幼馴染みside4 いざ、夢幻列島へ
ここでまさかのこっちのストーリー。時系列が合ったというのと、戦闘回を纏めて済ましてしまいたくなったのでこうさせて貰いました。
幻想の迷宮。
龍人の里の近辺にある、レベル60相当、全30層から成るそこそこ大型のダンジョンである。
既に攻略はされている為、出てくる魔物の種類や宝箱から手に入るアイテム、ボスの強さなども大方解っている。
王都からは割と遠いのだが、手に入るアイテムの質が良いので多くの冒険者達が訪れている……のだが、最終フロアまで行く者は殆どいない。
ボスを倒せばその奥の部屋に再生成された宝箱もあるのだが、その量が他のダンジョンに比べて少ないのだ。
その部屋には他にはないあるものが配置されているだが、それがあまりにも危険だと言うこともそれに拍車をかけている。
……夢幻列島への一方通行の魔法陣なんて、危険極まりないものだからだ。
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そんなトンデモダンジョンを進む四人の人がいる。
「……ねえ、晶くん。ここで何層目?」
「今ここが29層目だから、次で最後だよ。だけど、ボスがいるはずだから気を引き締めないと」
勿論、夢幻列島へ海斗を助けに行くことを望んでいる幼馴染み組だ。龍人の里から出る時、ランドに教えて貰ってから一週間、遂にここまで来たのだ。
無論、美雪たちのレベルは心許ない。だが、その高い力と強い想い、そしてそれぞれの力を無駄なく使った連携。それによって、此処に来るまで至っている。
基本的に強力な虫系や獣系の魔物が出るこのダンジョンだが、洞窟のようになっているので挟み打ちに警戒すれば然程恐ろしいものでも無い。
曲がり角や交差している通路では、晶がサーチを使って事前に確認、敵が居れば忍のスキルにより隠れ、挟まれそうな時は戦闘、百華と晶をメインとして戦い、攻撃を喰らったら美雪が回復。あと、宝箱は鍵が掛かっているため、忍が解錠して物資の調達。
必要以上の戦闘は決してせず、兎に角体力を温存する方向で探索中だ。ボスも数種類の中からランダムで出現する事は解っているが、それでも充分過ぎるほど強いからだ。
「……ようやく、ここまで来たんだね」
「ああ、そうだな。もしこれで海斗の野郎無事じゃ無かったらブン殴ってやる」
「忍くん。無事じゃ無かったら殴れないんじゃ……」
「まあ、きっと無事さ。海斗は、僕とは違って機転が利くからさ」
四人は、そんなことを言いながら、王女から渡された一枚の地図をみる。城に有った位置を指し示す地図の複製版だ。四人が龍人の里に行っている間に、技術を総動員してなんとか作りあげたらしい。
まあ、四人は海斗が夢幻列島から脱出している事は知らないが。まさか敢えて外して観光兼帰郷手段捜索なんてしてるとは夢にも思わないだろう。
「……っ、右の通路から兎?とにかく魔物が接近中。忍、スキルよろしく」
「ああ、任せろ。全員俺に触っとけよ」
そう言いながら、四人は壁に近づき一つに纏まる。忍の隠密スキルは自身だけでなく触れている者も対象に入る。今までの階層は殆どこれでやり過ごしていたのだ。
ピョンピョン飛び跳ねながら進む可愛らしい兎ーースマッシュラビットは四人に気付かず、そのまま跳ね続けている。そして、反対側の未探索の通路へと消えていく。
「……もう良さそうだな。解くぞ」
忍はそう言いながらスキルを解除する。そうすると、三人は一斉に息を吐く。
「……あの魔物、初めてみる奴だよね?」
美雪がポツリと呟く。すると、みんなは色々な反応を取る。
「確かに。私もそう思う」
「……確か、城の本で見たスマッシュラビットっていう魔獣だったかな?なんでも体力が低い代わりに攻撃的だとか」
「……恐ろしいな、兎なのに」
そう、さっきの兎は夢幻列島にも生息しているスマッシュラビットという魔獣だ。ただし、あそこのとは違い、レベルは50前後だが。同じ魔物でも、レベルの違いはあるのだ。
「……もう、近くに魔物はいなさそうだよ。いつも通り、右に曲がるけどいいよね?」
晶がみんなに問い掛ける。ちなみに、四人は常にマッピングを行いながら探索している。浅い所の地図は有ったのだが、ここまで来る人は少ないので地図が無かったのだ。
「うん、いいよ」
「オーケーだ」
「わかったよ」
そうして、全員は右に曲がる。そしてその時、
カチッ
という音が響く。
「あ」「え?」「うん?」「へ?」
その後、四人の足元がパカリと割れる。ダンジョン名物、落とし穴である。
今まで四人は罠に掛かってなかった為に失念していたのだが、ダンジョンには罠というものも生成される。よく見れば分かることが多いのだが、スマッシュラビットに反応してなかったせいで初めての罠を見落としたのだ。
今回作動したのは、対象を一層以上下の階層に叩き落とす落とし穴である。そして、このダンジョンは30層、現在29層である。
要するに、ボス部屋真っ逆さまだ!
