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1話 結構遠かった

 翌日の昼ごろ。


 俺たちは、首都の出入り口でジョーカー達から見送りをされていた。人が多いと嫌でしょう?というアダマースの考えによって今いるのは俺たちとジョーカー達、それと門番位なものだ。


 ちなみに、昼頃だという理由はジョーカーがあの後うるさかったから、ちょっとそれをマシに出来そうな物を作っていたのだ。

 

 だが、そんな事を知らないジョーカーは……。


「……なあ、本当に行っちまうのか?」


 と、それはそれはどんよりとした顔で言ってくる。俺がただここを出ると言っただけでこれだ。本当にこの魔王大丈夫か?


「ジョーカー様はあんな感じじゃが、気にするでない。じゃが、暇な時は遊びに来てくれると嬉しいのじゃ」


「一段落ついたらな。その時までに、ああならないように裏と折り合いでも付けとけよ?」


「無論じゃ」


 カルディアは決意を決めた目で此方を見ている。やっぱり、自分の意思じゃ無いとはいえ暴れたのを放ってはおけないか。


「また会う時には、もっと強くなるから!その時はカイトお兄ちゃんと戦ってくれる?」


「ああ。まあ、火急の用事とかだったら無理だけど」


「それ位は解ってるって」


 フィオーリも、ビアンカに負けた事を気にしてるのか?それとも俺と戦ってみたいだけか?解んねえな。


「気を付けて行ってください。……あと、もしもスペディオを見かける事があったら全力でぶちのめして貰っても構いませんか?」


「あー……まあ、いいけど。見つけたらな」


「ありがとうございます」


 スペディオね……。そう言えばそんなやつが暗躍してるとか言ってたなぁ……。忘れてたよ。


 で、とある物渡したいんだけど、ジョーカーは下向いたままなんだよな。……アダマースにでも渡すか。


「アダマース。……受け取れ」


 俺はアダマースにぱっと見白い石に見える物を投げ渡す。勿論、相応に強いアダマースは普通にキャッチする。そして、それをマジマジと見つめる。


「……こんなもの、受け取ってもいいんですか?」


「……あー、そうか。お前鑑定持ちだったか。構わないぞ。というか、受け取ってもらわないとアレが面倒くさいだろ」


 俺はジョーカーの方を指差し言う。この会話が解って無いからまだ暗い顔のままだ。


 今回アダマースに渡したのはただの転移石だ。ただし俺の周りの半径3メートル以内の何もない場所に転移出来るというものだ。……王国で俺たちを探してる奴らが死ぬ程欲しがりそうだな。


「……本当は、いざという時の為に私が保管しておこうと思ったのですが。それなら仕方ないですね。今ジョーカー様に渡しておきましょう」


「ぜひそうしてくれ。だが、一つしか作ってないとも言っておいてくれ。あと、使い捨てだとも」


 この転移石は一般品と同じで使い捨てである。……その気になれば、壊れない奴も作れそうだけども。


 アダマースは、凄い不満そうにしながらも、俺の言った通りに石を渡しに行く。個人的にはいつ彼奴が飛んできてもおかしくない状態ってのは心臓に悪いが……まあ、仕方ないか。


「……ん?なんだこれ?え?クロノ直通の転移石?そんな物あるのか?」


 アダマースから転移石を受け取ったジョーカーはなんと言うか、凄い戸惑っている。この世界に無かったものをさらっと渡されたから当然なのかもしれないが。


「心配しなくても本物だ。……ただ、タイミングが悪いと王国に魔王出現とかになるからそこのところよろしくな?」


「あ、ああ。解った。だが、解ってたとはいえその力は格が違うな」


 ジョーカーが感心半分、呆れ半分で言ってくる。その気持ちは非常に解るが。


「と言ってもな。理論上は、スキルを伸ばせば俺じゃ無くても出来るからな。城の技師でも鍛えたらどうだ?」


「無茶言うなよ。一番スキルが高くてレベル8だ。それを更に上げろって言ったって早々上がるもんじゃねえよ」


 ジョーカーは苦笑いしながら言う。さっきまでの暗い表情では無く、普通に気軽な何時もの表情だ。


「……まあ、お前が行っちまうのは悲しいがな。お前達にも目的があるんだ。こんなのまで作って貰って、まだ文句言うのは流石に気がひけるからな。だから、気にせず行ってこい!こっちに来ることがあったら寄ってけよ!住人総動員で歓迎してやるからな!」


