19話 勝てる気がしない
連れて行くことは出来ない。俺はこう言ったら四人全員が全力でそれを拒絶してくると思っていた。だが、
「まあ、そんな気はしてたかな」
「力不足って事だよね?それなら仕方ないと思うよ」
「結構無念だけどな」
「え!?連れて行ってくれないの!?」
美雪以外はその答えを予想していたようで、すんなりと引き下がる。
「……ちなみに、3人がそう思う理由をそれぞれ伝えてくれないか?」
俺は了承した3人にその理由を問う。俺の思っていることと同じかどうかを確かめるためだ。
「まあ、俺らを庇いながら出来るような事じゃ無いって事だろ?それならお前の邪魔をするのも悪いからな」
「僕も忍と同意見だね。あと、裏切り者の幹部の対処とかの方に回って欲しいってのもあるのかな」
「二人に同じ」
「正解だな。あと、言い忘れてたが裏切り幹部の方は別の奴と手を組んで邪神の復活とかいうのをしようとしてるみたいだから足止めか討伐をして貰わないと帰還までにこの世界が滅ぶ可能性がある」
三人の言ったことは正解だった。特に日本組の中でも高位の実力者の此奴らには時間稼ぎを行って欲しいのだ。
「でも……せっかく再会出来たのに、また何処かに行っちゃうの?」
だが、美雪は悲しそうな目でこちらを見ている。……というか、さっきから感情の変化が激しすぎる。情緒不安定だと結構困るんだよな。
「……まあ、そうなっちまうな。でも、ちゃんと戻って来るから心配するなって」
「それでも!」
「お前が叫んでた内容を聞いてたから、ついて来たい気持ちも分かる。だけど、本当に命の保証が出来ないんだ。……最低でも、俺達三人のうち誰か一人に一本取れる位の力が無いと、守るのも辛いかもしれない」
俺は美雪に酷な現実を突きつける。ガチな方で、俺達から一本位取れる位の力が無いと危険すぎるのだ。せめてその程度はできないと守り切るのも辛い。
俺の予想では、そこまで言っても美雪はそうそう引き下がらないかなーと思っていたのだが、
「……そうだよね。分かった」
何故かあっさりと美雪は引き下がった。俺の事が好きみたいだから何が何でもついてこようとすると思っていたんだが。……絶対裏がありそうな気がするけど、分からねえな。
「んー、まあ、話せる事はこの位だな。俺達は大体一週間位滞在する予定だけど……お前らはどうするんだ?王都に向かうなら馬車代位なら渡すが」
俺は伝えなきゃいけない事は大体話終わったので美雪達の今後について聞く。ちなみに、馬車代位ならポイッと出せる。主にソールを通じて儲けたからな。
「お前がいる間はこの村にいるに決まってるだろ。……お前の印象を二人から徹底的に聞き出してやる」
「僕もそれまでは残るよ。久しぶりに五人で色々したいからさ」
「私も残る。疲れたから、しばらく休みたい」
「……私も、したい事があるから残るよ」
四人とも、俺が出発するまでは残るという。美雪が何かを企んでるような気もするが……。
「オーケー。じゃ、宿屋にでも戻るか。暇つぶしの為にトランプでも作るか?」
「やるじゃ無くて作るとこからなんだね」
「当たり前だろ?あと、紙は作れても手書きする必要ありだから四人でよろしく。マークは四つあるしな」
「一人13枚か。そんなに多くないな」
「……トランプって何?」
「私も気になります」
俺が宿屋に戻ってトランプを用意しようかみたいな話をすると、二人が食いついてくる。
「俺達の世界の娯楽用品だ。どんなのかは……作ってから説明してやるよ。じゃ、戻ろうか」
そう言うと、二人は頷く。まあ、説明は少し厄介だが……などと考えつつ俺達は村の方へと戻った。
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「三」
「……四」
「五です」
「ろk「「「ダウト」」」って、何故分かる!貴様ら、見ているな!」
現在、宿屋の一室にて7人でダウト中である。だが、正直手応えが無かった。
「……君達三人どれだけ鋭いのさ。ほとんど当ててるじゃないか」
「まあ、野生の中で培われた洞察力の賜物だ。嘘をついてる時若干表情が崩れてるんだよ。……まあ、忍は特にそれが大きいけどな」
まあ、そう言う事である。相手の表情を少し見るだけで、嘘かどうかが丸わかりなのだ。
「ちくしょー。手札が一向に減らねえ」
「まあ、そこら辺は運だよ。七、で上がり」
「ちっ……ちゃんと七を出しやがったか。つーか一回も嘘つかず上がるってどんな豪運だよ」
まあ、手応えが無いと言っても、勝てるとは言ってないが。流石に指摘しようが無いんじゃどうしようもない。
で、結局一位百華、二位俺、三位フィール、四位ビアンカ、五位晶、六位美雪、七位忍になった。
「想像ついてたがやっぱ洞察力使うようなゲームは駄目だな。神経衰弱とか大富豪とか洞察力より運とかが必要なゲームの方が良さそうだな」
「……神経衰弱もお前ら優勢な気がするが……まあ、やってみるか」
