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9話 魔法の鍛錬

 俺は次に何を作ろうか少しの間考える。現在は大体3時過ぎ、さっきの盾より時間が掛かるものは作れない。


 フィールとビアンカの装備品は今のままで充分そうだから、次のも俺用のアイテムを作ろうと思う。


 じゃあ、何を作ろうか。と言うより、俺には何が足りないか。考えるまでも無いか。遠距離攻撃手段と範囲攻撃のバリエーションだ。


 覚醒使わないとブレスと投擲以外の遠距離攻撃手段は無し、範囲攻撃もブレスしか無い。威力は有るけど、口から吐かないといけない分、少ない隙で攻撃が出来ないんだよな。


 使おうと思えばビアンカの持ってる魔導機械とかも使えるだろうけど、いささか火力が物足りないのだ。


 と言うことで、ある程度のイメージを持ってアイテムを用意する。ヒヒイロカネ、雷光結晶、フライタイト。取り敢えずこんなものだ。あと、動力源の魔晶石もか。


 今回作るのは魔道具と言うよりも魔導機械に近い。と言っても火力を重視する故使いやすさは二の次だ。


 イメージ的には……まあ、ビアンカの使ってたスパークマインその物だ。フライタイトとか使って多少は違う奴にするけども。


 まず、ヒヒイロカネをかなり複雑な感じにファストクリエイトで加工する。トゲ付きの球状且つフライタイトと雷光結晶、それに起動用の仕掛けを入れなければいけない為だ。


 仕掛けは、鉄球?の一部を押し込むことで魔石と結晶を接触させ、電流を発生させるというものなのだが今回はタイムラグを作らなければいけない。押し込んだ瞬間に作動したら自分ごと感電する。


 さらに、余計な消費を抑えるために一定時間後に自動的にオフになる機構も搭載しなければいけないのだ。しかも、手作業でである。複雑故、ファストクリエイトでイメージするには大分辛いのだ。


 しかも、使い捨てじゃ無いから手元に戻ってくるようにもしなければいけない。ここら辺は途中で思いついたので時空結晶を追加で持ってきた。


 まあ、そんなかなり複雑な構造になったが、結果としては一時間で取り敢えず完成はした。取り敢えずはだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

サンダースター

分類 魔導機械

レア度 言葉にするのが間違い

説明

 ヒヒイロカネやフライタイトを使って作られた超貴重な兵器。起動後一秒後に高圧電流が別の機体へと流れ間にある物体を焼き尽くす。帯電時間は5秒、使用後は起動者の手元に戻ってくる。なお、使用には最低3機体必要。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ビアンカから少しずつ教わってた魔導機械の仕組みとかを頑張って覚えた甲斐があったと思える作品だ。


 だが、スパークマインをイメージした故当たり前だが、勿論一つだけでは使えない。要するに、一つ作るのに一時間要したこの作品をあと最低二つは作らなきゃいけないのだ。まあ、俺的にはあと四つは欲しいけど。


 使用方法は機体の一部分を押し込むことで起動した後、自分が感電する前に投げる。これだけだ。全部が繋がるように電流が流れるので最低三つ必要だったのだ。

 

「流石ですね。たった10日程度でここまでの物が作れるなんて」


 いつの間にかサンダースターを手にとって眺めているビアンカ。作っていたところも見ていたからか、仕組みとかは理解しているようだ。あと、今思うとまだビアンカと会ってから10日位しか経ってないのか。……濃い日々だなぁ。


「使い捨てには出来ないコストですが……私のものより色々な戦術に使えそうですね」


 それに関してはビアンカの言う通りだ。作る量が少ないと前方に纏めて投げて焼き払うくらいしか出来ないけど、量を作れば周囲に投げて360度を囲むようにも出来るのだ。


「かなり時間が掛かるけどな」

 

 取り敢えず、ビアンカにそう返答した後、追加で同じ物を作り始める。ちらっとビアンカの様子を横目で確認すると、別の机の方へ行って俺と同じく機械を弄っている。


 フィールはじーっと俺の方を見ていたが、フィールは機械には疎い故手伝わせられないので、俺一人で黙々と量産する事に決めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 三時間半位の時間を掛けて、ようやく合計5個のサンダースターが完成した。実用試験はまだやってないが、そこそこは使えるだろう。


