13話 動作テスト
「解ってるとは思いますけど、射線には入らないで下さいね」
ビアンカはそう言った後、拳銃のグリップの一箇所にあったスイッチを押し込む。すると、紅い光の線が的に向かって照射される。要するにレーザーポインターである。
そして、
ガガガガガガガガガガァン!
合計10発分の発砲音と共に、猛スピードで弾丸が発射される。見た目反動が凄いのだが、完全な腕の動きでそれを相殺していた。
そして、その弾丸は的の中心を囲うように9発、最後に的の中心を貫く。当たった場所こそ穴は開いているが、ヒビ一つ入っていない。
あと、レーザーポインターの指し示していた場所からは一点もズレてはいない。完全に狙い通りの場所に着弾した。
ビアンカはそれを見て満足そうに頷く。取り敢えずこれは成功のようだ。
するとビアンカは、グリップにあるスイッチを押しながらそれを右にスライドして、またも的に向かって発射する。
ガガガガァン!
今度は四発位だ。レーザーポインターの指し示している場所の丁度3センチ程右に着弾している。四発ともなので、多分作為的なものだろう。
「これも良し。では、次でこれのテストは最後ですね」
ビアンカはそう言ってスイッチを左にスライドする。その後予想通り的に向かって発射、ポインターから左3センチ位ズレた所に着弾している。
「……これはワザとズラしてるんだよな?」
「ええ。ポインターを使うと狙ってる場所が分かるので、それで最低限の回避をして油断した敵を葬る為に」
俺がビアンカに聞くと、そう教えてくれる。というか、考え方がエグい。
「そもそも、レーザーポインターって必要なのか?」
「正直無くてもどうにでもなります。ですが、着弾点をあえて分からせて相手を油断させたり、いきなり照射して目潰ししたりなど使い道は多いのであって損は無いですね」
最早ポインターがポインターとしての意味を成していなかった。此奴ならポインター無しでも普通に命中させられる以上、狙いをつけるものとしての意味は無かったのである。
「まあ、この銃は成功みたいですね。要りますか?」
「いや、要らん。ところでこれは実弾式か?」
ビアンカが要らないか聞いてくるが、銃なんて撃てないので首を振る。あと、気になった事を聞いてみる。
色々調べて分かった事だが、この世界の銃には実弾式と魔力式の二つがあった。
実弾式は地球のと似たタイプ、と言っても発射機構は全然異なるが、鉄や銅、ミスリルなどを加工した弾を発射するものだ。弓より速く、軽く、強い物理攻撃が出来る優秀な攻撃手段だが、装填の手間が掛かるのが欠点である。
魔力式は魔石や所有者の魔力を圧縮して撃ち出すもので、相手の装甲とかに影響されにくいとの事。もちろん魔防が高い相手には聞き辛いが、そうでない相手には詠唱無しの魔法を撃ち込むようなものでかなりの火力が期待出来るらしい。欠点としては、使う魔石や所有者によって威力が大きく左右されるという事だろうか。
「これは実弾式です。……一番の欠点である装填に関しては内部に時空結晶を仕込みまして、1000発まで入るので戦闘前にしっかり装填しておけば弾切れを起こす事はまず無いでしょう。なお、弾丸はアダマンタイトです」
「……これ本当に拳銃か?機関銃の間違いじゃね?」
マシンガン並みの連射速度で、マシンガン以上の装填数を誇る拳銃なぞあってたまるか。いや、実際に此処に有るけども。
「機関銃もありますけど。見ますか?」
「あんのかよ……一応見せてくれ」
期待半分、恐怖半分で見せてくれと頼む。そうすると、ビアンカは拳銃をしまって二メートル位はありそうな巨大な銃を取り出す。砲身が六つも見えるので、機関銃と言うよりはガトリングガンに見える。多分、本来なら地面に固定して使うようなものだろう。……片手で持ってるのは、気にしたら負けだろう。
「よっと。じゃあ、いきますよー」
ドゥルルルルルルルルルルルルルルル!!!
