表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/170

6話 宿をどうするか

「はい、此処が解体場だよ。素材はそこら辺の台の上に出しちゃってね」


「ほいほい」


 俺は案内された解体場の机の上に取り敢えずクラウディア三匹分の革、サーベルスパイダー三匹分の甲殻、そしてファイアドラゴンの肉 (今回の。ギルドで引き取ると出処がどうとかで厄介な事になるからと俺が引き取らされた)を出す。あえてそれを選んだ理由は無い。


「この肉は今回のドラゴンの肉で、甲殻はサーベルスパイダーか。……で、これは初めて見るね。これがクラウディアっていう魔物のかな?かな?」

 

「まあ、そうだな。あと、ようやく口調戻ったか」


 遂に口調が戻ったソール。驚くのにも慣れて来たのか?


「質感的には……鹿だね。でも、しなやか且つ丈夫で魔法の耐性もある。工芸品にも使えそうな美しさだけどそれは関係無いかな。やっぱり彼処で?で?」


「ご想像の通り、夢幻列島産だな」


 ソールが聞いてきたので普通に教える。というか、クラウディアってそんなに稀なのか?鑑定の説明にも空の上にいる鹿って出てたけど。

 

「そうだよね……。うーん、サーベルスパイダーの甲殻は三匹合わせて90000ゲルト、ドラゴンの肉は200000ゲルト、クラウディアの革は……希少価値も品質も高いから、三匹分で150000ゲルトでいいかな?かな?」


「……それ銀ランクの収入じゃねえよ」


 ソールが俺にそう聞く中、アレンがボソッとそんな事を言う。まあ、本当はアダマンタイトランクにしたいとか言ってたからな。しょうがないね。


「ああ、構わねえぞ」


「了解だよ。じゃあ、それと今回の討伐報酬……死体は君持ちだから、300000ゲルト位が妥当かな。合わせて740000ゲルトになるよ。……はあ、これだけでギルドの予算の3分の2が消し飛ぶよ」


「……何処も財政は大変なんだな」


 溜息を吐くソールを見ると、同じように財政難で苦しんでいたアダマースを思い出す。彼奴ら今頃どうしてるんだろうな。


「全く持ってその通りだよ……。じゃあ、少し待っててね。いかんせん金額が多いからね。少し金庫の方から持ってくるから」


 そう言うと、ソールは部屋から出て行く。金庫から取り出す時にどう説明するかは判らないが、うまく誤魔化してはくれるだろう。


「……フライタイトとかは売らないの?」


 ソールが出て行った後、フィールが俺に聞いてくる。ちなみにフライタイトと言うのは夢幻列島産の宙に浮く不思議鉱石だ。


「あのなぁ。アレ地上には殆ど無いみたいだし、流石に売るのはアウトだろ。それに、レア度がえげつなかったし払える金も無いだろうし」


「ああ、あの浮く鉱石ですか。色々試してますけどかなり便利ですよね、アレ」


 ビアンカには、魔導機械の素材を要求された時にコレも渡してある。オリハルコンとかヒヒイロカネとかアダマンタイト、それに各種属性結晶などかなりの量は渡してある。フライタイトは飛行板とかに仕込んで浮遊力を高めたりとかの方向で実用化を図っているようだ。


「……なんつーか、お前らって本当に規格外だよな。強いと思ってた自分が情けないぜ」


「健斗君、私達が弱いんじゃないからね?黒野君が強すぎるんだからね?」


「というかこれの何処が非戦闘員なのよ……」


 此奴らも大分調子は取り戻してきたか?というか今安藤俺の事これって言わなかったか?