「流石にそれは勘弁だな。まあ、少なくとも元の世界に帰る前には一回は寄ることになるからな。その時を気長に待っててくれや!」


 ジョーカーがようやく戻ってくれたので、俺は歩きながら手を振る。


「ああ!待ってるぜ!」


「またねー!」


「またなのじゃ!」


「あの件、お願いしますね」


 四人も、声を張りながら手を振ってくれる。


 ここでの出来事も、騒動はあったが悪くなかった。


 でも、このままじゃ駄目なんだ。だから、俺は行かなきゃいけない。


 そう決意し、俺は前を向いて歩き……



 

 

 出そうとしたのだが、ちょうど目の前で無表情でじっと此方を見ていたフィールとビアンカに腕を掴まれる。俺の額に一筋の冷や汗が流れる。


「……カイト。まさか、忘れてたなんて言わないよね?」


「前もこんな事が有りましたよね。前回は逃げられましたが、今回はそうはいきませんよ?逃げれたとしても、カイト様は何処に向かえばいいか解らない筈ですから」


 ヤバい。普通に忘れてた。ああ言う雰囲気になると二人とも参加して来ないからなぁ。で、どうしよう。ビアンカの言う通り逃げたらどうしようも無くなるからなぁ。

 

「……ど、どうしたら許して貰えますか?」


 俺は細々と聞く。二人の視線が辛い。


「……じゃあ、手、繋いで」


「私もそれでいいですよ。……繋いでいれば、忘れられはしないでしょうし」


 二人が表情を緩めて言う。それが逆に怖いのだが、それを言ったらどうなるか分からないから口には出さない。

 

「……まあ、その位でいいなら」


 そう言って俺は手を2人に差し出す。勿論、二人はその手を握ってくる。悪くない感覚だ。


「……ハーレム野ろ"ぉ"!?」


「ジョーカー様!?」


「自業自得だと思うのじゃが……」


「早い……」


 なんか後ろからジョーカーの断末魔が聞こえた気がするけど聞こえないな。フィールが魔法放ってると思ったのも気のせいだったし。


 まあ、俺たちはその静かとは言えない中、遂に魔族国を後にしたのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「なあ、ビアンカ。取り敢えず俺たちは何処に向かえばいいんだ?」


 俺は手を握っているままのビアンカに聞く。何となく歩き始めたけど、行き先は把握して無いのだ。


「そうですね。次向かうのは大陸の中央ですので……ここからなら、まずは王国領に入ってラントと言う街に行くのがいいと思います。私達は身分証を持っていませんから、ギルドのある街に行って登録したほうが後々楽でしょうから」


 流石ビアンカ。情報面では敵う自信が無いな。種族内に見れば最底辺の方らしいけど。まあ、全知とか言われてるホムンクルスの中じゃな。


「ギルドの登録、ね。それはランクとかは有るのか?」


 ラノベとかの設定だと、ランクとかが用意されてて一定ランク以上に成ると緊急依頼に強制参加……とかあったような気がするので聞いてみる。有名になりたい訳じゃ無いから、ギリギリのラインが聞きたいのだ。


「ランクですか?下から木、石、銅、鉄、銀、金、ミスリル、アダマンタイトとなっていて、金ランク以上になると指名依頼というのが発生したり、緊急依頼に強制参加になります。参加しなかった場合はギルドの除名処分になったりするので面倒くさいです。素材を売る場合はランクは関係無いので銀ランクで留めておくのが良いでしょう」


「オーケー、聞きたい事はある程度解った。ところで、俺たちが行くところではどの位までの魔物の素材なら買い取ってもらえる?」


 質問してばっかりで悪いのだが、この世界の常識は日本の非常識だ。知っておかなきゃかなり困る。


「……そうですね。大体、30レベル前後で普通に買い取ってもらえる、50レベル前後で驚かれる、70レベル以上でギルドマスターの部屋に呼ばれると言った感じですね。……あれ、カイト様。どうしたんですか?」


 ビアンカが少し悩んで言った後に、俺は頭を抱える。レベル70以下?そんなのあんまり無いんだよなぁ。スマッシュラビット、サーベルスパイダー、ピグメタル、その他少し。一番有り余っているドラゴン系の素材が全く売れない。


「まあ、事前に出し辛い素材があるって言って人目を遠ざけてから売ってしまえば然程問題では無いと思いますよ?呼び出されると言ってもランクを上げたいとか依頼を頼みたいとかなので断ってしまえばいいですし」


