9話 リアル鬼ごっこ
ビアンカの元ネタ、皆さんかなり悩んでいるようで何よりですw実の所、答えを知ってるある人が、「正解のコメントが来る訳無いだろ。難しすぎる」という旨の発言をした位なので……。難易度結構というか相当高かったかなと少し反省はしてます。後悔はしていませんがw
「……まだ痛む」
「カイト様、また手加減してくれませんでしたね?」
「いや、大分控え目にはしたんだが」
そんなたわいない会話をしながら商店街辺りへ俺たち。若干暗くても、夢幻列島の夜ほどではないから普通に見える。ビアンカは若干見えづらいようだが。
「なあ、商店街に着いたらまずどうする?」
俺は行きたい所があるのだが、賑やかなところに行くのは2人とも久し振りなので、今日は2人の意思に任せたいと思っていた。だが、
「……カイトに任せる。何処に行ったらいいか解らないし」
「私もお任せします。本当は食べ歩きとかしてみたいんですが、魔力を頂いてしまったせいでお腹一杯なんですよ」
と、自分の意思を持たなかった。でも、俺の行きたい場所って面白い場所じゃ無いんだけど……
「別に構わないが……俺の行く場所は武器屋とかだぞ?別に面白い事は無いと思うけど」
「……それは、行く必要あるの?」
フィールの言いたい事は充分解る。そりゃ、伝説の金属で出来た剣を使っていて、新しい武器を用意する意味は無いに等しいからだ。まあ、俺は俺なりの理由があるんだけど。
「まあ、武器を買うって言うより、どの位までの武器が店売りされてるかが気になるんだよ」
「それは意味あるんですか?」
ビアンカが怪訝そうな顔で聞いてくる。その気持ちも充分解るからしっかりと説明してやる。
「俺の剣はオリハルコン製だ。だから店の剣が敵うはずが無いんだが……。そんな伝説の金属で出来た剣なんて振ってたら目立つ事この上ない。普通の人ならよく切れる剣だとしか思わないと思うけど、見る人が見たら違和感は覚えるだろうしな。そんな訳で、どの位の素材までが使われてるか調べて、建前上の剣を作って置きたいんだよ」
オリハルコンの剣なんて振ってバレたら、厄介事ルート確定だ。アダマンタイトとかでも怪しいから……ちゃんと調べないとな。
「なるほど、そう言う事ですか。じゃあ、そう言う方向で行きましょう」
方針を決めたところで、やる事も無くなったので適当に歩き出す。そして、しばらくした位で商店街に着く。
「へいらっしゃい!グリフォンの焼き鳥串、1本500ゲルトだよ!さあ、買った!」
「希少魔物シーサーペント!そのスープが一杯なんと300ゲルトだ!」
「激ニガポーション一気飲み!挑戦料1回1000ゲルト!見事飲み切れたら賞金10000ゲルト!」
夜だと言うのに、物凄い賑わいを見せていた。出店も結構出ている。ちなみに後から聞いた話なのだが、闘技大会が近くなると毎年こんな感じに夜でも盛り上がっているらしい。
「かなり盛り上がってるな」
「……楽しそう」
「こんなに賑わっているのですか。やはり、カイト様に着いて来たのは正解でした」
正直、祭りのようになってるとは思ってなかったので、結構驚いている。もっとも、買い食いとかはしないが。
「うーん、折角だし、激ニガポーション一気飲みでもやってみるか?」
「……いいんじゃない?あのポーションよりはマシだと思うし」
フィールが言っているあのポーションとは、俺が夢幻列島で作った超強力ポーションの事である。あれより苦いポーションが有るとは思えない位だったので、大丈夫だろうと思ったから俺も挑戦しようとしているのだ。
と言うわけで、俺はその出店のおっちゃんに話しかける。
「おい、おっちゃん。それ1回やらせてくれ」
「あいよっ!って、あんちゃん人間か?このポーションはミノタウロスでも失神する激ニガポーション、人間にはちとキツイかも知れねえぜ?」
おっちゃんが不敵に笑う。差別というより、普通に心配してくれているようだ。魔族用に調整されているのだろう。
「ああ、問題ない。別に飲みきってしまっても良いんだろ?」
俺はそう言っておっちゃんに金貨1枚を渡す。
「ヘッヘッヘ、そうこなくっちゃ。……っと、お釣りだな。あと、これがポーションだ」
そう言って、おっちゃんは大銀貨9枚と、真緑のポーションを渡してくる。結構苦そうだ。
「じゃ、頂きます。………………うん、苦いな」
俺は、そのポーションを何事もなく、ただ普通に一気飲みする。結構苦いが、耐えられない程でもない味だった。まだあのポーションの方が苦い。
