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17話 フィールVSカルディア

 少し短めです。

「『ブースト』『水渦』『雷球』」


 戦闘が開始した直後、フィールは間髪入れずに呟く。覚醒スキルの『メガ・ブースト』、水魔法の『シュトローム』、雷魔法の『ライトニングボール』の計3つだ。大量に出現した水はフィールを取り囲むように渦巻き、さらにライトニングボールが落ちる事によって帯電する。


「ふむ。妾が流水を渡れないという事を知っての事か」


 カルディアがそれを見て言った。こっちの世界でも、吸血鬼は流水を渡れないようだ。しかし残念な事に、その目には面倒くさい以上の雰囲気は無い。


「じゃが、渡れないのなら渡らずに倒せば良いだけの話じゃよ。……ふんっ!」


 そう言いながら、カルディアは片手で長剣を振る。その直後、飛び出した斬撃が渦を裂きながらフィールへと向かっていく。


 ヒョイ


 だけど、単発の攻撃程度じゃフィールには届かない。そんな事はカルディアも予測はついていたのだろう。


 フィールが回避した先に、間髪入れずに斬撃が飛来する。ズザザザザァアン!という音を立てながら突き進む斬撃が、絶え間なくフィールを襲う。


「っ……『風鎌』」


 フィールが風魔法の『ウィンドサイズ』をカルディアに向けて8つ同時に飛ばす。それぞれが微妙にズレて配置されており、一つを避けたら別のに当たるような配置になっている。


 だが、


「この位の魔法、叩き落とせば良いだけの話じゃ」


 そんな事を言いながら、長剣を構えタメを作り、斜め下に一気に振り抜く。


 ヴォォォオオオオオオン!!!


 と言う音と共に、カルディアから放たれた風はフィールの魔法を打ち消していく。それどころか、そのままフィールに向かって突撃していく。


「『風鎌』」


 フィールが今回放ったのは一つだが、代わりに勢いと大きさが大きくなっている。飛んできている風の刃を相殺しようとしているのだろう。


 その目論見通り、風と風が激突し、お互いの勢いが消える。しかし、フィールもカルディアもそれをのんびり見つめる程甘くは無い。


「『メテオキャノン』」「はっ!」


 フィールの手からは紅く燃え盛る無数の弾丸が、カルディアからは地を引き裂きながら進む斬撃が放たれる。


 ボボボボボォン!!


 と言う音と共に、火炎球が斬撃に裂かれ、消えていく。斬撃に巻き込まれなかった火炎球も、カルディアは普通に必要最低限の動きで躱していく。


「……体も温まって来たからの。そろそろペースを上げるぞ」


 カルディアがそう言いながら、紅い光を身に纏う。先程までのは、唯の遊びだ。全力の半分以下の力しか使って無かったからな。


「……ふっ!」


 カルディアの姿がブレる。そのアホみたいに高い身体能力を活かして全力で地を蹴っただけなのに、今の俺には目で追うのが若干辛い。身体強化つかえば別だけど。


 さらに、一切勢いを落とさず、水の渦をその長剣で引き裂き、道を作りフィールの元に迫る。モーセが海を割ったという伝承はあるが、そんなもんなのだろうか。しかしフィールは全く動じてはいない。


「……『ソル・エスパーダ』」


 フィールが太陽の剣を構える。剣術はカルディアには到底及ばないが、その近づくだけで身を焦がす剣は充分なアドバンテージになる。と言うより、魔法だから剣術があろうとも無かろうとも、何となく使い方は解るらしい。ちなみに、現在スキルレベルが3上昇、つまり最高値のレベル11まで上がっているためこのレベルの位ならなんとか魔法名だけで発動可能のようだ。


「っ……厄介なものを出したのぉ。じゃが、妾は止まらんぞ!」


 カルディアが地を蹴り、右手の剣を振りかぶり、そのまま振り抜こうとした。だが、フィールは構えたまま、その姿を消す。 


 ジュッ!


 という、短い音が響く。その音に、カルディアも動揺した顔をし、直ぐに納得したような顔を見せる。


「……それが、縮地というものかの。厄介じゃが……制限もありそうじゃな」


 確かに、縮地には再使用までのクールタイムがある。だが、カルディアはそれを知らない。だからこそ、その事実を悟られにくくする意味を含めて瞬迅の腕輪を渡したのだ。


「……それなら、試してみれば?」


 フィールがカルディアを挑発する。だが、一番の目的は時間稼ぎだろう。少し会話すればクールタイムは終わるからな。


「ほぉ。では、試させて貰うぞ!」


 カルディアはそう言うと、再び地を蹴る。しかし、今回は先程とは蹴る力が違い、地面にヒビが入る程の力強さだ。


「……ここ」


 だが、敏捷で劣っていようとも、フィールにはあの島で培ってきた戦闘の感がある。跳躍してくるカルディアをちょうど焼き切るように、そして退避するように縮地で移動する。


「むう。なかなかすばしっこいの。じゃが、その程度では逃げきれんぞ!行け!」


 カルディアが離れたフィールを見据えながら叫ぶ。その瞬間、カルディアの翼が大体50匹?位のコウモリとなってフィールに襲いかかる。が、


「『ダイアモンドダスト』」


 これに関してはカルディアのミスだ。一瞬でコウモリの大群は凍りついて地面に落ちた。魔法の得意なフィールにとって、1対多は得意な方の部類に入る。一体一体の生命力が低い場合は特にだ。


 だが、そのミスもカルディアは無駄にはしようとしない。その魔法を放った瞬間、フィールに向かって走り、冷気を引き裂き斬りかかる。


 ガァン!ガガガガガガァン!ガガァン!