「……ところで、この後如何するの?」


 俺が安藤に物申そうとした時、フィールからの質問が入る。今後の活動についてだ。


「んー、そうだな。取り敢えず2、3日位滞在してから少しずつ奥の方に向かってけばいいだろ。……そう言えばビアンカ。目的地までどの位街とか村とか通る?」

 

「最短距離なら二つ、回り道をするなら一つです。ですが、私は回り道をする方をお勧めします」


 俺がビアンカに聞くと、悩む事なく即答してくれる。本当に、此処だけなら優秀なメイドなんだけどな。最近は暴走してないけど……いつ無茶苦茶な事をするか。まあ、それよりもなんか気になる発言があったけど。


「……何故に回り道?最短距離のほうが寄れる街も多いのになんでそんなまどろっこしいルートを取るんだ?」


 俺はビアンカにそう質問する。普通に考えたら、回り道するメリットが無いのだ。


 だが、ビアンカは周りを見渡した後、俺の耳に口を近づけて囁く。


「……此処から最短距離を取る場合、ある集落に寄ることになります。其処の住民は少し特殊で、あまり寄る事はお勧め出来ませんが」


「……特殊?魔族の国によってる俺らにとっては関係無いような気もするが?」


 魔王と友達な時点で種族とか知った事は無いのだが、そこの所は理解してるのだろうか。


 と思ったが、ビアンカの言う事で俺の考えは大きく変わる。

 

「……其処は龍人族の里です。私の知識に間違いがなければこの大陸にはそこ一つしか龍人の集落はありません。つまり、ほぼ確実に其処がフィールさんの故郷な筈なのです」


「……確かに、其処は寄らない方が良さそうだな」


 フィールは住人に追いやられて夢幻列島へと置き去りにされた。その住人をフィールが恨んでいるか?考えるまでも無い。それに追い出した相手が無事に戻ってきたりしたらまず間違いなく攻撃はされる。どうとでもなるが、わざわざ厄介ごとに突っ込む事も無い。


「なんの話をして「お金取ってきたよー」……むぅ」


フィールがなんの話をしてたかを俺に聞こうとしてきたが、その台詞は戻ってきたソールに掻き消される。ナイスタイミングだ、ソール。


「740000ゲルト、大金貨7枚に金貨4枚。確認よろしく」


「……確かに受け取ったぞ。さて、取り敢えず此処でやる事は済んだしそろそろ此処を去りたいんだが……ソール。お勧めの宿ってあるか?」


 俺は金を受け取った後、ソールに聞く。此処で出来る事は大体やったので後は寝るところを探さなきゃいけないのだ。


「お勧めの宿かー、私は普段から此処で寝泊りしてるからその辺はよく解らないんだ。アレン君たちに聞いた方が参考にはなると思うよ」


「いや、俺たちもう拠点あるんで宿は使って無いんですが……」


 いきなり話を振られたアレンは割と困った表情になる。まあ、言い分はごもっともだが。


「いやいや、拠点を買う前に使ってた宿とかあるよね?そこら辺からよろしく」


「まあ、そうですけど……」


「それならお勧めとかあるよな」


 だが、一時期は宿を取っていたようなので結局聞くことになる。まあ、然程期待はしてないけどな。魔族国の首都の最も有名な宿に泊まった後じゃ……ね?


「あー、一応、安くて人が少なくてベッドとかの質も良くて料理も上手いって所があるぞ」


「普通に良さそうな所じゃねえか」


 個人的には人が少ないのはグッドだし、値段は特に気にしてはいないが安いに越した事は無い。


「……だが、少しだけ問題があってな。店主が何時も顔を隠してて不気味なんだよ。それだけなんだが、人がより辛いのも判る」


「あー、確かにそうだな。ちなみに店の名前は?」


 アレンが超些細な問題を言ってきたのは気にせず、店の名前を聞く。今回はそこで決まりと思っていたのだが……。


「確か『深淵亭』だったな。なんでも遠くの街の『終焉亭』って所で修行してたとか……って、如何した?」


 アレンが怪訝な顔をして、頭を抑えている俺達を見る。凄い、聞き覚えのある宿屋だ。その店主絶対骸骨だろ。流石に人族の街に骸骨がいるのはアウトだ。触らぬ(面倒事)に祟りなしだ。


