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17話 唐突な再会

 5日後。結局行商人や冒険者にすら会うことは無くウルブスの村へ到着。夜営中に盗賊が計3回襲撃してきたが、まあフルボッコにした。……敵意とか感じると寝てても起きちまうから見張りの意味は無かったんだよな。今回も起きたし。というか、この世界盗賊多すぎやしませんかねぇ。働けよ。


 まあ、それは置いておいて、ウルブスの村は……まあ、ゲームとかであるような纏まりのそんなに無い村だ。民家も結構あるし、店や宿屋もある。周りは申し訳程度の柵で囲まれていて、少し離れたところに水田が見える。ちなみにその光景は空間魔法で上空から確認した。門から入る前に中を確認するにはそうするしか無いからな。


「あー、冒険者か?身分証を見せてくれ」


「ほい」


 俺は門番に言われて身分証を見せる。ラントで発行してもらったギルドカードだ。もちろん、フィールもビアンカも一緒に提示する。

 

「おー、銀ランクか。中々強いんだな。あ、通っていいぞ」


「どうも」


 俺達は何事も無く門を通ることができた。まあ、犯罪者とかでも無いから当然だけども。


「何事も無く着きましたね」


「盗賊を瞬殺したのは何事の中には入らねえのか。……つーか、そう言えば魔族領で殺った盗賊の大剣渡してねえなぁ」


「……そんなのあったっけ?」


「まあ、ビアンカ一人で殺ったから、フィールは覚えて無いかもな」


 確かフィンリルっていう盗賊団のガンドだったか?やべ、顔が思い出せねえや。まあ、思い出す意味も無いけど。


「まあ、それは置いておいて。この後どうしますか?大体想像はつきますが」


「うん。……もう、聞かなくても分かる」


「そこまで言うか。まあ、早い所米を食えるところに行こう。そろそろ限界なんだ」


 まあ、5日間の間食事の度に「米が食いてえ」って言い続けてたからか、二人とも予想はついていたようである。マジで食いてえんだもん仕方がないね。


「では……どこにしますか?幾つか食べられそうな場所は有るようですが」


「あの宿屋付きの所が一番人がいるみたいだしそこでいいだろ。それに、そこで宿屋をとれば一石二鳥だしな」


 俺はそう言いながら一軒の宿屋を指差す。「水魔の宿」という名前のようだ。水が多い立地ゆえの名前だろうか?


「いらっしゃいませー。食堂の利用ですか?それとも宿の利用ですか?」


 俺達が建物に入ると中学生にも満たなさそうな少女が出迎えてくれる。日本とは違い、地方には学校なんて無いから幼い子も働かなければならないのだろう。


「どっちもだ。まず部屋の方から取れるか?」


「分かりました!えっと……二人部屋二つでよろしいですか?」


「ああ、それで構わな「三人部屋一つで」って、フィール。そういう事言うと……」


 俺が二人部屋二つで構わないと言おうとしたのだが、フィールが横から口を挟む。その内容に反応して周りの人が俺に敵意を放ってくる。そりゃ、フィールもビアンカも結構な美人だし男からは敵意を向けられても仕方がないか。


「……消し飛びたい?」


 だが、そんなことはお構いなくフィールは敵意を向けてきた人達に威圧する。勿論、威圧された者は残像が残るような速度で首を振る。命の危機を感じたのだろう、きっと。


「……三人部屋一つで」


「は、はい!そ、それよりも、一体何をしたんですか!?みんな怯えてるように見えるのですが」


 少女は動揺しながら言う。それは当たり前だ。フィールは威圧こそしたが、無関係な人は巻き込まないようにしてたから、少女は対象外だったのだ。少女からしたらフィールに睨まれた人が突然怯え出したと認識しているだろう。


「……睨んだだけ。怯えてるのは、此奴らが腰抜けだから」


「そ、そんなものなのですか……?まあ、取り敢えず部屋に案内するのでついてきて下さい」


 少女は諦めた顔をしながら俺達を誘導する。歩きながら聞いてみたのだが、食堂の方はかなり人気があるようなのだが、宿屋の方は別の場所の方が人気で部屋は余ってしまっているらしい。今も、俺達を除けば男女二人ずつの四人組しか泊まっていないという。


 まあ、部屋についてさっと荷物 (手ぶらだと目立つから少しだけ物をぶち込んである鞄)を置いて、食堂の方へ向かう。確かに食堂はかなり人気があり、空いている席も一番奥の一つしか見当たらない。


