日の時点で2、3ヶ月分は購入してアイテムボックスの中に突っ込んである。でも、いつ帰れるか分からない以上米の入手は欠かせないし、これくらいしか要求するものが思いつかなかった。


「その程度でいいのか?寧ろタダで渡しても良いくらいなのだが」


「構わねえっての。あ、そうだ。お前一人じゃ普通にはラントまでは辿り着けねえだろうから、此奴を渡しとく。さっさと準備してさっさと行ってやれ」


 俺は取り敢えず米の安売りをしてもらうように言った後、アイテムボックスからラント滞在時に作っておいたラント行き転移石を渡す。


 実の所、転移石は結構作ってある。時空結晶は他の結晶に比べ貴重だが、まだ割とストックがあるからだ。ちなみに、今あるのは夢幻列島行き、魔王城行き、ラント行き、ここ行きが2、3つずつ位ある。

 

「これは……転移石か!?こんな高価なもの使える訳が無いだろう!」


「普通に作れるから気にするな。ほら、さっさと行ってやれ」


 俺は村長を急かす。滞在最後の日だし、出来る限り彼奴らと話す時間を長く取りたいのが理由である。つまり、「村長さっさとどっか行け」というのが現実だ。


「わ、分かった。では儂は行かせてもらう。この恩は、決して忘れない」


 村長はそう言ってから、屋敷の方へと戻っていく。ちなみに、村長が気付いているかどうかは分からないが、このまま行った場合は避難した村人より早く着くため村人から色々言われるだろう。まあ、きっとソールがなんとかしてくれるだろうから問題は無いが。


「……まあ、邪魔者も去ったことだし、取り敢えず飯にでもするか。まだ朝食すら食ってないし」


「「「ええ……」」」


 唐突だが、事が終わった為腹が空いてくる。だが、それで朝食にしようと言ったら幼馴染み三人か嫌そうに声を上げる。


「なんだ?腹減ってないのか?」


「いや、減ってる。凄い減ってる。だが、流石になぁ……」


「流石に?なんだ?」


「……大分慣れたつもりだったけど、こんなに返り血を浴びて食欲があると思うかい?」


「私も無理そう。というか、少し気持ち悪い」


 結局、この三人は血の耐性が俺らより低いらしく、嫌悪感が出ているらしい。少し聞いたところ、普通に殺す程度ならほとんど問題は無いようだが、ここまで生暖かい血を浴びて、鉄臭い匂いを嗅ぎ続けるのは無理だとの事。


「情けねえなぁ。お前らは全然問題ないだろ?」


「当たり前です。まあ、厳密には人じゃ無いからかも知れませんが」


「私は……そこまで問題無いかな。全く嫌悪感が無いって言ったら嘘になるけど」


「……生肉に噛り付いてた時期もあるから、この程度はなんともない」

 

 俺を含めた四人は然程問題無い。まあ、常識を投げ捨てた組だからかも知れない。 


「じゃあ、俺ら四人は食べるか。作り置きので良いか?」


「構わない」


「うーん、出来れば作りたてを食べて見たいんだけど……」


「あ、カイト様の保存空間の中では時間は進んでないので状態は作りたてのままな筈ですよ?」


「本当に?それならいいや」

 

 俺のアイテムボックスはビアンカの言う通り時間が止まっているので、例え一週間位前に作ったものでも冷めない。これも空間魔法の大きな利点でもある。


「じゃあ、ほれ。カツサンドだ」


 俺は食べると言った三人にカツサンドを渡す。ラント滞在時に何となく(本気で)作ったものだ。肉はドラゴンの。流石にドラゴン肉の在庫が多すぎて辛い。


「ありがとう。じゃあ、頂きます」


 美雪は真っ先にそれを受け取ると、勢いよく齧り付く。そして、目の色が変わる。


「!?パンはお城とかで食べてるのより劣るけど、このサクッとした衣に、ジューシーなお肉!そしてそれらを引き立てた上で、何一つ殺さず調和したソース!美味い!」


「食レポかなんかか」


 美雪はレポートとかのような感想を言う。普通に美味いとかで良いと思うんだが。


「もぐもぐごっくん……うん、美味しい」


「美味しいですが、美雪さんも言う通りパンがワンランク下ですね。今度高級品でも買いませんか?」


 二人とも一応美味しいとは言ってくれる。ビアンカは余計な一言を付けてきたが……俺もそれは実感してたので反論はしない。


「確かにな。寄る時があったら考えとくか。……ん?どした?」


 俺らが話しながらカツサンドを齧っていると、三人が悲しそうな目で此方を見ている。


「いや、食欲はねえんだが、腹は減ってるって言っただろ?食べたいのに食べたくないっていう、凄い微妙な感覚に襲われてるだけだ」


「へぇー。そんな気持ちを吹き飛ばすドリンク(ポーション)があるが飲むか?」


「いや、遠慮しておく。絶対苦いだろうしな」


「そうか。まあ、昼と夜も俺が作るから、それまでには体調戻しておけよ?」


「分かってるっての。それに、あの一食を逃すのもなんか微妙な気持ちだからな。無理してでも治してやるよ」


「そんな貴方にこのポー……」


「だがそれは使わん」


「チッ」


「舌打ちすんじゃねえよ」


「ちぇー」


「キモい」


「酷えなぁ、おい」


 まあ、結局我慢すると言うので、それに応じて適当に、何時ものように会話しながら誰一人としていない宿屋に戻っていった。

美雪のパーティインは一章の時点で決定はしていたのですが……性格が大幅に変わってしまってたんですよね。

本来、海斗がフィールやビアンカを好きになってるのを悲しみながらも諦めないで、振り向いて貰うために懇願して付いてくるという"純愛系サブヒロイン"だった筈なのですが、いつの間にか"ヤンデレ気質ヒロイン"に……。

書いてるうちに勝手にヤンデレ化させた過去の私を小一時間説教したいです。

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