そして、カードを一箇所に纏めてシャッフルしてから適当に並べる。そしてジャンケン (二人にもルールは教えた)でビアンカからスタートする。
「では……まずはこれとこれですね」
そして、ビアンカがめくったのはハートとダイアのエースだ。
「おー、早速正解か。運がいいな」
「まだまだ行きますよー。次はこの二つですね」
次にめくった二枚はスペードとクラブのエースだ。要するにまたも正解である。
「……ビアンカ。まさか……」
「聞こえませんね。……これとこれです」
フィールが言ったことをスルーして、ビアンカは次をめくる。ハートとダイアの2だ。まさかの三連続である。
「次は……」
結果……ビアンカ52枚でフィニッシュした。俺達の番を一度も回すことなくだ。
「んなアホな」
「ビアンカ、お前どうやったんだよ」
「簡単ですよ?さっきカードを纏める時にどれがどこにあるかを確認して、ずっと目で追ってただけですので」
「「「「「出来るか!」」」」」
「……半分は行けたと思う」
日本組は全員揃って怒鳴る。流石に、そんな理不尽な判別方法をされたら勝ち目はゼロだ。順番によってはフィールは勝てるようだが。
「……海斗くんも同じこと出来る?」
「無理だっつの。頭の処理が追いつかねえ」
敏捷の値的には一つのカードを追うだけなら余裕だと思う。だが、全てのカードを覚えるのは俺には困難すぎる。
「……じゃあ、忍。後ろ向いてからシャッフルしてくれ。流石にそれなら大丈夫だろ」
そう言ってカードを渡してシャッフルしてもらう。今度は二人にシャッフルしたところを見られてないからズルは不可能だ。
「……よし、今回こそまともな勝負が出来そうだな」
そして、対等なルールでゲームを開始する。この時はまだ勝機があると思っていたのだが……。
「えーと、スペードの四ですか。……確か美雪さんが初めてめくったこのカードがハートの四でしたね。と言うわけでもらいます」
「なんで今三巡目なのにそんな詳しく覚えてるんだよ……」
まず、ビアンカの情報処理能力を甘く見ていた。どのカードを何巡目に誰がめくったかを完全暗記してるのはおかしいと思う。
「……確かここ」
「お前も大概な記憶力だな……」
そして、フィールもビアンカ程ではないが、結構覚えていた。此奴らはあんな事をしなくても余裕だったようだ。
ちなみに、俺は5位でゲームセットになった。記憶力はそこまでよろしくは無いんだよ。
「……なあ、トランプで遊ぼうとするのが間違いだったんじゃ無えか?勝てるビジョンが見えないんだが」
「……言うな。一緒に行動してたけどここまで高スペックだとは思ってなかったんだよ」
結局、この位でトランプは終了になった。流石にスペックの差が違いすぎた。忍に渡して城に持って帰ってもらう事にはしておいた。城には他の奴は残ってないだろうが、俺たちよりは有効活用は出来そうだ。
「で、次……何やりたい?」
俺は全員に意見を聞く。ちなみに俺はありったけの米を買い占めに行きたいが、いつでも出来るので特に気にしてはいない。
「俺は……せっかくだし、お前に特訓をつけて貰いてえな。お前から一本取るにしても取らないにしても、強くなるに越したことは無いからな」
「あ、それは僕も同じだよ。手伝ってくれるかい?」
「まあ、別に構わねえけど。容赦なくボコボコにするから覚悟はしろよ?」
まず、忍と晶の二人が自殺志願をする。まあ、四分の三殺しぐらいで止めるけどな。
「まあ、二人はそれで決定で……どうする?女子組は女子組で特訓するか?」
「まあ、私はいいと思いますが。それでいいですか?」
「……構わない」
「了解だよ」
「いいよ」
結果、俺、忍、晶の男子組とフィール、ビアンカ、美雪、百華の女子組の二組に分かれて訓練をする事になった。
「……じゃあ、また村の外に行くが……覚悟は出来てるか?」
俺はかるーく威圧しながら忍と晶の方を向いて聞く。ちなみにかるーくとはレベル50位あれば無効化できるくらいの軽さだ。
「っ、で、出来てるよ」
「だ、だ、だ、大丈夫だ、も、も、問題無い」
「やーいやーいビビってやんのー」
「「お前 (君)が言うな!!」」
二人がビビってたのでおちょくってやると、いつもは冷静な筈の晶まで声を荒げる。空元気かな?
ちなみにフィール達の方をちらっと見ると、
「……後悔する位シゴいてあげる」
「緩くはしませんから、覚悟はしていて下さいね」
「わかってる。寧ろ、そっちの方がいい」
「ユキちゃんに同じだよ」
こっちのふざけモードとは違って真面目モードだ。それに魔法はフィール、肉弾戦はビアンカと両方いるから教えるのは問題無いだろう。こっちは魔法使えないからなぁ……。
「んじゃ、行くか」
俺はそう呟いて、忍と晶を引き連れて村の外の適当な森の中へ向かった。なお、フィール達は俺が事情説明してたところを使うというのでそことは別の所へだ。