「さーて……ようやく米にありつける……」

 

「私もかなり我慢していましたからね……カイト様の所為で」


「……あれは、酷かった」


 フィールとビアンカは疲れたような表情をしている。何故だ。俺は米の素晴らしさを伝えていただけだと言うのに。まあ、此奴らが食べてみたいって思うように誘導したのは事実だけど。


 俺達は一番奥の空いている席に歩いていく。途中、他の席に座っている客がフィールとビアンカを見て嫉妬の目を向けてきたりしたが、目線で黙らせておいた。


「……あー、どれにしようかな。ここは日本人らしく焼き魚定食にでもするか?」


「……私はカイトと同じ奴で」


「私もその方向でお願いします」

 

 その後、結局1分位悩んだ後に焼き魚定食を三つ注文する。日本のそれと同じような感じだと嬉しいのだが。


 まあ、どんな奴が出てくるか気になった俺はマナー違反かもしれないが周りの席をチラ見する。すると、俺達の隣の席に座っている男女四人組の一人が焼き魚定食のような物を食べている。俺の期待通り、日本でのそれと同じ感じの物のようだ。


 だが、他の人の食べているもの……チャーハンっぽいものや天丼っぽい物を見てると若干後悔してくる。飲食店で、料理を頼んだ後別の物が食べたくなるのはよくある事だ。


 そして、その人達の方を向いていたから会話の内容が少し聞こえる。ちなみに、目が合っても気まずいから顔は見ないようにしている。


「はぁ……海斗くん(・・・・)どこにいるんだろう」


「この大陸だって広いから全く見当つかねえよな。まあ、城に戻ってから人海戦術が一番早そうだよな」


「それよりも、僕はあの降り方に文句を言いたいよ。本当にあれ辛かったんだから」


()はすごい顔してたよね」


 俺の額に一筋の冷や汗が流れる。凄い、聞き覚えのある声だ。あと、出てきた二つの名前も凄い聞き覚えがある。と言うか、一つは俺だ。


「……どうしたの?」


 その俺の様子を見てフィールが心配そうに声を掛けてくる。まあ、突然冷や汗なんて流してたらそりゃ不思議にも思うか。


「……いや、なんでもない」


カイト様(・・・・)。その割には顔色がよろしくないですよ?」


「馬鹿っ!俺の名前を……あっ」


 ビアンカの声はフィールや俺の声と比べ、若干響きやすい声だ。メイドとしてはそれは長所だろうが、この場では完全にそれはデメリットである。


 ビアンカがカイト様と言った瞬間に、美雪、忍、晶、百華の四人が音が出るような速度でこっちに振り向く。そして、バッチリと目が合う。


「「「「……」」」」


「……ひ、人違いじゃ、ないですか?」


「いや、まだ何も言ってねえだろ」


 実の所、まさかここまで早く再会する事になるとは思っていなかったので結構パニクっている。そんな中で喋ったから思いっきり忍に突っ込まれる。


「えっと……海斗、だよね?」


「……」


 百華の問いに俺は諦めて無言で頷く。少なくとも、此奴らを誤魔化すのは不可能だ。本能がそう察している。


「……」

 

「……」


「……」


「……」


「……」


 沈黙が続く。四人は、何かを言いたいけれど何を言ったらいいか分からない表情だ。


 そして、30秒後位に、忍が口を開く。


「歯ぁ食い縛れぇ!」


「おっと」


 突然、忍が俺に右ストレートを放ってくる。流石速度馬鹿、結構な速度だ。まあ、指一本で止めれるけど。


「なん……だと……?」


「何故いきなり殴りに来たんだ?……って、フィール、ビアンカ。此奴らは問題無えから。だから無言で殺気すら出さず魔法を用意したり短剣を構えたりするのを止めろ」


 忍がネタに走ってる間、フィールとビアンカは臨戦態勢に入っていたので俺はそれを止める。しっかりと忍に事情聴取をして理由を聞き出さないとな。


「あー、その、あれだ。色々と不満とかが溜まってたんだ。お前が急に死地に飛ばされたり、そこに行くために必死こいて修行したり、その上行ったと思ったらお前は生きてるのにそこにいねえ。そして最後にあの飛び降りだ。不満がたまらないほうがおかしいだろ」


