15話 ビアンカVSフィオーリ
戦闘回やっぱ死ねる。
戦闘回とか、戦闘回とかならまだマシなんですけどね……。
開始の合図と同時に、ビアンカから火炎が、フィオーリから暴風が飛び出し、闘技場内を埋め尽くす。お互い、一切牽制とかはしていない。ただただ短期決戦を決める戦い方だ。
「……なんで、押し切れないの?」
フィオーリが暴風を吹き荒らしながら、ぽつりと呟く。恐らく、炎を完全に押し返すつもりでやったのだろう。
しかし、ビアンカの放つ炎は、暴風に押し返されることなく、フィオーリにジリジリと迫っていく。ゴオオオォォ!という音が、ただひたすらに続いている。
「っ、『ウィンドサイズ』!行っけぇー!」
そして、炎が届く直前、フィオーリは大きく跳躍し、空中に退避する。その直後、フィオーリから大振りの風の刃が4つ程放たれる。
押し返すことが目的ではなく、切り裂くことが目的の刃。炎で押し返せるものでは無い。
しかし、それを瞬時に察したビアンカはそれを最低限の動きで躱し、アイテムボックスから何か掌サイズのボールのような物を計4つ取り出し、空に放り投げる。
その直後、そのボールはカシュン!と言う音を立てながら花のように開き、中から砲身が姿を見せる。更に、下から風を出しながら、空に停滞する。
「ターゲットロックオン!発射!」
ビアンカがそう言った直後、空中にいるフィオーリに向けて実弾が発射される。パンパンパンパン!という乾いた音が響く。
「おっと!当たらないよ!」
しかし、フィオーリは上空に向けて暴風を発射、そのままの勢いで地上に降りる。
パンパンパンパン!
だが、フィオーリが地上に降りてからもボールはフィオーリを追尾して弾を撃ち続ける。
「あー、もう!鬱陶しいよ!『ウィンドドリル』!」
フィオーリが、4つの風の螺旋をボールに向けて放った。その螺旋は猛烈な速度でボールの中央に向けて飛来し
ヒョイ ×4
「え!?」
見事に回避された。ボールは風の影響でバランスを崩さない程度の位置まで移動しながら、フィオーリに向けて正確に弾丸を放つ。
「だけど、そんな攻撃じゃ当たらな……!?」
ガァン!
当たらないよ。そう言おうとした瞬間、フィオーリの斜め後ろから重い音が響く。
「やっぱり一撃じゃ壊し切れませんか。ですが、これならどうですか!」
フィオーリの後ろには、紅い光を放ちながらライフダガーを結界に打ち付けているビアンカの姿があった。そして、そのままビアンカはインフェルノバーナーを構え、発射する。
「っ、『ウィンドボール』!」
咄嗟に地上に魔法を放ちながら、無理やり空中に跳躍する。それで、インフェルノバーナーは躱しきれた。しかし、
カァンカァンカァンカァン!
と、乾いた音が結界から響く。
「ああ!?また!?」
さっき破壊し損ねたボールが、フィオーリの結界に弾丸を撃ち込んだのだ。流石に、咄嗟に避けた後に別方向から飛んできた攻撃には対処出来なかったのだ。
「邪魔!『ウィンドストーム』!」
先程のピンポイントショットでボールを破壊出来なかったフィオーリは、前方90度程に風の矢をばら撒くウィンドストームを、系6つ分重ねて放つ。
カカカカバキィン!ボォン!ババババァン!メシィ!ババババァン!グシャア!
初めに弾かれる音が少し聞こえたが、すぐに4つのボールは木っ端微塵に砕け散る。
そして、重力に従い落下し、着陸する。その後、すかさずビアンカの方に振り向く。
ビアンカは、フィオーリに砲身を向けてはいなかった。ただ、さっきまで紅かった目と髪は金色へと変わっているが。
その腕の兵器もすでにスパークマインへと変わっており、ガラス管もビアンカ自身もスパークを放っている。
そして、ビアンカはその電気を放出する。事前に、フィオーリを囲むようにしてばら撒かれた鉄球へと。
「終わりです!」
バリバリバリバリッ!
