15話 弁明
街に戻りアレン宅へ戻ると、そこにはソールが居た。かなりイラついた表情でだ。
「……何か弁明はあるかな?かな?」
「弁明以前に状況を説明してくれ。なんでこうなってるか皆目見当も付かん」
俺は事実を述べる。ギルドの騒動はあったが、それを今蒸し返す道理は無いし、それ以外には何も思いつかない。
「実は、ラースの森に正体不明の怪物が出たって話なんだよ」
「怪物?俺らには関係無いだろ」
確かにラースの森には行ったが、そんなものは見なかったし、俺らには関係無い。と思っていたのだが、
「……うちの調査員のサジェス君から聞いた話なんだけどね。なんでも突然森の中から紅く輝く火柱が上がったり、突如として竜巻が発生したり、雨も降ってないのに雷が落ちたり、目を焼くような痛烈な光が発生したりしたっていうんだよ」
「へ、へー。とんでもない怪物でもいるのかなー」
前言撤回。大体フィールとビアンカの所為だ。俺は範囲攻撃はして無いからセーフだセーフ。
「なんか白々しいね。どうせまた君達でしょ?でしょ?」
「い、言いがかりは止めてもらおうか。俺らがやったって言う証拠はあるのか?」
俺が証拠を求めるとソールは首を振る。
「だろ?俺らには関係無い事だ。じゃ」
「疑って悪かったね。でも、関係無いなら依頼として調査、いや、討伐をお願いしたいんだ。君達ならどうせ瞬殺でしょ?あ、勿論討伐証明に部位……あ、空間魔法持ちだったね。じゃあ、死体を持って帰ってきてよ。報酬は弾むから……」
「悪かった。大体此奴らの所為だ」
明らかにソールが察していたので、俺はフィールとビアンカを差し出す。この中では俺は無実だ。
「カイト様!?そこはもう少し頑張って下さいよ!」
「証言の中に俺は入ってなかったからな。俺は無実だ」
「……薄情」
勿論、フィールとビアンカがいろいろ言ってくる。が、俺はそれを受け流す。新しい加工器具も手に入ったしいろいろ試したいのだ。
だが、
「じゃあ、実行犯の二人と保護者の一人はついてきて。事情は聞かなきゃいけないから」
「いや、保護者じゃねえから。それになんで俺も巻き込まれてるんだよ」
何故か俺まで巻き込まれる。というか、何時の間に俺は二人の保護者認定されたのだろうか。
ちなみに、ソールはフィールとビアンカの手を引いてアレン宅の方へ歩いている。なんでも、もうアレン達は帰っているらしくギルドへ戻って見られるよりはこっちで事情聴取したほうがいいと考えているようだ。なお、アレン達に許可は貰っているとのこと。
「……なあ、本当に俺行かなきゃ駄目か?」
「うん。二人だけだと証言を捻じ曲げたりしそうだから」
俺が駄目元でソールに聞くと、即答された。確かに容疑者二人だけじゃ信憑性は薄くなるけども。
「……はあ。さくっと終わらせてくれよ」
「証言の内容によるなぁ。じゃ、行こうか」
そして、俺達はソールに連れられて取り調べ室……ではなくアレン宅のリビングへと連行されるのであった。
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「要するに、人が寄り付かないようなところで好き勝手やってたと」
「武器の試し打ちと模擬戦しかやってないというのに好き勝手とは酷い言い草だな」
「君達はその規模の大きさを考えてくれないかな?かな?」
「ですから滅多に人が行かなさそうな場所を選んだのですが」
「それはそうだけどせめて見えないようにしてくれないかな。見たのがうちの調査員だけだったからまだ揉み消せそうだけど他の冒険者が見てたら大騒ぎになるところだったよ」
「……大丈夫。迷宮入りで捜索は打ち切られる」
「それまで結果が出ない捜索をさせられるこっちの身にもなってよ」
「ギルドマスターだろ?なんとかしろよ」
