22話 お邪魔します
おや……?またも面倒事の気配が……。
そして、時は流れ六日目の朝……まあ、正確には午前三時程度なので深夜だが……に目が覚める。
「んあ……?まだ寝てから3時間しか経って無えってのに……って、あ?なんかの気配?しかもかなり多いな。村からは大分離れてるみてえだが……近づいてきてねえか?」
俺が寝に入ってから3時間しか経ってないのにこんな時間に起きた理由。それは、魔物と思われる大量の気配を察知したからである。
「んー、一、十、百……こりゃこっそり行って葬ってくるのは無理そうか。と言うより俺らだけで相手したら取りこぼれが出かねない量だ。……フィール、ビアンカ。お前らも気づいてるんだろ?」
俺はベッドの上で座っている二人に声をかける。そもそも起きてる時点で気付いてるに決まってる。
「……勿論」
「当たり前です」
「そうか。……で、これ何が起きてるんだ?」
俺は二人に何が起きているのかを確認する。今の所、感じられる気配はそこまで強くない魔物が数えられない程度、只事とは思えない。
「多分スタンピードかと。……記録更新する程の超絶大規模の」
「……万越えてても、不思議じゃない」
「そこまでか……。実質の最終日だったんだがな」
予定では、7日目の早朝に出発する予定だったのでこの村で彼奴らと過ごすのは今日が最後だ。
ちなみに、美雪を連れて行くかどうかはまだ決めていなかった。フィール曰く「……成長が、凄く早い」と言われてたが、やっぱり危険じゃ無いかと思っているのだ。
もっとも、5日目の特訓の後帰ってきた美雪は妙に生き生きとした顔をしていて、フィールは沈んだような顔をしていたが。理由は聞いたが教えてくれなかった。
まあ、それは置いておいて、まずはその魔物の大群の対処についてだ。
「で、このスタンピード……実際俺らだけで対処出来るか?」
「地の利を生かしても、撃ち漏らしが出ると思います。流石に三人じゃ手が足りないです」
「そうだよな……一応彼奴ら用の武器も作り終わってるから、四人にも参加して貰うか。で、7人か」
「……レベル50以上もある程度混ざってるみたいだから、見極めは重要」
「そのレベルのもいんのかよ。まあ、そこら辺は俺が随時対処すれば良いか」
そこそこ順調に作戦会議が進んでいく。だが、7対10000以上、作戦に不備はあってはならない。
「で、次は場所だが。見通しが良くて、平坦で、地形ぶっ壊しても問題無さそうなところ。それも、暴走した魔物の通り道で」
「えーと、魔物が来ているのが東からですので……村の直前位に適した場所がありますが、逆にそこしか無いです」
「ちっ……て事は村長とかに色々言っておかないと駄目そうか。流石に避難もさせずに村の入り口でドンパチやるのは駄目だろうしな」
「殲滅は可能ですけど、大多数に見られるのはあまりよろしく無いですからね。私のもつ機械などは特に」
「面倒くせえなぁ……。到達までどの位掛かりそうか?」
殲滅に一番適した場所が村の直前である以上、村長などに話を通してそこに人が近づかないように警告もしくは避難して貰う必要がある。もしも到着までの時間が短いようなら今からでも村長を叩きおこす必要がある。
「3時間……いえ、5時間位ですね。無論、このままのペースで行けば、ですが」
「て事は……8時位か。だったら……5時位に村長叩きおこし言って話を通して、美雪達が起きたら会場に出発して殲滅。これでいいか」
「良いと思いますよ?ですが、どうやって村長を説得するか。スタンピードがいつ到達するかなんて説明しようが無いですよ?」
しかし、スタンピードが起こってるのをどうやって説明するか。此処より東の方には国境を挟まないと集落は無いようなのでそっちの方から来たと言う事は出来ないし、冒険者として活動してたというのもこの村にギルドがない以上信憑性はよろしく無い。
「……まあ、ちょびっと威圧して「どうなっても知らないぞ?」とでも言えば大丈夫だろ。避難する先もラントを進めて俺の名前を出させれば後はソールがなんとかしてくれるだろうしな」
「ソール、ご愁傷様」
「彼女が苦労するのが目に見えてますね……。まあ、それが一番手っ取り早いですし使える手段は使わせて貰いますけどね」
と言う事で、行動開始まで後二時間の猶予がある。俺の睡眠時間はまだ三時間、かなり眠い。
「じゃあ、とりあえず二時間待機した後に村長宅へ押し入るか。どうせ門番が通してくれないだろうし、実力行使になるからな。まあ、それまで寝ようか」
そう二人に言ってから、俺はベッドに入り眠りにつく。多分目を瞑ってから眠るまで3秒は掛かってなかっただろう。