ビアンカがガトリングガンを起動させると、前方にあった的が豆腐にエアガンを撃ち込んだかのように崩れ落ちていく。機関銃と言う割には一発の威力がなんかライフル位ある気がする。
ドゥルルルルルルルル……。
そして、的の形が見えなくなった程度でビアンカが発射を止める。なんかスッキリした顔だ。
「まあ、こちらは弾丸が多いため鉄の弾丸を使っていますけどね。……電磁加速装置を試しに付けてみたのですが成功したようで何よりです」
「ガトリングレールガンとかシャレになってねえだろ……。で、こっちは何発装填なんだよ」
「砲身一本につき1000発、計6000発です。ですが、毎秒60発なので100秒撃ったら無くなってしまいますが。要改良ですね」
「それを耐え切れる奴はいるのか……?」
ビアンカはそんな事を言っているが、秒速60発も撃てる兵器を持ちながら空飛ぶ板に乗り敵陣に突っ込むなんて真似も可能な事を考えると唯の恐怖である。カルディア辺りなら張り合えたりしそうだが、それより弱い奴らはなす術なく死ぬだけだろう。
「まあ、これは主力にしても問題無さそうな威力ですね。一番の問題点としては手加減が効かないことですけど」
「そこは腹パンでもしてろ」
ビアンカはそんな事を言いながらガトリングレールガンを仕舞う。魔物の大群とかが攻めてくることがあったらアレでミンチにされるのだろうか。
「では、次ですが……。これは出来ればカイト様には見せたく無かったのですけどね。まあ、仕方ないでしょう」
そう言うと、ビアンカは3メートル四方位の竃?のようなものを取り出す。色々メーターとかが付いているが実際何なのかは分からない。
「……なあ、これ、何?」
「溶鉱炉です。一応使うかなと思い持ってきたのですが、オリハルコンやヒヒイロカネを加工できるか分からなかったのでそこら辺を確認してからカイト様に見せたかったのですが」
昨日の昼頃に、そろそろ加工用の道具を用意しないとなとビアンカにボソッと言った事を思い出す。あの時は特に考えずに言っていたのだが、それを聞いてこれをどうにかしようと思ってくれたのだろう。
「えーと、オリハルコンを置いて、中に入れて、蓋をして、ポチッとな」
ビアンカが声を出して確認しながら溶鉱炉を起動する。スイッチを押すたびにピッという音が響く。
「……こんなので、そんな温度出るの?」
「フィールさん、こんなのは無いですよ。普通の炉に比べて密封性が高くて温度を上げやすい優れものですよ?」
フィールがビアンカに聞くと、わざわざ特徴を説明してくれる。まあ、かなり曖昧な説明だが。
まあ、そんな感じで待つこと10分程。突然、チーン!と言う音が鳴る。電子レンジかなんかかそれは。
「じゃあ、取り出しますよー。あ、カイト様。取り敢えずアダマンタイト製の金床とハンマーを用意したので鍛治をお願いします。私じゃスキルが足りないので」
ビアンカはそう言って金床を置き、ハンマーを俺に渡す。一切の装飾などがない、実用性しか重視していないハンマーだ。
「では、お願いします!……あと、知ってるとは思いますが最後に武器を冷やす際に液状のものに浸すのですが、使う液体によって特殊効果が付いたりするので何を使うかはお任せします」
ビアンカが金床に赤熱しているオリハルコンを置き、去り際にそんな事を言っていく。初耳だわ、そんなの。
まあ、それは後で取り出せばいいから今はオリハルコンを打つことにする。ズッシリと重たいアダマンタイトのハンマーを振り上げ、力を抜いて振り下ろす。……決して手を抜いている訳ではない。全力を出したら、オリハルコン、ハンマー、金床、地面の四つが割れると判断したからだ。
ガァン!