「無理だね。あくまでこの街の支部長みたいなもんだから本部から何か言われること確定だし、真実を知っていても説明する事が無理だから」
「ここでは契約の効果は発揮されないと思いますが?」
「そうだけども、どうして肩を持つのかとか絶対聞かれるじゃん。それはどうするのさ」
「……適当に誤魔化せばいい」
「本部の超エリートに私程度の嘘なんて通じないよ。すぐにバレて問いただされるに決まってるし」
「そこをなんとか」
「出来ないから困って……って、今回は揉み消せるのに話がズレてない?」
こんな感じで途中話がズレながらもソールに言い訳を続ける。座って喋っているだけなのだが、相当な時間がかかりそうだった。というか、一時間を過ぎた辺りから内容が愚痴になり、その上話がズレても修正さえしなくなった。
「ソール。水でも飲んで落ち着け。話が終わらん」
「まだまだ話は終わってないよ。……まあ、貰うけど」
俺はソールに水を取り出して渡し落ち着くように促す。特に考えずに作ったものだったので使う時が来るとは思わなかった。
そして、ソールはそれを疑うことなく口に流し込む。計画通り、ソールは夢の世界に旅立ち、すーすーという寝息を立てながら眠りにつく。
「計画通り」
「……悪い顔」
「まあ、私としては万々歳ですけど」
「おいクロノ!一体何したんだよ!」
俺が悪い笑顔をしながら言う。まさかここまで上手くいくとは思わなかった。まあ、アレンは声を荒げているが。
「何って、水を渡しただけだぞ?……まあ、夢幻列島産の眠り草を材料にエンチャントした奴だから半日は眠ってるだろうな」
「鬼かお前は!つーかなんでそんなもんまで持ってるんだよ!」
「鍛錬中の賜物だ。安全性に問題は無い」
まあ、生物実験はしてないけどな。でも元が一日中眠りにつく程度のもんだから死にはしないだろ。
「それでもだ!流石にギルドマスターに一服盛るのはアウトだろ!」
「あの程度でアウト?手緩いな。三分であの世行きの毒とか飲んだ瞬間に全身が動かなくなる麻痺毒とかもあったんだが……」
「そう言う問題じゃねえよ!」
だが、幾ら声を荒げようとも既に手遅れである。一応口に解毒剤捻じ込めば起こせるには起こせるが、それはそれで駄目な気がする。
「まあ、時間が経てば起きるから。それまでそっとしておいてやれ」
「非常に納得行かねえが……俺らがどうにかできるものじゃなさそうだしな。そうさせて貰う」
俺がアレンに言ってやると、アレンは諦めたように引き下がる。顔が「此奴らに何言っても無駄だ」と物語っている。
「まあ、そういう事だ。……で、お前らは何の依頼を受けてたんだ?」
俺が話題転換にアレンに聞く。ちなみにソールは体勢を直して毛布は掛けておいた。もっとも、寒い訳では無いが。
「俺らか?俺らはオークの殲滅依頼だ。近くの森にオークの巣が出来ていてな。それを全滅させるっていう……報酬はいいけど、あんま受けたくない依頼の一つだな」
アレンが苦虫を噛みしめたような顔をして言う。オークの巣の殲滅なんてそこまで苦でもな……あっ。
「やっぱ知ってるか?」
「……想像はつく。でも、本当かどうかは分からねえな」
日本のアニメ、漫画、小説などのテンプレ設定が正しければ、行きたくない理由はよく分かる。というか、好き好んで行ける奴がいたらそいつの正気を疑うレベルだ。
「……なら、一応説明してやるよ。オークは、取り敢えず似た体型の生物なら大体子孫を残せるんだ。オーク同士で残すだけなら問題は無えが……大体は、別の生物に無理矢理産ませる。で、彼奴らにとって一番手頃なのが人間の雌ときた。だから、彼奴らはそれを攫う。攫われた女性がどうなるかは……察しろ」
案の定、よくある設定の通りだ。まあ、巣にはオークに悲惨な目に遭わされた女性の死体とかが散乱してるとか……そんな感じだろうな。