「うーん……何かしら弱みとかにつけこんできそうな気もするが……まあ、そんな方針でいいかな?せめて余ってる肉位は売りたいし」


 素材を売り、ランクを上げない方法を話し合う俺たち。ランクを上げたいと頑張ってるであろう人が聞いたらどんな顔をするのかな。


「……ビアンカ。その街まで、どの位かかるの?」


 フィールが会話に参加してくる。暇だったのだろう。あと、それは俺も気になってた。のんびりゆっくり歩いてたし。


「このままのペースだと……1週間位ですかね」


「遠っ!?」


 はい、想像以上に遠かったです。


「それはそうですよ。ここはまだ魔族領ですよ?そんな近くに街なんてある訳が御座いません」


「あー……」


 別に、あの首都だけが魔族領な訳が無いのだ。国があるのだから、所々に村とかが有ってもおかしくないし。


「と言うわけで、最低でも人が見られるのは4日後位ですね。……このままのペースなら、ですけど」


 ビアンカが意味深にそう言ってくる。何が言いたいのかは、大体解る。だから、その要望に応じて聞く。


「……なあ、ビアンカ。俺たちが本気を出したら、街までどの位かかる?」


「そうですね。多分……2日位で着きますね」


「おおう……」


 空を飛べばその位になるのか。やっぱり早いな。


「ですが、流石に王国領とかで飛んでたらもし見られた場合大問題なので魔族領を抜けるまで1日飛んで、その後3日程歩く、というのが一番良いと思います。森にも冒険者がいたりするので飛んでるのを見られないとは限りませんし」


「まあ、そりゃそうか。なら、それで行くか」


「……結局、飛ぶの?」


 俺が結論を出した後、フィールが聞く。しかし、既に翼を出しているので確信は得ているのだろう。


「ああ、飛ぶ。……じゃあ、行くか」


 俺は光の翼を出しながら言う。最近最近コントロールが上手くなって鳥みたいな形には変えられるようになった。見た目は重要なのだ。


 ビアンカも、飛行板を取り出して飛ぶ気満々だ。ちなみに、原理としては足を乗せる部分がスライド出来るようになっていて、それをスライドさせる事で導線的な物を繋げ、装着されている多数の暴風の魔石に魔力を流して浮かせると言う仕組みらしい。


 まあ、そんな感じで俺たちは魔族領を抜けるまで、鳥でも驚くような高速飛行をする事になった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 勿論、夜も抜けるまで飛ぶ事になっている。と言っても、俺とフィールは慣れてるから普通に見えるし、ビアンカも暗視ゴーグルとか取り出して付けているため全く問題は無い。体感夜の1時位なのでだいぶ眠いけど。


 魔物は昼より強いのが活動している。しているのだが、襲ってこようとする奴は一匹もいない。多分、本能が警鐘を鳴らしているのだろう。まあ、生半可な奴じゃ目で追うのも辛いと思うけどな。飛んでるし。


「カイト様。あと2、3分で魔族領を抜けます。ですが……」


 ビアンカが報告してくる。だが、何かが詰まったような感じだ。


「……人の気配?」


「はい。このまま進むと、1分後位に魔物に襲われている冒険者だと思われる四人組に遭遇します。助けますか?」

 

 確かに、気配を探ると四人くらいの人とそれを襲っている魔物の気配が感じられる。多分レベル50位の強さだ。


 今すぐ突っ込んでもいいけど、流石に飛んでるのを見られるのはマズイ。幸い、暗くて辺りは見づらいから襲われてる人が走ってる方向に先回りして、迷った人を装って救出にでも行くか。


 勿論、メリットはある。多分、街に入る時に身分証の提示とかはさせられると思うけど、俺たちは誰一人持っていない。だけど、助けた人と一緒に行けば少しは楽に入れるだろう。


「フィール、ビアンカ。四人が走ってる方向に先回りして、降りてから魔物を倒すぞ。そっちの方が後々都合がいい」


「……解った」


「了解です」


 そう言って、三人で方向を変更して先回りをする。着地した後で、灯りを何も持ってないのは不自然だと思い、適当なものに火を点けてもらう。


 それから少し経つと、四人の男女が草木を掻き分けて飛び出してくる。


「はぁ、はぁ、冒険者か!?早く逃げろ!殺されるぞ!」


 その中のリーダーと思われる男は俺たちに走りながら忠告してくる。男はそれでも動こうとしない俺の腕を無理やりにでも掴んで走り出そうとしたのだが、俺はそれを振りほどく。


「馬鹿!死にたいのか!?」


 バキバキバキィ!


 男が叫んだ瞬間、正面の木が横に薙ぎ倒される。出てきたのはデカイ熊だ。だが、それだけだ。


「ガァアアア!!」


 熊が咆哮を挙げるが全く怖くない。感じる力がそこまで強くないからだ。


 俺はそれを見た後、アイテムボックスから剣 (邪カリバーじゃなくて、蜘蛛の素材から作って貰ったシュバルツの方)を取り出して、呟く。


「じゃ、さっさと終わらせますか」

海斗達の飛ぶスピードはかなり早いです。その上障害物を無視できる……もう馬車とか要らないんじゃ無いかな。

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