「……マジか、苦いの得意な俺が飲めない苦さを目指して作ったのに、普通に飲みきるか。悪いな、あんちゃん。ちょっと見くびってた。あ、飲み切れたから賞金の10000ゲルト。まあ、さっきお前から受け取った金貨1枚だがな。ほらよ」
「おう、ありがとな」
俺がそう言うと、おっちゃんは闘志を燃やしているような顔になる。
「ふっ、構わねぇ。飲める味に作った俺が悪いんだ、次はお前でも吹き出すような味にしてやるからな!その時は挑戦してくれよ!」
「ああ。じゃあ、その時は教えてくれよ?」
「ああ!それじゃあな!」
そうして、お互いに握手を交わし、本来の目的である武器屋に向かった。
「……最後のあれはなんだったんですか?」
「男の契りだ」
「はあ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺たちは、武器屋らしき店に着く。剣が描かれている看板が立てられてるので、まず間違いは無いだろう。
そしめ、俺はその店の扉を開ける。部屋の中には剣や槍、棍棒や杖など色々な武器が置かれている。
「……なんだ、ガキにひ弱な女か。てめえらに扱えるような武器は此処にはねえぞ」
中にいた店主らしきおっさんが、不機嫌そうな顔で言い放つ。まあ、ぱっと見は唯の高校生に少女にメイドだからそう思われるのも無理はないか。
「まあ、今は武器を変えるだけの金は無いので、余裕が出来た時の為に見に来ただけなので。一応、手持ちの剣も有りますし」
取り敢えずは、適当に誤魔化しておく。その位が多分丁度いいのだ。
「冷やかしか。それに、お前が振れるような剣だと?……見せてみろ。大したもんじゃねえだろうしな」
そんなことを言われたので、仕方ないから邪剣エクスカリバーを取り出し、見せる。
おっさんは、それを受け取ってマジマジと眺め、何か驚いたような表情を見せた後俺に言う。
「……悪いな、俺は今から修行の旅に出る。当分この店は閉店だ」
「いやいや待て待て!どうしてそうなる!」
いきなりの展開についそう言ってしまう。そうすると、おっさんは俺に怒鳴りながら言う。やっぱり、アダマンタイトの方 (夢幻列島で初期の方俺が使ってた奴)出した方が良かったか?
「どうしたもこうしたもあるか!なんだよその武器は!そんなヤバい剣は見たこともねえし作る事も出来ねえよ!」
「……どこらへんがヤバいんだ?」
そこの所を知りたいので、敢えて聞いてみる。
「まず、こんな素材見たこともねえぞ!アダマンタイトでさえ滅多に見ねえってのに、これはそれより質がいいと来た!そんなもん伝説の金属のオリハルコンくらいしか思いつかんわ!」
正解なんだが。
「で、この武器の属性!一つ属性付けるだけでも相当苦労するってのに、二つも属性が付いている!それも充分な強度のがだ!国宝並みの剣だぞ、これ!」
「お、おう。そこまでなのか」
若干引きながらそう言う。というか、見ただけでそこまで解るって相当だなこのおっさん。
「……はあ、悪いな興奮しちまって。だが、一つ言っておく。その剣、やすやすと見せるんじゃねえぞ?下手に見せると命狙われかねないからな?」
「……実の所、そんな感じもしてたから、剣を見に来たんだ。どこら辺の素材までなら、騒ぎに成らずに使える?」
そう聞くと、おっさんは少し悩み、言う。
「……銅、鉄、鋼、ミスリル、アダマンタイト。後は魔物の爪とか色々あるが……具体的には、鉱石ならミスリル、魔物の素材なら60レベル前後までなら「おお、凄いな」程度で済むな。アダマンタイトとか、龍の爪とかになると、「それどこで手に入れたんだ!」って行く先々で聞かれる。で、お前の剣とか、上位以降の龍の素材とかになると……毒盛られても不思議じゃないな」
「マジか」
て事は、俺のアイテムボックスにあるヒヒイロカネとか、ミラージュの爪とかは、見せるだけで命を狙われると。怖いなー(棒)
「じゃあ、これは使っても騒ぎにならなさそうか?」
俺がそう言いながら取り出したのは、夢幻列島で狩った魔物の一体、サーベルスパイダーの脚だ。加工しなくても武器になりそうな脚だったので、そのまま出してみた。
「……これは、サーベルスパイダーか?深いダンジョンでもない限りいない筈なんだが……お前らが狩ったのか?」
「ええ、まあ。結構危なかったですけど」
嘘は言ってない。最初の方はヤバかった。……後の方?即殺ですがなにか。