「……お前の想像通りか?」
「ああ。……よくそんな依頼受けたな」
俺は疑問に思いながらアレンに聞く。俺だったら、絶対にそんな依頼は受けたくねえ。
「……こんな汚れた依頼だろうと、誰かが受けなきゃいけねえんだよ。そんな危険を放っておいたら、いつ、どこで、誰が死ぬか分からねえんだ。俺とは全く関係ない奴かも知れないし、俺と親しい奴かも知れない。例えレベル20程度の魔物だろうと、普通の奴らにとっては充分な化け物なんだ。放って置くのは俺には無理だ」
アレンは暗い顔で言う。本心なのだろうが、何かが詰まったような感じだ。
「……馬鹿な思考」
「結構酷い言い草だな。……まあ、否定は出来ねえけど」
「だろうな。……俺から言わせればそんなのは唯の自己満足だ。最優先は自分、そこからある程度余裕が出てきたら仲間、さらに余裕が生まれたら友達……。赤の他人の心配なんて、お前にはまだ早えだろ」
「……そうは言いますけど、それならカイト様もかなりの馬鹿の分類ですよね?」
フィールがアレンに辛辣な事を言い、俺がアレンに警告する。死の危険と隣り合わせだったからこそ分かることだ。……まあ、ビアンカの言う通りあの時の俺には生き倒れていたフィールを見捨てたりしなかったのでアレンと同じ馬鹿の分類だが。
「まあ、それは否定出来ねえな。……まあ、その自分最優先で生きてその人生が楽しいかって聞かれたら即刻否定するけどな。孤独なんていい事は無えよ」
孤独の人生なんて正直辛いだけだ。支えてくれる人がいないと人なんてすぐに折れる。……支えてくれる人がいても環境によっては精神が捻じ曲がったりするが、それは置いておこう。
「……お前ら、全然物事を考えてないように見えて、結構色々考えてるのな」
「まあな。特に孤独な事に関しては俺ら三人とも経験済みだからな。俺は一週間だが、フィールは六年間だしビアンカに至っては数百年間だ。それにビアンカはともかくとして俺とフィールは気を抜いたら死ねる場所にいたから、そこら辺はな」
こんな一般高校生と二人の美少女に見えても、おかしい経歴は積んでるんだ。色々考えてるのは当たり前だ。
そんな事を言おうと思ったのだが……。アレンは、全く別の事に反応しやがった。
「……ビアンカさんの種族ってなんなんだよ。人型の中じゃ長命なエルフでさえ寿命150年とかそんなもんだぞ」
「んあ!?そこら辺言ってなかったか!?」
「聞いてねえよ!つーかビアンカさん一体何さ……」
「アレンさん。女性に年齢を聞くのは如何なものかと」
ビアンカの種族に関して全く言及してなかったことを思い出す。確か研究所で戦って仲間になったとしか言ってはいなかった。
「えーと、ビアンカはホムンクルスという人造生命体で、年齢は本人すら覚えてないらしい。最低でも……あ、これは言ってもいいか?」
「構いませんよ」
「オーケー。最低でも300歳は超えてるって本人は言ってる。それ以上は数えてないみたいだけど」
俺はアレンにビアンカについての事を説明する。……まあ、シリアスな雰囲気をぶっ壊してくれたお礼だ。よくああなるけど好きじゃ無いからな。
「300歳て……。やっぱり無茶苦茶だな」
「せやろ?」
まあ、ビアンカがホムンクルスである事と、腕から機械が出てくるのは別の話だけどな と追加で言っておく。アレ=ホムンクルスとは絶対に思って欲しく無いからだ。
「あれは流石に普通じゃ無えのか……気にしたら負けなやつか」
「ま、そゆことだ。じゃ、サクッと飯作ってくるわ。長々と話してたしな」
「あ、よろしく頼む」
まあ、俺はこのまま話し続けるのもあれだと思い、適当に話を切り上げてキッチンの方へ向かった。
今回の話は正直無くても然程問題無い話でした。ですが、無いと大分時が飛ぶので……一応書いておきました。