なぜそう思ったか。その理由は……
「今起こった事をありのままに話すぜ!目を閉じて開けたと思ったらフィールとビアンカに担がれて宿屋の外に運び出される所だった。何言ってるか分からねえと思うが、俺にも訳が分からねえ」
俺が目を閉じて、少しのちに開けたと思ったらすでに光景が変わっていて女子二人掛かりで運ばれていた。マジでその言葉通りなのだ。正確には目を閉じた瞬間に眠っていただけなのだろうが……。
「カイト様が起きないのが悪いんですよ」
「呼びかけても、ペチペチ叩いても、抱きついても起きなかったから仕方がない」
「どうしてそこで諦めるんだそこで!もう少し頑張ってみろよ!ダメダメダメダメ諦めたら!絶対やってみ!?必ず目標達成出来る!だからこそ!ネバーギブアップ!」
「なんでそんなに熱くなるんですか……?」
「いや……女子二人に担がれてる男性って……情けなくね?」
「見られてないからいいんですよ」
「俺は良くねえよ……」
俺は二人に文句を言いながらも、体勢を整えてから二人に降ろしてもらう。これから村長宅へお邪魔すると言うのにそのリーダーが担がれていては威圧感に欠ける。
そして、寝癖を適当に直そうとしながら歩き、寝癖が治る前に村長宅へつく。勿論、守衛っぽい人が立っている。
「あ?なんだお前達。村長はまだ眠ってる時間だ。用があるならもう少し時間を置いてから来てくれ」
守衛は俺たちを見るとそう告げてくる。だが、避難して貰わないと色々と困るから俺は手短に退かそうとする。
「悪いが急用なんだ。さっさと退いてくれると有難いんだが」
「駄目なもんは駄目だ。出直してくれ」
「どうしても駄目ですか?」
「ああ、駄目だ」
「もしも退かなかったらブチのめすって言ってもか?」
「笑える冗談だな。もしも力に訴える事があったら流石に応戦させて貰うぞ。その為の守衛だからな」
だが、守衛は退こうとしない。もしも退かなかったら痛い目をみると警告しても笑いながら受け流す。
だから……
「応戦?まさか俺らが唯の餓鬼だとか思ってねぇよな?」
コキッ、コキッ。
「……悲しい。力の差も分からないなんて」
ザッ、ザッ。
「安心してください。痛めつけたりはせず、一瞬で終わらせてあげます」
バキバキッ、バキバキッ。
俺が首を鳴らし、フィールが足音を立て、ビアンカが拳を鳴らす。無論、三人揃ってそこそこの威圧をピンポイントで守衛に当てている。
「な……う……」
「もう一度だけ聞く。通らせてくれるか?」
俺はプレッシャーで呻いている守衛に聞く。意識を落とさない程度に留めてるから会話は可能だ。
「だ……め……だ……」
「そうか。じゃあ、力尽くで入らせて貰うぞ。……別に悪いようにはならねえから安心して眠れ」
シュッ。
「うっ……」
俺の声に合わせて、フィールが守衛の首筋に優しく手刀を浴びせる。死んでも無いし、10分位経ったら起きるだろう。というか、あの中でまだ職務を全うしようとする守衛もなかなか凄いな。
「……じゃあ、入ろう?」
「だな。まあ、まだ何人かこの家の中にいるみたいだが……村長に会うまでにあった奴は全員気絶させるか。で、説明終わったら起こして作業手伝わせるか」
「賛成ですね。では行きましょうか」
そして、俺たちは屋敷にお邪魔する。探し方は……一階からローラーすればいいか。あ、扉は敢えて蹴破ったよ。人が起きてくれれば村長の場所聞けるし。
「お?誰か様子見に来たみたいだな。まあ、戦闘能力とかは持ってなさそうみたいだし、唯の使用人だろうがな」
「……囲んでお話しよう」
「まあ、それが妥当ですね」
そう言う方向で纏まったので俺らは曲がり角で待ち構える。だが、それに気付かない使用人はドタドタと足音を立てながら走ってくる。
「い、一体何……きゃあ!?」
そして、使用人が飛び出してきたところを三人で囲む。さっき守衛を尋問した時と同じような構え (威圧は無し)を取りながら。
「村長は何処にいる?」
「ひっ!?だ、誰かぁ!誰か助けてぇ!」
だが、まったく肝の据わっていない使用人は大声で叫ぶ。まあ、当然だが。
「こっちだ!走れ!」
「くそ、こんな朝早くに!というか門番は何してるんだ!」
別の所を走ってたと思われる屋敷内の守衛が使用人の叫びに反応してこっちに向かってくる。あと、残念ながら門番は寝てます。
「いたぞ!男一人に女二人だ!」
「逃がすな!捕まえろ!」
走ってきたのは二人、両方とも剣持ちの男だ。まあ、こんな屋内で魔法使いとか来られても困るけども。
「フィール、ビアンカ。そっちはそっちでOHANASHIよろしく。俺はこっちを担当するから」
「分かった」
「了解です」