「そりゃすまんな。てっきり、ひよっ子の狩人かと思ったからな。まあ、こん位なら珍しいな位で済むな。それに、持ち手とかを付けるだけで武器としては成り立つし……今サッとやってやろうか?」
うーん、どうしようかな。俺がやってもいいけど、店売り規格の奴が欲しいし……やってもらうか。
「じゃあ、お願いします。ところで、幾ら位かかりますか?」
「あー、柄を付けるくらいで終わるからな。3000ゲルトもあればいいぜ。……滑り止めって、良いのになると若干高いんだよ。あ、後払いで大丈夫だからな」
「解りました。じゃあ、終わるまで適当にその辺のを見てますね」
すると、おっさんが苦い顔をする。
「お前が満足出来そうな武器はねえと思うがな……」
と、呟いたのが聞こえたが、敢えて無視して武器を探す。アイテム作成のアイデアに成りそうな物がないかと思ったのだが……。
結局、1番ネタに走ってるので「重さ100Kg級、魔法の威力を増大させる アダマンタイトの大剣」位しか無かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ほれ、完成だ。っても、柄を取り付けただけだがな」
そう言っておっさんが渡して来た剣を受け取る。光を吸い込むような黒い細身の刃に、同じく黒い柄が付けられている。しっかり握れて滑らない、良さそうな柄だ。しかも、剣道で持ったことのある竹刀よりもよっぽど軽い。
「柄は、鋼で出来た奴にビックスパイダーの糸を巻いた奴だ。ああ、黒い理由は刀身に合わせたらいいんじゃね?とか思ったからだな」
「そのせいで真っ黒なんだが……まあ、軽いし、持ちやすいし、いい剣だ。……シュバルツと名付けよう」
俺が笑いながらそう言う。おっさんも、それを聞いて笑う。
「へえ、良さそうな名前じゃねえか!まあ、あの剣には劣るだろうが……っと、そうだった!おい、あんた!サーベルスパイダーの脚があるって事は、後何本かその脚残ってたりするか?」
「ちょっと待ってろ。……あー、少しあるな」
正確には6体分と7本残っている。それを言ったら少しじゃねえ!とか言われそうだけど。
「そうか。なら2、3本ほど売ってくれねえか?一本に付き金貨8枚でどうだ?」
つまり、一本80000ゲルト、三本売るなら240000ゲルトか。うーん?
「……高くね?」
「いや、柄を付ける位で剣が完成するんだからな?レベル60代じゃかなりの良素材だし、そりゃ高くもなる」
そんなもんなのか。じゃあ、それでいいか。
と言うことで、ボックスからサーベルスパイダーの脚を三本取り出して机の上に置く。投げ渡したりはしない。
「ありがとな。じゃ、大金貨二枚に金貨四枚だ、ほれ」
「ああ」
金を受け取り、俺は店を出る。その時、後ろからおっさんが言う。
「もう一回言っとくが、気をつけろよ!まあ、お前なら大丈夫そうだがな!」
「おう!」
その忠告を胸に止め、俺は歩みを進めようとしたのだが……。
「……何か、忘れてない?」
「武器に夢中で私達のこと忘れてますよね?少しお話しませんか?」
そう言って、フィールとビアンカが俺の左右の腕に掴まる。その顔を見ると、顔は笑ってるのだが目が笑っていない。
「わ、忘れてない。ほら、あれだ。外からお前らの気配がしてたから……」
俺は駄目元で言いくるめを試みる。しかし、
「私達は、カイトが出たからビアンカを掴んで縮地で追ってきた。だから、それはおかしい」
「まさか、カイト様は気配を間違えたとか言いませんよね?」
はい、駄目でした。
「……」
「……」
「……」
沈黙が続く。ビアンカとフィールの腕を握る強さが強くなる。
そして、俺がその沈黙を破る。
「……全力疾走!」
2人の手を上手く振り払い、飛行スキルを発動させ全力で逃走を図る。
「……逃がさない!」
「一発殴らせて貰います!」
後ろを見ると、紅い光を纏ったビアンカと、腕と翼を龍化させ、腕に黒い魔力を纏ったフィールが追ってきている。
そうして、始まったリアル鬼ごっこ。それは、ウーバ魔族国の首都全域を巻き込んで行われた。
ある魔族が、「地を這う紅い光 (ビアンカ)と空を舞う黒い光 (フィール)が、光らない何か (俺)を追いかけていた」という証言の所為で新たな都市伝説が生まれ、俺とそれを聞いたアダマースが頭を抱えたりしたのだが……。それは多くは語るまい。
そうして、リアル鬼ごっこを終え (勝者は俺)、クタクタになった三人は活力の無い顔をしながら、なんとかアダマースに紹介された宿屋、「終焉亭」に辿り着いた。