「きゃああ!?」
「不味い!晶!百華!なんとか先に着地して俺たちを受け止めてくれ!」
「無茶言うね!でもそうするしかないか!」
「わかったよ!」
貧弱な美雪と忍を受け止める為に、晶と百華は体を真っ直ぐにして少しでも早く下に着地しようとする。
大体落下した距離は20m前後、殆ど落下の差は無い。
しかし、それでも晶と百華は全力で移動して、美雪と忍をキャッチした。そして、そっと下に降ろす。
「痛たた……って、ここって!」
美雪が、辺りを見回す。そこは今までに無かったような広い空間である。何故か草も結構生えており、奇妙な空間である。
「ボス部屋みたいだな。……だが、肝心のボスは何処だ?」
忍も辺りを見回す。部屋の左右に扉が見えるのだが、ボスらしきものが見当たらない。
カツン……カツン……。
だが、丁度四人の後ろ側から、何かの足音が響いてくる。蹄のような、硬いものが鳴らす音だ。
そして、四人は一斉に戦闘態勢を取り後ろを振り向く。
そこにいたのは、一匹の獣だ。
白い毛皮、スマートな身体、立派な角。そして、大きな蹄。
そう、夢幻列島で海斗が初めて会った魔物……クラウディアだ。
ちなみに、クラウディアはポリポリと、そこら辺の草を食っている。ボスなのだが、草食故襲われたりでもしない限り襲ったりはしないのだ。
そして、鎌を構えたまま忍が小声で晶に聞く。
「……おい、晶。あの魔物はなんて魔物だ?」
しかし、晶は無念そうに口を開く。
「……分からない。ここのボスで出てくる魔物に、こんな鹿はいなかった。僕が他に見た本でも、書いてなかった」
それもそのはず。この鹿が現れるのはこのダンジョンのボス (激レア)または夢幻列島のみだからだ。一応、過去にもボスとして現れた事があったのだが……草食の癖に無駄に強いこの鹿にその時の冒険者が勝てたかどうかは言うまでも無いだろう。
なお、今回の此奴はレベル70前後、個体としては弱い方である。このダンジョンで出てくる中では最強格だが。
勿論、そんな事は四人は解らない。しかし、ここまで来て負ける訳にはいかない。その強い気持ちが、四人の集中力を高める。
「……じゃあ、まずは僕がデカイ魔法を放つ。そのあと、美雪が目くらまし、百華がメインで攻撃しながら僕と忍で援護。美雪はそこから回復をよろしく」
「おう」
「解った」
「オーケーだよ」
四人が、それぞれ構えを取る。
「我が身に宿る魔の力よ 敵を貫く槍と成りて 眼前の敵を討ち滅ぼせ 『エネルギージャベリン』」
そして、灰色の光を放つ槍が出現し、クラウディアに向かい飛んで行く。こっちを警戒すらしていなかったクラウディアはそれに直撃し、少しの傷を負う。
「ォオオオオオン!」
クラウディアはその場で跳躍し、四人の方へと振り返る。そして、それに合わせて美雪が魔法を放つ。
「光よ!辺りを照らせ!『ライト』!」
「オオオン!?」
目くらましを喰らって、少し仰け反るクラウディア。そして、その隙に懐に飛び込み、斬りかかる百華。
「目覚めよ!聖剣エクスカリバー!眼前の敵を斬り裂け!」
百華がそう言うと、百華の持つ剣が輝き始める。そう、四人の持っている武器はなんだかんだで全てアルボル王から持たされたアーティファクトだ。特に百華の剣は聖剣エクスカリバー、過去の勇者が魔王を倒した際に使った聖剣である。
「はぁぁああ!」
百華の剣は、クラウディアの腹辺りに入っていく。首は決まれば即死だが、外せば反撃を食らう可能性が高いため、確実にダメージを蓄積させられる腹を攻めるのだ。
ザクッ!