俺が指示を出すと、フィールとビアンカが走ってきた守衛の方に動く。足音すら立てずに。
フィールは剣を持つ手を打って剣を手放させ、その隙に魔法をチャージして手を男に翳す。下手に動けば撃つという脅しだ。
ビアンカは剣を持つ手をそのまま取ると後ろに回り込み、もう片方の手も取ってから男を床に押し倒す。そのあと、足で背中を押さえつけて身動きを取れなくしていた。格闘技がなんかか。
「なっ……!?」
「ぐあ!?」
守衛達は戸惑いを隠せないでいる。まあ、一見弱そうな少女にあっという間に無力化されたらそれは当然だろう。
「……村長の場所。答えてくれる?」
「村長の場所を教えてくれたら離しますよ?教えてくれない場合は気絶するまで続けますが」
二人は二人なりの話し合いで村長の居場所を聞き出そうとする。……俺ら、村長に警告しに来ただけだよな?なんでこんな賊まがいな事してんだろ。
「……なあ、これお前を問い詰める必要あると思うか?」
「ひっ……な、無いと思います……」
俺はなんとなく使用人に意見を聞く。魔法の発射準備を整えて脅迫してるフィールと、関節技を決めて脅迫するビアンカ。俺が使用人を尋問する前に明らかに二人が口を割りそうな気がする。
「言う!言うから止めてくれ!ぐっ!」
「では早く言ってください。離してから断られても面倒なので」
「こ、この廊下を真っ直ぐ行って三つ目の扉だ!い、言ったから離してくれ!」
「そうですか、ありがとうございます。では、眠っててください」
一番先に口を開いたのはビアンカが拷問していた守衛だ。ビアンカはその男から村長の居場所を聞いた後、手を離して即座に手刀を入れる。鬼め。
「カイト様、フィールさん。場所は割れました。では行きましょう」
「あいよ。……あ、そうだ。そこの使用人。あと少ししたら忙しくなるから今の内に人を掻き集めておく事をお勧めする」
「えっ……!?」
俺は使用人に一言忠告した後、守衛が洩らした情報通り廊下進んで三つ目の扉を開ける。すると、突然正面から一発の魔法が飛んでくる。まあ、ウィンドボールだったし手で受け止めるが。
「……あんたが村長か?」
「如何にも。して、こんな早朝に、こんな乱暴な侵入をしてきて何が目的だ?」
村長は俺らを睨みながら言う。だが、ウィンドボールを手で受け止められた事への動揺が隠しきれていない表情だ。
「目的か。今すぐ、全ての住人を西に避難させろ。それだけだ」
「……そんな事して何になる」
村長は俺を睨みながらも聞いてくる。そこそこ肝が据わっているようだ。
「大体今から3時間後位に、東から超大規模な魔物の群れがこの村に到達する。匹数は万単位だ。……ああ、なんでそんな事が分かるとか聞くんじゃ無えぞ?気配で察したとしか言えねえからな」
「なんだと……!?だが、それなら何故こんな賊まがいの事をする?」
「だって早朝から村長に会える訳無えし。理由を門番に伝えても追い返されるだけだろ?だから無理矢理入って無理矢理伝えに来た」
今の所、嘘は一切言っていない。ここら辺は必要情報だから当然だが。
「……嘘じゃ無いな?」
「ああ。あと、避難するならラントの街にしておけ。支部長に俺の名前……ああ、名乗ってなかったな。黒野海斗だ。まあ、名前を出せばそこそこスムーズに会話が進む筈だ」
「支部長にか……!?お前らは何者だ?」
俺がソールの事を伝えると、村長は明らかに動揺する。支部長とはいえ影響力は結構強いんだろう。そうは見えなかったが。
「唯の銀ランク冒険者だ。俺らは東門のところで足止めをするから命が惜しかったら大人しく避難しろ。もしも信じないで逃げなかった場合は……命の保証はしない」
「……」
俺は若干の威圧を込めて村長に言い放つ。流石にこの威圧を浴びて信じないから残るとは言わないだろう。
「……分かった。お前らの言う通りにする。だが、二つ聞きたい事がある」
「なんだ?」
「……儂は腐ってもこの村の村長だ。この村が滅びる時は、儂も死ぬ。だから、儂は村人と共には避難しない。構わないか?」
村長は命知らずな事を言う。だが、その目はマジだ。権力者にしては結構異質な考えの持ち主のようだ。
「死んでも良いならな。で、二つ目はなんだ?」
「うむ。……儂を見つける前にお前らが片付けた守衛達は、いつ起きるんだ?」
「あ、心配すんな。用も済んだし、帰りがけに回復魔法を使ってもらって起こしてくから」
「それなら良いのだが……」
「じゃ、話は以上だ。頑張ってくれよ」
俺らは必要な事を告げて、そそくさと宿屋に戻る。帰りがけに回復魔法をかけて行ったが、その度に実に攻撃的な目を向けられた。まあ、やったのはこっちだから仕方ないが。