 たった一瞬で9発もの攻撃をフィールの結界に叩き込む。しかも、その一発の威力も尋常では無い。


 試合が開始してまだ間も無いというのに、フィールの結界が大幅に損傷する。まだヒビは入っていないが、いつヒビが入ってもおかしくない位にはやられた。


「っ……」


 フィールが縮地でカルディアから全力で離れると、咄嗟に透明マントを使って姿を消す。カルディアなら割と簡単に見破るだろうが、そこそこの時間稼ぎにはなるだろう。


「む?どこへ消えた?」


 フィールが消え、背後に咄嗟に振り向いたが姿が無かったことで少し動揺し、キョロキョロと辺りを見回すカルディア。俺は隠れた場面を見たから場所が解るが、目を離したら多分解らなくなる。それに、どうせフィールの事だから風や音などもうまくやって全力で隠蔽をしてるだろう。


 それに、魔力も全く感じない。魔力を遮断する魔法は解らないが、まあどうとでもなりそうな気はしている。

 

 しかし、カルディアもそのまま闇雲に探すなんて真似はしない。


「見えないなら、仕方ないの。……やりすぎても、文句を言うでないぞ」


 そう言うと、カルディアは剣をひたすら振り回し、周囲全方向に斬撃を放っていく。スザザザァン!とかドゴォン!とか言う音が響きながら、会場を無残な姿にしていく。


 そして、その斬撃が飛び交う中、フィールが姿を現す。……カルディアの、丁度真上に。


 頭上にも斬撃は飛んでいたが、周りに比べると飛んでくる回数が少なかったのだ。だからフィールはそこを選んだのだろう。


 右手には濃い蒼色の球が、左手には蒼白い球が浮遊している。どちらも、何かヤバいものなのだろう。おまけに、音も感じず魔力も感じず……少なくとも、4つの魔法の同時行使をしているのか。


 そして、フィールがその両手に構えた魔法を解放する。その直前に、カルディアもフィールの存在に気付く。


「っ!?上……」


 だが、もう手遅れだ。


「『メイル・グラナーダ』……『ニヴルヘイム』」


 既にスタンバイオーケーなので、構えるのに時間がかかるレベル10魔法の『ニヴルヘイム』も、魔法名だけで発動できる。


 まず、濃い蒼色をした球が地に着弾する。その瞬間、そこに大量の激流が現れ、カルディアを飲み込む。


 そのすぐ後、蒼白い球が霧となり、その激流に向かって、その全てを凍り付かせた。闘技場全体が、氷の塊としか表現できない空間になったのをみると改めてフィールの力の異常さを感じる。


 ……いや、違うな。異常なのは、フィールじゃない。ここで異常なのは……。


 バリィィィイイイン!!!


 と言う音を立て、氷を砕きながら、赤黒く染まった光を放っているカルディアが出てくる。少し動くだけで、その紅い目が残光を帯びている。


「ククク……ハハハハハ!面白い!この緊張感!恐怖!そして予想も付かない展開!実に面白い!これだから戦いは止められないのじゃ!」


 ……この、狂ったように笑い声を上げている、カルディアだろう。


「クハハハハハ!止めれるものなら止めてみるがよい!」


 そう言った瞬間、カルディアの手がブレる。俺でも、身体強化無しじゃ見切るのは難しい。それ程の速度だ。


 パリィン!


 と、音がなり、そこを見るとフィールの結界が粉々に砕け散っていた。


 あの手がブレた時、目にも止まらぬ速さの斬撃が飛んでいたのだ。


 その結界が割れた事を確認し、実況が声を張る。


「決まりましたぁ!第二回戦!魔王軍代表の!カルゥゥゥゥゥゥディ……」


 だが、そこまで言おうとした時。カルディアが、結界を失ったフィールに向けて跳躍するのが見えた。


「マズイ!あいつ暴走してやがる!」


 いつの間にか、俺の隣にいたジョーカーがそう言う。かなり焦っている様子だ。


「その暴走云々は後で聞かせて貰うからな!……はっ!」


 俺はジョーカーにそれだけ伝えると、身体強化全掛けで縮地を使い闘技場の結界まで移動、それを力任せで切り裂いて今度は腕輪の効果で縮地を行ってカルディアの剣を止めに入る。


「なんのつもりだ?カルディア。試合は終わった筈だぞ?」


 俺はカルディアを睨みつけ、若干威圧しながら問い掛ける。


「邪魔をするでない!こんなに血の騒ぐ戦いは久しぶりなのじゃ!邪魔すると言うのなら……覚悟するがよい!」


 カルディアが怒りと狂気に満ちた顔でそう言ってくる。……多分、いや、間違いない。こいつ、戦いになると我を忘れるとか、そういうタイプの戦闘狂だ。もしかして、本気で戦う時って何時もこんな感じなのか?


 だが、ここで引いたらフィールが危ない。だから、俺は邪悪な笑みを浮かべながらカルディアに言った。


「ああ、やってやるよ。……だけど、戦い後に五体満足で居られるとは思うなよ?」


 と。

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