 時間を体内時計で確認すると恐らく六時半位。ちなみにこの世界は日本に比べて照明技術は発達していないのでこの位の時間は夕食を食べる時間である。


「フィール。ビアンカ。そろそろ夕食みたいだから行くぞー」


「……解った」

 

「了解です」


 俺は二人を呼んでから下の階へと降りていく。まあ、夕食も作るのは俺なんだがな。


 そう思いながら、俺はリビングに着く。すると、既に五人の人が待機している。


 俺はそれを見て言う。


「……なんでお前らがここにいるんだ?安藤。ソール」


 そう、此処にいたのはアレン、ベアトリス、ドラン、ソール、安藤の五人だ。どうせカリーヌは部屋であれに夢中にでもなっているのだろう。


「私はドラゴンの件の隠蔽が終わったから休憩しに来たんだよ。あと、アレン君達の様子見かな」


 ソールはそう答える。一応俺たちを此処に押し付けた事を申し訳なくは思っているのだろう。


「あ、あと私の分の夕食もよろしく」


「図々しいな」


 ……割と反省して無さそうだな。


「私は……一応報告しに来たのよ。流石に黒野が生きてた事は伝えなきゃいけないから明日にでも王都に向かうから。……私が此処に来てることは光真は知らないわ。だから戦闘態勢には入らないで」


 俺が生きてた事を報告しに王都へ戻る、か。地図上だと此処から王都ってかなり離れてたと思うんだけど。


「馬車で一週間位掛かります」


 俺が小声でビアンカに聞いてみた所、そんな返答が返ってきた。馬車で一週間って俺たちの全力でどの位掛かるんだろうな。2、3日かな。


「……まあ、あの時黒野達がいなかったらどうなってたか解らないから、一応礼は言っておくわ。ありがとね」


 そう言って、頭を下げる安藤。あの時というのはドラゴンを倒した時の事だろう。


「なんだ?わざわざそんな事を言いに来たのか」


「ついでよ、ついで。……じゃあ、帰還方法の件、よろしく」


 安藤は素っ気なくそう言うと、そのまま家を出て行く。単純に報告と礼を言いに来ただけのようだ。


「クロノ。飯早くしてくれよ」


「そこで座ってるだけの奴には言われたくはねえがな……」


 そして、そんな事より腹が減ったと主張してくるアレン。てめえの辞書には空気を読むと言う文字はねえのか。


 まあ、そんな事を考えながら調理場へと向かっていく。夜だから料理による一時的なステアップは気にしなくて良いだろうし手加減は要らないか。


 と言うことで、さくさくっとシチュー (火が通りやすいアイシクルドラゴンの肉を使用、その他素材も夢幻列島産) を作って持っていく。ちなみに、パンとアレンにはゲキニガドリンク (十秒位石化する。なのに敵に飲ませなきゃいけないからネタアイテム) を用意してある。


「おー、美味しそう。……なんか、鑑定が荒ぶってるんだけど」


「は?」


 俺がソールに言われてシチューを鑑定してみる。もしかして素材とか解ってるのか?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

シチュー

分類 料理

レア度 ヤバい

特殊効果

筋力・敏捷が1時間の間5%上昇

魔力が10分の間毎秒1ずつ回復

1時間の間スキルの取得・成長に若干の補正

説明

 いい意味でヤバい素材を、いい意味でヤバい料理人が扱って作ったいい意味でヤバいシチュー。食べるだけで力がみなぎり、魔力も回復、頭の働きまでよくなる。魔王も食べたいと言いそうな一品。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 シチューってなんだっけ。というかこの解説文はなんだ。いい意味でヤバい○○って流れ使い過ぎだろ。そして、効果がヤバい。特に最後。


「……確かに、荒ぶってるな。まあ、気にせず食べてくれ」


「これを気にせず食べれるようになる頃には感覚が狂ってるよ……」


 なお、この会話は周りには聞こえない様にしていたので、ベアトリスが不思議そうな顔をした以外特に問題は無かった。


 食事風景も、途中でアレンが石化したり、遅れてきてすぐにその光景を見たカリーヌの頭がオーバーヒートしたり、アレンがソールを除く3人の口にゲキニガドリンクをねじ込んで仲良く石化したりした事を除けばごく普通の食事風景だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 そして、飯が終わったら風呂の時間である。だが、いかんせんこの家、飯を食った後大変面倒くさそうに帰ったソールを除いて7人もの人がいる。さらに、スペース的に二人か三人しか入れないスペースなので待ち時間が長いのだ。