という音と共に、オリハルコンが少し変形する。かなり力を抜いたのだが、十分な威力はあったようだ。
それを確認した俺は、続けてハンマーを振り下ろす。暑いのを我慢しながら、剣の形になるようにだ。
ガァン! ガァン! ガァン! ガァン! ……
何回もハンマーを振り下ろし続けて漸く剣の形になる。ちなみに装飾とかは全くない無骨な剣だ。
あとは冷やさなければいけないのだが、何に浸そうか。回復系のポーションは……多分、切った敵が再生するだろう。毒薬系は……多分、擦るだけで死ねるような剣ができそうだ。
俺はしばらく (脳内フル回転・実際の経過時間は3秒程)考え、何に浸すか決める。地上では貴重で、俺は大量に持ってて、なんか強いのが出来そうな、そんな液体だ。
「ちょっ!?カイト様!?それ……」
俺はその液体 (現地で作った石の容器入り)に今作った剣を浸す。ジューと言う気持ちいい音が響く。ビアンカが何か言っているが自由にしろと言われたので気にしない。
そして、その音が無くなった頃辺りで剣を引き上げる。蒼白く輝いていたオリハルコンは、見る影もなく赤黒い鈍い光を放っている。
「……」
俺はそれを見た後、水で洗ってから無言で柄を作って嵌める。まさか刀身の色まで変わるとは思っていなかったのだ。
まあ、そんな感じで一振りの剣が出来る。鑑定してみると、こんなのだった。
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殺龍剣グラム
分類 装備
レア度 シャレにならない
エンチャント
龍殺し 斬魔
説明
オリハルコンを人知を超えた者が鍛え作り出した魔剣。本来は魔法さえも切り裂く圧倒的力の剣だったのだが、龍の血を吸った結果さらに龍殺しの力を得た。
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うん、やっぱりドラゴンの血で冷やしたのが間違いだったか。確か、鍛治スキルの追加効果でエンチャントが付くから、それが斬魔だろうな。名前と説明で魔法を切れるって奴だろう。
で、ドラゴンの血で付いたのが龍殺し。なんで龍の血で、持ち主を殺せるのかは分からないけど気にしたら負けだろうな。
「あのー、カイト様?今使ったのってもしかしなくてもドラゴンの血ですよね?なんてもの使ったんですか?」
「ああ、そうだが。駄目か?」
「……カイト様。剣って血糊が付いたら切れ味落ちるんですよ?何故わざわざ自分から血糊付けるんですか」
ビアンカが呆れた様子で言ってくる。だが、剣を見てみても特に切れ味が落ちている様子は感じない。と言うより、邪剣エクスカリバーよりは切れ味が良さそうな気がする。
「んな事言ったってなぁ。よっと」
俺は剣を持って、そこら辺の木の枝に向かって一般人が瞬きしても見える程度の速度で剣を振る。一切の抵抗を感じさせず、その木の枝は切り離される。
そのあと、今度はビアンカが刺して置いた石杭にも同じような事をする。これも同じく抵抗無く切れる。
「切れ味は落ちてないみたいだが?寧ろ今までの剣より切れ味いいぞ」
「えっ。本当ですか?」
ビアンカが聞いてくるので、俺はそっと手渡しする。それを受け取ったビアンカはじーっと観察してから俺に返してくる。
「……確かに、切れ味に関しては問題無いですね。何故かは分かりませんが」
「そうか。じゃあ、取り敢えずこれは仕舞うか。……って、あれ?フィール?なんでお前そんな離れてるんだ?」
俺は近くにフィールがいない事に気付き、辺りを見回す。結果としては、見える所にはいたが大分離れていた。
「……早く、その剣仕舞って」
フィールは小さい声でそう言ってくる。何処か、顔色は悪そうだ。
「……?仕舞ったぞ?で、あの剣がどうかしたのか?」
「……はぁ。あの剣から、良くない魔力が出てた。背筋が凍るような、そんな感じの」
フィールは緊張が解けたようで、溜息を吐く。良くない魔力?そんなの全く感じなかったが。
と、少し考えた所で一つの考えが浮上する。多分、というかほぼ確定だと思う。
「……もしかして龍殺しか?」
「……多分、それ」
ドラゴンに対して強大な力を発揮する龍殺しのエンチャント。龍人のフィールには純粋なドラゴン程では無いにしろ効果が有ったのだろう。
「成る程……。龍殺しの剣がフィールさんに多少なりとも悪影響を及ぼしていた訳ですか。となると、あの剣は使えなさそうですね」
「だなぁ。……再会した時にでも渡すか」
俺が渡そうかなと考えているのは幼馴染みの百華である。剣士タイプだった筈だからまあ使えるだろう。帰ったら改良しておくか。
「……取り敢えず、私の用事は終わってしまったのですが、カイト様達はどうしますか?」
俺があの剣をどうするか考えていると、ビアンカからテスト終了の声が掛かる。なんでも、大半は俺たちが到着する前に終わらせてしまっていたようだ。
「んー、終わっちまったなら仕方がねえだろ。他にやる事も無いし。……フィールは何かあるか?」
「……一つ、やりたい事はある」
俺が一応フィールに聞いてみたら、意外にもあるとの返答が返ってきた。
「……私が、どれだけ強くなったか確かめたいから、試合をして欲しい」
毎秒60発で発射されるガトリングガン。……なんですけど、現実にはこれを超える連射速度のは結構あるんですよね。まあ、設定上威力はかなり高めにしてあるのでこのままで行きますが。