「アレン。其処は止めよう。別の所は?」


「……其処は止めて。別の宿をお願い」


「アレンさん。別の場所をお願いします」


「何故にそこをそこまで嫌がる!?」


 だって、面倒事の予感しかしないんだもの。わざわざ近寄りたくねえし。


「「「嫌な予感がするから (です)」」」


「嫌な予感て……。いや、化け物の勘なら正しいのか?」


「喧嘩なら買うぜ?拳骨一発一ゲルトでどうだ?」


 サラッと化け物扱いされるこの体。辛いぜ。まあ、後悔もしてねえけど。

 

「喧嘩は売り切れだ。そして今後も永遠に売り切れだ。……で、そう言えばお前らの希望する条件ってあるのか?」


「……お風呂がある所」


「人が少ない所です」


「床さえあれば寝れるからそこまで気にしなくていい」


「風呂があって、人が少ねえ所だな。……そんな所あるわけね「あるよ」っえ!?」


 アレンが俺らの提示した条件を否定しようとした時、ソールがそれを肯定する。というか、ソールはそういうの知らないんじゃ無かったのか?


「アレン君。……確か、君の拠点って、お風呂あったよね?よね?」


「ありま・・す……が?」


 ソールの発した一言だけで、アレンの顔が引き攣っていく。大体、オチは読めたな。


「部屋もそこそこあったよね?よね?」


「……二人部屋が三つ。不公平になるからと、四人で二つの部屋を使ってます。というより三つ目の部屋は……」


 アレンが何か思わせぶりな事を言おうとしていたが、ソールはバッサリとそれを切り捨てる。


「じゃあ、クロノ君たちを泊めてあげてよ。下手に宿屋に行かせて色々厄介ごとに巻き込まれるよりは、そっちの方が安全だからさ」


「……マジすか」


「マジだよ。なんなら依頼として頼むけど」


「いえ、それはいいです」


 アレンは疲れたようにソールの言うことを聞く。というか、依頼として出そうか?とかマジすぎるだろ。


「……クロノ達は私達の拠点に泊まることになったみたいね。でも、勿論家事とかは手伝って貰うわよ?」


「料理なら任せろー」


「……私は味には煩いわよ?」


 はっはっは、ベアトリスよ。俺には夢幻列島産のチート食材と、限界を超えた料理スキルがあるのだぞ?甘く見ないで貰おうか。


「まあ、大体三日間だと思うがよろしくな?まあ、お前らは信用してるからわざわざ契約し直したりはしねえからついうっかり口を滑らしたりはするなよ?」


「……もし、口が滑ったら?」


「焼かれる準備はいいか?と言うことになるな」

 

「だろうなぁ……じゃあ、どうせ早速行きたいんだろ?案内するぜ」

 

 アレンが気を利かせて今から俺たちを案内してくれるようなので、俺たちはそれに従い、部屋から出ようとする。


「黒野。……一応言っとくわ。美雪や百華、遠藤に影山。全員、あんたがいなくなってから死に物狂いで修行してたわよ。あんたを助けに行く為に。だから、会ったらキチンと謝った方がいいわよ」


 出ようとした時、安藤が俺に言ってくる。……正直、彼奴らには悪い事したからな。多分今頃は夢幻列島から降りてる辺りだと思うけど、会ったらしっかり謝らないとな。彼奴らなら、解ってくれるとは思うけど。


「ああ、忠告ありがとな」


「どういたしまして。……所で、光真が目を覚まさないんだけど」


「俺じゃねえから知らん。……と言いたいところだが、さっきの話の礼だ。ほれ」


 春日部の事は心底ウザいと思ってるが、安藤には彼奴らの様子を教えて貰えたし、少しくらいいいかとあるポーションを投げ渡す。


「……これは?」


「超強力ポーションだ。致命傷でもかなり効果はあるが超苦いししみると言う極悪ポーションだ。気絶してる奴が反応するくらいの苦さはあるぞ」


 フィールと初めて会った時に使ったポーションだ。効果は折り紙付きだ。考えたくない位苦いけど。


「やっぱり鬼畜だわ、お前は」


「薬渡しただけマシだろうが。あと、それは俺たちが此処を去ってから使ってくれよ」


 俺は残ってる奴らにそう言った後、待っていたアレン達に一言詫びを入れてから、この解体場を後にした。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