 ちなみに、食事後の話し合いの結果

 1 カリーヌ・ベアトリス

 2 フィール・ビアンカ

 3 アレン・ドラン

 4 俺

 こんな感じになった。最後と言っても冷めてたら沸かし直せるし、狭い風呂場で男三人すし詰めになるよりは万倍マシである。


 ちなみに、今は庭で風呂の番が来るまで鍛錬をしている。出来るだけ早いところ覚えたいスキルがあるのだ。


「魔力を隔てる光の壁よ 我が前に顕現し 迫る破壊の渦より守れ 『マジックシールド』」


 俺が魔法を詠唱すると、俺の前に薄い光の壁が出現する。魔法攻撃を遮断する、空間魔法の結界だ。


「……これで13回目。目的の物は……まだねえな。イメージの問題か?」


 俺が何も無いところで魔法を唱え続けている理由。それは、スキル「高速詠唱」が欲しいからである。フィールに聞いてみたところ、「……詠唱を省略すると、普通より強くイメージしないとダメ」と言われたので、それを重点としてやってはいるのだがいまいち上手く行かないのだ。


「……困ってるみたいだね」


「あ?……帰ったんじゃねえのか?」


 いろいろ失敗の理由を考えていると、後ろから先ほど帰った筈の人の声が掛かる。振り向くと、案の定ソールがそこにいた。


「帰ろうとしたよ。……でも、庭とはいえここは街中だよ?魔法を連発するのはどうかと思うな」


「あー、エルフだからその辺敏感なのか」


 一応ファンタジーで魔力に精通してるという認識が強いエルフ。誰かが魔法を使ってたりしたら反応し易いのだろう。


「……で、何の為にこんな事を?」


「高速詠唱のスキルが欲しいんだよ。あのシチューで補正が入ってるうちに如何にか手に入れたいんだが、如何にも上手く行かなくてな」


 俺はソールに包み隠さず伝える。別に隠す意味も無いからだ。


「ふーん……。それなら、私が魔法を撃つからそれを防いでみる?ただ結界を張るよりはそっちの方が練習になると思うよ」


「いいのか?なら、頼む」


 ソールがそう提案する。街中で魔法を放つなと言ったのは何処の何奴だと問い質したい所だが、悪く無い話なので了承する。


「了解だよ。……でも、私は風と水しか使えないからね。じゃあ、始めるよ。『ウィンドストーム』」


「魔力を隔てる光の壁よ 我が前に顕現し 迫る破壊の渦より守れ 『マジックシールド』」


 カカカカカカァン!


 俺が作った光の壁に風の弾丸は弾かれる。だが、詠唱は先ほどまでと変わらない。ただ、身体能力に物を言わせて早口で言い切っただけだ。


「やっぱりこっちじゃ駄目か。じゃあ、一番早い奴で行くよ。『風球』」


「魔力を隔てる光の壁よ 我が前に顕現し……うおっ」


 俺が結界を展開しようとするが、間に合わず風の球が俺に直撃する。早口で言っても限度があるのだ。


「……早いな。鑑定するの忘れてたけど、やっぱり結構な実力者だったか」


「まあね。元アダマンタイト級の冒険者を舐めない方が良いよ」


 その後は、お互いに会話を交わさずにひたすら鍛錬を続ける。どんなに頑張っても発動を確認してからでは結界の展開には間に合わ無かった。


 結果として、風呂を済ませたアレン達が俺を呼びに来るまで鍛錬を続けてはいたのだが、結局最後までソールの魔法を防ぐ事は出来なかった。


 ……あくまで防げなかっただけであり、気付いたら高速詠唱のスキルは習得出来ていたが。その事に関してソールに聞いたら「……そう言えば、スキルレベルで短縮出来るレベルが決まってたから習得出来ても今使ってた魔法が短縮出来るわけが無いんだった」

と言われたが、ソールのお陰で習得出来たのでその件に関しては深くは追求しなかった。


 まあ、そんな感じで一応の目的を果たした俺はソールと挨拶して、アレン達にチョチョっと謝罪してから風呂場へと向かった。

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