という音と共に、雷が地面を駆け巡る。
「えっ……?」
突然の攻撃に、対処しきれないフィオーリ。しかし、その間にも結界はどんどん損傷していく。
「っ、『テンペスト』!」
フィオーリが、駄目押しで自らを囲むように暴風を引き起こす。それに伴い、鉄球が弾き飛ばされビアンカの攻撃が止まる。
そして、その暴風が止み、フィオーリが自分を鼓舞するかのように叫ぶ。
「まだまだ!吹き荒れろ!『アネモストロヴィロス』!」
その声と共に、フィオーリの周囲に3つの巨大な竜巻が姿を現す。
「行け!」
その竜巻は、その指示に従いビアンカの方へと向かってくる。闘技場を埋め尽くす3つの竜巻は、逃げ場なくジリジリとビアンカを壁際まで追い詰めて行く。
「……」
しかし、ビアンカは動かない。身体強化の光を改めて纏わせ、膝に力を入れている。それに伴い、地面にヒビが入っていく。
そして、ビアンカが全力を持って竜巻に向かって跳躍する。鎌風と化している竜巻に突っ込んだことで一瞬にも関わらず結界は割と損傷したようだが、ビアンカは止まらない。
その竜巻を越え、フィオーリが見えた瞬間にビアンカは俺が作った魔道具、瞬迅の腕輪の効果を使い、フィオーリに向けて縮地を発動させる。
「……」
フィオーリは動かない。しかし、あの目の動きは反応はしている。
だが、ビアンカがそれに気付いている様子は無い。そして、そのままライフダガーを結界に振り下ろす。
ガァン!
と言う重たい音がまたも響く。だが、まだ結界を砕くには至らない。
ビアンカそれを確認すると、ヒットアンドアウェイに則り後ろに跳躍しようとする。しかし、ここでビアンカは嵌められた事に気づく。
ドドドドドドドドオォン!!!
「っ!?これは!?」
ビアンカの足元から、巨大な荊のような物が大量に姿を現す。そして、結界を取り囲むように巻き付くと、ギリギリと結界を締め付ける。
「……掛かったね。リスクは大きかったけど、試してよかったよ」
フィオーリが、ビアンカに向けて言い放つ。
「竜巻で追い詰めれば、飛び出して突っ込んでくると思った。だから、事前に用意をしておいたんだよ。うまく行くかは解らなかったけど……逆転するには、こうするしかなかったから」
それを聞いているビアンカは、静かにスパークマインを仕舞う。それと共に、髪や瞳もいつものそれに戻る。
「降参するの?いいよ、私は」
フィオーリは笑いながら言葉を続ける。だが、ビアンカは諦めたように呟く。
「……はあ、あまりこれは使いたく無かったんですけどね。どうなるか解ったものではありませんし」
そう言うと、ビアンカの髪と瞳の色が今度は紫色に変わって行く。今までで一度も見たこと無い、四つ目の切り札だろう。
腕が音を立てながら、高速で変形していく。紫色のタンクのような、それでいて三ヶ所程に穴が開いているよく分からないものが姿を現す。
「デッドリーウェポン、対植物用モード起動。タンク、及び機械部に異常無し。よってタンク内に充填を開始………………充填完了。タンク内圧力問題無し、これより散布を開始します」
ビアンカが、淡々と機械的な声で言う。そして、その瞬間タンクが回り始め、その穴から赤黒い煙が放出される。
「……え!?そんな、なんで……?」
ビアンカの出す赤黒い煙を触れた荊は、少し時間を置いた後総じて萎れ、力無く崩れ落ちる。
ビアンカの撒いているガスは、どちらかと言うと枯れ葉剤に近いのだろうか?ただ、吸ったら人でも魔族でも多少は影響はあるだろうけど。
ビアンカの毒ガスの放出は続いている。比重が重いようで、地を這うように広がりながら、生えてきている荊を徹底的に萎れさせていく。
「『ウィンドカーテン』!」
毒ガスに追い詰められていたフィオーリは、その毒ガスを追い返す為に魔法を放っている。しかし、返しても返しても迫ってくるガスに苦労している。
だが、フィオーリは気付いていない。ガスは、結界によって遮られている事に。そして、そのガスは結界を損傷させてはいない事に。