「……大体俺の所為か。甘んじて拳を受けた方が良かったか?」


「全てお前の所為だな。あと、それはいいや。指一本の筈なのに俺の拳が痛い」


 忍は拳をさすりながら言う。確かに俺の指は1ミリたりとも動かなかったから、あいつからしたら鉄でも殴ったような感覚なんだろう。


「……よく分からないけど、どう言う状況?」


「私も状況を理解できて無いのですが」


 俺と忍達の関係を分かっていないフィールとビアンカが口を挟む。ここら辺で厄介ごとが起こりそうな気がして頭が少しだけ痛む。


「ねえ海斗くん。その女の子達、誰?」


 美雪が微笑みながら……いや、目が笑ってねえ。まあ、そんな少し怖い顔で聞いてくる。なんか、ヤンデレヒロイン予備軍みたいな顔だ。


「……フィール。カイトの恋人」


「ビアンカです。カイト様のメイドであり仲間です」


 フィールとビアンカが俺が何か言う前に自己紹介する。ちなみに、フィールが俺の恋人と言ったところで四人は固まった。


「コイビト?こいびと……恋人!?」


 美雪が何度か恋人と呟いてから、正気を取り戻す。そして、その後ろでは忍と百華が晶を担いでその場から退避しようとしている。……いや、何が起こるんですか?。


「……で、この人達は?」


 だが、フィールは美雪をスルーして美雪達の事を聞いてくる。ちなみに俺に聞いてきた理由は三人が遠くにいるからだ。


「此奴らは俺の幼馴染みだ。此奴が美雪、あっちの影が薄い奴が忍、ロングヘアが百華、二人に担がれてるのが晶だ」

 

「ミユキさん、シノブさん、モモカさん、アキラさんですね」


 ビアンカが四人の名前を復唱する。そこまでした辺りで、正気に戻った美雪が俺の方に歩いてきて掴みかかってくる。


「海斗くん?私達が必死に努力している中、海斗くんは彼女なんか作ってたの?……少しだけ、OHANASHIしようか」


「……いや、あの。えっと……」


 そして、俺は美雪に引き摺られるまま、店の外まで連れて行かれた。なお、食い逃げとか言われると思ったのだが、忍が説明したようで特に問題は起きなかった。……定食が届く前に帰れるかなぁ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「お疲れさん」


「お前ら……分かってて逃げたのか?」


「うん」


「百華……お前もう少し空気読めない奴じゃ無かったか?」


「あー、百華はお前がいなくなってから不安とかそんな感じで大分性格変わったからな。昔とは一味違うぞ」


「んなアホな」


「……ぐすん」


 美雪のOHANASHIは約30分に及んだ。店の外で突然叫び出したと思ったら泣き出したり。いきなり抱きついてきたと思えば少し距離を置き。少しずつ距離が戻ってきた辺りでうまい具合に言いくるめて戻ってきた次第である。


 情緒不安定だったから、当たり障りの無い様に返答をしていたのだが、まさか美雪が俺に恋愛感情なんてものを持っていたとは思わなかった。「私だって海斗くんの事好きなのに!」とか、「なんで、私の気持ちには気づいてくれないの……?」とか言う台詞が混ざってたお陰で知ることが出来た。幼馴染みに恋をするなんて二次元の中だけだと思ってたけど、世界って広いんだなぁ。


「つーかよ、一体何時から美雪が俺のこと好きだって知ってたんだよ」


「中学の時から知ってたぞ?寧ろ知らなかったのがお前と晶とその他少数だけだからな?」


「マジかよ……」

 

 ちなみに、俺がこんな会話をしている間、美雪は百華が慰めている。多少自我が戻ってきているようで店の前で泣き叫んでた事を思い出しているようだ。


「まあ、その話は置いておいて、定食届いたから食べちまえよ。本当は今すぐ色々聞きてえが、二人がお前が米を楽しみにしてたって言ってたからな。俺だってここに来るまでは似たような気持ちだったし、まあそのくらいは我慢してやるよ。その後は尋問パートだけどな」


「心遣いありがとな。じゃあ、頂きます」


 俺は目の前に並ぶ定食を食べながら、この後此奴らにどう説明したらいいかなーなどと考えていた。


 ちなみに、久しぶりの米は無茶苦茶美味かった。

美雪の暴走。この後美雪がどうなるかは……私のその時の気分次第ですね。

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