という音とともに、クラウディアの腹が割かれ血が吹き出す。結構な量だ。
「ォオオオオオン!」
大きく仰け反るクラウディア。その隙に、後ろから忍が忍びよった。が。
「なっ……ガハァ!」
「忍くん!?」
クラウディアは後ろから斬りかかろうとした忍を、強烈な後ろ蹴りで撃退する。持ち前の速さで咄嗟に鎌を構えたが、それでも衝撃は凄まじい。具体的には、腕の骨にヒビが入る程度には。
「癒しの光よ!傷付きし者を癒せ!『ヒール』!」
美雪が忍に回復魔法をかける。光に包まれた忍からは、痛みが少しずつ引いていく。そして、元気一杯まではいかなかったが、充分戦える位には回復する。
「ありがとな!」
だが、クラウディアは結構賢い魔獣だ。つまり、回復役とかを率先して狩りに行くような。
クラウディアは、真っ直ぐに美雪を視認する。そして、2回ほど地面を確かめるように蹴る。
「っ、危ない!」
嫌な予感を感じた晶は、美雪に全力で迫り突き飛ばす。
「えっ!?何!?え!?」
「っ……ガハッ!」
その瞬間、クラウディアが美雪のいた所、つまり今晶のいる目の前に瞬間移動し、角を思いっきり振り上げる。
弧を描きながら吹っ飛び、血を吐く晶。それを見て、美雪は助けられた事を理解する。
今クラウディアが使ったのは勿論縮地だ。海斗やらフィールやらがポンポン使ってはいるが、本来持ってるものなど殆どおらず、あまり知られていないスキルなのだ。
晶は突進してくるかと思って美雪を突き飛ばしたのだが……その判断は正しかったと言えよう。実際、美雪が食らったら即死出来る可能性のある威力だ。
そして、クラウディアは体を捻りながら横へ跳躍する。少しでも隙を見せないように態勢を立て直すためだ。
だが、そこには先を読み、隠密全開で隠れ潜んでいた忍が待機していた。
プスッ
という、虚しい音が聞こえる。忍が全力で下から振り上げた鎌は、ほんの切っ先しか刺さらなかったのだ。
「ヤベッ!」
全然ダメージが入らなかったことに動揺する忍。だが、その予想だにしていなかった存在に、クラウディアは動揺している。
「はあ!!」
ザシュゥ!
