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8話 ビアンカ、突然の凶行

現在、俺達は魔王城にいる。そして、物凄い憂鬱そうな顔をしているアダマースが目の前にいる。


「……クロノさん、フィールさん。探索お疲れ様でした。そして、そこの私の厄介事センサーが反応しているそこの方はどなたですか?」


厄介事センサーってなんだろうな。っていう質問は野暮だろう。と言う訳で、普通にビアンカに自己紹介させる。


「申し遅れました。ビアンカと申します。元例の研究所の管理者で、今はカイト様のメイド兼仲間として活動しております」


「……俺ってお前をメイドにしたっけ?」


 ビアンカが自己紹介すると、アダマースが頭を抱える。ちなみに、俺の疑問は完全スルーされた。


「……えっと、つまり、あの遺跡は現在進行形で活動していた研究所であり、貴方はそこの管理者だったと。それで正しいですか?」


「はい、その通りでございます」


 ビアンカがそう言った後、突如アダマースがこっちを向き、物凄い形相で聞いてくる。


「クロノさん。……なぜ、こんな事になったのですか?私にも胃薬を飲ませてあげようとか言う嫌がらせですか?」


「ちょ、怖い怖い!説明するから!だからその顔止めろ!」


 そう言って、全力でアダマースを止める。確かに厄介事を持ち込んだのは俺だが、鬼神の如き顔で迫られるのは堪らない。


 と言う事で、研究所でロボットを壊しまくった事、隠し部屋を見つけてビアンカを速攻で無力化した事、そのまま着いて来たいと言ったので、仕方なく認めた事、研究施設に合った物を一部持ってきた事、ヤバそうなものは置いて来てサクッと隠し部屋の入り口を封鎖した事(魔導機械に直すようにビアンカが指示を出しておいたので、俺がぶち破ったところは今頃元どおりになっている筈)……全てを包み隠さずに説明した。その結果、


「……えっと、なんですか、その無茶苦茶な話は。私でも頭痛がしてきたんですが」


 アダマースは諦めた。頭脳派でも、許容範囲というものはある。今回の話は、それを大きくオーバーしてしまったようだ。


「ま、まあ、その、あれだ。色々持ってきた物渡すから、後で頭の中でも整理してくれ」


 そう言って、魔導拳銃の設計図に、ドリルやライフルの現品、そしてあの時ビアンカが使っていた散弾銃を渡す。


 なお、あれは「対異形用属撃散弾銃」と言う代物らしく、属性結晶を加工した弾を撃ち出すという仕組みだという。正直な所、弾が作り辛いらしくそこまで使わないそうだ。ただ、狙える範囲は最も広いそうだが。


 本当は2つとも渡そうかなと思ったのだが、ビアンカからそれを聞いたときに1つは手元に残す事を決めた。属性結晶なら、腐る程持ってきているのだ。夢幻列島で拾ったのを。


 それを見たアダマースはボソリと呟く。


「持ってきても問題無さそうなもの……?魔導機械の完全な設計図なんて充分過ぎるほどの大発見なんですが……。それにこのドリル?と言うものも、かなりの物ですし……」


 どうやら、かなり加減したのだが充分影響はあるようだ。もしも、あの中にあった世界を滅ぼしうるような兵器の設計図を持ってきたら……どういう反応するんだろうなぁ。やらないけど。


「……正直、まだこの設計図や魔導機械にどれだけの価値を付けられるかは判りませんが……買取代と調査報酬、合わせて大金貨5枚でよろしいですか?」


「うん、すまん。ちょっと待って。……ビアンカ!貨幣価値の説明よろ!」


 悪いが、こっちは金の価値なんて知らねえんだよ!常識はあるんだろ、ビアンカ!


「はい、かしこまりました。まず、この世界のお金の単位はゲルトとなっております。そして、1ゲルト銅貨、10ゲルト鉄貨、100ゲルト銀貨、1000ゲルト大銀貨、10000ゲルト金貨、100000ゲルト大金貨、1000000ゲルト魔銀貨となっております。ちなみに、魔銀というのはミスリルの事です」


 つまり、大金貨5枚ってのは500000ゲルトと。でも、日本円換算が知りたいんだよな。


「ちなみに、1番安いパンの黒パンを買う場合、安いところなら30ゲルトも有れば買えます。あと、宿屋や食堂で食事を取る場合は、500から1000ゲルト辺りの所が多いですね」


 要するに日本円とあんまり変わらないか?って、それって……


「……高くね?報酬」


 半日で終わったような依頼の報酬が50万。命掛かってたとは言え、結構高いような気が


「寧ろ、この城が割と財政難なので安すぎる方ですよ?魔導機械なんてどこの国でも進んで研究してますし」


 そんな感じなのか。でも、あんまり吹っ掛けるのも良くないし、そこまで多すぎても微妙だから取り敢えずそのまま受け取るか。


「そうか。まあ、今すぐ大金が必要な訳でもないし、それでいーー」


「ちょっと待って下さい、カイト様」


 しかし、それをビアンカが止めに入る。


「ビアンカ。お前まさか増額を要求するのか?」


 一応怪しんで聞いてみたが、ビアンカは首を振り、そして呆れた顔で言う。


「あの、カイト様。多くの店では、大金貨及び魔銀貨は使えません。価値が高すぎて、お釣りを払えないのです。ですから、合計金額を変えずに大金貨4枚と金貨10枚位にしておいた方がいいと思いますよ?」