つまりは、今、フィオーリがガスを防ぐ事に意味は無いのだ。よって無駄に魔力を消費させている事になる。
「対象物の無力化を確認。これ以上の散布は周囲に被害をもたらす可能性大。よって散布を中止する。これより、攻撃の為インフェルノバーナーに移行」
しかし、ビアンカはそのまま放出を続ける事はしなかった。機械的な声で言い終わった後、髪と瞳の色が紅に変化していく。
「はぁ、アレは少しでも油断すると大惨事ですからね……使うだけでも疲れますよ」
もう、機械的な声では無い。言っている事を聞く限り、さっきのアレは危険すぎるから注意を最大限にする為に敢えてああいう風に言っていたのだろう。と言っても、人間と構造が違うホムンクルスにはあのガスは効果が無いのだろう。普通に吸ってるし。
「はぁ……はぁ……」
魔力を無駄に使い、大分疲労しているフィオーリ。しかし、その目はまだ諦めてはいない。
「……もう、限界。だから、最後に全力で行かせて貰うよ。〜〜〜〜」
フィオーリがそう言うと、何やら詠唱のような物を始める。だが、その声は観客席までは届いていない。
「……」
ビアンカは動かない。だが、その手のバーナーの砲身は紅い輝きを増している。あの時、あの夜の時と同じ輝きだ。
お互い、一歩として動かない。しかし、これが動く時、試合が終わる。それは、全ての観客が解っているだろう。
そして、互いに終わりをもたらすトリガーを引く。
「……顕現せよ!『シルフィード』!」
「アーティフィシャル・プロミネンス!」
フィオーリからは大地をも引き裂きながら突き進む暴風が、ビアンカからは大地をも焦がしながら突き進む紅炎が放たれる。
「いっけぇぇぇぇえええ!」
「……っ」
暴風と紅炎が激突する。互いに一歩も譲ること無く、拮抗し続けている。
「はあぁぁぁぁぁあ!!」
「……」
フィオーリは気合を入れるように叫び、ビアンカはただひたすら集中するように無言を貫いている。
「まだまだ!」
「……」
よく見ると、ビアンカの紅炎がジリジリと、本当に少しずつだが暴風を押し返している。フィオーリもそれに気付いたようだ。
「っ!」
だが、それに一瞬動揺し、風の出力を弱めてしまった時点で、試合の結果は決まった。
「……終わりです!」
紅炎が、暴風を押し返しフィオーリに向かって突撃する。もう、止まることは無い。
フィオーリを紅炎が包み込む。そして、そのまま姿が見えなくなる。
……しばらく後、紅炎が消えフィオーリが姿を現す。その直後、
ピシッ
と言う音が響く。
ピシピシッ
しかし、フィオーリは呆然と立ち尽くしている。もう、立っていることすら限界なのだろう。
そして……
パリィィン!!
遂に、フィオーリの結界が派手な音を立てながら、砕け散った。
「あ……そん……な……」
その音を聞いて、緊張の糸が解けてしまったのか、フィオーリは地に倒れ伏す。
「あ……えっと、はい!第1試合勝者!化け物連合のぉぉぉおおお!!!ビィィィアンカァァァアアア!」
「「「「「うおぉぉぉおおおおおおおお!!!!!」」」」」
実況席から、結果を伝える声が響き、その直ぐ後、轟くような声が会場を包み込む。
「カイト様!私、勝ちまし……た……」
その声を聞き、ビアンカも緊張の糸が解けてしまったのか、ぐったりと倒れ込んでしまう。
「……行こ?」
これまで、俺の隣で一度も喋らずに観戦していたフィールが、そう提案する。
今、ビアンカとフィオーリは救急班に運ばれている。多分、今からそっちの方へ行けば間に合うだろう。
「ああ、あんなになっても勝ってくれたんだ。たまには褒めてやらないとな」
と言うことで、俺たちはビアンカとフィオーリが運ばれた先へと、小走りで向かっていった。
と言う訳で、ヘラクr……おっと間違えました。ビアンカVSフィオーリ、ビアンカの勝ちです!
次回は運ばれたビアンカandフィオーリ、もしかしたら二回戦まで行くかも知れません。