そして、その瞬間。百華の放った斬撃によりクラウディアの首が飛んだ。たとえレベルに差が有ろうとも、終わるときは一瞬だ。
ゴトッという音を立て、クラウディアの首が転がる。血がタラタラと流れ出し、地面を赤く染めていく。
「はあ、終わっ……た……?」
「はぁ、はぁ、マジ焦った。ありがとな、百華」
「ああ!?晶くん!?癒しの光よ!傷付きし者を癒せ!『ヒール』!」
「あ、ああ、ありがとう。もうダメかと思ったよ」
二人は力なく座り込む。美雪は急いで回復魔法をかける。晶は弱々しい声で美雪に言う。
クラウディアを倒し、その少し後。ギギギギッと言う音が鳴る。四人がその音源を見ると、二つあった内、片方の扉が開いていく。
それを見て、四人は顔を合わせ頷き、気力を奮って立ち上がり、その扉の奥へと進んでいく。
そして、その部屋にある物を見る。左右に宝箱が二つずつの系4つ。それと、部屋の中に描かれた微かに光る魔法陣、最後にその近くにある石板だ。
「……遂に、着いたんだね」
「そうだね。ようやく、海斗に会えるね」
「だけど、まだ飛び込まないでね。みんな戦った後なんだから、少し休んでから行こう。じゃないと、ミイラ取りがミイラになりかねないから」
「その意見は賛成だ。俺は宝箱から使えそうなもんがないか漁る。みんなは、ポーションとか使って治療とか、魔力の回復とかしててくれ」
魔法陣を見ても、衝動的に飛び込むなんて事はしない。慎重さは大切なのだ。
取り敢えず、美雪と晶はポーションなどを使って魔力の回復や治療、忍は宝箱の物色、百華は石板を見てる事になった。
「えっと?『我 かの島に征く手段を創りし者 かの島は魔境 空に佇む魔境 行くことすら叶わず 見ることすら叶わず だが 我それを覆し 行くことのみを可能とす だが 其の魔法陣 行くことしか叶わず 魔法陣を使いし者よ 決して死に行くことなかれ』……何、これ」
百華が、石板の内容を音読する。それに、晶が反応して答える。
「……このダンジョンを作った人が書いてるみたいだね。夢幻列島に行けるけど、一方通行。使うなら、帰る準備はしておけ。そんな感じかな?」
なお、四人は帰る手段なんて一つも用意して居ない。というか出来なかった。転移石は城にあるのだが、座標指定されている場合は有効距離が指定無しよりも短く、王都までは届かないのだ。というか、夢幻列島から届く範囲は大陸内ではウーバ魔族国の領内のごく一部しか無い。……今海斗達が滞在している町くらいしか。
まあ、とにかく行き当たりばったりである。取り敢えず、行ってから考えようという慎重も何もあったものではない。早く行かないと海斗が危ないと考えているから仕方ないのではあるのだが……。
「……宝箱からはあんまいいのは出なかったな。短剣とか、ポーションとか。一応スキルクリスタルもあったけど、剣術だったし」
スキルクリスタルは、高難度ダンジョンから稀に手に入るアイテムではある。だが、貴重なのは自力で習得が出来ないもの、例えば属性魔法とかのクリスタルであり、コツコツ剣を振れば習得出来る武器スキルなどはハズレの部類に入る。
ちなみに、今回の戦利品はミスリルダガー、ハイポーション (体力を結構回復)、エーテルポーション (魔力をかなり回復)、そして剣術のスキルクリスタルだ。
「まあ、帰るのに使えそうなもんは無かったけど……晶、美雪。もう大丈夫か?」
「うん、大丈夫だ」
「問題無いよ。……じゃあ、行こうか!」
二人は、勢いよく立ち上がる。
「あー、取り敢えず適当に全員乗って魔力でも流せばいいのか?」
「そうじゃないかな?私が流すよ」
そして、全員で魔法陣の上に乗り、忍の声に応じて美雪が魔力を流していく。
それに応じて、魔法陣が光に包まれていく。ケイオスピアに召喚されたときと同じような光だ。
そして、転移が始まる直前に、美雪は呟いた。
「待っててね、海斗くん。今から行くからね」
海斗がもう降りてるとも知らずに。
その直後、部屋から四人の姿が消えた。
今更ですが、本当に今更ですが言っておかなければいけない事があります。
感想、誤字脱字報告あったら、是非お願いします!
……他の皆さんの小説は一話くらいに書いてあるのに、書いてなかったのが少し気まずかったんです。