「あー……」


 例えるならば、飲食店で500円の物を食べて、そして会計で10万円を払っているような事だ。小規模な店舗の場合はお釣りを払えないだろう。


「……すいません、ちょっと頭痛が酷くて考えてませんでした。まあ、それでいいですか?」


「あ、ああ。よろしく」


 その話を聞いたアダマースが申し訳無さそうな、そして疲れ切った顔で金を取りに部屋を出る。そして、その間部屋は俺達だけになる。


「なあ、フィール、ビアンカ。この後どうする?」


 暇になったので、日が暮れているのだがどうするかを話し合う。外は暗いが、光の結晶 (光明結晶の下位互換)を使った照明が幾つか設置されており、開いている店なども多く見える。


「……私は、ちょっと色々見て回りたい。賑やかなのは、久し振りだから」


「私も賛成ですね。見た事無いものがたくさんありそうで楽しみです」


 フィールもビアンカも同意見のようだ。じゃあ、そんな感じで良さそうかな。


「じゃあ、そんな方向でいいな?まあ、飯はアダマース達が紹介してくれた宿屋で取るとして……て、ちょっと待て。ビアンカ。ホムンクルスって食事ってどうするんだ?」


 そう言えば、ホムンクルスが人間と同じ食事をとるかどうかなんて考えて無かったので、少し疑問に思い聞いてみる。


「えっと、普通にカイト様達と同じ食事でも大丈夫です。ただ、カイト様から直接魔力を頂いた方が燃費は良いですけど」


「魔力を直接、ね。ところで、それって一体どうやってやるんだ?」


 興味本意でそう言って見たのだが、ビアンカは想像を絶するような行動に出た。


「えっと……こんな感じですかね?」

 

 そう言うと、ビアンカは俺の腕を取る。そして、それを胸の高さ位まで持ち上げると、カプッと齧り付く。


「「!!??」」


 突然の行動に驚いている俺とフィールは固まってしまっている。


 しかし、当のビアンカはそんな事を気にせず、俺の腕に齧り付いたままだ。痛くは無いのだが、なんか気力が抜けていく。確か魔力を使い過ぎると怠くなった筈だから……魔力を吸われてるという事なのだろう。


 そして、体感で3分の1程魔力が持ってかれた位でビアンカが俺の腕から口を放し、俺に言う。


「ご馳走さまでした。……なんというか、人の魔力なのですが、魔物のそれも混ざっているような、不思議な味でした」


「……」


「まあ、こんな感じに、わざわざ口付けをする必要はありませんが、貰う人に接触する必要があ……」


「必要ねえのかよ!」


 ピシャァアン!


「あ痛っ!?」


 つい、アイテムボックスからハリセンを取り出して身体強化全開で叩いてしまう。


「うぅ、カイト様ぁ。全力で叩くことは無いじゃあ無いですか。とっても痛いです」


 ビアンカが頭を抑えながら、涙目でこちらを見てくる。その顔を見てるとなんか申し訳無くなってくる。


「すまん、加減が出来なかった。だが、幾ら何でもいきなりあれは無いと思うぞ?」


「すいません。仲間になったばかりなので自己主張を強く意識しようかなーと」


「んなこと気にすんな。お前は色々と目立ちそうだからそんなことする必要はない。……つーか、なんか口調変わってね?」


「元々私はこんな口調です。キリッと系のメイドを演じてみようと思ったのですが……」


なんか、聞けば聞くほど駄目になっていく。正直見苦しくなってきた。ほら、フィールもビアンカをジッと見て……


「ビアンカ。……後で屋上」


「なんでですか!?」


 前言撤回。フィールまでおかしくなった。


「私でさえ、…………したこと無いのに」


「それ八つ当たりじゃ無いですか!と言うより自分から行けばいいじゃ無いですか!」


「そんなことは関係ない。大切なのは、……したかどうか」


「そ、そんな殺生な!カイト様!なんとか言ってください!」


「すまんな、会話が途切れ途切れしか聞こえなくて理解不能なんだ。勝手にやっててくれ」


「……許可は出た。晩御飯食べたら、屋上」


「宿屋の屋上で決闘なんかしたら宿屋がぶっ壊れますよ!?そこの所理解してますか!?」


「大丈夫。決闘じゃ無くて、一方的にボコるだけだから」


「どこが大丈夫なんですか!?」


 と、そんな騒がしい会話をしていると、小さい袋を持ったアダマースが戻ってくる。


「……元気で羨ましいですね。あ、クロノさん、これ報酬です。確認して下さい」


「おう、ありがとな。……うん、合ってるな」


「ええ。……では、今からどうするのですか?」


 アダマースが険しい顔をして聞いてくる。「これ以上面倒事は増やさないでくださいね」と言うような顔だ。


「まあ、開いてる店を適当に見たりして、その後宿屋に向かう予定だ」


「そうですか。……無事を祈っていますわ」


「絡まれる事は確定ってか?」


「寧ろ美女2人連れて絡まれないとでも?……後、祈っているのは貴方の無事ではなく、相手の無事です」


「……妥当だなぁ」


 と、アダマースと少し話し、未だに口論していた2人をハリセンでしばき、俺たちは城を後にした。

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